グラフィック薄氷大魔王[188]轟音246
── 吉井 宏 ──

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国道246号の脇に住んでもう14年目。そりゃ、クルマの騒音は相当のものだ。でももう慣れちゃってるし、窓さえ閉めておけばそれほど気にならない。逆にすごく静かなところへ行ったりすると「キーン」って無音がやかましくさえ感じる。

そういうわけで、普通に流れるクルマの音はぜんぜんオーケーなのです。大型トラックでさえ、普通に走ってる分にはたいした音はしない。でも、ガマンできない音もある。数分に一台、とんでもなくやかましい音のクルマやバイクが通る。たぶん、「轟音マフラー」「爆音マフラー」と呼ばれる、改造マフラーを装着してるらしい。いい音を追求したり、存在をアピールしたかったりするんだろうけど、方向として間違ってるよ。

また、エンジン音を大きくしておくと、スピードを出していても人がよけてくれるという期待なのかもしれない。確かにそれは効果アリと思われる。でも、耳が遠い人もいるし、ヘッドホン着用自転車だっているわけだし、役に立たない場合だってあると思うのだが。もちろん、当人以外は大迷惑だ。



自分のバイクやクルマ一台くらいいいじゃないかと思ってるかもしれないけど、そういうのが数分ごとに一日中通る沿道住人はたまらない。っていうか、やかましいドライバーに呪いをかける人が沿道に何十万人もいることに気づかないんだろうか。寝入りばなに轟音でドキーッとして目が覚めてしまったりすると、ホントにツライです。

そういったこともあり、早いとこ日本中のクルマの内燃機関が電気モーターに置き換わるのを期待している。電気自動車の普及。温暖化ガス削減的には、電気自動車はほとんど効果ないらしいですが、街中の騒音と空気の改善には大いに効果アリでしょう。メルセデスベンツは、あと6年で石油で動く自動車を全廃するそうです。

ところで、電気自動車も常時音を出すべきとの話もある。視覚障害者をはじめ、クルマの音が安全に重要な意味を持つ人たちのために、例えばオルゴール音を鳴らせないかみたいな。でも、わざわざ騒音を作り出すのはいかがなものか。そもそも、タイヤの音や風切り音ってけっこう大きい。現状でも、エンジンの音はアクセルを踏んでいるときにしか聞こえないわけだし。

どうしても必要なら、スピーカーやエンジン音の規制と罰則をきちんと作ってからにしてくれ〜。トラックのクラクションで、船の汽笛や列車の警笛みたいな異常な大音響がするのあるでしょう。あれ、心臓がギュウーッってなります。あの音で亡くなった人は実際にいるんじゃないかな。

あと、クルマの開いた窓から「ドンガー、ドンガー」ってフルボリュームの音楽がかかってると、「あ〜あ、しょーがね〜な〜」とかあきらめちゃってるけど、最近増えてきたのが、スピーカーをつけた大型スクーター。あれはないだろう。あんまりだ。車内ならまだしも、車外の空気にスピーカーをさらしてフルボリュームってのは、やかましい迷惑宣伝カーと同じだ。

余談。電気自動車のための充電ステーションや急速充電技術などについて企業がいろいろ実験中とのニュースがよく流れる。僕は、バッテリーを公共財みたいにするのがいちばんいいと思うんだけど、ダメかな。バッテリー切れが近づいたら、ステーションや自動車販売店などで充電済みのバッテリーをガッチャンコと取り替えるのが早くて簡単だと思う。バッテリーは何百kgの重さかもしれないけど、機械でガッチャンコ。乾電池みたいにサイズ規格を3種類くらいに統一してさ。

おまけ●弥生美術館「昭和少年SF大図鑑展」に行ってきました
< http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
>

昔の「少年マガジン/サンデー」などの、巻頭カラー口絵などを集めた展覧会です。僕はマンガ雑誌を一度も買ってもらったことがないんですが、たまに医者の待合室などでそういう雑誌を手にする機会があると、食い入るように見たものです。最も印象に残ってるのは「サンタクロースは火星から来ていた!」というもの。二色刷だった気がするけど、火星のサンタクロース基地の図解を見て、そうか、そうだったのか〜と、半ば事実かと思っちゃったり。

そういった図解の原画や印刷物が多数展示されてます。印刷サイズと原画のサイズがたいして違わない。すごい絵の密度です。当時の挿絵画家たちは、そんな見開きイラストを大量に描いてたわけです。僕だったら、一枚描くのに半年くらいかかりそう。今の基準で言えば、むしろムダな描き込みに見えてしまうのも確かですけど、高度成長期の日本人のエネルギーそのものなんでしょうね。

とてもこぢんまりとした美術館です。友人三人で行ったのですが、大声は上げられないんだけど、小声でワイワイ言い合ったりクスクス笑ったりしながら見れた展覧会ってのもなかなかめずらしく、楽しかったですよ。あ、長岡秀三(秀星)の絵も一枚だけありました。もうね、明らかに洗練されてて、他の作家の伝統的絵物語風タッチと一線を画してました。

【吉井 宏/イラストレーター】  hiroshi@yoshii.com
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一週間経ってしまいましたが、日食。前日は台風みたいだったし当日午前中も完全に曇り空。完全にあきらめていた11時すぎ、mixiの書き込みで「今、東京でも見える」と知って、ベランダにダッシュ。見えた見えた! 雲がうすくなってるところから三日月状態の日食太陽が。雲がフィルター代わりになって、肉眼で見てもぜんぜんまぶしくなく、太陽の輪郭はくっきり見えた。写真撮影にも成功。いやー、小学生のときから、めちゃくちゃ期待したジャコビニ・ジンナー流星群の夜に流れ星ではなく雨が降ったりとか、ハレー彗星は超暗かったりとか、こういった大きな天体ショーには肩すかしを食わせられ続けてきたけど、ようやく見れた。とはいっても、月食は数回見たし、高校一年のときに三分の一くらい欠ける日食も見たことあるけどね。今回の日食もまたスカだったかと思っていた矢先だったので、余計に感激しました。