ところのほんとのところ[30]28年間の封印を解き放ってパリ/所幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,700文字)


無事ハノーバーから帰り、しばらくまたパリ生活を満喫することに。いつものホテルにチェックインしようといたら、フロントの人がニヤリとして「キャッソンドゥ」と言って鍵を渡す。「キャッソンドゥ」とは402のフランス語だ。そう、僕は402号室にいつも泊まってる。屋根裏部屋だけど一番広くて安いからなんだけど、なんだか家に帰ってきた気分で凄く気楽。その日はゆっくり寝た。泥のように。やっぱ初ドイツはつかれてたんだと思う。

その後の数日はデータの整理やら、「キャパ」で連載っぽくなっている1secのためのParisの写真を仕上げるので精一杯。12月号は上海、1月号はパリ、2月号はドイツ。

合間に、カフェ飯(一応フレンチ)たべて、最後の夜は本格フレンチにいって鴨とキノコを堪能。昔風の伝統的なフレンチだったけど、となりのテーブルの人と仲良くなった。ふたりとも弁護士だそうで、片方はロンドンっ子で片方はパリっ子だった。

最初はロンドンっ子が軽く英語で語りかけてきた。どうみてもアジア人の僕ら二人には、英語のほうが少しは分かると踏んだようだ(笑)。一緒にいた友人はカタコトの英語でここのニシンの酢漬けはヨーロッパで一番うまい! とか話していたが、途中からもう一人のフランス人の方に流暢なフランス語で話しかけたので二人とも凄くびっくりしていた。



「旅行者じゃないんだ!」って会話になって、「そういえば君たちの食後のチーズの頼み方は(ここはチーズが選び放題食べ放題で有名)普通じゃなかった。アジアの人はこんなにチーズを食後に食べない」と言い出した。まあ、僕らはチーズ好きだけど、日本人なのでアジア人なんだけどな。友人はフランス永住権もってるけど、まあそういうイメージなんだろうな。

その日の帰りに「キャパ」の編集長と電話でしゃべる。カラーでパリのいい写真ある? とのこと。まあ普通に1sec用に撮ってるからありますけど(カラー情報捨ててモノクロームにしてるけれど、もともとカラーだしね)。だけど、パリには特別思い入れがある身としてはちょっと考えた。

だいたい28年間の封印を解き放って、僕はいまパリを撮っている。パリという街への憧れが強すぎると判断して、撮らなかった28年前の僕自身。もう7回はパリに訪れているが、まともなカメラを持って歩いたこともなかった。

20年以上撮らなかったわが街渋谷を、去年からとうとう撮り始めた今が、その時かもしれないと思い、一気に様々な街を撮り始めている。それでもパリは特別な存在なので、ある程度ターゲットを決めて攻め方を考えている。

パリに30年近く住んでいる友人や、僕が核にしようと思っているパリのある街を中心に動いてるクリエイターたちと話して、絞り込みながら撮り始めたところだ。ただそこと離れて1〜2カ所ほど、どうしてもポツンと撮りたい場所がある。それが「ラストタンゴ・イン・パリ」のあの橋。

それでもこの橋の話題が出ると、パリの知り合いみんながあの鉄橋はいいよという話になる。だけど、僕が核にすると決めた街とは何の関係もない街にそれはある。そこを明日の朝、飛行機に乗る前に見に行くかな。

この3日間、ずっと雨だったのに、そう決めると晴れたのだ。真っ黒な服を来て、真っ黒なα900とバリオゾナー16〜35ミリ、その上にNDの8を付けてるからホントに真っ黒。あの映画の結末にならないように撮っていたら5分後には日差しがなくなった。そういうものかもしれない。
その時の写真がこれ、日差しの中の「ラストタンゴ・イン・パリ」
< http://d.hatena.ne.jp/progetto-magazziniere/20091219/1261224512 >

この一連の撮影旅行の話は、ニコニコ動画で話していこうと思う。16日以降ほぼ毎週放送します。
コミュ名 所幸則 1sec(ONE SECOND)
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744 >

さて、日本に帰ってきてからは「ヨコハマフォトフェスティバル」で流すためのスライドショー(15分)を作るのに結構時間を割いた。16日(土曜日)には「ライブトーク&スライドショー」を、太田菜穂子さん(キュレーター/G21ギャラリスト)と15時半からやります。開始1時間前から会場受付にて整理券を発行いたします。

テーマは"写真の中に流れる時間とは何か?""都市を写真化することとはどういうことか?"「21世紀の都市の肖像」に取り組む所幸則の作品「PARADOX-TIME」の書籍制作、展覧会づくりという現在進行中のプロジェクトを通して、作家とキュレーターがリアルタイムで経験している思考の発展、交わされている議論の内容、それぞれの役割について率直に語ります。是非お誘い合わせの上いらしてください。

その「ヨコハマフォトフェスティバル」の用意が想像以上に手間取り、3日徹夜。凝り性だからだけど疲れました。なんとかそのデータを渡して、今度は新幹線に飛び乗って広島へ。広島駅の電停から初めてひとりで路面電車に乗った。なんだか、こう広島の人になった気分が少しする(馬鹿?)。10年ぐらい前から年に4〜8日ぐらいの幅で、広島に来るようになった。流れている時間が、明らかに渋谷とは違う。

エピーソードを一つ。電鉄から降りようとしたときにそれが起こった。東京では考えられないことだが、電車から降りるときに料金を支払おうとするとき、料金150円なんだけど200円入れてもお釣りはでない。当然みんなわかっていることだけど、人間うっかりすることもある。ある日、急いで飛び乗って1万円札しかないときがあった。確かに小銭をたくさん持っていたはずなのに見当たらない。運転手に言うと「次回乗ったときに300円いれてくれたらいい」。

[ところ]はびっくりしたが、なんて素敵な街だと思った。もちろん、次回は300円入れたよ。素敵シティ広島の人を裏切らないように。ずっとこういうであってほしいな。頑張って広島を素敵に撮らなきゃね!

【ところ・ゆきのり】写真家

CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >

◇『1 Sec ONE SECOND 01』出版記念 One Second - SHIBUYA-YUKINORI TOKORO
会期:2009年12月5日(土)〜2010年1月24日(日)
会場:PROGETTO(プロジェット)店内にて
< http://www.progetto.co.jp/event/index.html >

CHIAROSCURO 天使に至る系譜