デジアナ逆十字固め…[96]青焼きの感光紙で撮影してみる/上原ゼンジ

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カメラ・オブスキュラというのは、カメラの原型だ。いろんな形態の物があるのだが、単純なタイプで言えば、まず箱があってレンズがついている。レンズの反対側にはスクリーンがあって、そのスクリーンに外界が映しだされるというもの。写真機の誕生前に考案され、風景を写実的に描きたい場合なんかに利用された。巨大な物では部屋が丸々カメラ・オブスキュラになっている場合もあるらしい。

このカメラ・オブスキュラは牛乳パックに虫眼鏡を取り付け、スーパーのレジ袋をスクリーンとして使えば、すごく簡単に試してみることができる。うまく作ればかなりはっきりとした映像を映すことができるのだが、単純な工作でスクリーンに映る映像を見るとけっこう感動的だ。

このスクリーンの部分に感光するものを置き、どうにかして映像を定着できないだろうか? と考えた人がいて、それが写真の誕生へとつながったというわけだ。だから、スクリーンの部分に印画紙を置き、現像、定着させれば、一番原始的な写真のプロセスを体験することができる。

私自身は現像できる環境を持っていないので、これは残念ながら試すことができない。しかし、日光写真を使えば、現像の設備なしでも写るんじゃないだろうか? と思いついた。日光写真というのは、以前「SUNPRINT KIT」という製品を試したことがある。露光したら、水に付けて現像、定着を行うというすごく単純な仕組みだ。これで写真が写ればなかなか面白いことになりそうだ。

どんなカメラを作ろうかと、ネットでいろいろ調べていたら「牛乳パックカメラ」というものを発見してしまった。青焼きの感光紙を使って、手作りカメラで写真を撮るというものだ。理科の実験として考えられ、新聞やテレビでもすでに紹介されているらしい。いい事思いついた! と思ったのに、すでに普及している方法だったとは……残念!

ただ、この牛乳パックカメラに利用されている「コピアート」という感光紙に興味を持った。富士フイルム社製のものだが、図面の青焼きをとったりする場合に使うものらしい。アイロンで熱を加えて現像するという単純さと、値段が安いのに惹かれた。業務用途で複写に使われるものだから、セットの枚数は多いけど、単価はすごく安いのだ。



●30分ジッとしてポートレイト撮影

工作は牛乳パックではなく、100円ショップで買った厚紙製の小箱で行った。牛乳パックよりも少し大きなサイズで、箱の外側も内側も黒だったのが決め手。レンズはちょっと厚みのある凸レンズ。厚みがある(Rがきつい)というのは焦点距離が短いということ。望遠系だとちょっと使い辛いから、なるべく広角系にしたいと思った。

スクリーンに使ったのは、透明クリアファイル。レジ袋のようにクシャクシャじゃなくて、しっかりしている所がいい。試してみたら、けっこうクリアに映ったから、これはオススメ。後は三脚に取り付けられるように金具を張り付けてやれば完成だ。

露光時間は10分程度。かなり単純な仕組みのカメラだけど、ちゃんと写ったぞ。カメラが生まれた時のような喜びを追体験することが出来て楽しい。今じゃ携帯電話にもカメラが付く時代で、撮影すること自体は身近になったが、カメラの仕組みはブラックボックスになってしまった。しかし、元々写真機というのは、すごく単純なものだったんだと気づかせてくれる。

この感光紙の部分を撮像素子に置き換えればデジタルカメラになってしまうわけで、今後はアナログからデジタルへとつなげて行くような実験を、やってみたいと思っている。

ブログの方には、この手作りカメラで撮影したポートレイト写真もアップしてみた。30分間、ジーッとして撮影したんだけど、結果はイマイチ。もうちょっと精度を上げてみたいな。

・青焼き写真
< http://zenji.jugem.jp/?eid=15 >

●楢橋朝子の写真展

フォトセッションの時の仲間の、楢橋朝子の写真展に行ってきた。フォトセッションというのは、前回も紹介したけど、1986年に結成された写真のグループのこと。2年間、森山大道さんに写真を見ていただいたのだが、前回紹介した山崎弘義さんのプロフィールのページに、当時の例会の様子がアップされていた。みんなで借りていたアジトと呼ばれるアパートで、畳の上に写真を敷き詰めて見て貰っているところ。さすがに20年以上も前の写真だから、ちょっと時代を感じさせるな。

・山崎さんのプロフィールページ
< http://homepage3.nifty.com/hiroyama/profile1.html >

私はここで暗室を始めたんだけど、一緒に先輩からレクチャーを受けたのが楢橋朝子と広瀬勉。三人にとってはここが原点だった。というか、他のメンバーにとっても凄く強烈な場だったはずで、いまだにみんな写真をしつこくやっているというのは、フォトセッションでの体験の影響が大きいと思う。

楢橋さんの写真展「近づいては遠ざかる」は仙川にある東京アートミュージアムで、9月5日より12月27日まで行われている。安藤忠雄氏が設計した吹き抜けの美術館で、一人で3か月も写真展をやるというのはけっこう凄いことだ。ここにフォトセッションが解散した頃の写真から、現在までの写真が展示されている。モノクロでガッチガチに硬く焼いた写真から、カメラを半分水没させて撮影した風景までを同時に見ることができるということだ。

彼女のWEBサイトでプロフィールや個展、グループ展の項目を見てみると、あらためてその仕事量に驚かされる。たとえば、個展の『「NU ・E」1〜17 03FOTOS/東京』というのは、楢橋さんが自分で作った「03FOTOS」というギャラリーで17回個展をやったということだ。その他、イルテンポやツァイトフォト・サロンといった日本の有名な写真ギャラリーや海外のギャラリー、美術館で数多くの写真展を開いてきた実績というのは、本当に凄いと思う。オレと一緒にプリント始めたくせに、楢橋朝子はずーっと遠くの方に行ってしまったようだ。

この写真展の会期中には、森山大道さんや石内都さんら5人の方とのトークイベントも行われるそうだ。私も見に行きたいと思っている。

・楢橋朝子サイト「03FOTOS」
< http://www.03fotos.com/ >
・東京アートミュージアム
< http://www.tokyoartmuseum.com/ >

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com

上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/ >
上原ゼンジのブログ
< http://zenji.jugem.jp/ >

●上原ゼンジの写真展「実験写真家 上原ゼンジの世界」
会期:10月27日(火)〜11月8日(日)11:00〜19:00 月休
会場:NADAR/OSAKA(大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館B1 TEL.06-6251-8108)
< http://www.zenji.info/exhibition/Nadar/DM.html >
< http://nadar.jp/osaka/schedule/091027.html >