気になるデザイン[31]こんなときだからこそ、へこたれない!/津田淳子

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まずは、前々回(かな?)に用紙規格についての話を書きましたが、それにメールを頂戴しました。

 ちなみに四六判や菊判とは違った紙の規格で、A判、B判というものがあるが、
 このB判というのは日本独自の規格だって知ってました? 江戸時代の公用
 紙である「美濃紙」(美濃和紙は岐阜でつくられた伝統的な和紙)を元に決
 められた「美濃判」から来てるそう。むむ、B判なんて名前から、てっきり
 国際規格かと思ってたのに!

と書いたのですが、すみません。これは間違いでした。というのも、日本工業規格(JIS)と、ISOと2つのB系列の規格があるそうです。でもって、それぞれサイズが異なると。なので、日本のJIS規格のB系列は美濃判から来たもので、ISOのB系列の規格とは異なるというのが正解。きちんと調べきれておらず、大変失礼しました。でもって、ご指摘くださった吉田印刷所の笹川純一さまへお礼申し上げます。勉強になりました。

さて、去年も今年も、出版社倒産のニュースをいくつも目にしますね。私がショックだったのは、今年4月に自己破産した雄鶏社。かわいい手芸の本がたくさんあって、何冊も持ってるのに……。昨日もゴマブックスが民事再生を申請というニュース。ちょっと噂にはなっていましたが、本当だったんですね……。
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0909/07/news025.html >

ギネス世界記録2010ケータイ小説『赤い糸』とかいろいろヒット作もあっただろうに、負債総額38億2000万とは! 出版なんていう利がさして多くない商売で、これだけの負債があったら、到底、再建なんて難しそうだなぁ。私、ギネスブックの日本語版『ギネス世界記録』ってちょっと好きだったんだけど、これはどうなるんでしょうか。今年版は来週発売予定だったそうですが。もう印刷も済んでそう……。



清貧の思想ヒット作がありながらというところでいうと、『声に出して読みたい日本語』や『清貧の思想』などのベストセラーが思い浮かぶ草思社も昨年始めに経営破綻してしまいましたね。その後、文芸社の完全子会社となって再発足したようで、何はともあれ、良かった気がしますが。

生きかた上手 文庫版〈第1巻〉他にも、今年に入っては、聖路加国際病院院長の日野原重明先生の『生き方上手』を出していたユーリーグも民事再生法適用を申請しましたね。
< http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=001317 >

私も小さな出版社に勤めているので、ホント、他人事じゃない話で、倒産のニュースを聞くたびに、けっこう暗い気持ちになったりして……。

それにしても倒産した出版社の本。中には本当にいい本も数々あると思うんですが、あれらの本の多くは、もう今後世に出る機会はほとんどないんでしょうねぇ。会社が再建したり、どこかの版元が改めて出してくれれば別でしょうが、全商品という訳にはいかないですしね。うーん、何とも残念。雄鶏社のチクチク系の本は、かわいいものが多かったのに。

でも、出版社が倒産すると、書店も困る。新刊委託の書籍で、まだ返品期限内のものとか、常備と呼ばれる通年販売してもらうものは、返品月がくれば取次に返すことができるでしょうが、それ以外のものは売れなければ書店がかぶる。それに取次だって、返品されてきたらそこから返す先がないわけだし、うーむ。

まえおきが長くなったが(っていうか、長過ぎでしたね。すみません)、私は『デザインのひきだし』という媒体をつくっていて、いろいろな印刷会社や製本会社、加工会社、製紙会社、代理店などを訪ねて話を伺う機会が多いのだが、ここ一年ほど、本当に厳しい状況について聞くことが多い。

現在、書店で販売している『デザインのひきだし7』では、製本特集を掲載したのですが、数十件の製本会社さんに話を伺う中でも、多くの不況の話を耳にした。「仕事が3割減じゃなくて、3割になってしまった」とか、「2つあるうちの1工場を閉鎖した」とか、それが特別な話じゃなくて、幾度となく、といった状況である。うーむ、本が売れなきゃ、確かに厳しいよなぁ……。

でもそんな中でも、こんなときだからこそ、何か新しいことに挑戦して、新しい仕事を確保していこうという、意欲的な製本会社さんも多数あって、そういう話を伺うと、すごく嬉しく思いました。そんな意欲的な会社を『デザインのひきだし7』ではいくつもご紹介しているので、もしご興味があれば立ち読みでも構いませんのでご覧ください!

でもって、できればそういう製本会社さんと、ぜひお仕事してみてください。本当に、アイデアも熱意も、そして技術力もあってすばらしいところばかりでした。

もう1号前の『デザインのひきだし6』では、箔押し特集を掲載した。ここで協力してくれた箔押し会社で、コスモテックという会社があるのだが、ここも本当にすごい! 箔押しの機械自体は、特殊なものというわけではないのだが、その使い方もユニークだし、またいろんなことを「試してみよう!」という心意気がすばらしいのだ。
< http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/ >

いろいろ加工テストしたものをプレゼントしてくれたりもしているので、箔押しや熱圧押し加工(エンボス/デボスも)に興味がある人は、上記ブログをご覧ください。

他にも、苦しい中でも頑張って新たな道を開いている印刷、加工会社はたくさんある。取材を通してそんな姿をみせていただくと、私も疲れたとか言ってる場合じゃないと思って頑張れる。次号の『デザインのひきだし8』も昨晩校了できたし(笑)。

今回は気になったデザインの話ではないんですが、不況が本当に深刻な中にあっても、それを切り開く努力をし、またそれを打破できる技術も情熱もある会社を、少しでも皆さんに知って欲しいなぁ、などと僭越にも考えている今日この頃です(なんかうまくまとまらなくてすみません)。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp

3つの別冊(?)付録と、計12枚の綴じ込み付録がついた函入りの『デザインのひきだし7』。特集は「製本加工はここまでできる!」と「スケスケな紙、素材、加工、大集合!」の2本立て。小口まで真っ赤に染まった本が、段ボール箱に入って、全国書店に並んでます!

他に最近作った本は『標準 印刷見本帳2 銀×青金×赤金×CMYK×CMYK×マット/グロスニス編』『デザインアイデア&ヒント』『ハニカムペーパー・クラフト』『標準 印刷見本帳1 蛍光色×CMYK×マット/グロスニス編』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/ >