つはモノどもがユメのあと[11]mono10:カタツムリよりはウサギがいい──「Impulse Technology Animals」/Rey.Hori

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本連載で何度も触れた通り、筆者は長らくMac派で通している。筆者がMacを使い始めて以降のMacの歴史上、発表されただけで「欲しい!(けど高い! と続くこと多し)」とワクワクしたマシンは幾つもあるが、筆者のMac歴の中でかなり昔に位置するワクワクマシンとしては、Quadra(クアドラ)シリーズがある。

QuadraシリーズはIIfxを頂点とするそれまでのMacintosh IIシリーズの後継たるフラッグシップシリーズで、最大の特徴は搭載されている新しいモトローラ社製のCPU「68040」にあった。

68040は、IIシリーズの上位機種群に搭載されていた68030の後継チップとされている。同一クロックでも68030の数倍高速化されているとのことだが、これはFPU(浮動小数点計算ユニット)を内蔵し、且つキャッシュメモリ(データキャッシュ&命令キャッシュ、各4KB、だそう)を持ったことによる。と、例によって理解している風を装う筆者であるが、まあ平たく言えば「メチャメチャ速いCPUが載った」ということだ。



ところが、完全互換が期待できる直系の後継CPUなのにもかかわらず、このキャッシュメモリのせいでソフトウェアの非互換が発生してしまった。68040の性能を引き出すためには、キャッシュ(のCopyBackモード)の存在を前提にしたコードでなくてはならないわけで、68040登場以前に作られたアプリの一部は速くなるどころか、最悪クラッシュして動かせない、という事態が発生したのである。

そこでAppleとしてはコントロールパネル内(MacOS Xで言うシステム環境設定内)にスイッチ(たしか「キャッシュスイッチ」という名前だったか)を設けて、キャッシュをオンオフできるようにした。キャッシュ非対応のせいでクラッシュしてしまうようなアプリを使う時は、キャッシュをオフにした状態でマシンを起動することができるようにしたわけだ。

だが、キャッシュを切りっぱなしでは、キャッシュに対応したアプリを本来の性能で使えない。といって、対応済みアプリを起動する度にキャッシュをオンにしてマシンを再起動するのはあまりに面倒臭い......というわけで登場したのが今回のモノ、Impulse Technology社の「Animals」なのだ。時は1992年頃、3.5インチフロッピー1枚に入ってオツリが来る小さなソフトウェアである。値段は......さすがに覚えていない(数千円だったと思う)。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono10.html >
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono10.html#p2 >

Animalsもキャッシュのオンオフを制御するコントロールパネル書類(cdev、って久々に書くなあ)だが、純正品に比べてウレシイ点が二つある。一つはキャッシュの制御が「None(オフ)」「WriteThrough」「CopyBack」の三段階(キャッシュモード)から選べること、そしてもう一つは予めアプリ毎にこの三段階のどれで動かすかを個別設定できることだ。マシンの再起動なしで、使うアプリに応じてキャッシュモードを自動的に切り替えてくれる小さなスグレモノなのだ。

設定パネルではラジオボタンで上記のキャッシュモードを選ぶのだが、前出の順にカタツムリ、カメ、ウサギのアイコンが付いている。Animalsというネーミングはここから来ているのだろう。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono10.html#p3 >
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono10.html#p4 >

Quadraユーザには必携のユーティリティとして、当時のMac系雑誌に必ず紹介されていたAnimalsであるが、やがて68040に正式対応したアプリが増え、更にはPowerPCの登場によって歴史の彼方に消えて行った。そのPowerPCももはや過去になりつつあり、MacはIntel入ってるの時代に入ってるわけで、筆者の周囲にはMacユーザが比較的多いものの、Animalsを覚えている人はなかなかいない気がする。

考えてみると、当時このAnimalsのように「比較的小さなサードパーティ製だけど、それがあるとないとで使い勝手が純正品オンリーの環境とまるで違う」ような必須とも言うべきユーティリティが数々あり、且つそれを紹介する殆ど唯一の一般的な手段として、それぞれに特色のあるMac系雑誌が幾つもあった。筆者も多い時は数誌を毎号購読していたものだ。ずいぶん勉強させてもらった。

その頃に比べると、今のOSは完成度が高くて快適&世話要らずなぶん、どこか閉じた印象で、後から何か付け足してイジる楽しみは小さくなった(少なくとも一般的ではなくなった)気がする。その一方、ユーティリティやちょっとしたソフト群の情報はネットから迅速に手に入り、そのままダウンロードで入手できたりする。そして、これら全てのアオリを食ったせいだと思うが、Mac系雑誌はずいぶん淘汰が進んでしまった。

さて、今とその頃のどちらが良いか......効率や仕事絡みの思考回路で考えると自明の答えが出そうだが、あの頃のわけの判らない、しばしば一定量の苦行と引き換えに手に入るノウハウや楽しさが、記憶の中でますます光っている気がするのは筆者だけのノスタルジィだろうか(だろうな、うん)。

【Rey.Hori/イラストレータ】 reyhori@yk.rim.or.jp

手前勝手で極めて私的な内容にも関わらず、お叱りのお声も特にないまま(ホントか?)、今年1月末の連載開始から何とか一年もったようです。お読み戴いている皆様に改めてお礼申し上げます。残弾数が多少気になり始めていますが、次の「モノ」の発掘を進めます。......これまでのモノについて何かご質問がおありの方はお早めにどうぞ。書き終えたモノを、いよいよ処分してしまう可能性もないわけではありませんので。

日付的には少々早いですが、年末のご挨拶をば。読者の皆様&編集部の方々、どうぞ良いお年をお迎え下さい。トンボガエリを打つディスカバリ号でおなじみの2010年が繁栄と復活の年になりますよう。......さぁて、来年どんなタブレットMacが出て来るか、即買い必至のワクワクマシンでありますように(あとシューちゃん&琢磨の現役復帰にも期待。可夢偉もどっかで走っててくれよ〜←執筆時点で未定)。

3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にご打診をお待ちしています。
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