気になるデザイン[23]活版印刷はまだまだ現役!/津田淳子

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唐突ですが、みなさんの名刺はどんな印刷でつくってますか? オフセット印刷やオンデマンド印刷、またはご自分のプリンタでつくっている方も多いでしょうね。私がいただく名刺を見ても、それらの印刷方式のものが比較的多くあります。

でもここ2年程、かなりの比率で多くなっている印刷方式の名刺がある。それは「活版印刷」だ。デザイナーとの名刺交換が多い人は、同じように感じているのではなかろうか。

という私も、実は名刺を活版印刷で刷ってもらっているのですが(ちなみに銀座にある「中村活字」というところで刷ってもらってます)、デザイナーや印刷・加工関連の方々にお渡しすると、「おっ、活版ですか」、なーんていう話題から入れたりして、かなり活躍してくれています。

中村活字
< http://www.nakamura-katsuji.com/ >



活版印刷は、日本全国で衰退の一途をたどっているのは間違いないのですが、数年前までは昔ながらの名刺屋さんがまだ使っていたという場合や、こだわりを持って欧文活字を中心に刷られている印刷所、まだ少し仕事があるからと規模は縮小しても活版を残していた印刷所、くらいな感じで(聞いた話だと、京都の方ではかなり活発に印刷している活版印刷所があるそうですが)、仕事もさほど多くないということだった。

ところが、2〜3年前から、活版の最盛期を知らない若い世代を中心に、「活版印刷ってステキ!」といって自分の名刺や、小さなカード類などの印刷に、敢えて活版印刷を選ぶ人たちが徐々にでてきた。確かに活版って、独特の風合いがありますよね。無骨で素朴な感じ。私も、たしかに活版印刷されたものは好きです。

とはいっても、どこにお願いすればどんな(印刷サイズや活字組版もできるのか、データから凸版を起こして刷ることならできるのか、など)活版印刷ができるかがよくわからなかったので、今から2年程前、私が編集している『デザインのひきだし』2号で、活版印刷の特集をした。

デザインのひきだし2 ※すみません。完売してしまいました……。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4766118030/dgcrcom-22/ >

この特集をしたとき、一過性のブームで終わらないといいなと思ったものだ。活版印刷をしている印刷会社は、この取材をさせていただいたときは、まださほど仕事が増えた、というところまでは行っておらず、活字鋳造所が閉鎖になってしまったり、母型屋さんが廃業したりと、暗い話題ばかりで、このまま仕事が減り続ければ数年で日本の活版印刷はなくなってしまうのでは、と思ったからだ。

あれから2年たち、そのとき取材におつきあいいただいた活版印刷会社の方々には、今でもいろいろと良くしていただいてるのですが、仕事がかなり増えたというお話を耳にして、非常に嬉しく思っている。やはり仕事として成り立たなければ、国が保護してくれるなんてことがない限り、活版印刷は廃れてしまうだろう。だって、生活できないんじゃ、しょうがないもの……。

でも、現場の方々の努力もあり、活版印刷のワークショップがいろいろと開かれたり、企画展があったりと、この盛り上がりは一瞬にして消えてしまうブームとは、ちょっと違う流れになって来たんじゃないかな、と感じている。

さすがに、書籍一冊を活版で組むというのは、かなり特別な場合でないと、もう物理的にも難しいだろうが、名刺やハガキ、ペラものなどはかなり大きなサイズまで活版印刷できる。デザイナーは印刷物を制作する際の、選択肢のひとつと思って、これからもどんどん活版印刷を使ってほしいなぁ。

そうそう、そんな活版印刷ですが、今週金曜日の22:54から23:00まで放送の「匠の肖像」(テレビ東京系列局)では、幣誌特集にも登場していただいて、私の年賀状も印刷してもらった三木弘志さん(活版整版家)が登場します。ぜひご覧くださいませ。私もわくわくしております。

匠の肖像
< http://www.tv-tokyo.co.jp/takumi/this/index.html >

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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< http://www.graphicsha.co.jp/ >