伊豆高原へいらっしゃい[33]太陽光発電の契約に踏み切る!
── 松林あつし ──

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以前、太陽光発電の現状を僕なりの視点で書いてみました。しかし、その際の費用対効果の参考にした数値が正しかったかどうか、不明な点が多々あったのも事実です。実際参考にしたのは、数例の年間シミュレーションサイトで、工務店などが販売促進のために提示している数値である事が気がかりでした。

それで、今回思い切って、僕自身が太陽光発電を導入してみる事にしたのです。もちろん、導入理由は費用対効果を実験したいためではなく、将来のエネルギー事情を考えて、設置した方が良いだろうと判断したからです。

そして先日、ソーラーパネルによって発電された電気の余剰電力売電価格を来年から約2倍に引き上げる、という政府の方針がアナウンスされ、これがきっかけとなり導入する事になったのです。



ソーラーパネルは(当たり前ですが)昼間しか発電しません。その昼間の電力は常に発電分をフルに使っているわけではなく、使用量が発電分をオーバーする場合は、電力会社から電気を買い、発電分を下回る場合は余剰電力を売る、という事を繰り返します。結果、その差額が月々の光熱費となるのです(太陽光発電を導入する場合、ほとんどがオール電化を前提とするので、光熱費=電気代と捉えてます。石油ストーブなどの灯油代は含みません。またオール電化を前提とすることは、電力会社の「電化上手」契約を前提とすることでもあります)。

工務店や設置業者のサイトを見ると、その差額が限りなくゼロに近かったり、場合によっては、プラスになったりしています。本当にそうでしょうか? この費用対効果の数値をどう計算するかによって、設置料金をどのぐらいで償却できるかが決まります。しかし、なかなかこれ! という、信頼できる数値を提示しているところはありません。

その理由として、地域差がある、屋根の広さ、角度、方角が各家庭で異なる、昼間家にいる住人の数が異なる、家の広さによって使用電力も違ってくる、などが上げられます。つまり、家の環境は千差万別、各家庭の条件があまりにも違っているので、ある一世帯の導入例を提示されても、あまり参考にはならないのです。

以前僕が参考にした事例でを元に、月々18,000円分の発電が可能だ、と書きましたが、色々調べると、本当にこんなに発電するのだろうか、という疑問が沸いてきました。(もちろん、特大のモジュールシステムを取り付ければ、可能ですが)

そこで、まずは我が家とこの地域の天候を元に業者に見積もってもらうことにしました。屋根の形状と面積、角度、方角を元に、今現在販売されているソーラーモジュールの中で、どれが一番費用対効果が大きいかを判断してもらいます。また、1月〜12月までそれぞれの月の予想発電量と予想使用電力量を計算してもらい、毎月の光熱費予想も立てます。

その結果は以下の通りです。
●使用モジュール:シャープND-153AU 27枚(4.13kwシステム)
●その他付随システム:ラック、パワーコンディショナー、売電計量器など
●工事費
以上をふまえた合計金額:2,580,000円

●国からの補助金:289,000円
差し引き実質負担金:2,291,000円

そして、一番大事な点──このシステムでどのくらいの発電ができ、どのくらいお得になるかは次の通りです。

●年間予想発電量:4,456kw
●月平均の売電価格:今年=約5,800円/月 来年以降=約11,600円/月
●発電した電力をリアルタイムに使用することで安くなる金額:約5,500円/月
月平均のお得になる電気代:約17,100円(来年以降、売電価格が2倍になるという前提で)

いかがでしょう? 以前に書いた「月18,000円ほどは得になる」という話にかなり近づいてきました。そして、これを元にモジュール導入金額の償却期間を計算すると、11年ちょっとと出ました。つまり、11年で設置費用の元が取れるという事なんですね。

11年が長いかどうかは、人によって違うと思いますが、少なくとも、最近までは、元を取るのに、15〜20年かかると言われていたのが、政府の売電価格引き上げ決定によって、ここまで短くなったのは事実です(売電価格が2倍弱になる期間は、平成22年以降10年間と定められていますが)。

我が家は家の一室を仕事場として使っているので、毎月の電気代が平均23,000円ほどにもなります。しかし、そのうち17,000円ほどがお得になるという事は、実質光熱費は5,000円になる、という事で、かなり助かります。さらに、共働きのサラリーマン世帯の場合、昼間は家に人がいないので、高い電気料金の時間帯の電気使用量は微々たるものなので、さらにお得感が増すかも知れません。

単純に考えて、毎月の光熱費を15,000円に抑えている家庭では、2,000円/月の利益が出ることになり、設置費用を償却できた暁には、光熱費ゼロ住宅となります(かなり省エネに努めなければならないとは思いますが)。

ただ、来年以降10年後からの売電価格は未定ですので、その辺がどう影響するかはわかりません。これらの計算は、今回の導入のために見積もってもらった、業者による計算です。実際、導入後この通りになる保証はありませんので、ある意味、賭のような部分もあります(その年の天候にも大きく左右されます)。しかし、色々な数値を見る限り、いつかは元が取れるのは事実で、今考えられる、最も効果の高い省エネではないかとも思います。

これを純粋なエコロジー精神と結びつければ、さらに導入意欲も沸くとは思いますが、批判的な論評の中にはソーラーモジュールの製造、運送によって大量のCO2が排出されるとか、品薄のシリコン素子が暴騰し逆に割高になるなどの意見もあります。その辺の問題をクリアにするのは政府とメーカーの責任だと思いますので、是非数値として提示していただきたい。

今回の僕の太陽光発電導入にあたっては、業者の割引サービスを結構受けました。メーカーの定価で買うと、こんな金額ではできません。ですので、業者選びも重要なポイントかと思います(新たなモジュールの発売が控えているという事で、業者にとっては在庫処分だったのかも知れません)。

また、大きな販売店の方が安心できると思い、そこで契約すると、割高になる可能性もあります。何故なら、販売店が中間マージンを取るのと、その先にも代理店がある可能性があるからです。できれば信用のおけるメーカー指定業者と直接やりとりしたほうが安くはなります。ただし、信用できるかどうかの判断は難しく、実際、こんな工事はあり得ないよ、という工事をする業者もいるようで、メーカーから紹介で業者を選んだ方が良いような気もします。

さらに、現金で買うのか、ローンにするのかという問題ですが、もちろん現金で導入する方が断然お得です。15年ローンを組んだとすると、今回の僕の導入費用は300万円を越えていました。この低金利時代にあっても、ローンの金利は高いのです。

取り付け工事は今月の25日です。楽しみでもあり、不安でもありますが、業者の見積が正しかったかどうかは、一年後にわかります。

さあ! 次のエコターゲットはプリウスだ! あ、でも今回の太陽光発電の導入で、スッカラカンになったんだった……。

【まつばやし・あつし】イラストレーター・CGクリエイター
< http://www.atsushi-m.com/
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