デジアナ逆十字固め...[97]大阪で写真展やセミナーをやります
── 上原ゼンジ ──

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今月の27日(火)から大阪のギャラリー「ナダール」での写真展が始まる。去年の今頃、尾仲浩二さんが運営するギャラリー「街道」の流し台のスペースに写真を飾らせてもらったのだが、それを見たナダールのオーナーの林和美さんからお話をいただき、企画展を開いていただくことになった。ありがたいことです。

会期中にはトークショーがあり、その前日にはDTP Boosterのセミナーもある。トークショーのタイトルは「創作のネタばらしをします!」ということで、ビー玉レンズとか万華鏡だとかの現物を持ち込んで、どんなふうに撮影しているのかの、実演などしてみたいと思っている。今までひた隠しにしてきた恥ずかしい姿が生で見れます。

それから、写真をどうやって加工しているのか、といったあたりもお見せするつもりだ。人から見たら「インチキじゃん!」というようなこともあるかもしれないな。けっこう手を加えてる写真もあるから。でもオレはドキュメンタリーをやってるわけじゃあないんだから、何をやったっていいんだよ。と言っても、そんなにあざといことをやっているつもりもないけどね。

DTP Boosterのセミナーの方のタイトルは「カラーマネージメント講座─書籍ができるまでを例に」というもので、今まで私が関わってきた本や雑誌の色再現に関して、失敗例や成功例をあげながら、「何をやればいいのか?」ということについて話してみたいと思っている。印刷機本機のプロファイルまで作って運用している人というのは少ないと思うから、参考になるんじゃないかと思います。

もちろん、そんな特殊な事例ばかりじゃなくて、なるべくお金も手間もかけずに、カラーマネージメントの環境を整える方法についても、お話したいと思ってます。



●気合いを入れたプリント

写真展のために、久しぶりにまともにプリントをした。ふだんの仕事では見本プリントを出力したりすることは、ほとんどない。デジタルデータだけだったら、メールやサーバーを使って送れるけど、見本を付けたらバイク便を出動させなければならない。それに編集者とデザイナー、印刷会社間のやりとりだって、ネットを介して行われているのだから、ハードコピーの見本がうまく活用されることはほとんどないだろう。

そんなわけで、久しぶりに自分の手元で行ったプリントは楽しかった。写真では撮影も大事だけど、それと同じぐらいプリント作業も重要なものだと思う。そんな重要なことを怠っていたというのは、良くないな。プリント作業の中では、いろいろと発見もあったし、たまには、気合いを入れたプリントをすることにしよう。

今回は用紙として、「ピクトランバライタ」(コスモスインターナショナル)というペーパーを提供していただいた。バライタというと暗室で使う印画紙のことを思い出すけど、こちらはインクジェットプリンタ用のバライタ紙だ。

暗室で使っていた印画紙には、バライタ紙とRCペーパーがあった。バライタの方は「紙」でRCは「プラスチック」。バライタは乾燥が遅く、フラットに乾燥させるのが結構大変。高価ではあるけれど、トーンなどはきれいに出る。一方、RCの方は乾燥が速くて、取り扱いが楽。安価だけど、バライタと比べるとちょっと安っぽい感じ。使いわけとしては、バライタの方は展覧会や販売用。RCの方は取りあえずのプリントやベタ焼き用。というような認識を持っていた。でも、ちょっと調べてみたら、その認識は誤りだったことに気づいた。

まず、RCペーパーというのは、プラスチックというわけではないみたいだな。いや、確かに触った感じはプラスチックじゃなくて、紙です(笑)。紙は紙なんだけど、まずベースになる紙をポリエチレン層でサンドイッチにした上に乳剤層があるんだそうだ。だから、ベース紙まで薬品等が染み込まず、水洗や乾燥が楽だというわけ。

一方のバライタ紙の方には、ベース紙の上を硫酸バリウムの白色微結晶によるバライタ層というのがある。紙の白色度や平滑性を高めるためのものですね。ということは、印刷用紙のコーティングや、インクジェットプリンタ用紙の蛍光増白剤と同じような役割をしているということだ。ナルホド......。

今回使用したピクトランバライタの説明は以下のようなもの。

「本紙は結晶性硫酸バリウム層(バライタ層)を設けており、蛍光増白剤を使用しておりません。そのため、永遠不変に近い均一な白色を維持します。もちろんバライタ層の上にはピクトランの基本技術である最高度の高透明インク受容層を有しており、バライタの白さから暗黒の黒さまで最大限の階調性で新しい写真の世界を表現することが可能であるとともに、従来の古典技術である、銀塩バライタ紙の風合いも、そのまま感じ取ることができます」

つまり、一般的なインクジェットプリンタの用紙のように蛍光増白剤を使わずに、印画紙のバライタと同じように結晶性硫酸バリウムを使ってみました。どうですか、お客さん! ということですね。

で、使用感は悪くないですねえ。印画紙にプリントをしていた時は、RCペーパーのつるんつるんの光沢具合が気に食わなくて、バライタ紙を使っていた。RCペーパーにも半光沢や無光沢というのはあるんだけど、これもいまいち。インクジェットプリンタの場合もビカビカの光沢紙というのは、あまり好きじゃないんだけど、マット系だと色の出具合がイマイチなので、仕方なく光沢の強い紙を使っている。

まあ、風合いがありつつ、色も出る(色再現域が広い)という用紙が今までになかったわけじゃないんだけど、このピクトランバライタはなかなかいいですよ。ただ「超高級作品画質インクジェット用紙」というだけあって値段は高いです。作品としてきっちりプリントしておきたい、という場合のための用紙ですね。実際にどんな感じのプリントになるのか見てみたい人は、大阪までぜひどうぞ!

◇実験写真家 上原ゼンジの世界
< http://nadar.jp/osaka/schedule/091027.html
>
※トークショーは定員になってしまったようです。ありがとうございます!

◇DTP Booster 008(Osaka/091030)
< http://www.mebic.com/konokuri4/1335.html
>
< http://www.dtp-booster.com/vol08/
>

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
< http://www.zenji.info/
>



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by G-Tools , 2009/10/16