[2708] もてないおとこたちのうた

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《WEBで見るとふ〜んって感じ、プリント見るとおお〜ってなるね》

■映画と夜と音楽と...[433]
 もてないおとこたちのうた
 ワイルドバンチ/北国の帝王/マーティ
 十河 進

■ところのほんとのところ[24]
 東京フォトに続いて10月もイベントや個展が
 所 幸則

■デジクリトーク
 あの素晴らしいトイレをもう一度
 もみのこゆきと

■セミナー情報
 DTP Booster 007(Tokyo/091013)「InDesignの文字組みアキ量徹底攻略」


■映画と夜と音楽と...[433]
もてないおとこたちのうた
ワイルドバンチ/北国の帝王/マーティ

十河 進
< https://bn.dgcr.com/archives/20090918140400.html
>
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●鬼瓦のような笑顔のボーグナインが好きだった

アーネスト・ボーグナインが好きだった。40年前、僕の友人は「ボーグナインは笑った顔が怖い。まるで鬼瓦のようだ」と、ボーグナインの笑顔を愛情を込めて形容したが、もちろん友人もアーネスト・ボーグナインが大好きだったのだ。僕たちはアーネスト・ボーグナインの怖い笑顔が見たくて「ワイルドバンチ」(1969年)を何度も見にいった。

男たちが死を覚悟してマパッチ将軍率いるメキシコ軍に戦いを挑むのは、ダッチ(アーネスト・ボーグナイン)の思いを共有するからである。ダッチはマパッチ将軍の砦にメキシコ人のアンヘルと一緒に金を受け取りにいくが、アンヘルだけが捕らえられダッチは彼を見捨てて帰らざるを得ない。だから、ダッチはアンヘルを救いにいこうと仲間たちに提案するのだ。

しかし、マパッチ将軍の砦にいってもリーダーのパイク(ウィリアム・ホールデン)を始め仲間たち(ベン・ジョンソンとウォーレン・オーツ)は女を買いにいき、やる気があるのかないのかわからない。ダッチは娼婦の家の前に座って、仲間たちが出てくるのを待つだけだ。やがて、パイクが現れ「レッツ・ゴー」と言ったとき、待ってましたとばかりにダッチは口を耳まで広げるほどの笑顔で「へへっ」と笑う。

男たちはライフルを抱え、四人並んでマパッチ将軍のところへいく。そして、瀕死のアンヘルの喉を切り裂いたマパッチ将軍をパイクが即座に撃ち殺し、数百人の兵士たちと一触即発の緊張状態になったとき、ダッチは再び耳まで避けたように口を広げて歯を見せ、「へへっ」と笑う。確かに、その笑顔は鬼瓦のようだった。その顔をサム・ペキンパーはアップショットで見せてくれる。

僕がアーネスト・ボーグナインという役者の顔を明確に憶えたのは、間違いなく「ワイルドバンチ」だったが、そのとき既に彼は中堅の性格俳優としてハリウッドで尊敬されるポジションにいたのだ。アーネスト・ボーグナインは、その14年前にアカデミー賞主演男優賞を獲得している名優だったのである。それを知った僕は「あの顔で主演?」と不思議に思った。

アーネスト・ボーグナインのファンになった僕は、幸運なことに「北国の帝王」(1973年)というステキな映画と出逢う。リー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナイン、年を重ねた渋い男たちが死闘を繰り広げる映画だった。時代は大恐慌の頃、アメリカ中を放浪するホーボーのリー・マーヴィンと、鉄道会社の車掌であるアーネスト・ボーグナインが無賃乗車を巡って対決する物語である。

ホーボーの語源は「方々へいく」という日本語だという説もあるが、本当のところはわからない。1929年、突然に株が大暴落し未曾有の不況がアメリカを襲い、世界中に波及した。最近のリーマンショックみたいなものだ。その大恐慌時代、多くの貧しい人々が職を求めてアメリカ中を放浪した。その頃のことを詳しく小説に書いたのは、ジョン・スタインベックだ。「二十日鼠と人間」や「怒りの葡萄」を読めば、当時の雰囲気が理解できる。

そんな時代、どんな列車にもただ乗りをする伝説のホーボーがいた。それがリー・マーヴィン演じる中年男だ。一方、自分が乗務する列車には絶対に無賃乗車はさせたことがないと誇っているのが、アーネスト・ボーグナイン演じる強面の車掌である。彼は、列車から叩き落としたホーボーが、列車に轢かれて死んでも眉ひとつ動かさない。彼にとっては無賃乗車させないことが、職業的誇りのすべてなのである。

ホーボーたちが死に追いやられ、それに対するリベンジの気持ちがあるのかもしれないが、リー・マーヴィンは、アーネスト・ボーグナインの列車にただ乗りすることに命をかける。冷静に考えれば、下らないこだわりだ。だが、下らないことに命をかける話にバカな男たちは熱中する。アーネスト・ボーグナインが乗っていない列車に乗ればいいだけではないか、と思う人はこの映画を見る資格はない。「タイタニック」でも見て、泣いてなさい。

●この男の素晴らしさがわからない女たちは...

笑った顔さえ怖い...そんなアーネスト・ボーグナインなのに「マーティ」(1955年)を見たときには、何て優しい男なんだろうと僕は何度も頬を濡らした。鬼瓦のような顔が、優しく頼りがいのある兄貴のように見えてきた。この男の素晴らしさがわからないようなら、女たちには見る目がない。しかし、人は見かけが大事なのだと改めて思い知らされたのも「マーティ」だった。もてない醜い男も、自分のことは棚に上げて美人が好きなのである。

「マーティ」という映画、1955年度のアカデミー賞で四部門を獲得している。主演男優賞、作品賞、監督賞、脚色賞と主要部門ばかりである。獲れなかったのは主演女優賞だけだ。おまけに、カンヌ映画祭グランプリまで受賞した。この評価の高さは、一体どうなっている、と現在から見ると思わないでもない。監督はデルバート・マン。最初の作品で監督賞をもらってしまったプレッシャーからか、その後、あまり大した作品はない。

もちろん、主演のアーネスト・ボーグナインは素晴らしい。あまり美しくないヒロインのベッツィー・ブレアにも好感が持てる。物語もよく練られている。50年以上昔の映画である。当時の結婚に対する常識を考慮すれば、かなり先進的な意識も盛り込んでいる。それに、容姿という人間の外見の問題をこれだけ突っ込んでいる映画も珍しい。それは、普遍的なテーマであると「マーティ」を見て僕は思った。

男は「美人を連れて歩きたい」と思い、女は「イケメンを彼氏にしたい」と願う。連れている女に街ゆく男たちが振り返ると、男はムッとしながらも誇らしさを感じる。女だって同じだ。自分の友人たちから「あなたの彼氏、ステキね。イケメンだわ」と言われて嬉しくない女はいない。自慢に思う。イケメンを彼氏にしている自分への満足感が湧き起こってくるはずだ。

マーティは、多くの弟妹を持つイタリア系アメリカ人である。長男のマーティは苦労して弟や妹を結婚させ、今は母親と二人暮らしだ。精肉店で10年働き、人々から信用されているマジメな男である。店主からは店を買い取らないかと誘われている。それほど評価されているのだ。だが、彼はまったくもてない。34歳になるまで、恋人ができたこともない。

彼は、母親からいい女が集まるというダンスホールへいけと勧められる。だが、彼は「もう二度もいったよ」と答え、しつこく勧める母親に突然、「もう傷つきたくないんだ。俺はアグリーなんだ」と激昂する。彼は女にもてたことがない。自分の容貌にコンプレックスを抱いて生きてきた。だが、その夜、親友に誘われて彼はダンスホールへいく。

ダンスホールの隅でひとり立っていたマーティは、軽薄そうな男から「ダサい女ときてしまったのだが、別のを見付けたので乗り換えたい。おまえを友人として紹介するから、後で女を送ってくれたら5ドル出す」と誘われる。「そんな...、女の気持ちを考えてやれ」とマーティはきっぱり断るが、男は別の男に話を持ちかけ5ドルを渡す。

男がテーブルで待つ女のところへもうひとりの男を連れていき、話をしている。マーティはずっと見ている。女が首を振り、男たちはテーブルを離れ、「失敗したんだから5ドル返せ」と言っている声が聞こえる。女は涙ぐみ、ダンスホールのベランダへ出ていく。マーティは女を追い、泣いている女をおずおずとダンスに誘う。

女は、高校で化学の教師をしているクララだ。マーティは、クララ相手にお喋りをする。マーティは、自分が精神的に解放されていることに気付く。彼は自分の生い立ちや家庭の事情、父母のこと、早くに父が死に大勢いた弟妹のために生きてきたこと、軍隊時代の話など、すべてを打ち明けられる相手であることに驚く。マーティは翌日のデートを約束し、土曜の夜は終わる。

翌日、クララといなくなったマーティに腹を立てている親友がやってくる。彼は一瞬見かけたクララのことを「イモだ」と吐きすてるように言う。友人たちも「イモみたいな女は連れて歩きたくないぜ」と冷たい。見せびらかすように美人を連れ歩くのは、男の見栄だ。「どうだ、おれはこんな美人にもてているんだぜ」と自慢したいのである。

クララと意気投合し、初めて女性から「もう一度逢いたい」と言われたマーティは有頂天だったが、仲間たちの言葉に心がぐらつく。また、クララを自宅に連れていき母親に会わせたとき、母親がインテリであるクララの返事を快く思っておらず、母親から「もう逢わないよね」と念押しされたこともマーティを迷わせている。

マーティはクララに電話ができない。約束した時間はどんどん過ぎてゆく。クララは、父母とリビングで電話を待ちながら涙をこぼす。いつも振られて傷ついてきたマーティが、今度はクララを傷つけているのだ。しかし、ラストシーン。マーティは自分の気持ちに従い、ある決意をする。彼は連れ歩いて自慢できる女が欲しいんじゃない、本当に愛せる人が欲しいのだ、と気付く。

後年、強面で鳴らした容貌魁偉なアーネストボーグナインだが、「マーティ」では若くてシャイなボーグナインが見られる。ボーグナインの顔が次第に可愛く見えてくる。アカデミー主演男優賞も当然だと思う。イモと評されるクララも、優しく美しい女性に思えてくる。映画は、登場人物たちの性格や内面を見る者に伝えてくるからだ。だが、現実の人間の優しさや思いやりは、見た目からは伝わらない。

●早川義夫の「もてないおとこたちのうた」を愛唱した

彼は、大学生の頃、早川義夫の歌を愛唱していた。特に「もてないおとこたちのうた」はお気に入りだった。「何の因果か彼女はおらず、いつも男といじけた話」と自嘲的に歌っていた。一種の衒気だと思う。もてないことに苛立ちはなく、もてないことを誇っていたのかもしれない。だが、今から思えば、それもやせ我慢だった。本当はもてたかった。

確かに、彼はもてたことがない。しかし、もてようとしたことは何度もあるし、今も魅力的な女性に会えば気を惹こうとする気持ちが、意に反して顕わになる。気を惹こうとする自分がイヤだし、自尊心も保てないので彼は無関心な振りをする。要するに、口説いて振られたとき、自分のプライドが傷つくのが怖いのだ。そんな男は、女性からすると気取ったイヤな奴かもしれない。もてたくない男なんて、本当はいないのだ。

20年ほど前のこと、仕事を終えた夕方、彼は渋谷の公園通りを歩いていた。今はどうか知らないが、当時はナンパのメッカといわれた場所だ。彼の前を若い女性が歩いていた。若い男がすっとその女性に寄り添った。「ねえ、僕と同じくらいかな。ちょっと話しない」という声が聞こえた。おお、これが話に聞くナンパか、と彼は初めての経験に少し興奮(?)した。そのまま観察する。

しかし、その女性は男を見向きもしなかった。一切、無視してハイヒールの音をカツッカツッと響かせる。足を止めようとはしない。それでも男はずっと話しかけながら並んで歩く。どれくらいそんな風にしていただろう。時間にしたら一分もなかったはずだ。男はしきりに話しかけ、女は完全に無視して駅の方へ去った。

彼は足を止めて、男を目で追った。男は再び公園通りを登り、パルコの前で立ち止まった。物色する目で通りを見る。すぐに次の女性を見付け、さっきと同じように声をかけた。それを見届けて、彼は駅に向かった。彼は深く感心していたのだ。「あれほど見事に相手に無視されたら、僕のプライドはズタズタになる」と友人のソゴーに話したら、「そんなこと言ってたら、ナンパなんてできないさ」と言われた。

男たちは「もて自慢話」が好きである。彼は自慢する話がなかったのと、若い頃にはそういう話をするのは下品だと思っていたので、自分から話すことはなかったが、歳を重ね、気取った奴だと思われないために、下世話な話もするようになった。しかし、自慢するような話もないなと己の来し方を振り返るとき、思い出すのが10数年前のことだ。

もてない彼も女性に腕にすがられたことが、一度だけある。ところが、駅の切符売り場の前で、女性に腕にすがられたまま彼は途方に暮れた。そんな状況にまったく慣れていなかったからだ。「......さん、確か××方面でしたよね」と無粋に聞くと、相手は「忘れました」と答えた。彼はますます途方に暮れ、そのまましばらく沈黙が続いた。

その沈黙に業を煮やしたのだろう、相手の女性は「わかりました」と言うと、きっぱりと彼の腕を放し、切符を買って改札の向こうに消えた。その後ろ姿からは怒りがうかがえた。「この唐変木!」という声が聞こえてきそうだった。ご免なさい、と彼はつぶやくしかなかった。そんな彼は彼女を傷つけたのではないかと、未だに後悔している。「マーティ」を見て身につまされている。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
勤め先で編集者の人材募集をしています。リクルート担当は僕です。一応、30歳までですが、経験は不問です。ネットスキルのある人は歓迎します。興味のある人は、http://www.genkosha.co.jp/
へ。そろそろ試験問題を考えなければ......。

●305回までのコラムをまとめた二巻本「映画がなければ生きていけない1999-2002」「映画がなければ生きていけない2003-2006」が第25回日本冒険小説協会特別賞「最優秀映画コラム賞」を受賞しました。
< http://www.bookdom.net/suiyosha/1400yomim/1429ei1999.html
>
受賞風景
< http://homepage1.nifty.com/buff/2007zen.htm
>
< http://buff.cocolog-nifty.com/buff/2007/04/post_3567.html
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■ところのほんとのところ[24]
東京フォトに続いて10月もイベントや個展が

所 幸則
< https://bn.dgcr.com/archives/20090918140300.html
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●東京フォト前夜

VIP Viewing(特別内覧会)という、初日の前夜に行われたイベントに、[ところ]も作品の展示チェックも含めて参加した。特別なお客様、関係者が来場し、腰を据えて作品を見る日ということらしい。なかなか立派な会場で少し緊張した。Edward Weston、Ansel Adamsなどのオリジナルプリントも久々にじっくり見られたが、あまりにVIPが多過ぎたり、照明がちゃんとされてない部分もあったりで、もったいないないなーと思った。VIP Viewingの様子は、水谷充さんのブログで少し見られます。
< http://mmps-inc.jugem.jp/?day=20090904
>
< http://www.tokyophoto.org/
> 東京フォト2009

●東京フォト初日

初日の午前中はすごい人出だったらしいが、[ところ]が13時に入った時はちょうどいい感じの入り具合。昨夜は人がいっぱいで、照明の不具合もあったりして、あまりいい作品が見られないなと感じたんだけど、今日は違った。結構いいのがあってちょっと頭が疲れた。難しいなあ、作品の評価は、と[ところ]は思いました。

「ところは今からコシノヒロコのショーに行って、19時のレセプションにはもどります」って、携帯からmixiの日記に書いて16時半に東京フォト会場を抜けだし、恵比寿のガーデンヒルズに行った。

コシノさんのショーはここしばらく皆勤賞で見てるんですが、今回は特に白と黒のシンプルなもので気に入ったものが多かった。最後のドレスは服というよりオブジェ的な意味で興味をもった。ショーの会場から出ると、花輪の行列の中に民主党の鳩山さんからの花があって、真ん中だった。選挙の結果を知らせる感じだなーと思いながら会場をあとに。

渋谷の自宅にもどり、うがい薬でうがいをしてから六本木の会場に戻る。レセプションは人だらけですごいことになっていた。その間にプリントが売れた。うれしいな。いっぱいの人が来てうれしかった。だけど覚えきれないくらいの人だった(汗

●評価が高かった「PRADOX-TIME-」

東京フォト2009は、3日間+内覧会で5000人以上が見に来たということで、とりあえずは成功でしょう。実際宣伝もあまりしていなかったので、こんなに入るとは思っていなかった。宣伝しすぎなくてよかったのかな?

沢山のマイミクの方が来てくれた。最終日は深瀬さん(キュレーター)が朝一にご家族で来て下さってうれしかったです。なかよしモデルさんも来たし、大学の同期も何人かにも偶然あった。25〜26年ぶりの同期! 写真評論家の飯沢耕太郎さんもいたし、ナンバーのAD征矢さんや、コスモスの新山さんも! 数えきれない。みなさんありがとうございました。

豪華本も2冊売れた。後で連絡取りあう人も数人いるので、もっと売れるかもですね。豪華本の写真ここで見られます。
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/archives/20090903-1.html
>
プリントも数枚売れ中です〜。今週いっぱいくらいやりとりしないとハッキリしないみたいです。「1second 01」も会場に置いてあった25冊を完売、[ところ]が鞄に持っていた2冊も渡したが、最後の2時間は1冊もない状況でした。

ちゃんとした写真雑誌の編集長達はちゃんと来てくれて、「PRADOX-TIME-」を堪能されていた。コマフォトの坂田編集長が来たときに後藤繁雄さんが通りかかったので一緒に見ない? ってことでたっぷり見てもらった。みんなに大好評で、やっぱネットじゃ写真の真価はわからないってことがはっきりした。

後藤さんも「WEBサイトで見るとふ〜んって感じなんだけど、プリント見るとおお〜ってなるね、すごくいい、もうしわけなかった」って言ってたよ。capaの編集長の石田さんにもじっくり見てもらった。なんかみんなで見てるところを、いっぱい写真に撮られたような気がする。

最終日の早い時間に、偉い雰囲気のキュレータっぽい人が、ギャラリー21の他の写真家の方に連れられてきたのですけれど、途中から僕の特製本を見始めて随分言葉がはずんでいたので、なにかいいことっぽいなと思って僕もそばに近寄って聞いていたら、収蔵しましょうって話になって、決定しました。その方はサンディエゴ美術館の館長さんでした。これでアメリカ西海岸にひとつ、東海岸にひとつ、ロンドンにひとつ、パリにひとつ。日本は2か所に収蔵される。

最終日の最後の時間はやっぱり芋を洗うような状況。この時間に来ても、ちゃんと写真とは向き合えないと思うから残念。来年はもう少し広い場所に移るといいな。東京は場所代が高いからこれが限度なのかなー。

●10月はイベント、個展が続々と

さて、今度はART SHOW「Birth2」です。9月20日(日)に表参道ヒルズで開催。
< http://birth.vc/
>

「Birth2」はファッションショー形式のアートショーです。服の代わりにアートをまとったモデル達が会場を歩き、空間を支配します。[ところ]は、渋谷1secの写真を使用したワンピースというかドレスで出品します。照井智己さん(服飾造形作家、オートクチュールデザイナー)とのコラボ出品です。

出品作4点。16時に第1幕、17時半に第2幕です。19時からパーティー。僕のブースには1secドレスを着たモデルが2人いるので、写真撮れたりもしますよ。ショーはもちろん無料です。パーティーは前もって連絡くれたら半額にディスカウント! お待ちしてます。

この後、10月1日(木)の「Photographers Summit5」、これまでのスタイルでやる最後の回です。手作り感のあるイベントをぜひ見にきてください。ただし、予約しないと入れないと思います。「ところのほんとのところを読んで予約!」と書くと予約をとりやすいと思います。
< http://www.phsmt.net/index.html
>

そして、10月6日(火)から11日(日)までの個展「写真集出版記念 1sec 感染。写真展」。個展はオープニングパーティーが必ずあります。どなたでも参加できますので、ぜひおいでください。今回は特別に、小さなサイズの買いやすいプリントを何点か出そうと思ってるのでお楽しみに。詳細はこちらで近々にアップします。
< http://www.tokoroyukinori.com/1sec_project_j.html
>

【ところ・ゆきのり】写真家

CHIAROSCUARO所幸則
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト
< http://tokoroyukinori.com/
>

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■デジクリトーク
あの素晴らしいトイレをもう一度

もみのこゆきと
< https://bn.dgcr.com/archives/20090918140200.html
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転職で失敗した。わたしは今、甘やかな過去の思い出を抱きしめ、哀しき現実に打ちひしがれている。

かつてシステムエンジニアをやっていた頃の社屋は、バリバリの新築だった。出入り口はバイオメトリクス認証。データセンター入室にはカードキーによるチェック。全館警備がかかった館内で、人間の体温をセンサーが感知すると、けたたましいサイレンが鳴り響き、警備会社から係員が駆けつける仕組みになっていた。

しかし、今の職場は「建築されたのは戦後ですよね?」と確認したくなるほど、ボロボロに古めかしい。施錠しても「これ、力任せに引っ張ったら開きますけど??」というシロモノなのである。女子更衣室のドアも歪んで閉まらないため覗き放題だ。"震度5で倒壊する"に2000点賭けてもいい建築物なのである。

そのような環境であるからして、たとえば流し台の高さなど「欲しがりません。勝つまでは!」時代の日本女性の平均身長に合わせてあり、比較的身長高めのわたしなど、茶碗を洗うときに腰が痛いったらありゃしない。エレベータは「階段使ったほうが早いんじゃね?」と思うくらい遅く、巷間「日本一遅いエレベータ」と呼ばれている。

しかし何よりも許しがたいのはトイレである。どのへんが許しがたいのかと言えば、「じょ〜」とか「ぷぅ」が外部に高らかに鳴り響く構造になっているからなのだ。

そもそもの間違いはフロアレイアウトだ。狭いエレベータホールに面して男女のトイレが並んでいるのだが、トイレエリアとエレベータホールを区切る扉は常時固定開放状態。タイル張りのトイレ内部は音が反響し、増幅された音はエレベータホールに丸聞こえだ。しかも女子トイレ側には応接エリアがある。応接エリアと言っても、椅子とテーブルを置いただけのオープンスペースなので、ここにも音は丸聞こえなのである。実証実験したから間違いない。

「水の無駄遣いは止め、環境を守りましょう」なんと正しい主張であろうか。しかしこのような音丸聞こえの環境で、トイレの二度流しをするなと言われても無理である。トイレの二度流し、すなわち音を誤魔化すために排泄中に水を流し、トイレットペーパー使用後、もう一度水を流すというヤマトナデシコの嗜みのことである。もちろん、わが職場の和式水洗トイレには音姫などという文明の利器などありはせぬ。

もし"トイレの二度流し禁止令"が出たらどうなるか。応接エリアで「新製品の試作品を開発したいんですが資金不足で......」「なるほど。そうなると機器購入経費や試作・外注経費に使える助成金や融資をお探しなんですね」などと会話している時に、突如響き渡る「じょ〜〜〜〜〜〜〜」。お客様に対して、そのような乱暴狼藉を働くことになるのである。

この状況に「おぉ、なんと雅な響き。風流じゃのう......」と、高級料亭で懐石料理を前にしながら、あたかも鹿威しの音を聞くように耳を傾けるなどということは、悟りを開いたブッダでなければできまい。

「君のすべてを愛してるんだ。"じょ〜"はもちろん、"ぷぅ"さえも!」と情熱的に愛してくれる男がいたとしても、他人にそんな音なんざフツーは聞かれたくない。ヤマトナデシコには耐え難い恥辱である。

好きな男に♪骨まで愛して〜♪と歌う女はいるだろうが、♪"ぷぅ"まで愛して〜♪と歌うクレイジーな女がいたら是非お会いしてみたい。

しかも、わが職場の人々は電話がかかってきた時に席に不在だと、トイレまで呼びに来るのである。「もみのこさーん、電話ー。もみのこさんてばー!」。えぇい、やめいっ!。トイレにまで呼びに来て、いったいわたしにどうしろというのだ?。「今、やっとる最中だっ!出られんっ!」と叫べとでも言うのか。こんなことでは、おちおちトイレになど行けぬではないか!

あぁ、昔の会社のトイレは良かった......。一年中快適な温度に調整されたトイレは常春の桃源郷。暖かい冬の便座など、一度座ったら立ち上がりたくないほどに心地よく、焚き火代わりに冷えた指先を暖めてしまいそうになったものだ。しかも音姫など使わずとも、うまく座ると音が立たないのだ。音姫も二度流しも必要ないのである。"音が立たない便器内部の傾斜に関する研究開発"に注がれたTOTOの情熱を思うと、涙を禁じ得ないわたしである。

ウォシュレットという名の愛しき白亜のオブジェよ。失って始めて、おまえを愛していたことに気付いた愚かなわたしを許しておくれ。今なら「跪いて便器をお嘗め!」といわれたら喜んでそうするだろう。しかし、あの素晴らしいトイレをもう一度と願っても、もう遅い。わたしの人生の伴侶は、高らかな音を響かせる和式水洗トイレになってしまったのだ。

エコカー減税などどうでもいい。民主党は是非最新式トイレ導入減税制度を創設し、設置した団体には助成金でも出していただきたい。温室効果ガス25%削減だけでなく、節水も大切な環境対策であるからして。

あぁ、朝から晩まで、毎日が羞恥プレイ……。

♪あの素晴らしい愛をもう一度
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♪骨まで愛して
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410@yahoo.co.jp

働くおじさん・働くおばさんと無駄話するのが仕事の窓際事務員。かつてはシステムエンジニア。
前回、自分の書いたコラムが掲載されたメルマガが届いたとき、恥ずかしさで逃げ出しそうになった。WEBコラムを書いていたことはあるのだが、メルマガと違って読みたくない人はスルーすればいいので気楽だったのだ。しかし有無を言わさず送りつけられるメルマガという媒体はやはり恐ろしい。
日刊デジクリは10年近く前から購読している畏れ多い媒体であるのに、初めて書いたコラムが「おまえなんかラブホにラチって、ひっくり返してでんぐり返して」だなんて失礼にもほどがある(しかし、初稿はもっとエロだった)。世界の中心でごめんなさいと叫びたい。
あぁ、それなのに今回も「じょ〜〜〜〜〜〜〜」だなんて……。いったい何を考えているのだ、おまえは!(←自分)。きっとこのコラムが掲載されたデジクリが届いたら、今度は死にたくなるだろう。来月、わたしのコラムがなかったら、ついに自殺したと思ってください。

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■セミナー案内
DTP Booster 007(Tokyo/091013)「InDesignの文字組みアキ量徹底攻略」
< http://www.dtp-booster.com/vol07/
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< https://bn.dgcr.com/archives/20090918140100.html
>
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日時:10月13日(火)19:00〜21:00
会場:デジタルハリウッド本校セミナーホール
(東京都千代田区神田駿河台2-3 DH2001Bldg.)
参加費:2,000円(事前決済)
定員:120名(事前登録制)

内容・講師:
「InDesign文字組みアキ量徹底攻略」リターンズ
InDesignカンファレンス2008東京でおこなわれた、InDesignでオリジナルの文字組みアキ量設定を作成するためのポイントをロングバージョンで再演!

InDesignを使う場合の難関ともいえる文字組みアキ量設定。その機能を使いこなす第一歩として、オリジナルの文字組みアキ量設定を作成する場合の基本的な考え方を解説。また、文字組みアキ量設定を使うとどのようなことができるのか、文字組みで拘ってみるポイントや作業を楽にするためのポイントを紹介します。

大橋幸二 < http://www.dtp.il24.net/tubo/
>
都内を中心に活動するフリーランスのグラフィックデザイナー。印刷物やWebのデザインだけでなく、DTP関連の執筆なども行う。著書に『Adobe InDesign文字組み徹底攻略ガイド』(ワークスコーポレーション)、『InDesignクイックリファレンス』(毎日コミュニケーションズ)など、DTP関連の著書が多数がある。DTPの壺を主催。

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■編集後記(9/18)

・まだ日差しはきついが、空気は乾燥し、風もあるので涼しい。今日も快適な朝の散歩。お供のデジタルカメラの画面サイズを16:9に変えてみたら、いつもの風景が変わって見えてとても新鮮だ。歩きから戻って、玄関の暗い所で立ったまま今日の収穫を確かめる。ハイビジョンのテレビで鑑賞できるほど素晴らしいものは撮れていない(そもそもハイビジョンのテレビまだ買っていない)。9/1に書いた、「13階建反対」の赤い幟がリニューアルされたので、もちろん撮影してある。赤地に白抜き鮮やかに「高層建築反対」となって、再び工事予定地周辺を埋め尽くした。どういう戦術か分からないが、争いは長期化しそうな気配だ。彼岸花も写っている。半月くらい前に草刈りトラクターが入って丸坊主になった土手は、しばらく枯れ草色だったが今では緑色が優勢になっている。そんな中で彼岸花10本ずつくらいのグループがあちこちに立っている。半月前の殲滅作戦をどう凌いだのか。その当時、彼らはまだ土の中にいたのだろうか。地上15階が2棟、923戸の巨大マンションが食品工場の跡地に建設中で、その現場にも度々行って、工事の進捗状態を勝手に記録している。常に携えるお散歩カメラ。わたしのナニコレ珍百景探しは続く。(柴田)

・家電。余裕をもって店に入ったのに、全部買い終わるまで三時間超。それも閉店時間という巻きが入ったからペースがあがったの。途中で缶コーヒーが出たよ。こちらも疲れたけど、店員さんも疲れただろうなぁ。全部の商品なんて見比べていられないから、前もって絞り込んでいた第一候補と、店員さんのお薦めとの対比だけなんだけど。納得しないと買えないのね。こちらの第一候補と、プロが薦める商品とが違っていたら、どうしてそっちの方がいいのかって聞いてみたくなるし、違いも知りたいし。店員さんとの会話はとてもためになる。家庭事情まで教えてもらったよ〜(汗)。間取りを持っていったのは良かったらしい。洗濯機のドア方向をその場で決められるし、照明やエアコンも部屋の大きさを見ながら候補をあげてもらえる。スペースをはかっておいたので、置けるかどうか判断できたよ。友人から忘れがちだと指摘されていた洗濯機パンの排水位置についても。お店を出たら立体駐車場への客用エレベーターが止まっていて、店員さんの車で駐車場まで送ってもらったさ(汗)。で、昨日、家電搬入と工事。冷蔵庫運搬時に壁紙に傷が入って、エアコン業者さんが、家電搬入担当者に指摘してくれた。搬入関連部門からすぐさま電話が入って、対応がだいたい決まる。と、玄関でチャイム。そこには販売店員さんがいてびっくり。車で30分はかかるはず。(hammer.mule)
< http://www.dtp-booster.com/vol07/
>  InDesign文字組みアキ量徹底攻略!