ローマでMANGA[21]2万人の中の1%/midori

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宿題第二弾です。デ・アゴスティーニの「MANGAを描く」シリーズのサイトの監修の一部です。

毎週、ゴマンとアップされる絵の中から適当に、コマ割りしてあるものを1枚、そうでないものを10枚選んで、講評をするというページがあります。コマ割りは細かく講評し、絵は数行で短く講評します。

なぜ「MANGAを描く」なのに、コマ割りしたものを1枚しか講評しないのかというと、アップされた絵のほとんどが一枚絵なのです。一枚絵と言っても、状況のある(背景があったり、動きがあったり)ではなくて、ポーズをとったお人形さん式の絵、しかも圧倒的にファンアート、つまり既成のキャラクターを描いてます。

好きなキャラをまねして描くのは、いいんです。でも、それを講評しても始まらない。漫画を描くようになってほしい。MANGAを描きたいという人に、このページを読んでほしい。MANGAをちゃんと教えるところはないから、少しでもその役に立ちたい。ということで、少ないコマ割りの絵は必ず一枚選んできっちりと講評。そしてせめてオリジナルを描いている絵を選んで、MANGAの視点から見た講評(性格付けができているかとか、表情がどうかとか)をすることに落ち着きました。

でも、やっぱりMANGAなんだから、コマ割りした原稿に近づいてほしい。自分でコマ割り構成を考えるのではなく、コマ割りをしてあって、そのコマ割りの意味を考えながら絵を当てはめる、という方法だったら、コマ割り原稿を描いたことのない人でも近づくかも…と言う苦肉の策の「宿題」でありました。



●現実の縮図かも

その宿題の第二弾です。日本のMANGAの原稿の大きさ(280mm×170mm)はそのまま、上下2段に分け、1段めをさらに3コマに分けて1コマ目と2コマ目は二人のキャラが言い合いをして、3コマ目は1コマ目のキャラが黙って正面を向く(時間が一瞬止まる)そして大ゴマの4コマ目で3コマ目のキャラの感情爆発。

宿題締め切りは6月15日。アップするのは自分のページですが、その知らせを私のページにすること、締め切り日を守ること、原稿枠の寸法を守ること、提示した原稿条件を守ること。一つでも守らないものは、講評の対象にしないという厳しい態度で臨みました。

一つには、プロの仕事の仕方のちょこっと疑似体験をしてほしかった、もう一つは、全部受け入れた第1回、その多さに講評する時間が激しく取られて、他の仕事にも差し障ってしまったからでした。

6月半ばというのは、学年末に当たり、サイト登録者の多くは中高生で試験時期にあたります。そのせいで、前回の101作品よりぐっと下った66作品の参加、条件を満たした作品が47でした。

「47」って多いのか少ないのか。登録者2万人のサイトということを考えると2%。「漫画家になりたい」「漫画家もいいかも」という漠然とした夢を持っているメダカの大群の中で、実際にMANGA原稿を描いて出版社に持ち込むなどの具体的にアプローチをするのが2%…と考えると現実の縮図かもしれません。

その47作品の中で、これはいけるかも! とおもったのが3〜4作品、つまり1割弱。かなり前のデータですが、日本で単行本を出したことのある「プロ」の漫画家が3000人、自分の原稿だけで食べて行ける人が300人。1割。と、まぁこじつけに近いかもしれないけど、現実の縮図かも。

ただ、いずれの作品も、足りないながらも一生懸命描いた、という気持ちは伝わってきて、それは嬉しい報酬でした。

●「何か」が足りない

いけるかも! の1位は前回の宿題に続いてアレックス君。

若いのに、プロとして仕事してないのに、かなり描いてる人で、キャラの雰囲気が日本の市場で受けるかは疑問だけれど、相当の腕前。こういう、メダカの大群の中にいていいのか? と思っていたら、先月あたり登録を取り消したらしい。

そしてHikaruちゃん。20歳の女性。

実は、セリフを入れてこなかったので、泣く泣く条件満たさずで講評の中には入れなかった。でも、コマの中のレイアウトを見ると、吹き出しが十分に入るスペースを空けてあるし、何よりもその表現力に、このまま没にする作品ではないと、特別枠を設けてコメントをした。

次にLividienちゃん。

年齢を明かしてない。グラフィックデザインをやってるそうで、宿題提出(サイト内の私のブログに書き込む)でも、その原稿のURLをクリックできるように貼付けてくる、という完璧仕事。Lividienちゃんも、セリフを入れてこなかったので特別枠でコメントした。キャラに強さがあり、技術もプロ並み。こういう人にはどんどん自信を持って、どんな形でもいいから作品を作って行ってほしい。

1割のうちの2点が特別枠というのもどうかと思うけど、2万人の中の光る人、ということで放っておけない。応募作の中間層というと、やはり、可もなく不可もなくという段階。
 

それなりに描けるし、自分の絵を持っているのだけど、「何か」が足りない。この言葉にならない「何か」は努力によって補えるものなのか、生まれつきの感性なのか。

あるいは、この「何か」は技術のことではないから、作者のほうで「これを伝えたい」と強く想うことがあり、その想いにうまく入り込めたとき、仏教でいう「三昧」の境地に入れたときに、その「何か」が出てくるのかもしれない。つまり、精神というか、魂関係の問題かもしれないとも思う。

「三昧」の境地に入るためには、広く豊かな知識、豊かで深い心、集中できる心の強さ、加えてそれを表現する技術など、色々な条件が組合わさるのだろうな、とも考える。

●世間はそれほど悪くない…かも

凡夫だからついつい頭に上ってきてしまうのが、仕事量と報酬の関係。サイトはサイト運営自体で直接収入がないので、この仕事の報酬は多くない。時間はかなり取られる。報酬額が頭の上に点滅すると、ついつい手を抜いて適当に…と言う気持ちにもなってしまう。

それでも結局、いやいや…と、考え直すのが、2万人の中の1%の懸命なエネルギーだ。そして、登録者のほとんどが中高生と書いたけれど、素朴な質問に答えた時のその喜びよう。友達同士のチャット以外のこうした世間とか社会(私はそれを具現している)とのコミュニケーションに、実は飢えているのでは、それを少しでも満たしてあげられるのかも、思春期の子供達に「世間もそれほど悪くない」と思ってもらえるかも…との想いだ。

それを証明するかのように、8月始めにサイト運営編集部から、こうした講義関係のサイト全部のアンケートを実施したところ、「MANGAの描き方」サイトの登録者の満足度がとても高かった、ありがとう、とメールをもらった。

【みどり】midorigo@mac.com

世間は夏休みでしたけど、私は夏休みなし。デ・アゴスティーニが夏休みを取ってる間に、前倒しで仕事を進めて楽になろうと思っていたけど、とんでもない。やり直しやら、執筆者や絵描きさんへのサジェスチョンなどで、私の執筆分が思うように進まず、本誌は相変わらず一か月の遅れ、サイトは一週間分先に進んだだけ。おまけに休みの世間に合わせて、夕食会が相次いだせいか、2年ぶりにした血液検査で中性脂肪値が490。150mg/dLが正常値だそうで……。医者に行ってきます。