つはモノどもがユメのあと[03]mono02:かつての“CGの必需品”──「HAL LABORATORY HWS-10G / NISCA Niscan Spectra」/Rey.Hori

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筆者の2009年現在の制作環境は完全にMacベースだ。動作確認などのためのWindows機もあるにはあるが、メイン機MacProはもちろん、サブ機G5&サブサブ機G4(=今も現役の歴代メイン機)もMac。1992年に一念発起して、Macintosh IIciを導入して以来、パリンパリンのMac派となって現在に至っている。もっと以前から本格的なCGをやりたいと思ってはいても、当時それはまだ全く趣味の領域だったわけで、軽自動車が優に買えるほどの投資は安月給&貧乏性の身の上には覚悟が必要だったのだ。

では、朝マックならぬ初Mac以前の「先Mac期」はというと、当時のオキマリでもあったキューハチことNEC PC9801上でゴソゴソやっていた。この時代には色々「モノ」があるので、順次ご紹介したいと考えてもいる。そのキューハチから、Windows3.0のあまりの重さもあってMacへの転向を決意したのだが、その決心をするまでは、CGの入門書などに載っていたMacintoshと高級グラフィックソフトなどにひたすら「きっといつかは」的目線を送っていたのだった。



若い人にはナニソレ的、古い人にはイマサラ的事実だと思うが、当時はPhotoshopやIllustratorをはじめとするプロ用グラフィックソフトは、ほぼ全てMac版しか存在しなかったし、加えてハードもソフトも今よりずっと割高だったから、プロならともかく、ただのホビイストにとってのMacは大変な羨望の的だった。上位機種とソフト数本を買えば、お値段は軽く7桁の領域。パソコン界のベンツだとか「借金トッシュ」だとか呼ばれてたぐらいなのだから。

そんな時代のCGの入門書に、必須の周辺機器として三種の神器のごとく並び紹介されていたのが、ペンタブレット、プリンタ、イメージスキャナ、であったと思う。マシンとソフト以外にも色々カネのかかるものが必要なものだなあ、と思いつつもこれらをズラリと揃えた状態を夢に描いては、アコガレと貧乏性の間で揺れていた。が、このうちのイメージスキャナについては、意外に早く購入に踏み切ることになる。

先Mac期、まだキューハチを使っていた頃に、筆者は最初のイメージスキャナを購入した。それが今回のモノ、HAL LABORATORYのHWS-10Gだ。品名に「WIDE SCANNER 98」とキューハチ用であることを示すであろう番号まで入っている。購入時期ははっきりしないが、多分1990年頃。価格はヒト桁マン円前半だったように思う。
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono02.html >

これはいわゆるハンディスキャナと呼ぶべき製品だ。家庭用のファクスに一時期よく見られたものと同じで、スキャン、つまり原稿をなめる動作は人間が手で行うのだ。スキャナの下面には、読み取りセンサの細長い窓に並んでゴムのローラが付いており、これがスキャン方向の読み取り周期を制御しているのだろう。ローラが滑らなければ多少の速度ムラがあっても大丈夫だが、ローラが滑ってしまえば画像はゆがんでしまう。コピーの途中で原稿を動かしてしまった場合と同じと考えれば良い。

また、ハンディスキャナを使ったことがある人なら分ると思うが、原稿がスキャナ自体に隠れて見えない状態で、正しい範囲をしかも傾かずにスキャンする、のは口で言うほど簡単ではない。ローラを滑らさないようにするよりも、この範囲と傾きの問題が痛かった。

スキャンできる幅はハガキほど。スキャンできるのは、モノクロかグレースケール画像のみ。今の目で見るとこの仕様が問題のようにも思えるが、仮に大サイズのフルカラー画像を高解像度でスキャンできたとしても、それを扱ったり加工したりできるメモリもアプリも、当時の筆者及び同時期の多くのキューハチユーザの手元にはなかったのである。ともあれ、何回かは手描きの小さなペン画をスキャン&加工して遊んではみたものの、やはりこれではイカンなあと思ったものである。

脱線するが、この頃に筆者が影響を受けていたのが戸田ツトム氏著の「森の書物」だった。Freehand1.0、QuarkXPress2.0J、LaserwriterII NTX-J、Linotronic300を使って作られ、1989年に出版されたDTPの元祖的な本である。筆者は、キューハチ上のワープロの貧弱な描画機能を使ってこの本の意匠を真似てみたり、スキャンした画像を非力なりに並べてみたり、同時期のDTP本の流行を追って文字に長体をかけてみたりしたものだ(この本について、本邦DTP始祖のお一人と言うべき某S編集長は、あまり好意的ではなかった気がしますが)。

時代は下って1992年。とうとうMacを購入し、本格的なCG制作へ向けての長い道を歩み始めた筆者なのだが、ここでも貧乏性のために、当時まだまだ高かったフラットベッド型スキャナの購入に二の足を踏んでしまう。あまり多くはない選択肢から、割安な小型スキャナとして買ったのが今回のもう一つのモノ、ニスカ株式会社のNiscan Spectraだった。多分1992年か1993年、ヒト桁マン円中盤以下ぐらいじゃなかったかと思う。今度はカラー対応だし、同じ頃のフラットベッド型は5桁後半から6桁のお値段じゃないと買えなかったので、相当な割安感である。
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono02.html >

そのNiscan Spectra、別掲の写真画像を見てもらうしかないのだが、ナニ型スキャナと呼べばいいのか分らない。上向きに置いた原稿の上にスキャナを乗せ、コンピュータ上でスキャン開始の操作をすると、下向きのセンサヘッドが移動してスキャンを行う仕組みなのだ。要するに、通常のフラットベッドスキャナを、えいやっと上下裏返しにしたような機構なのである。

このスキャナでは、ハンディスキャナで味わった欠点はキチンと克服できていた。原稿を見ながらスキャン位置を修正できるので、範囲や傾きは正しく調整できたのだ。スキャン可能範囲が相変わらずハガキより少し大きい程度なことを除けば、ひとまずスキャナとはどういうものか、ということは学習できた気がする。直感的に使えるこのタイプのスキャナがなぜ今生き残っていないのか、少し不思議に思えるぐらいだ。

ここまでを読むと、では現在筆者の制作環境にはどんなに立派なスキャナがあるのかと思われるかもしれないが、メイン、サブ、サブサブ機まで遡ってもスキャナは接続されていない。その更にもう一世代前、1995年に購入し2000年までメイン機として働いてくれたPower Macintosh 8500/120に、Apple Color OneScanner 1200/30が接続されている。これが筆者の現役スキャナ。もちろん古くはあるがまだ「モノ」ではない。

このColor OneScannerはようやく「正しい」フラットベッドスキャナで、8500と同じく7色リンゴマーク輝くApple純正品だ(中身は多分OEMな気がするが)。インタフェースがSCSIな点はさすがに今見ると古色ゆかしいのだが、それゆえ8500共々年に数回程度起動しては、なにがしかの原稿をスキャンさせている。(そのエスシーエスアイって何? と言っている若人諸君は今すぐWikipediaへゴー、読み方もチェックだ)

つまり、そうなのだ。今にして思えば、筆者の制作分野や方法や作風において、イメージスキャナはそもそも大して登場機会のない、優先順位のかなり低い周辺機器だったのである。ああそれなのにそれなのに、何だかんだで3機種も渡り歩くことになるとは。げに恐ろしきは、貧乏性とCG入門書のスリコミなのである。

【Rey.Hori/イラストレータ】reyhori@yk.rim.or.jp
サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori >

文中で触れたCG入門書、正確にはムックだったと記憶していますが、現在行方不明。誰かに貸してそのままになった可能性が大きいのですが、古本屋で見かけたら多分買う、というぐらい今もう一度見たい。たしか裏表紙が「世界最速のパソコン」を謳ったMacintosh IIfxの全面広告。……単なる懐古趣味ですけど(この原稿の最後の推敲中にAppleから新ラインナップ発表。小さいキーボードがGOOD。クロックの数値だけなら、まだウチのメイン機が最速だいっ。←負け惜しみ。ベンチマークでは3.2GHz/8コアより5割ほど速いらしい、当然)。3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にお仕事をお請けしてます。