デジアナ逆十字固め…[95]眉を剃ってセルフポートレイト
── 上原ゼンジ ──

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フォトセッション(正式には「FOTO SESSION '86」)は、私が在籍した写真のグループだ。伝説の写真雑誌「写真時代」が企画した、読者参加型のイベント「写真時代倶楽部」に集まったメンバーを中心に1986年に結成された。中野富士見町にアジトと呼ばれるアパートを借り、月に一度の例会を開いて、森山大道さんに写真を見ていただいた。

アパートには現像設備も作ったので、「写真をやってみたい」と思い始めていた私は、そこで現像ができるという魅力にも惹かれて参加することにしたのだった。

フォトセッションに参加する前は、カラーポジフィルムのコダクロームで撮影していたが、参加してからはモノクロネガフィルムのTri-X400を自分でパトローネに詰めて使うようになる。これで月光の4号という印画紙にプリントするとコントラスト強い写真が焼けるのだが、みんな同じように硬くて黒い写真を焼いていた。森山大道に憧れて、ヘタな真似をしていたというわけだ。

何を撮っていたのかと言えば、街中をふらついてのスナップ写真だ。「写真をやる」イコール「モノクロでスナップ」みたいなイメージは今でもあるが、まあ当時の私もそれをなぞっていたというわけだ。

ただ、毎月森山さんに写真を見て貰う時に「ウケたい」という願望があり、当時からちょっと変なことをやっていた。たとえば、いったんプリントした印画紙に薬品を塗って、わざとムラを作ってみたり、人工着色してみたり。人工着色自体は珍しくないが、写真に水玉模様を描いて持っていった時にはちょっとウケた。

フォトセッションでの活動を開始してしばらくすると、私は会社を辞めることを考え始めた。当時私は本の雑誌社で編集の仕事をしていたのだが、日曜日以外は自由になる時間がなく、もっと撮影やプリントに費やせる時間が欲しくなってしまった。会社を辞めてカメラマンで食って行こう、とかいう話ではない。ただ、写真が撮る時間欲しかっただけだ。

1986年の4月からフォトセッションの活動が始まり、夏の終わりに退職を願い出た。引き継ぎをきちんとしていって欲しいと言われ、その年いっぱい在職した。そして年明けからフリーの身となり現在に至る、というわけだ。



●上原ゼンジのツラ

フリーとなり時間がいっぱいできた私はまず、スキンヘッドにした。それまでもいろんなヘアスタイルにしてきたのだが、丸坊主というのはやったことがなかった。不摂生な編集者生活で太ってしまった私は、丸坊主にして痩せていく過程を記録しておこうとした。

完全に剃り上げてしまう前にまず、おでこにアールを入れた。生え際を曲線に剃り上げたということですね。そんなことをやっている人は見たことがなかったので、ちょっとやってみた。そして顔に油を塗り、オールバックにして撮影した。

自分で頭をツルツルにする勇気はなかったので、曲線剃り込みが入ったまま床屋に行った。床屋のお兄ちゃんは不気味なオデコの人間を見てどう思っただろうか? けっこう時間をかけて剃り上げてもらったが、「眉毛を剃ってください」というのは止めにした。それじゃ怪し過ぎる。

家に帰ると一人で眉剃りの儀式を敢行した。それまでは尊いお坊さんのような姿だったけど、いきなり凶悪な顔つきになった。眉毛は社会との架け橋だったんだな。反社会的になりたい人は眉毛を剃ればいいんだよ。興味ある方はぜひお試しください。

ポートレイトのパターンはいろいろ考えていて、たとえば小さな発泡スチロール球を頭にいっぱい張り付けて、仏像化するというのがあった。しかし、頭に接着剤を付けた場合に、頭皮にどのような影響をおよぼすのであろうか? ということを考えるとちょっとビビってしまい、このアイデアはボツにした。いつか自毛でリアル大仏カットに挑戦してみたい。

あとは、シャッタースピードを遅くして、頭を振り回して撮影するとか、鼻の穴にチューブを差し込むとか、まあ、そういったことをいろいろと試してみた。当時の写真を少しWEBにアップしてみた。ご興味ある方はどうぞご覧下さい。

◇上原ゼンジのポートレイト集
< http://www.zenji.info/profile/portrait.html
>

●山崎弘義さんの写真展

フォトセッションのメンバーはけっこうしつこく写真を撮り続けているけど、その中の一人、山崎弘義が現在写真展を開いている。山崎さんは路上で人間に肉薄する写真を撮ってきた。しかし、近年は認知症になったお母さんの看護で、そういった写真も撮れなくなっていたようだ。

そして、ある時から山崎さんはお母さんのポートレイトを撮り始める。お母さんを撮影した後に庭の片隅を撮影、ということを3年の間毎日繰り返し、1149カットの写真を撮影。その中の約40点が現在展示されている。

◇山崎弘義写真展「DIARY」
< http://www.upfield-gallery.jp/
>
会期:8月20日(木)〜9月6日(日)12:00〜19:00
会場:アップフィールドギャラリー(東京都千代田区三崎町3-10-5 原島第3ビル304 TEL.03-3265-0320)

・山崎弘義ホームページ
< http://homepage3.nifty.com/hiroyama/
>

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com

・上原ゼンジの新刊
「ボケ/ブレ不思議写真術 カメラプラス」雷鳥社(1,575円)
< http://www.zenji.info/profile/book/fushigi/fushigi.html
>
・上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/
>
・上原ゼンジのブログ
< http://zenji.jugem.jp/
>