気になるデザイン[29]四六判、菊判ってなんだ!?/津田淳子

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いよいよ明日は皆既日食ですね。小さい頃、金環日食を見たような記憶はあるのですが、皆既日食が、それも日本で見られるなんて、これを逃してはならぬ!と、一昨年より行く気満々だったのですが、とうとうこのコラムを書いた直後に奄美大島へ出発することと相成りました。いやぁ、次に日本で皆既日食が見られるのは2035年の9月2日。26年後ってことは、うわ、無事生きていれば還暦かぁ。うーむ、先は長い。

というわけで、飛行機の時間まであと少し。その間に今回は印刷業界(出版業界かな?)の業界用語についてちょっと小話を。



印刷用紙の見本帳などに、紙の寸法表示として「四六判」や「菊判」と書いてあるのを見たことがあると思いますが、これってどうしてこんな名前がついたかご存知でしょうか。

「四六判(しろくばん)」は全紙寸法788×1091mmの紙のことで、単行本書籍などによく使われる紙寸法。これを32分割した127×188mm(ものによっては130×188mmサイズを指すこともある)の書籍を「四六判の書籍」と呼ぶ。

それにしても、この全紙や書籍のサイズを見ても、どこにも4とか6とか46に関連する部分が見当たらない。うーむ、なぜ「四六判」なんて名がついたのだろうか。

実は、明治時代にイギリスからクラウン判(31インチ×43インチ=787×1092mm)という寸法の紙を輸入していた。ちなみにそれは大八つ判と呼ばれていたそう。そのクラウン判全紙から4寸(正確には4寸2分=127mm)×6寸(正確には6寸2分=188mm)のページが32面取れるので、明治後半頃からそれを「四六判」と呼ぶようになった、らしい。

と聞くと、なるほどね、と思うのだが、最後に残る疑問が、クラウン判と四六判全紙が短辺の長さが1mm違うこと。これはいくら調べても、今のところ理由はわかりませんでした。どなたかおわかりになる方がいたら、教えてくださいませ。

対して「菊判」。これも調べる前に少し考えてみた。菊、キク、きく……、菊に似ているマーガレット……。週刊マーガレットに使われていたから……なんてことはないですよね。それに週刊マーガレットはB5判だから、B判・四六判系列の紙を使うわけだし……。

これも私の頭では皆目見当が付かないので、紙の先生に聞いてみたところ、明治中期、日清戦争、日露戦争などの影響で新聞の情報量が増え、それまでの新聞サイズでは情報が掲載しきれなくなった。そこで、日本橋の川上正助店が、アメリカから25×37インチ(636×936mm)の紙を輸入したのが、日本でこのサイズの紙が普及した始まり。輸入した当初は新聞用紙の寸法だったが、新聞以外のものにも使ってより経済的にしようとしたためもあり、一般の出版物にも使われ始めたそう。

その輸入紙が包まれていた包装紙に描かれていたダリアの花が菊に似ていたことや、この紙が使われている新聞の「聞」の文字が「きく」と訓読することなどから、川上正助店がこの輸入紙の商標を「菊の花」にして、「菊印判」として売り出したそう。次第にこの紙が多く使われて、このサイズの紙のことを「菊判」と、これを16分した書籍サイズを「菊判の書籍」と呼ぶようになったそうだ。

菊判はA5サイズくらい。昔は書籍によく使われたサイズだったが、現在はそれよりも小さな、B6サイズに近い四六判の書籍が圧倒的に多い。どの文豪が書いたものだか忘れてしまったが(今度ちゃんと調べておきます)、随筆か覚え書きだかの原稿で「版元が四六判なら本を出すと言っている。でも菊判が立派でちゃんとした書籍らしい。やはり菊判で出したい」というようなことを書いていた。うーむ。

ちなみに四六判や菊判とは違った紙の規格で、A判、B判というものがあるが、このB判というのは日本独自の規格だって知ってました? 江戸時代の公用紙である「美濃紙」(美濃和紙は岐阜でつくられた伝統的な和紙)を元に決められた「美濃判」から来てるそう。むむ、B判なんて名前から、てっきり国際規格かと思ってたのに!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
出発まであと37分! ふぅ、間に合ってよかった。後は曇りの天気予報が晴天に変わってくれることを願うのみ!

3つの別冊(?)付録と、計12枚の綴じ込み付録がついた函入りの『デザインのひきだし7』。特集は「製本加工はここまでできる!」と「スケスケな紙、素材、加工、大集合!」の2本立て。小口まで真っ赤に染まった本が、段ボール箱に入って、全国書店に並んでます!

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