Otaku ワールドへようこそ![91]縁なのか何なのか、出雲の国へ/GrowHair

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出雲の国へ行ってきた。出雲の国といえば、出雲大社である。祀られている大国主命は、縁結びの神様としてよく知られている。しかし、私は3次元の女性に縁がない以前に、縁結びの神様にも縁がなかった。朝一番の便で羽田を発ち、廃工場を探検し、カラオケで騒ぎ、12時間後には羽田に戻っていた。いったい何をやっているのだ、と言われそうだが、そもそもの目的は、今月中に有効期限切れになるJALのマイレージを消費することにあったので、これでいいのだ。



●ステーキ肉や毛ガニやワインが手品のように消える

2月12日(木)にJALから宣伝メールが届いた。JALマイレージバンクにたまっている9,500マイルを、黒色和牛のステーキ肉や、オホーツクの毛ガニや、フランスワインの赤・白セットなどと交換できることを知らせる内容である。冒頭の断り書きに、このメールは2009年2月末もしくは3月末に失効するマイルを持っている人に送っている、とある。なにっ?

JALのウェブサイトでログインして調べてみると、49,298マイルたまっている。閑散期のキャンペーン期間中(今がまさにそう)なら、エコノミークラスでヨーロッパへ往復できちゃう量だ。そのうち26,046マイルが、今月いっぱいで賞味期限切れになっちゃうと分かる。このマイル数だけでも、マニラとか、北京とか、台北とか、香港とかへ往復できちゃう量である。それを今ごろ知らせてくるとは、なんと親切なことよ。

土日のセットがあと2回しかない。どちらにもすでに予定が入っている。東南アジアなんて、行ってる暇ないじゃんか。「じゃあ私が代わりに行ってあげる」って、ありがたい申し出が次々と。いいんだけど、マイレージが使えるのは二親等までと決まっているんだなー。それを言うと、みんな蜘蛛の子を散らすように逃げていき、誰も結婚してくれない。

三国志大戦3入門指南書 (エンターブレインムック ARCADIA EXTRA VOL. 51)さてどうしたもんか。日帰りの国内旅行で妥協して、残りは商品券に変えとくか。2月17日(火)のミクシィの日記で、「誰か、ちょいと飛んで来いや、って人いない?」と呼びかけてみると、「島根にびゅーんとどうですか?」と応答あり。コスプレイヤーの橋本龍さんだ。去年の5月、鳥取県にある中国庭園「燕趙園」で開かれたイベント「中華コスプレプロジェクト」でカードゲーム「三国志大戦」のSR(スーパーレア)甘寧のコスをしていた人である。

ミクシィのメッセージをばたばたとやりとりして、2月22日(日)に行くことに決まり。勢いで、中野にある行きつけのメイドバー「ヴィラージュ・レイ」のkちゃんにプロポーズしてみたのだが「正気か?」の一言で玉砕。kちゃんは鳥取で龍さんに会う前から、"cure"というコスプレコミュニティサイトで龍さんを発見して、あこがれていた。コンタクトをとって、燕趙園のイベントに行くと聞いて鳥取行きを決め、「合わせ」(同じ作品の別々のキャラに扮すること)ができるようにと同じゲームのR孫権のコスを制作したという経緯がある。

誘えば乗ってくると思ったんだがなぁ。いや、誘いには乗ってきた。「自費で同行します」と。そうまでして結婚したくないかっ。まあ、まだ22歳なんで、理解できなくもないか。つーか、そもそもまだつきあってもいないし。口説くのはこれからじっくりということにして、「おともdeマイル割引」というのを使えば、赤の他人であっても同行者は大幅割引になるし、私は10,000マイル使うだけですむ。このあたりで手を打とう。5日後の旅行のことがたった一日でばたばたと決まり、飛行機のチケット予約まで完了。

本当は米子空港が一番近いのだが。JALの便がないので、出雲空港になる。龍さんが車で迎えに来てくれるという。いやぁ、50kmくらいあるのに、悪いなぁ。機長と直接交渉して米子に降りてもらえないかなぁ、なんて、ふと頭をよぎったが、成功しそうなスキームが思い浮かばず、断念する。

●山陰の前に山陽

2月18日(水)、19(木)は、仕事で福山へ出張。地図で見ると、米子のほぼ真南ではないか。タテに行けばすぐなのに、往ったり来たり、なんだかあわただしいなぁ。

さて、この出張も楽しみにしていた。知り合いが福山に住んでいて、「仕事の後で、お茶しよう」という話になっていたのだ。声優の藤原響さん。いつどこで知り合ったかというと、'05年4月22日(金)、秋葉原のメイド居酒屋「ひよこ家」で。同僚の直江雨続くんと川崎で仕事した帰りがけに秋葉原に寄り、メイド喫茶"Cure Maid"でお茶し、「ひよこ家」へとハシゴした。そのとき、近くのテーブルで飲んでいるグループの中に響さんがいたのである。

いつの間にか、完全にまぜこぜになって話をしていた。当時は、メイドさんのいるお店で、お客どうしが意気投合して盛り上がる、というのはよくあることだったのである。そのグループに混ぜてもらったまま、さらにメイドバー「ヲタンコナス部」へとハシゴしたのであった。

その後も新大久保のメイドバー「エデン」(現在は中野に移転)で飲んだり、カラオケ行ったりと遊ぶ機会がときどきあったのだが、ちょっとした運命のいたずらで福山に帰ることになり、新宿で仲間内の送別会をしてからは、会う機会がなくなっていた。福山でも、ラジオドラマなどで、声の仕事をしているという。

私が仕事で福山にときどき用事ができるようになったのは、まったくの偶然なのだが、おかげでたまには会えるようになった。前回は去年の3月26日(水)だった。あのときは、線路下のショッピングモールの喫茶店で3時間以上にわたって機関銃の銃撃戦のようなヲタ話の応酬で時間があっという間に過ぎ、あやうく19:31ののぞみに乗りそこない、帰京できなくなるところだった。

今回も同じ場所で、ヲタ話。というか、彼女のコメディーのような近況に、こっちが笑い転げていた。ラジオドラマで、若くてカッコよくて、教養と知性に満ち溢れ、物腰の落ち着いた役者さんと夫婦役が組めたことに内心大喜びなのだが、リアルではなかなか茶目っ気のある運命の神様にもてあそばれて、思わしい印象が持たれてないかも、って話。飲み会では、何かの話にブチキレ、眉つり上げて「だっから男って大っ嫌いっ」と吐き捨ててしまった、とか。後悔して凹んでる本人にとっては切実かもしれないけど、聞くほうには抱腹絶倒なのだ。ごめん。あと、「人情チョコ事件」とか。まあまあまあまあ、暴露もたいがいにしておきましょう。あー、楽しかった。続編がぜひ聞きたいぞ。

●ジンライムをすすりながらバッハを聴く

2月21日(土)は、中野で †Children of The Night† というイベントがあった。ヴァンパイアをテーマとする演奏と展示。会場の"Nakano f"は、行きつけのメイドバー「ヴィラージュ・レイ」からわずか168歩という近さ。

去年、銀座のヴァニラ画廊で人形と写真展を開いたとき、オープニング・レセプションでキーボード演奏と歌と朗読のパフォーマンスを演じてくれた二人組のユニット「電氣猫フレーメン」が出演する。なので、人形作家の橘明さんと誘い合わせて行った。今回は、由良瓏砂さんの朗読と歌、永井幽蘭さんのチェンバロと歌。

いやぁ、またしてもすばらしかった。瓏砂さんの朗読は臨場感があって引き込まれるようだし、幽蘭さんの透き通るような高音の声は精密で繊細な楽器のようで、あいかわらず美しい。キリスト教の教会美術や賛美歌から強い影響を受けながらも、あるとき、どうしても相容れないものを感じて反旗をひるがえし、黒ミサに通じるような耽美的で背徳的でダークでゴシックな美の世界を追求するようになっていった、みたいなストーリーを勝手に思い描いていたのだが、後で本人たちに聞いてみたら、そんな意識はまったくなくて、教会美術はずっと好きだという。あらら。

ほかの出演者の演奏もよかった。くにこ人形さんと†Rose Noire†さん。くにこさんは人形のようなものになりきってのチェンバロ演奏。面をつけ、白い長い手袋をしては弾きにくかろうと思うけど、まったく意に介するふうでもなく、見事に演奏。†Rose Noire†さんは男性と女性のユニットで、バイオリンの重奏。女性ヴァイオリニストは怖いくらい綺麗やんけ。

イベント自体は、来場者が踊るような場ではないものの、クラブ系のテイストも多少するような、ゴシックに着飾った淑女が何十人も集う華やかなパーティであったが、演目は本格的で重厚なクラシック室内楽。べこべこのプラスチックのカップに注がれたジンライムをすすりつつ、ヴァイオリンとチェンバロによるJ.S.Bach Concertoが聞けちゃうという、たまらなく贅沢なイベントだ。クラシックのコンサートでは決してありえないざわついた雰囲気が、私にはなぜか心地よい。

それと、めずらしい人に会った。以前、中野のメイドバー「エデン」でメイド&バーテンをしてたつかさちゃん。新大久保時代からのなじみで、「いつもの」と言えばいつものカクテルをつくってくれていた。ちなみにそれは、私が考案した(つもりでいるが、同案は前からあったのかもしれない)「ロシアンチャイナブルー」で、要は、ウオツカのチャイナブルー割である。この日のつかさちゃんは、当時のような猫耳ではないが、かわいいゴスロリ姿。声かけられて、ぜーったいになじみのある顔だと思いつつ、しばらく思い出せなかった。

電氣猫フレーメンは、3月8日(日)16:00から渋谷の「青い部屋」で開かれるイベント"SERAPHITA"に出演予定。SPYSEEでは私とつながりがあると言われながら、実際にお目にかかったことのない黒色すみれさんも、楽しみだ。
< http://furutaniaoi.blog36.fc2.com/blog-entry-721.html >

●出雲に時間の堆積をみる

さて、前置きが長くなったが、日曜は出雲である。羽田でkちゃんと落ち合い、「結婚しときゃタダなのに」「うるせぇ」の応酬。kちゃんは声優の卵。そっちでの名前は中田圭。実は、本名。ぼちぼち役がつき始めてて、ジャンプスクエアのウェブアニメ「清く正しく美しく」ではボンバーの声をあてている。声が少年声なら、気質も強くたくましい。誕生日は2日しか違わない私だが、同じ寅年どうしでも五黄の寅にはかなうべくもなく、メイドの飼い猫になっているご主人様の図。にゃ〜。

関東から中部にかけては雲ひとつない晴天で、新宿の高層ビル、多摩湖・狭山湖、横田基地、奥多摩湖などが確認できて、kちゃんは大はしゃぎ。富士山、でかい。雲が出てきて下が見えなくなると、二人ともこてっと眠りに落ちる。あ。いや、なんでもない。それで出雲なのかと。

出雲空港に着くと、龍さんの出迎えを受ける。車で移動中、日の丸を掲げた大きな街宣車を何台も目にする。東京でもこれだけの台数そろうのは見たことないんですけど。後で聞けば、2月22日は島根県が制定した「竹島の日」で、式典とか集会とか、いろいろあったらしい。

秘密のロケ地へ。廃工場。これはすごい。一般道をはずれ、細くて急な坂道を登っていく。両脇から伸びた固い蔓がフロントガラスにこここここんっ、と当たる。登りきると、大きな工場が孤立してある。道はそこで終わり、他にはどこへも通じていない。

蔓草に絡みつかれた、みごとな廃墟。中はあらかた片付けられて、がらんとした薄暗い空間が広がっている。何の工場だったのかは、よく分からない。白く不透明なプラスチック製の200mlぐらいの薬品容器が、なぜか何万個と積み上げられている。一部は崩れている。

隣接して、4階建ての女子寮。200人ほど収容できそう。生活の痕跡が感じられないくらい片付けられてはいるが、なぜか、敷布団だけが山積みされていたりする。その上には、おがくずのような小さな木片が堆積している。どうするとこうなる? この辺にはテンが生息しているらしいが、それの仕業? 鉄製の非常階段は、ほとんどのステップが錆び落ちて、ほぼ骨組みだけになっている。何十年放ったらかされているのだろう。しなびたバレーボールとか、クラシックなテレビとか。

もしホームレスが棲みついてたりして、鉢合わせしちゃったりなんかしたら怖いかな、なんて思ったけど、後で考えてみると、そういう人の白骨死体なんかと遭遇しちゃったりしても怖いか。どっちもなかったけど。

あゝ野麦峠―ある製糸工女哀史 (角川文庫)「あゝ野麦峠」を思い出す。読んでもいないものを思い出すというのも変だが、国語の授業で習ったのかもしれない。社会だったか。たしか、紡績工場かなんかで長時間労働させられる女工さんたちの、哀しい生活ぶりを描いたノンフィクションではなかったか。今、軽く調べてみると、山本茂実が1968年に発表したノンフィクションで、明治から大正、昭和初期にかけて、飛騨の貧しい農家の娘たちが、野麦峠を越えて諏訪、岡谷の製糸工場へ働きに出て、生糸の生産を支える姿を描いた作品らしい。

私の勝手な想像の暴走にすぎないのだろうけど、なんの華やぎもなく、生活苦に疲れきった中年女のような姿になってしまった十代の女工さんたちの、絶望感と運命への怨嗟が空気に溶け込んで、その辺を浮遊していそう。好きだなぁ、こういう場所。時の流れの堆積がみえる。「貞子」とか「歪みの国のアリス」とかのコスなんかされた日にゃ、迫力ありすぎてたまらんことになりそうだが、龍さんは「桜蘭高校ホスト部」、kちゃんは「ポケモン」だった。というか、探検に夢中になってて、あんまり撮れなかった、ごめん。

車で米子に移動して、カラオケ。龍さんのお友達2人が加わり、5人で。みんな上手くて、いい盛り上がりだった。けど、2時間はあっという間で、あと20曲ぐらいは歌いたい不完全燃焼感が残る。それに、写真の撮影テクの話なんかもしようと言ってたんだけど、ぜんぜんできず。なんか、何もかも中途半端に終わった感じ。

けど、いいのだ。すべてにわたって楽しかったし。ぱっと決めてぱっと実行する機動力がなければ、そもそも実現しなかった話だし。もともとの目的は、放っとけば消えちゃうマイレージの消費だったんだし。

最終便の空席がなく、一便前ので戻って来たので、7時過ぎには新宿に着いていた。現実の生活の中にはめ込まれた非現実みたいな12時間だった。kちゃんは声優学校の授業に向かう。さて、残ったマイレージも、放っておけば4月末、5月末とまた消えていく。5月の燕趙園を待たずして、また行く気配濃厚。がんばって口説くのだ。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
鉄ヲタではないけれど。最終の下り電車に乗ると、上り電車はすでに終了していて、夜間の工事が始まっている。ある駅のホームにトイレを設置する工事は面白かった。電車の線路とは垂直方向に、幅5メートルほどの線路が敷かれ、ホームの一部が引き出しみたく後退するのだ。そこからトラックなどが出入りする。なんかこういうの、かっちょええええ。タイヤの内側に車輪がついてて、線路の上を走っていけるトラックも大好き。