ネタを訪ねて三万歩[61]「あばよ」と言えない小さな別れ/海津ヨシノリ

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●映画三昧の正月

用心棒 [Blu-ray]久しぶりに年末年始は映画漬けで過ごしました。もちろん、テレビではなくてDVD鑑賞です。今回選んだのが黒澤明の「用心棒」と「椿三十郎」、そして「隠し砦の三悪人」。今更とやかくいう作品ではありませんし、何度も見ているのに、無性に見たくなってしまったのです。特に「用心棒」と「椿三十郎」のラストに、三十郎が放つ「あばよ」の台詞が大好きです。3作品ともモノクロ作品であったので、『モノクロ』『カラー』『カラー調整』と、連鎖的に正月明けが納期であった原稿執筆を思い出し、冷や汗をかきました。危ない、危ない。

スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]原稿を仕上げ、続いて見たのが「スタートレック」2009年版で、若き日の搭乗員達のエピソード。とにかく文句なく「スタートレック」映画で一番面白いのではないでしょうか。VFXの完成度、キャスティング、シナリオ、そして細部に行き渡っているデザイン......なによりオリジナルのテレビ版「宇宙大作戦」を知っている私には、2009年版のキャストが自然にオリジナル版にオーバーラップしました。

エンティングに流れるオリジナルテーマもナイスな演出。そして、なんと言ってもレナード・ニモイ演じるオリジナル版のスポックが登場するシナリオ(サービス)には脱帽です。おまけに何故か、R2D2も出ています。



そのようなわけで、すぐにイメージの世界に入り込んでしまう私にとって、この「スタートレック」2009年版は強烈な作品となってしまいました。他にも色々とレンタルして見まくってしまいましたが、今年の正月明けは例年よりも早くやってきたので、正月気分は直ぐに返上でした。そして、出来れば避けたかった小さな別れがとうとうやってきました。

2008年から、2年続けて緊急臨時非常勤講師として、後期だけ担当した駿河台大学での授業も、年明けの試験&レポート提出をもって完了しました。これでこの大学ともお別れになりました。片道2時間のために5時半に起きたことも今となっては懐かしい思い出です。

そんな私がこの2年間に担当したのは、情報処理技法、アニメーション文化論(比較文化論)、ウェブデザイン演習(情報表現論)。2年目となる昨年は、履修希望者が2.5〜3倍に膨れあがってしまい、そのまま授業開始となり、演習は講義へと変更せざるを得ませんでした。そんな具合に色々とアクシデントに見舞われましたが、毎週相手をしてくれた海津ゼミ(私は非常勤講師ですので、当然ながらサークルのような集まりです)の学生達との別れがとうとうやってきました。

そんな彼らとの記念に、全員揃った写真を撮影するのは意外と大変でした。見知らぬ在校生にいきなり撮影を頼んでも、嫌な顔一つせずに協力してくれたので大切な記念写真を得る事が出来ました。そして、海津ゼミ生とはこれからも定期的に会う事になるでしょう。彼らと出会うために駿河台大学の非常勤講師になったような縁を感じています。今後どこかの大学でゼミを担当することになったとしても、彼らが私の第一期ゼミ生であることは変わりません。正直、彼らとは本当のゼミで係わりたかったのは確かですが、運命と時間の歯車は無情に動いてしまいました。

ところで、それとは別に最後の講義の後や、その後のメールなどで、私の挨拶に対し、見知らぬ学生数10名から「来期は本当に来ないのですか?」「何とかならないのですか?」と言われたことは本当に嬉しかったです。実は昨年の10月末までは、まったく異なるエンディング(ハッピーエンド?)が用意されていましたが、それは残念ながら大どんでん返しで実現しませんでした。とにかく、2008年から係わった延べ453名のみんな......またどこかで会いましょう。短い間でしたが、本当にお疲れ様でした。取り敢えず飲み会があと一回は決まっています。

もちろん、多摩美術大学でも顔見知りの学生との別れが近づいています。こちらは卒業式に出席するので、最後の別れはまだ先ですが、やはり寂しいものですね。そんな事を考えていたら、多摩美術大学で3月卒業予定のデザイン学科の学生達から「海津先生を囲む会」という飲み会に誘われました。なんだか定年退職した先生を囲む同窓会のようですが、声かけられているうちが華ですからね。私はデザイン学科には直接関わっていませんが、共通教育として私の授業を履修していた事が縁で、1年生の頃からの顔見知りのため寂しさも大きいものです。

実は最近知ったことですが、飲み会に誘ってくれた学生達は、昨年卒業したデザイン学科のYさんと仲が良かったらしく、そのYさんも1年生の時から顔見知りの学生でした。実はそんな先輩達からのPRで私の授業を履修してくれる学生が毎年かなりの数いて、なんだかそんなつながりが嬉しくなってしまいます。ですから私も、可能な限り学生達のイベントには参加するようにしています。コミュニケーションは大切ですからね。

そんな流れで、昨年末27日に多摩美術大学造形表現学部造形学科及び同大学院生達が、校内で自主講評会を行うということで誘われたので、手作りケーキ持参で参加してきました。講評会は本格的にもかかわらず、教員は私だけでした。ただし、本来学生だけで行う講評会でしたので、参加していた私がイレギュラーであったのですが、顔見知りの学生が多かったこともあり、楽しい時間を共有することが出来ました。

こういう場では、普段話したことのない学生と話すチャンスが生まれます。そして、話の中で意外なつながりを知り、更に交流の輪が広がるというわけです。多摩美術大学造形表現学部には3つの学科があり、一番多くの学生がいるのがデザイン学科なのですが、何故か私は造形学科の学生に一番多く知り合いがいます。

普段、デザインという世界で仕事をしていると忘れがちな、造形に対する熱い志のようなモノが伝わってくるこの空気は本当に新鮮でした。世の中は見せかけや口だけの「芸術やアートもどき」が氾濫していますからね。最後は駅前のお好み焼き店で打ち上げをし、創作活動について熱く語り合うのでした。

次回は何かアナログ作品を持参したくなりました。学生の時に戻ってみるのも面白いかもしれませんね。もちろん気持ちの上でという事です。私は自分の授業の時は確かに講師ですが、授業をしていない時は学生気分に戻っています。ノスタルジーではなく、学生の立ち位置で吸収できるモノは何でも吸収しようという意味です。

それは、私とは違って様々なオーラを放つユニークな教職員の方々に、不思議な視点を持つ学生達という具合に、全身で色々な刺激を受けることが出来るからです。自分が感じたイメージを自分の中でどのように消化・料理するのかというプロセスは大切な事です。そして、常に誰かの刺激を感じ、誰かに刺激を与えられるようになりたいものです。ですから、完成されてしまった著名なアーティストの作品を鑑賞するよりも、学生の作品の方が刺激的ではないかと感じています。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

MY COLLECTION / 時代"時代" by 薬師丸ひろ子 in 1988
もちろん中島みゆきのカバーですが、私は薬師丸ひろ子の方が本家の中島みゆきよりも好きです。なんというか、中島みゆきだと力強すぎてしまうからです。薬師丸ひろ子の透明感のある声は希少価値がありますからね。

チェブラーシカ コレクターズBOX (数量限定) [DVD]"Cheburashka" by Roman Kachanov in 1969-83(USSR)
授業で取り上げたチェブラーシカの世界観とキャラクターが、癖になってしまいました。「ヴィレッジヴァンガードにキャラクターグッズを発見しました」と、学生から写メが届くなど、周りではちょっとしたブームになっています。授業で取り上げて良かったと、改めて感じてしまいました。調子に乗ってしまった私は、そのままキャラクターグッズに手を出してしまうという禁じ手を。でも、正直これには癒されます。

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■アップルストア銀座のセッション 2月15日(月)19時より
Apple Store GinzaにてMade on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 42
[プチアニメーションテクニック/中編]
Photoshopのアニメーション機能を使った、プチアニメーション作成手順と可能性について整理検証いたします。時間軸での組み立てが可能なPhotoshopのアニメーション機能は、意外と使えるツールとしてクリエイターの遊び心をくすぐってくれます。予約不要・参加無料・入退席自由ですので、気軽に参加してください。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター
< http://www.kaizu.com >
< http://kaizu-blog.blogspot.com >
< http://web.me.com/kaizu >

○立場が逆転の楽しさ

おかげさまで、アップルストア銀座でのセッションも来月で43回目となります。私としては大変嬉しい継続となっています。色々な場所で色々なセッションを行っていますが、まだまだ勉強不足を痛感することが多く冷や汗の連続です。

1月のアップルストア銀座のセッション前に、アップルの方から受けた質問の答えが見つからず、来場されていた方に「もしどなたか知っている方がいたら教えて下さい」と振ったところ、直ぐにBlogに答えをアップして下さった方がいて大感激。大学の講義でも、私は教えるのではなく教えてもらう立場で教壇に立っていますので、こんな関係がこれからも色々な場所で構築できる事を大いに期待しています。