グラフィック薄氷大魔王[174]WACOM intuos4 発表
── 吉井 宏 ──

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WACOM Intuos4 Special Edition PTK-640/K1先週、タブレットの新製品「intuos4」発表パーティに行ってきました。WACOM特設サイトのコメントのため、しばらく前から使ってました。感想は「intuos 4 クリエイターズインタビュー」に提供したコメントのとおりですが、かなり良いです。初代intuosが出た11年前、もうこれ以上タブレットに進化の余地はないだろうと思ったものですが、予想を越えてどんどん使いやすくなっていきます。

・WACOM intuos4 製品情報
< http://intuos.jp
>
・intuos4 クリエイターズインタビュー
< http://tablet.wacom.co.jp/store/link/?lid=1407
>



●超軽いON加重、筆圧レベル2048段階

性能的に一番のポイントとなるのが、ON加重(どれだけ力をかけるとペンのスイッチがオンになるか)が、intuos3の10グラムに対してintuos4では1グラム!という点。ドライバで最低値に設定した場合、ホントに描画面にペン先がかすかに触れただけで描けます。intuos3より軽い描き味がはっきりわかります。筆圧レベルが倍の2048段階になり、軽い筆圧で描いてるときの繊細さは明らかに段違いです(Windowsでは、2048段階を使うには個別の設定が必要だそうです)。

これが何を意味するかというと、ペンの入り・抜きのブラシサイズや濃度の滑らかな変化をどうにか表現できていたintuos3に対して、intuos4ではペンの入り・抜きそのものに微妙な表現を加えられる。次元が一つ上がった感じです。さっそくやってるのは、鉛筆を長めに持ってスケッチするように、軽くかすらせるように描くこと。それは今までのタブレットではほとんど不可能だったのです。

●ファンクションキーやホイール

ボタンは片側にしかありませんが、タブレットを180度回すことで左右どちらにもできる、X軸対称のデザインになってます。タブレットの端をつかんで書く場合、ファンクションキーやホイールを親指で押しやすくなったので、イスに深々と座ったままリラックスして作業できます。4つ並んだボタンは高さに差がつけてあり、どのボタンに触れているか感触だけでわかるようになったのも賢いです。

ホイールは中央のボタンを押して割り当て機能を切り替えられ、ブラシサイズ変更や画面拡大縮小、Photoshop CS4の画面回転にも対応してます。まあ、僕の場合、もともとファンクションキーは使わないし、3Dソフト等も含めてキーボードショートカットのほうが便利なことが多いですけどね。僕は全体にカッティングマットを載せちゃうのでボタン等は見えません。ただし、延々ドローイングするときなど、キーボードなしで使えるように慣れたいと思います。

ファンクションキーには、割り当てた機能が有機ELで表示できます。どのボタンに何を割り当てたか忘れちゃうのが、今までボタンを使わなかった理由の一つでもあるので、これは便利です。大賀葉子さん情報で、この表示は顔文字もOK、ってことでやってみました。文章も2行まで入ります。

・有機ELの表示
< http://www.yoshii.com/dgcr/yoshii_intuos4-3 >

●タブレット上の拡大ツール、プレシジョンモード

ファンクションキーに割り当てられる「プレシジョンモード」は、ボタンを押している間だけタブレットの割り当て面積を拡大(縮小かな?)してくれる機能。小さいサイズのタブレットでは、画面上の小さい部分を描くのは物理的にむずかしいわけだけど、プレジションモードでは画面の一部分にタブレットの描画面全部を割り当ててくれる。

たとえば、キャラクター全体を表示して描いていて、目の部分だけはキッチリ描きたい場合、プレシジョンモードなら画面を拡大しないで詳細な描写が可能だ。小さいタブレットが一時的に巨大タブレットに変身しちゃう。要するに、「大きなタブレットは小さなタブレットを兼ねられるが、その逆はない」ってのがひっくり返ってしまうわけです。普段はファンクションキーは使わないかもしれないけど、これだけは使いたい。

●USBコネクタ、ペン

USBは直づけでなくミニサイズのコネクタになってます。タブレットの向きや好みで、手前と奥の2つのコネクタを選べます。

標準のグリップペンはちょっと短くなりました。苦手だったintuos3の標準ペンよりも、太い部分が前方に移動しているため、違和感が少なくなった。極太のグリップも付属。これ、けっこう描きやすいです。僕的には、クラシックペンもちゃんと用意されてるのがありがたいです。ペンスタンドには芯をストックしておけます。

・ペン
< http://www.yoshii.com/dgcr/yoshii_intuos4-2 >

○ちょっと残念な点をいくつか。

描画面は、従来はオプションだったマットタイプのものに替えられており、適度に摩擦があって描きやすい。ということになってるのだが、以前のツルツルよりマシなんだろうけど、これが描きやすい人がいるとは僕にはまったく思えない。黒板を爪で引っ掻くような不快な感触だ。フェルト芯も乾いた感触で気持ち悪い。新しいゴムの芯はピンポイント的には使えそうだけど、グニグニうねる粘っこい感触が僕にはダメ。標準の描画面でタブレットを使ってツルツルが苦手な人は、厚紙でもコピー用紙でもカッティングマットでもいいから、何か敷いて試してみてくださいよ〜。書き味ぜんぜんちがうんで。

ファンクションキー等。左手はなるべく動かしたくないのに、タブレット左端の上から下までに散らばったボタンを操作するのはツライ。親指が動く数センチの範囲に全部のボタンやホイールがあると使いやすいのにな。4つのボタンは5ミリ間隔くらいでも十分使えるはず。

あと、黒で揃えたのは新製品として鮮烈な印象があって悪くないんだけど、やはり汚れや指紋が目立ってしまう。特にペンのラバーグリップには細かいホコリや汚れがくっついてしまう。ハイテクのデジタル世界で制作ったって、手元を見るとホコリまみれのペンってのは興ざめ。

……以上、まあ、これらは些細な部分にすぎなくて、工夫で対処できるものなのでご安心下さい。っていうか、道具は自分好みにカスタマイズして使いこなすものですし。

海津さんとYOUCHANさんのレビューもありますのでそちらも見てね。
・海津ヨシノリさんのレビュー
< http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/03/27/intuos4/index.html
>
・YOUCHANさんのレビュー
< http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0326/intuos.htm
>

ところで発表パーティ、2004年9月のintuos3発表のときにも招かれましたが、メーカー主催のクリエイター参加パーティとしては、僕の中ではダントツベスト1で、今回も楽しみにしてました。やはりすごくよかったです。参加クリエイターにネーム入りのペンが配られるという趣向もありました。ネックストラップでぶらさげて会場のあちこちのintuos4で描いてデモしてね、ってもの。

・ネーム入りのペン
< http://www.yoshii.com/dgcr/yoshii_intuos4-4 >

MacWorldなどのイベントがほぼなくなってしまい、知り合いのクリエイター大集合的なパーティが滅多になく、こういうイベントが年に一度くらいあればなあと思いました。ところで、例のプロ向けDJ機器「WACOM nextbeat」は残念ながら展示されてませんでした〜。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

各社から18.4インチ液晶の大型ノートパソコンが続々登場。インストール疲れの残る今はまったく買う気がしないけど、大型画面とテンキー付きキーボードには惹かれるなあ。