DTPデータ解体新書──DTPな人たちのOSは今
── 笹川純一 ──

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PC・Macを使用する上で必要なものはOSです。OSが変わると操作方法がガラッと変わってしまう場合もあり、また、ソフトウェアが対応しなくなったりすることも多くありますよね。OSは作業の基礎となるものですので、安定性はもちろん動作速度や使い勝手なども重要なポイントかと思います。

最近のOSの動きとしては、Macでは次期OSのMac OS X 10.6 Snow Leopardのリリースが2009年6月頃に控えており、また、Windowsでは最近次期OSのWindows 7がベータ版が公開される(リリースは2010年の前半の予定)などが挙げられ、新しいOSへの動きも活発になってきました。

そこで今回のアンケートは「DTPの作業されている方のメインで使用されているOSは何ですか?」というものを行ってみました。
OSの選択肢は以下の6つの中から選んでいただきました。
・Mac OS X   ・Mac OS 9   ・Mac OS 8
・Windows Vista ・Windows XP  ・Windows 2000

結果は次のようになりました。



●DTPの作業のメインで使用されているOS …投票数:948票

 1位 … Mac OS X       …39.5%
 2位 … Windows XP      …25.7%
 3位 … Windows Vista    …19.5%
 4位 … Mac OS 9       …12.9%
 5位 … Windows 2000     … 2.0%
 6位 … Mac OS 8       … 0.4%

結果としては、Mac OS Xが約40%の得票で堂々の1位になっています。これは以前からDTP・デザインはMacで行われていることが多かったので、当然の結果かと思います。

ソフトウェアも、Mac OS X対応のIllustratorで考えれば、Illustrator 10・CS・CS2・CS3・CS4と5つのバージョンが挙げられるくらいMac OS Xが発売されてから時間が経過していますから、Mac OS Xの使用比率が高いのは当たり前かもしれませんね。Mac OS Xのどのバージョンを使っているかというのもちょっと興味がありますが…。

2位は約25%の得票でWindows XPでした。WindowsのOSとしては実際多くの方々がWindows XPを使用している感はありますね。Windows XPも基本的に一般販売は終わっていますが、オーダーメイドのPCを購入する際にWindows XPが選べる事情や、Windows Vistaにアップグレードしなくてもとくに問題がないという事情もあり、多くの方々がDTP用途で使用されているのではないでしょうか。

また、例えばAcrobat 6.0 ProfessionalやIllustrator CSではWindows Vistaで起動させようとすると、互換性に関する警告が表示されたり、画面描画のWindows Aeroの機能が使用できなかったりと、現行バージョンではないソフトウェアを使用する場合にも、Windows VistaよりWindows XPの方がより適切な場合もあります。

ソフトウェアのバージョンアップ・アップグレードをしていない場合は、Windows XPを選択する(もしくはWindows Vistaにアップグレードしない)ということが言えるのかもしれません。また、Windows Vistaにアップグレードした時に、周辺機器が正しく動くかどうかがわからないという理由もあるのかもしれませんね。(※1)

3位は約20%の得票でWindows Vistaでした。Windows Vistaは2007年1月の登場なので、発売からは2年が経っていることになりますね。もう次のWindows OSであるWindows 7の情報も色々入ってきますが、現在発売されているOSですので、特にOSを指定せずにPCを購入するとWindows Vistaになるため、ある程度の使用比率にはなるのでしょうね。今後はWindows XPから移行が進んでいき、この約20%の使用比率からWindows Vistaの割合が増えていくことが予想されます。

Windows Vistaでは、エクスプローラーが改善されていてフォルダの扱いが簡単になっていたり、ライブアイコン機能でファイルの内容の識別か簡単になっていたり、フラッシュメモリ(USBメモリなど)をキャッシュとして利用しパフォーマンスを向上させたりなどの作業の生産性が向上するための仕組みが追加され、便利になっています。使ってみるとそんなに悪いOSではないと思うのですが、やはりリリース直後のソフトウェアや周辺機器対応の混乱や「とにかく遅い」というイメージが一部に植え付けられてしまったので皆さんWindows Vistaへの抵抗感があるのかもしれません。

4位は約13%でMac OS 9でした。以前行ったアンケートでも、まだまだIllust rator 8をよく使う方が3割という結果(※2)もあり、Classic OSを利用されている方はまだ多いように感じます。Mac OS Xに比べて、色々な作業を同時進行しづらいというOS上の制約があるのが難点ですね。

ただ、一度環境を固定して作業する内容も大きく変わらないのであれば、安定性には大きな問題はないように思います。問題はMac OS 9が動作するMacをどうやって今後確保していくかでしょうかね。個人的には、Mac OS 9にあったポップアップフォルダ(画面の下の方にタブになるフォルダ)が便利だったのですが(実装はMac OS 8から)、Mac OS Xではそういう機能がなさそうなのでちょっと残念ですね。

結果として、Macが53%程度、Windowsが47%程度と、OSではかなり拮抗しているという印象を持ちました。以前であればDTPといえばMacでしたが、現在ではそうではないということが言えるのではないでしょうか。最近のお客様のデータでも、Windows版のIllustratorやInDesignで作成されているということも数多くあり、DTP≠Macということを実感しております。

特にデザイン会社などではなく、メインのシステムがWindowsで組まれた会社でデザインなどを内製化している場合に、何十台、何百台のパソコンの中で1台、2台だけMacをデザインするためだけに導入するというのはシステム管理の面から見て難しい点があるために仕方なくWindowsを選択した、というところもあるかもしれません。また、Windowsの場合、PCの購入の際に選択の幅が広く、予算に柔軟に合せた組み合せで購入できるので、そういった面もWindowsでDTPという流れを加速させているのかもしれません。

アンケートにご協力、ご回答いただいた方に感謝いたします。
ありがとうございました。
【アンケート概要】
アンケート期間:2008年1月19日〜2009年2月18日
アンケート対象:主として「DTPサポート情報blog」閲覧者
アンケート方法:以下のページのウェブサービスによる回答(無記名回答)
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20090119/155700.html
>

※1:Windows Vista Upgrade Advisorを使用することで現在使用しているWindows XPのPCでWindows Vistaを実行することが可能かどうかを診断できます。普段利用している周辺機器などが、Windows Vistaで使用できるかどうかも診断できます。
・Microsoft Windows Vista: Upgrade Advisor
< http://www.microsoft.com/japan/windows/products/windowsvista/buyorupgrade/upgradeadvisor.mspx
>

※2:吉田印刷所のアンケート結果より。
・DTPでよく使用されるソフトのバージョンのアンケート
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20081029/152500.html
>

【笹川純一】sasagawa@ddc.co.jp < http://www.ddc.co.jp/
>
DTPデータ入稿を手がけている、個人的には若手だと思っている印刷会社の人。先日「PAGE2009」でPDFワークフローのセミナー講師をしました。初めて大人数の前でセミナーを行って緊張して、最後は随分早口になってしまいました(笑)。それにしても45分のセミナーも始まってしまえばあっという間ですね。
・セミナーの様子
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20090226/124500.html
>