気になるデザイン[25]手描き、いいなぁ。
── 津田淳子 ──

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私が勤めている出版社は九段下にある。ここ一か月程は、靖国神社や千鳥ヶ淵などのお花見客や、近隣の私学小中高の入試、卒業式、入学式、日本武道館で各大学が行う卒業式、入学式と、怒濤のごとく人が集まる地域と化していて、日々の昼食をとる店もぜんぜん入れない始末でした。とほほ。

そこを拠点として、日々、いろいろなところに取材に伺っているわけですが、今は次号の『デザインのひきだし』に掲載する特集のため、最後の追い込みで、製本会社に毎日押し掛けている。

昨日は、同じ都営新宿線の「篠崎」という駅にある製本会社へ伺ったのだが、その駅で降りて、すっごく気になるポスターを見かけた。それがこれ。




都内の地下鉄駅で、まさか手描きのポスターに出会うとは! それも朱の筆書き。駅員さんがつくった注意書きのポスターなどで、手描きのものに出会うことは稀にあるけれど、23区内の駅構内にお店が出すポスターとしては、私は見たことがなかった。

これを見たら、無性に精米したてのお米を買いたくなってしまった。ポスターの下の方に、これまた朱書きで「安心安全なお米をどうぞ」と書かれているが、なんとなくちゃんと一人一人、頼まれた分だけを精米して売ってくれそうで、まさに安心安全なお米を買えそうな気がする(あくまで気がするだけで、実際にはわかりません)。

隣にある東京オリンピック誘致のポスターが別にどうの、というわけではなく、ただこういうスマートなビジュアルが印刷されたポスターが大半の中で、一枚ずつ手描きされたポスターというのは、なんとも訴求力がある(見回したところ他に貼っていなかったので、もしかしたら本当にこれ一枚なのかもしれないなぁ)。

それに、なんとも訴えたいことが明確なことか。精米したてのお米が、大特売。それも4月24日と25日に。たぶん、お店の人が自ら書いたものなんでしょうが、「どうしてポスターをつくるのか」ということが、はっきりわかっているので、こういうわかりやすく訴えられるものになるんでしょうね。すばらしい。

他にも最近、気になったものとしては、これも次号の『デザインのひきだし』に掲載予定の覆面座談会中に出てきたものなのだが、東京は自由が丘にある出版社、ミシマ社の手描きのしおり。

ミシマ社
< http://www.mishimasha.com/
>

手描きのしおりなどが載っているブログ
< http://takamorry.com/article/106168255.html
>

しおり以外にも、読者ハガキや刊行案内などもすべて手描き。印刷してあるものであっても、手描きのものって、なんかいいよなぁ。自分が目にするものはどうしても活字というかフォントを使った文字や、ピシッと乱れのないビジュアルが多いので、たまにこういうものがあると、どうも反応してしまう。

で、これを見て、私もちょっとやってみようと思った。何をって? ふふふ、それは来週校了の次号『デザインのひきだし』を待て!(って、校了できるかすら危うい今、こんなこと言ってしまって、本当にできるのか!?)

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp

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< http://www.graphicsha.co.jp/
>

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デザインアイデア&ヒント
佐々木 剛士
グラフィック社 2009-04

by G-Tools , 2009/04/21