[2677] YouTubeで Wiiリモコン

投稿:  著者:  読了時間:28分(本文:約13,800文字)


<現役のBCLマン達はどう対策していますか>

■つはモノどもがユメのあと[07]
 mono06:10kHz直読最終章──「YAESU FRG-7」
 Rey.Hori

■ショート・ストーリーのKUNI[62]
 家電
 ヤマシタクニコ

■デジクリトーク
 一歩進んだ情報収集[1]YouTubeで Wiiリモコン
 馬場幹彦


■つはモノどもがユメのあと[07]
mono06:10kHz直読最終章──「YAESU FRG-7」

Rey.Hori
< http://bn.dgcr.com/archives/20090716140300.html >
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前々回から延々と続くラジオ話である。もう少々お付き合い願いたい。時は1976年頃。周波数直読機能のない自分のラジオで、何とか10kHz直読による待ち受け受信ができるようになったところから。

例えば最近のコンピュータやデジタル家電製品の、単位時間当りの進歩の幅とは比べるべくもないが、大ブームの渦中にあってBCL用ラジオも徐々に進化をしており、筆者らBCL少年は毎月の専門誌のレビュー記事を見ては電気店や専門店で実際に触れてみたりし、いっぱしの技術評論などブチ上げたりしていた。

前回触れたが、ブームの中心を牽引していたのはBCLラジオであり、これらはマニア性の強い特殊なラジオとは言え、家電メーカが作って一般の電気店で売られていた。これに対して、無線通信のプロが無線機と一緒に使うプロ用ラジオというものがあり、通信型受信機と呼んで区別していた。こちらは無線機メーカが作っていて、専門店でしか見ることができない。

前回珍しくほとんど脱線しなかったのに、ここで脱線。筆者は大阪の辺境の生まれ育ちなので、当時専門店と言えば日本橋まで出掛けることになる。日本橋とはもちろん「東京都中央区ニホンバシ」ではなく“でんでんタウン”こと「大阪市浪速区ニッポンバシ」である(でんでんタウン、ってまだ言うんやろか。高校の頃は完全にギャグにしてたけど)。

当時その日本橋しか知らぬ身としては、同時期の秋葉原もきっと同じようにアツかったんだろうな、ラジオ会館とかちょっと見てみたかったな、などと今にして思う。関東生まれの読者諸氏は、以下文中の「日本橋」を「秋葉原」に読み替えて理解に努めてもらえれば幸いである。

ともあれ、電気電子専門店街である日本橋へ、親に連れられてではなく、一人或は中坊仲間で初めて足を踏み入れた動機が、筆者の場合にはBCL=「雑誌で見たあの通信型受信機を見に行くため」だったのだ。あとで述べる通り、この行動が筆者のその後に大きな影響を与えることになる。

脱線おわり。ラジオとは言えかなり高性能なNational Cougar 118Dを使っていた筆者なので、公平に見てその性能で足りないわけはないのだが、やはり新しい製品は気になる。今の筆者から当時の自分に言葉を送ることができるなら、お前ラジオよりアンテナに金かけなあかんのちゃうか、ではあるのだけど。

そこへまたしても(Sony Skysensor 5900ほどではないにしても)なかなかショッキングな製品が発表される。しかも、それはNational製でもSony製でもない。アコガレの通信型受信機だったのだ。

上に書いたように、通信型受信機とはプロ用の機材であり、感度や安定性においてラジオとは一線を画する物とされていた。当然お値段方面もかなり明瞭に一線を画しているわけで、当時でも普通に6桁、うんとお安いもので5桁のギリギリといったところ。BCL用ラジオが2万円台から、高い機種でも4万円台ぐらいだったのと比べるとトクベツなお値段だったわけだ。

そうした状況のところへ、なんと5万円台の通信型受信機が現れたのである。送り出したのは通信機の老舗、八重洲無線株式会社(現・株式会社バーテックススタンダード。以下八重洲)、あの夢のFR-101D(前回参照ね)のメーカということは製品に間違いはない。当然、中〜短波帯全域が受信でき、10kHz直読である。お値段的にも、例によってお年玉丸ごと+お小遣い前借りで、ギリ何とかなりそう。

というわけで、今回のモノは日本橋でゲットしたその格安の、でもパチモンなどでは決してない通信型受信機、八重洲のFRG-7である。購入時期はちょっと記憶が曖昧だが、1976年か77年の正月明け頃だったと思う(なにせお年玉が原資なので)。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono06.html >
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono06.html#p2 >

同時期のライバル機としては、トリオのR-300やドレークSSR-1などがあったと記憶しているが、R-300は直読機能がなく(ここも記憶がオボロ。直読できたかもしれない)、SSR-1は機能性能的にはFRG-7と拮抗していたが、筆者の中では八重洲の製品ということと、いかにも通信型という面構えでFRG-7の圧勝という感じである。

チューニング方法はやや複雑だ。BANDスイッチで受信したいバンド(周波数帯)を選び、MHzツマミを回して受信したい周波数をMHz単位で選ぶ。LOCKのLEDが消えるのを確認して、メインの大きなチューニングダイアルを受信したい周波数(MHz以下の桁。kHz単位)に合わせ、最後にPRESELECTツマミを最大の感度が得られる位置に調整する。

いかに通信型と言えど、チューニングの目盛が全周波数帯で絶対的に合うわけではないので、基準があるほうが良い。周波数の判っている放送局を使っても良いのだが、ここで俄然活躍したのが前回のモノ、ミズホのSKY MARKER MX-1Dである。このマーカを使って、100kHz単位ぐらいでFRG-7のチューニングを較正(こうせい、Calibration)する。さすが通信型というか、ダイアル面の目標線(レティクル)がスライドできるので、較正したところで目標線をダイアル面の目盛に合わせれば、その周波数帯ではほぼ完璧な直読が可能になるというわけである。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono06.html#p3 >

後になって知ったのだが、この多少複雑なチューニング方式による10kHz直読の仕掛けは、あの謎の直読可能ラジオ、バーローワドレー(前回参照ね)が搭載していた回路方式(ワドレーループと呼ぶのだとか)らしい。回路云々については例によって深入りしないが、やはりあれは大したラジオだったのだろう。

先にも書いた通り、先代のラジオCougar 118Dの性能に不満があったわけではないのだが、さすがに通信機メーカの作った受信機だけあって、ダイアルを回す時の感触などは別世界というかホンモノの味わいがあった。特にメインのチューニングダイアルは、滑らか過ぎず重過ぎず適度な抵抗感があり、バックラッシュ(ある目盛に右回しに合わせた時と左回しに合わせた時とでチューニングがズレる現象。これが大きいと微調整がとてもやりづらくなる)は皆無で、止めた位置に全く素直に止まるのだ。

こうして筆者は、当時の中高生がBCLに望む究極とも言うべき受信機を手に入れたのであるが、究極であったが故か、その後2〜3年も経たずにBCLへの興味が下火になる。なんだ長々と話しておいて、単なる無駄遣いだったのか、即まとめてモノ化したのか、というとそうではないと言いたい。

筆者は、BCLを通じて読むようになった「ラジオの製作」や「初歩のラジオ」といった雑誌に載っていた電子工作に手を伸ばす。BCLを通じて出掛けるようになった日本橋へ、今度は抵抗だのコンデンサだのTTLだのといった電子工作の部品を買いに、前より頻繁に通うようになる。筆者の興味はやがてアナログ回路からデジタル回路へ移る。ロジック回路設計のほうが何となく面白かったからだ。

そして、同じ時期(年代的には、BCLブームと一部オーバラップしていたはず)日本橋のそこここに、IMSAI-8080だのPET-2001だのTK-80だのといった初めて見る製品が現れ始めた。世は今のパソコンに通じる、マイコンの時代に入って行くのである。筆者が、それまでのデジタル回路工作の延長としてコンピュータを自作したのは1978年5月のことで、これが筆者にとって最初のコンピュータである(これは明確に記憶している。モノとして紹介するかは考え中)。

それともうひとつ。BCLを通じては、受信報告書をタイプ打ちするために機械式タイプライタの操作を覚えた。すぐにタッチメソッドも身に付いた。つまり、いわゆるキーボードアレルギーに対する免疫も、BCLを通して得たものなのだ。それも、キーボードの付いたコンピュータを手に入れるよりずっとずっと前に。

極私的なこの連載の中でも、特にいささか極私的で申し訳ないが、筆者がラジオとBCLを通じて知った世界は、筆者をかなり早い時点でコンピュータに引き合わせてくれ、今に至る道に最初の光を射してくれたのである。FRG-7にはさすがに頻繁に電源を入れることはなくなったが、ベッドサイドラジオとなったCougar 118Dのすぐ横に現役の日そのままの姿で、今は静かにモノ化している。

【Rey.Hori/イラストレータ】reyhori@yk.rim.or.jp
ラジオや受信機本体は、筆者がBCLからコンピュータに興味を移した時期辺り以降、やはり急速にデジタル化が進み、今やお手軽価格のラジオでもデジタルの周波数表示は珍しくも何ともない。それだけの技術革新があったのだから、短波帯用の小さなアンテナ、なんて製品化されてないかな、もしあったらFRG-7を現役復帰させたいな、などと思っていますがマジメにリサーチしてないので何ともはや。短波帯のアンテナがデカいのは原理的なものなので、技術革新でどうにかなる類の問題じゃないかもですが、淡く期待。誰か知ってたら教えて下さい。

もっとも、仮に小さくて高性能で安価なアンテナがあったとしても、今の我が家(及び、向こう三軒両隣、どちらのお宅も)は遠距離受信の大敵であるデジタルノイズ源(コンピュータやデジタル家電機器)だらけですけどね。現役のBCLマン達はどう対策しているんだろう。前回をご覧いただいて、FR-101Dが健在です、という方からメールを頂戴しましたが、その辺最近はどうですか?

3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にお仕事をお請けしてます。サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori >

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■ショート・ストーリーのKUNI[62]
家電

ヤマシタクニコ
< http://bn.dgcr.com/archives/20090716140200.html >
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私の友人で次のように言ったものがいる。
「電化製品って、こわれかけてから本当にこわれるまでが長いのよね」
まったくその通りである。

たとえば、ふたが開かなくなった、スイッチランプが点灯しなくなった等の軽微な故障の段階で、早くもあきらめて買い換える人が世の中にはかなりの割合で存在する。「こわれかけてから本当にこわれるまでの長い期間」を電化製品とともに過ごすことを拒否した人々である。

ところが、一方では「本当に」「確実に」こわれるまでしつこく使い続ける人が、少数派ではあるが、いる。後者の場合、電化製品はしばしば20年、時には30年を優に越えて家庭に居続ける。そして人間達と密に接しているうちに彼らは電化製品としては衰退するものの、ある種の「進化」をとげ、言語を操り、思考し、意志の疎通をはかることのできる電化製品を超えた何かに変貌していくという。もちろん、言語といっても人間の耳には聞こえない「家電語」であるが。

「おいおい、たいへんだ。また奥さんの機嫌が悪いぞ」
この家に来て25年になる冷蔵庫が言った。人間でいえば75歳くらいだ。時々異常に冷えて卵が凍ったりするが、「まだだいじょうぶ」と言われてはや10年。購入後7年目で冷凍庫のドアがはずれて落下するということもあったが、はずれたドアは割と簡単にはめなおせることがわかり、その後何回かはずれてもまったく意に介されていない。

「なんだって、またかい。今回は何が原因なんだ」
奥さんが実家から持ってきたので、電気店を出てから通算32年になる電子レンジがため息まじりに言う。人間で言えば90歳近いだろう。「あたため」しかできない。白かったプラスティック部分が黄色になっているし、あたためムラもないとはいえないが「もう2、3年使えるわ」と言われ続けて15年。

「何が原因ってことはないんだ。しいていえば最近暑いから。熱帯夜が一週間続いてるし」購入してから21年。そのとき購入した店も、もはや倒産したという掃除機が言う。ホースが時々ぽとんと抜ける。ON、OFFのスイッチが時々効かなくなる。それどころか時々、本体接合部からぱくっと勝手にふたつに分かれてホコリが噴出する。それでも「まだ使える」と言われて15年。壊れてからのほうが長い。人間で言えば78歳。なまじピンク色なのが悲しい。

「そういう、特に何ということはないのに、機嫌が悪いってときが、大変なんらよ。何がきっかけになって、ハツバクするか、わからだいからな」購入後18年の全自動洗濯機が、リビングに隣接した洗濯機置き場から言う。購入4年で時々脱水の途中でとまるようになったが「まあいつもじゃないし」と言われてはや14年。途中で止まる確率は徐々に高まり、いまでは5回に3回は途中で止まるが「やりなおせばいいわよ」と言う奥さんのもと、居続けている。言葉もやや不自由だ。洗濯槽にかびがたまっているからかもしれない。人間でいえば72歳。

「ここはなんとかみんなで団結して、危機回避しなければ。奥さんのことも心配だが、やけを起こして電化製品衝動買い換えというのも世間ではあることだからな。気を抜くな」
冷蔵庫と同時購入のエアコンが言う。いまでもちゃんと冷えるが、音がかなりやかましい。慣れているので気づかないが、エアコンを止めると急に静かになり、テレビがよく聞こえるようになるのでびっくりする。リモコンがすっかりでたらめになっていて、奥さんはほとんど「カンで」使っている。人間で言えば73歳。

「うん。それにおれたち、奥さんには恩義があるし、なあ」
部屋のコーナーからそう言ったのは、購入して11年になる29型のブラウン管テレビだ。バーゲン品だったせいかどうか、まだ11年なのに今やどんな場面も黒と緑と黄色になってしまう「三色テレビ」だ。時々「二色」にもなる。でも、「これでもだいたいわかるから」と奥さんが存続を決めた。最近はごくたまに、見てる最中に砂嵐が起きる。人間で言えば52歳。

……とまあ、そういう家電語の会話が交わされている間も、奥さんはバタッ!と戸棚を閉めたり何かの紙をくしゃくしゃっ! と丸めたりして機嫌が悪いことを誇示しているようである。古新聞やチラシの整理もし始める。ビックカメラのチラシを広げたりされると家電たちはいっせいにどきっ! とする。

「もしもし……私。今、いい?」
奥さんは携帯でだれかと話し始める。携帯は購入してまだ1年。家電語を発しない。ただの携帯だ。人間でいえば……いや、まだ人間になっていない人間のような状態だ。
「……ううん、元気よ。でも、元気じゃないの。なんかさあ」
奥さんはそっと涙ぐむ。家電たちはぎょっとする。
「どうしたんだろ!」
「いったい何が!」
「心配だ!」
「黙って聞いてろよ!」

「……なんだかさびしいんだよねー。おかしいでしょ……え? ううん、最近は浮気はしていないみたいだよ。たぶん……うん……もう飽きたんじゃないかなあ。いい歳だし」
家電たちはしーんとして聞き耳を立てている(もともと人間からみればしーんとしているのだが)。
「うん、だいじょうぶ、ごめんね。ちょっとぐちってみたかっただけ」
「……ああ、うちの近所にも咲いてるよ。クチナシでしょ……いい香りだよね。うん、うん、だいじょうぶ。最近気分が不安定でさ。おかしいよね。歳のせいかな」
奥さんは電話を終える。それから、遅いなあと言った顔で時計を見る。あきらめて、寝支度にとりかかる。奥さんの連れ合いは奥さんが眠りについてしばらくしてから帰宅し、翌朝は普通に出かけていった。奥さんとの会話はほとんどない。

「おい、今日の奥さんはどうだ」
洗濯機が心配そうに言う。
「やっぱり暗いよ。一触即発とみた」テレビが言う。
「よし、今日一日、われわれががんばって、奥さんの機嫌が少しでもなおるようにするんだ」
エアコンの言葉にみんながうなずく。

一人になって奥さんはまず冷蔵庫を開けた。
「冷蔵庫、だいじょうぶか! 氷はできてるだろうな!」掃除機が言う。
「だ、だいじょうぶさ!」
奥さんはコップに氷を入れ、水を注いでおいしそうに飲んだ。
「よかった」エアコンが胸をなで下ろす。
暑いので、次に奥さんは扇風機のスイッチを入れた。

忘れていたが、扇風機も購入24年、人間でいえば83歳くらいだ(換算年齢の算出の仕方は家電の種類によって異なる)。もうよぼよぼでずいぶん前から首は振れなくなっているし「強」「中」「弱」の区別が判然としない。

家電たちの心配そうな視線が扇風機に集まる。扇風機は必死でモーターを回した。なんとか風を送ることができた。奥さんは気持ちよさそうな顔をした。
「よし、それでいいぞ、扇風機」

みんなが安心しかけとき、ぱたっと風がとまった。あーっ! とみんなが声を上げたとき、また、ぱらぱらぱら……と動き出した。ほっとすると、また止まりそうになる。あーっ! また、ぱらぱらぱら……ぱら…………
動かなくなった。

「やっぱり無理ね」
奥さんはつぶやいてエアコンを入れる。エアコンに緊張が走る。ご、ご、ごごごごごおおお〜〜〜!
「いつもより音が大きいわねえ。これもだめかしら」
「エアコン、がんばりすぎだ!」
「自然体でいけよ」
「オーライ、オーライ」

だんだん調子が出てきた。部屋がどんどん涼しくなる。騒音もそれなりに落ち着いてくる。奥さんはほほえみを浮かべる。機嫌がよくなってきたようだ。家電たちはうれしくなる。奥さんがテレビのリモコンを手にした。

「今度はおまえだ、テレビ!」「きれいに映すんだぞ!」「砂嵐厳禁だ!」
テレビは必死でがんばって三色を保ち、それどころか、かすかに赤のような色、というか赤のようでもあり黄色のようでもあるがどっちかといえば赤、というような色を出すことに成功した。
「やればできるじゃないかー!」
「おまえを見直したぜ!」
がんばりすぎて軽く貧血を起こしながらも、みんなにほめられてテレビはすっかりご機嫌だ。でも、肝心の奥さんはほとんど気づいていない。それどころか若い女性モデルが出てきてダイエット食品の宣伝をしているのを見て
「どうせ私なんかだめね」
また暗くなってしまった。

奥さんはテレビを消し、掃除機を持ち出した。本体がぱくんと分かれないようチェックをした後で、がーがーと部屋を掃除し始める。
「あーっ! 前方に不審な物体発見!」
掃除機が悲壮な声を出す。
「どうした、なんだ、何があるんだ!」
「レ、レシートだ」
「レシートがどうした!」
「ここここ、高級レストラン『M』のレシート。2人分のディナーだ! ひ、日付はこないだ『残業で遅くなってねー』とだんなが言ってた、あ、あの日」
「なな、なんだって!」
「やばいだろ、それ!」
「吸い込め! 早く! 奥さんが見つける前に!」
「わわ、わかった!」

掃除機はまだノズルから30センチ以上も離れているそのレシートをありったけの力をこめてきゅるきゅるきゅる! と吸い込んだ。レシートは無事に掃除機の中に収まった。
「よくやった、掃除機!」
「おまえにそんなパワーがあったとは!」
「感動した!」
苦しさに返事もできないでいる掃除機に家電たちの賞賛の拍手が送られる。熱気に包まれるリビングルーム。といっても、当の奥さんは何も感じていなかったが。

「ふーっ」
奥さんは掃除を終え、掃除機をしまうと、ふと目についた体重計を手にした。2年前に買ったデジタル体重計。まだ家電語は使えないはずだ。奥さんはそうっとそれに乗った。3日ぶりだ。数字が表示される。
53キロ。
「きゃーっ」
奥さんは飛び上がって喜んだ。リビング中をスキップしてまわった。その晩、ひさしぶりに早く帰った夫に、奥さんは子どものような笑顔で話しかけた。
「体重が減ったのよ! 5キロもいっぺんに!」
「え、そうかい? ふーん」
「やっぱりこないだから間食減らしたのがきいたのかしらねえ。やったわ〜。きゃー、うれし〜」
「見かけはあまり変わってないようだけど、いや、なんでもない」

その晩、リビングに家電語が行き交う。
「おい、どう思う?」
「体重計のことかい?」
「おかしいだろ、いっぺんに5キロも」
「故障だよ、故障。若いのにかわいそうなやつだ。ま、最近のデジタルなやつって案外もろいんだよな。ふん」
「奥さんのご機嫌はいちおうなおったけど、おれとしてはなんか気に入らない」
「ただの故障があんなに受けるなんてな。フェアじゃない」
「でもさ、もしかして、あれが体重計がわざとやったことだとしたら?」
「ええっ」
「あるかな、そんなこと」
「わからないぜ、案外そういう人情の機微が分るやつかもしれないじゃないか」
「体重計が?」
「違うと思うなあ」
「おまえたち、嫉妬してない?」
「そそ、そんなことないよ」
「ああ、ないとも」
「嫉妬なんか」

ぶつぶつと、リビングルームの会話は続く。ちなみに「家電」とはこの場合「家族の一員となった電化製品」をさしている。そして、電化製品がこのような「家電」へと変貌するか否かは、別に持ち主が愛情を持って接したとかとは関係なく、ただずるずると、なりゆきであることが多い。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
< http://midtan.net/ >

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■デジクリトーク
一歩進んだ情報収集[1]YouTubeで Wiiリモコン

馬場幹彦
< http://bn.dgcr.com/archives/20090716140100.html >
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こんにちは。デジタル基盤を利用したメディアのあり方、あたりでうろうろしている馬場といいます。ひょんなことから登場することになりました。
文章は苦手なほうなので、少々見づらいのは我慢していただくとして……^^;

皆さんは新しいもの、新しい事柄を調べるには何を使われますか? Google? 私はこういったところから情報を探したりしています。英語圏からの情報が多いのですが、映像なのでだいたい、何をしてるかぐらいはわかるんじゃないかと思います。

たとえばWiiリモコンですが、Wii remoteというのが海外での呼び方です。この動画の再生回数、評価の回数をみてもらえば、すげーって思った人の多さがわかりますね。ここから、いろんな取り組みが世界的にひろがっていきます。
< >

ちなみに、この人がつくったソフトは公開されていて、みんなここで技術を盗んでいろんなことができるようになったようです。直接質問して、教えてもらえるのもYouTubeの利点です。

この動画を見ると、VRとかARとかWii remoteとかいうところに、なにか面白いものがありそうだという推測がつきます。
で、いろいろ関連映像などをみていくと……

< >
おもしろいですよねぇー
< >
普通にみんなで使いたいです
< >
< >
こないだ、おなじようなのを作ってみました。そこそこブレが抑えられます
< >
液晶テレビをタッチパネル付きみたいに使う
< >
これ、パターンをターゲットに照射して3次元データをえたりしてます。マルチプロジェクタの投影も、簡単に実現するのがすごい。こういうの、みんなほぼ一人でやっちゃってるところがアメリカの奥深さかな
< >
ここに技術の詳細が!
< >
こういうのがやすーく作れちゃいます。これにGoogleMapsとか表示して、指でいろいろ指示をだすと宇宙船の司令室みたい
< >
< >
ここらへんをみていくと、どうやって作ったかわかります。
かっこいいテーブルを作ってたのもあったんですけどねぇ、どこいったかな。

●行政が防災システムなどに利用できる技術

プロジェクターで投影されたものと、人のインタラクティブなやりとりって面白いし、これがプロジェクタとWiiリモコンだけで出来てしまったりするので、個人的には行政が防災システムなどでこういうのを利用する力があれば、何億もかけて使えないシステムにするより、ずっと役に立つシステムができるんじゃないかと思うんです。

例えば、地震があったら、防災ヘリを飛ばして、テーブル型の映像システムに表示させ、同時にお年寄りや重度の障害をもっている人のマップと合成して表示し、いくつかのチームに的確に救助指令とその周辺状況の画像を瞬時に送れるようなシステムとかが、手弁当でできちゃう可能性があります。各地の自治体が協力すれば同じシステムでいいですしね。

テーブル上で映像にタッチする形で、直感的に瞬時に指示を出せたりできるでしょうから。で、各チームが動いていけば、刻々とその状況が壁のスクリーンに地図と重ねて表示されたり、ターゲットポイントにはいったら、自動的に連絡できたりとか。

街の監視カメラやヘリからの映像と連携を取れるようにすると、救助活動が一層効率的に進められるのではないかと。一時的に避難している住民の方にも、避難所から何人か応援してもらって。ロジスティクスの面でも、各避難所だけでなく、孤立が認められそうな地域をすばやく判断して、配給拠点をつくっていくとか、各避難所の人数把握のシステムとか……いろいろできそうです。

GoogleMapsとの連携とか、GISの技術とか、Flashのスクリプトとか「インタラクティブ」を基本にすると映像表現だけでなく、行政の基礎技術としても産業化の対象になりやすいと思ったり。

そういうシステムをどう構築したらいいかという、いままでは超大手しかできなくて、結局コストの壁で自治体にも普及していなかったものの実現手段のノウハウやプログラム自体が、YouTubeには隠れているんじゃないかと思います。あるいは、実現している人に有償で提供してもらう交渉もできますしね。

皆さんが関心がありそうなのをランダムであげると(それほどでもないか……)
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< >
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< >
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なんかあぶないw
< >
高速映像、市販のカメラでもこんなのができるんですね
< >
いまのCGってこれぐらいできるんですね
< >
Blenderっていうオープンソースでもここまでできちゃいます

すみません、かなり面白いと思うポイントが偏ってまして^^;
知ってるかたも多いと思いますが、まぁ、こんなのありましたということで。

【ばば・みきひこ】railsjp@gmail.com

その昔、Macで印刷データができると聞いて印刷関係に紛れ込んできたまま、気ままにデジタルと関わっています。ちなみに、プログラムもかじっていますがRubyしかできません。デジタルな情報伝達が、効率だったり、過去の情報や類似の情報との連携だったり、新しい形式の情報だったり、いろんなものを変革していくのに興味があります。同時に、携わっている人たちが長い期間、キャリアパスを構築しながら成長していかれるのも見てみたいと思います。

●馬場さんとは交流会でお会いして、その豊富な知識や着眼点に感服いたしました。お話したのは数十分だと思うのですが、次から次にアイデアを出され、インプットしきれないと弱音を吐きましたら、詳細URLなどをメールで送ってくださることになりました。届いた私信を、私が知るだけではもったいないと強引にお願いして、原稿として掲載させていただきました。続きは次回に!(濱村)

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■編集後記(7/16)

・たかぎなおこ「愛しのローカルごはん旅」を読む(メディアファクトリー、2008)。リクルート「リラックスじゃらん」に掲載された、食べ歩きコミックエッセイを加筆・修正したもの。マンガとしては絵がすごくヘタだが、けっこうホノボノしたいい味を醸し出している。うまい写真とうまい文章による普通のB級グルメガイドだったら、これほどおもしろく楽しいものにはならなかっただろう。ローカルの名物を食べ歩く旅の相棒は父、母、友人、仕事仲間、編集者などでお気楽もいいとこ。作者にとって、名実ともに「おいしい」企画だ。今回は、山形、埼玉、静岡・愛知、大阪、和歌山、長崎・熊本、それに東京下町の7編。カラーのマンガルポが14ページ、写真スクラップが2〜4ページ、旅メモイラストが2ページ、路線図・店の案内図などが2ページ、まとめのおみやげ&感想が1ページといった構成だ。旅で遭遇する小さな事件の数々も笑わせてくれる。わが地元・埼玉編は行田のフライとゼリーフライ、東松山のみそだれやきとり(豚肉)、川越のイモづくしである。どこへ行っても食うわ食うわ、作者の取材魂には感心する。楽しく一気に読んで、あらためて見直すと……やっぱりヘタな絵だ。昔でいうと「へたうま」かなあ。/デスクは西友のCMがいいと言ってるが(↓)わたしも妻も娘も、あの弁当CMが大嫌い! で一致。ユーモアが感じられない。すごくみじめ。居心地が悪い。日本のお父さんをどこまで貶めればいいんだ。腹立たしい。いやなものを見てしまったと落ち込む。ビンボーで悪かったな、西友なんぞ行くものかと思う。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840124639/dgcrcom-22/ >アマゾンで見る(レビュー5件)

・明日はアップルストア心斎橋でDTP Booster 004(Osaka/20090717)。気軽に立ち寄ってみてね!/西友のCMに笑った。シャンプー類を買い忘れたという夫に、「そういうのは西友では買わないって言ったよね」とたしなめる奥さんの発言は、わかるわかる、だったし、お弁当が安かったという話で「え、じゃあお釣りは?」の、そこ突っ込むの? と画面に向かって突っ込みたくなるようなところとかがいい。サザエさん的ユーモアというか。家計を預かる奥さんなら言ってしまうよね。西友に「やまださん」「こじまさん」「ビックさん」「たかたさん」が安いからと買いにくるのも好きだなぁ。/「先輩、私とピザ、どちらが好き」と聞かれて、君だよと答えたがために、ピザを食べられてしまうCMもいいなぁ。動画を見つけるまで、ピザのCMだと勘違いしていたよ…。(hammer.mule)
< http://www.dtp-booster.com/vol04/ >  DTP Booster 004
< >そういうのは買わない
< http://www.seiyu.co.jp/ >  西友のCM
< http://www.asahiinryo.co.jp/vanadium/gallery/index.html#tvcm >昼食の後