気になるデザイン[27]心臓に悪いニュース
── 津田淳子 ──

投稿:  著者:


先週、編集者にとっては、他人事でも目にするだけでドキッとするようなニュースがあった。

本日発売の「モーニング」26号掲載の『バガボンド』につきまして、お詫びとお知らせ。
< http://morningmanga.com/news/118
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バガボンド 30 (モーニングKC)本日5月28日(木)発売の「モーニング」26号にて掲載いたしました『バガボンド』#270におきまして、編集部のミスにより一部に、乱丁(ページの入れ替わり)のあるものが発生いたしました。
(中略)
ご購入された「モーニング」26号が乱丁にあたるかどうかを確認するためには、冒頭に掲載されております『バガボンド』#270のカラーページの最初の部分をご覧ください。乱丁の場合、『バガボンド』#270のカラーページの順序が誤っており、本来の順序から1ページ目と4ページ目が入れ替わっています。
(後略)
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後になってみると「どうしてこんな間違いをしてしまったんだろう……」というようなことを、校了寸前に見落としてしまうことがある。これは何人の目を通ってきても、どうしても発見できないことがある、お恥ずかしいことながら。

なのでこのニュースを目にしたとき、実際にはどんな事情があるのかわからないが、担当編集者や編集責任者の方々は、どれだけ絶望的な気分になっただろうと、自分の身に起こったことでもないのに、なんだかどよーんと暗い気持ちになってしまった。

もちろん、間違ったページ順で読んでしまった読者や、自分の意図と全然違う流れになって掲載された著者は、よりショックだったとは思うが、どうしても自分が同じような職業についているので、そちらの気持ちを感じてしまう。

で、まあそんなことはただの個人的な感想に過ぎないのだが、このニュースで別の意味で気になったのが「乱丁」という言葉の使い方。本づくりに携わっている方なら、かなり気になった方が多いのではなかろうか。

図解 印刷技術用語辞典 CDーROM版「乱丁」とは、本の中の折丁(大きな紙に16ページや32ページなど複数ページを刷り、それを折ったもの)の順番が乱れてしまっているもののことだと思ってきた。もしかして勘違いだった? と思って、手元にある『図解 印刷技術用語辞典 第2版』(大日本印刷株式会社編/日刊工業新聞社)で調べてみても、そのように書いてある。

今回の間違いは、1ページ目と4ページ目が入れ替わってしまっているということだから、折丁の順番が乱れたのではなく、面付け(大体の場合、本文ページは大きな紙に何ページか分を一緒に印刷して、それを折って仕上げるのだが、折った時にページが順番通りに並ぶように、ページを配置すること)のときに間違ったのではないのだろうか。いや、でも「編集部のミスにより」と書いてあるから、面付け作業に渡す際に、1ページ目と4ページ目の原稿を逆に渡してしまったのだろうか。うむ。

どういうことがあってのミスなのかはわからないが、「乱丁」というと、製本時のミスと思ってしまうので、こうしてニュースになると、担当している製本会社もかわいそうな気がするなぁ。一般読者にもわかりやすいように、ということで、厳密には「乱丁」ではないけれど、出版社側があえて「乱丁」という言葉をつかったのかしら。

でもって、そんなニュースの感想を言っている場合じゃなく、私の身の上にも(ミスということとは違うのだが)それどころじゃないほどの重要な問題が起こっていた。私が編集した本の造本(本の仕様)に問題があるということで、この数日はその対処で心臓ドキドキしっぱなしだったのだ。

詳しいことはなんなので特に書かないが(気になる人は直接お問い合わせ下さい・苦笑)、結局は改善策が見つかり、ことなきを得た。本を校了したときは開放感でうれしいけれど、本ができあがってくると、完成の嬉しさとともに何か間違いがあったらどうしようといういくばくかの不安が襲ってくる。そして問題が起こってしまったときの気持ちったら! いやぁ、なんともいえないタイミングなこともあって、モーニングのニュースは心臓に悪かったです。とほほ……。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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