[2782] アウトローたちの悲しい結末

投稿:  著者:


《シビれるねぇ(ほとんど死語ですが)》

■映画と夜と音楽と...[449]
 アウトローたちの悲しい結末
 十河 進

■ところのほんとのところ[31]
 写真に本気「ヨコハマフォトフェスティバル」
 所幸則 Tokoro Yukinori

■デジクリトーク
 DTPデータ解体新書──DTPでよく使用されるソフトのバージョンは何?
 笹川純一



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■映画と夜と音楽と...[449]
アウトローたちの悲しい結末

十河 進
< https://bn.dgcr.com/archives/20100129140300.html
>
───────────────────────────────────
〈顔役暁に死す/花と嵐とギャング/恋と太陽とギャング/暗黒街の顔役・十一人のギャング〉

●あれは一体何というタイトルの映画だったのか

あれは、一体いつのことだったのだろうか。何という映画だったのか。そう気になっている映画がある。父親に連れられていった映画だ。鶴田浩二が出ていた。高倉健も出ていた。それは憶えている。男たちが犯罪計画を練る。決行の夜、鶴田浩二は女が運転する車の助手席に乗り、女の太股をスカートの上から鷲掴みにする。そのシーンが、今でもくっきりと浮かんでくる。

網膜に焼き付けられたようなワンシーンだ。それだけがずっと記憶に残っている。そんな映画が何本かある。最近になって、そんな何本かが解明できた。若き加山雄三が主演した「顔役暁に死す」(1961年)もそんな一本だった。岡本喜八監督作品だから、衛星放送などで放映される機会もあった。先日も岡本喜八特集の一本として放映されていた。

僕が憶えていたのはアラスカ帰りの青年が、市長だった父親が殺された事件を追う物語だった。その中で、加山雄三が義理の母親に誘惑されそうになったとき、唇を近づけてくる義母の鼻を自分の鼻でいきなりこする。「何?」と問う目をする相手に、加山雄三は「これがエスキモーの挨拶だ」と答える。

まだ10歳にならない頃だったと思うが、よくわからないなりに性的なものに敏感だったのだろう、僕はそのシーンを強く憶えていて、あれは何の映画だったのかと思っていたのだが、それが「顔役暁に死す」だと判明し、さらにそのシーンの相手は義理の母ではなく、水野久美だったと記憶違いを訂正されたのだった。

その映画で加山雄三の若く色っぽい義理の母を演じていたのは、島崎雪子だった。それって、あの神代辰巳監督と結婚した人だったっけ。改めて、そんなことを連想した。考えてみれば半世紀近く昔の映画だ。公開は4月10日である。小学4年生になったばかりの僕は、父に連れられてそんな映画を見ていたのである。

9歳だった。僕は高松市立松島小学校の4年生で紫組だった。白組、青組、赤組、黄組、緑組とあって、紫組は最後だった。要するに6組である。ひとクラスに55人近くの生徒がいた。木造の校舎で、床にところどころ穴が開いていた。冬場は、そこから風が吹き込んだ。拭き掃除をすると、棘が刺さることもあった。遙かな昔の話だ。

●石井輝男監督の「ギャング」シリーズを集中して見た

すでに翳りが見え始めてはいたが、まだ日本映画は全盛の頃だった。東映は、メインのプログラムを公開する映画館チェーンに加えて、第二東映を設立した。その第二東映では、新人監督の深作欣二がデビューした。後に知ったのだが、京都撮影所の作品ではなく、東京の大泉学園にある大泉撮影所での作品が多いようだった。

僕が見た鶴田浩二や高倉健が出ているギャング映画も、そんな中の一本ではなかったのだろうか。そこで昨年、石井輝男監督の「ギャング」シリーズを集中して見た。東映の「ギャング」シリーズは、1961年から始まり、11本が作られた。石井輝男監督が6本、深作欣二監督が2本、小沢茂弘監督、井上梅次監督、降旗康男監督が一本ずつ作っている。

「網走番外地」シリーズも石井輝男監督のヒット作である。新東宝で監督になった石井輝男監督は、60年代に東映で大活躍したのだなあ、と今更ながら感心する。成瀬巳喜男監督の助監督として育った石井監督は、どんな思いでギャングやヤクザを描いていたのだろう。

それにしても、東宝で岡本喜八監督が中心になって「暗黒街」シリーズが制作され、日活で無国籍アクションが大量に製造されていたその頃、東映も「ギャング」シリーズを作っていたのだと思うと、何だか感慨深いものがある。当時は、アウトローが映画の主役だったのかもしれない。

しかし、東映の石井輝男監督の「ギャング」シリーズは、タイトルが少し変わっていた。「花と嵐とギャング」(1961年)とか「恋と太陽とギャング」(1962年)といったタイトルで、人はどんな物語を想像するだろうか。まるで青春映画のタイトルではないか。しかし、東映の映画では、アウトローたちはいつも悲しい結末を迎えた。

キャストは、鶴田浩二、高倉健、江原真二郎、待田京介、杉浦直樹、丹波哲郎といったところだ。なぜか東宝の「暗黒街」シリーズにも鶴田浩二は出演していたが、東宝から東映に移籍して東宝時代の役柄をそのまま継承したのだろうか。その辺の事情はよくわからない。

「花と嵐とギャング」も「恋と太陽とギャング」も、当時のガンブームを反映していたのだろう。予告編では「ガンアクション」というフレーズが、やたらに使われている。「ボンドショップ・MGC」といった、モデルガンショップの宣伝が頻繁に少年雑誌に載っていた。子どもたちはモデルガンを手にして、仲間たちと遊んでいた。もちろん僕も例外ではなかった。

●ついに見付けた鶴田浩二主演の洒落た犯罪映画

石井輝男監督の「ギャング」シリーズを一本一本見ていった僕は、ついにあの映画を見付けた。鶴田浩二主演の犯罪映画である。情婦が運転手をつとめている。いよいよ決行となったとき、鶴田浩二は助手席から手を伸ばして運転する女の太股をぐっと鷲掴みにする。そのシーンだけが、僕の頭の中に50年近く刻み込まれてきたのだ。

その映画は「暗黒街の顔役 十一人のギャング」だった。問題のシーンは三分の二を過ぎた頃に現れた。鶴田浩二は、情婦(瞳麗子)の太股をぐっと掴んだ。その瞬間、「この映画だったのだ」と僕は興奮したけれど、その掴み方は決して鷲掴みではなく、掌を太股に置いてやさしく力を入れたという感じだった。僕が50年抱いてきたイメージは、一体何だったのだろう。

その映画は1963年の1月15日に公開になっている。ということは、僕は小学5年生の三学期に見たことになる。父は東映の映画が好きで、よくひとりでも見にいっていた。日曜日になると、父はフイッといなくなる。夕方、帰ってきた父のズボンのポケットからは、次週公開作品を紹介する映画館発行の薄いパンフレットがよく覗いていた。

しかし、そのときは僕も連れていってもらえたのだ。併映は「一心太助 男一匹道中記」(1963年)だった。沢島忠監督で、もちろん主演は中村錦之助だ。だとすれば、母と兄も含めた家族4人で見にいったに違いない。その頃、中村錦之助の「一心太助」シリーズは明朗時代劇として人気があった。なぜか、将軍家光と太助(魚屋です)は錦之助の二役だった。

今になってみれば、「一心太助 男一匹道中記」については、ほとんど記憶がない。太助と天下のご意見番・大久保彦左衛門のやりとりのシーンは何となく憶えてはいるが、深く刻み込まれたという印象はない。僕は大久保彦左衛門役としては進藤英太郎をよく憶えているけれど、彼が彦左衛門を演じたのは「家光と彦左と一心太助」(1961年)だけである。

なぜ、進藤英太郎の大久保彦左衛門役を憶えているかというと、いつも悪役ばかりやっていた(錦之助に斬られてばかりいた)進藤英太郎が、善玉の役をやっていたからである。「一心太助」シリーズは1958年から1963年までに5本制作されたが、大久保彦左衛門役は月形龍之介(水戸黄門役で有名です)に決まっていたのだ。

父と母は子どもたちに「一心太助」を見せようと映画館にいき、そこでおかしな犯罪映画「暗黒街の顔役 十一人のギャング」も見せることになったのだ。当時のそうした映画には、東映作品でも東宝作品でも日活作品でも、なぜかナイトクラブのシーンがあり、そこでは必ずヌードダンサーが踊っていた。ストーリーに関係しないサービスカットである。それはセミヌード程度なのだが、当時の僕にはひどく扇情的に思えた。

●女好きの前科者を演じている後の大スター高倉健

「暗黒街の顔役 十一人のギャング」にも、お約束のナイトクラブのシーンがあり、もちろんヌードダンスがローアングルで捉えられていた。しかし、そのヌードダンサー役は、ストーリーにからむ重要な役だった。瞳麗子という女優が演じたダンサーは、主人公である鶴田浩二の情婦であり、鶴田浩二と杉浦直樹の強奪計画を知り、積極的な協力を申し出る。

──運転手がいるな。
──私がやるわ。運転はお手のものよ。

こんな具合で、瞳麗子は浜松の大きな工場の給料強奪計画に参加する。「話したのか」と最初は鶴田浩二をなじった杉浦直樹も「あんたがやってくれるのなら安心だ」と納得する。そう、強奪計画の要は、いつもドライバーだ。強盗の運転だけを請け負う男を主人公にした「ザ・ドライバー」(1978年)という、ウォルター・ヒル監督の映画だってあったじゃないか。

「暗黒街の顔役 十一人のギャング」を50年ぶりに見て僕が驚いたのは、日本に正統的で洒落た犯罪映画があったことだ。犯罪の計画を立て、スポンサーを募り、必要な人材を集め、決行する。もちろん、スポンサーや集められた人材の方にもいろいろな事情があり、奪った金を横取りしようとする企みなども描かれる。

シビれるねぇ(ほとんど死語ですが)と思ったのは、鶴田浩二が拳銃を手に入れるために、ある酒場を訪れるシーンだ。マスターが武器商人なのである。屋根裏部屋のようなところで、ビジネスの話が始まる。「素人が相手だ。ルガーがほしい。脅すには最適の銃だ」などと鶴田浩二が言い、マスター役のアイ・ジョージが「あんた、気に入った。いいものが手に入ったんだ。安くしとくぜ」みたいなことを言う。

今から見れば、これもお約束のシーンなのだが、パターンがきちんと守られている犯罪映画は見ていて安心できる。計画を実行する途中で、いろいろな障害が起こり、仲間割れがあり、計画を知った別のギャングたちの襲撃がある。気持ちよいくらいにパターン通りに進んでいく。当時のモラルだから、もちろん犯罪は引き合わない。やはり彼らも、悲しい結末を迎える。

今や寡黙な大スターになった高倉健だが、この映画では女好きの前科者を演じている。口が軽く、軽薄なトラック運転手役だ。脇役だから出演場面はそんなにないのだけれど、後年の自身の主演作に比べたら5倍くらいのセリフを喋る。彼は、ナイトクラブのホステスをやっている浮気女(三原葉子)に入れあげていて、金がいる。

そのことを調べた杉浦直樹が札束を見せて、「仕事しねぇか。ひと晩で一年分の給料が稼げるぜ」と誘うと、情けないくらい簡単に尻尾を振る。しかし、女に口を滑らせ、そのせいで別のギャングたちが計画をかぎつけることになるし、決行当夜、酔っ払って計画を台無しにしそうになる。あまりいいところはない。後に、日本を代表する俳優になるとは誰も予想しなかっただろう。

ところで、僕はもう少し年をとった三原葉子しか知らなかったが、この映画の彼女はふっくらとした肉感的な美人だ。高倉健を惑わし、彼が漏らした言葉から犯罪計画を知り、別のギャングに情報を売る。杉浦直樹を尾けてつかまり痛めつけられそうになると、「話は寝ながらでもできるわ」と誘惑する。こういうヴァンプ役をやらせると、三原葉子は絶品だった。

昭和30年代の映画だなあと思ったのは、主人公が実家に顔を出すシーンだ。貧しい長屋に老母がいる。彼は母に金を渡し「そのうち、楽をさせてやるよ」と孝行息子らしいことを言う。母親は「もう少ししたら妹が帰るから、会っておいで」と言うが、「またくる」と言って家を出る。

しかし、妹が「おにいちゃーん」と追いかけてくる。妹役は本間千代子だ。ふたりの互いを思いやる気持ちが伝わる。何億円もの金を奪おうとしているギャングだが、家族想いのやさしい男であることを観客に印象づける。ふたりの背後には、千住のオバケ煙突がそびえている。4本の大きな煙突が見る位置によって、2本に見えたり3本に見えたりするのでそう呼ばれたのだ。

映画は、その時代の空気を保存している。フィルムに定着し、封じ込めている。「暗黒街の顔役 十一人のギャング」は、僕が小学5年生のときの映画だが、僕にはその時代の空気が理解できる。子供なりに記憶がある。懐かしい雰囲気だ。街の様子、人々の服装や顔つき、当時の人々の心根や思いやり...、それは映像でなければ伝わらない。

しかし、その映画の翌年には、東京でオリンピックが開催されることになっていた。すでに、小林信彦さんが言うところの「街殺し」が進行中だった。首都高速が開通し、東海道新幹線が開業をめざしていた。世界中からやってくる人々に恥ずかしくないようにと、古くから続くものが壊され隠された。現在の東京の基礎は、そうやって作られたのだ。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com

昨年のことだけれど、東映の女優だった千原しのぶさんが亡くなった。ワイズ出版から「千原しのぶ」という写真集が出て、僕は買おうかと思ったが恥ずかしくてまだ買っていない。キツネ目の姉御タイプで、鳥追い女や小唄の師匠、女スリなどやらせると絶品でした。

●306回〜446回のコラムをまとめた「映画がなければ生きていけない2007-2009」が新発売になりました。
< http://www.bookdom.net/suiyosha/1400yomim/1447ei2007.html
>
●305回までのコラムをまとめた二巻本「映画がなければ生きていけない1999-2002」「映画がなければ生きていけない2003-2006」が第25回日本冒険小説協会特別賞「最優秀映画コラム賞」を受賞しました。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4880651834/dgcrcom-22/
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ところのほんとのところ[31]
写真に本気「ヨコハマフォトフェスティバル」

所幸則 Tokoro Yukinori
< https://bn.dgcr.com/archives/20100129140200.html
>
───────────────────────────────────
前回書いた「HIROSHIMA 1second」を、なんとか目処が立つところまで撮り終えた。目処が立つというのは、枚数的にも質的にも、自分のなかである程度納得出来るラインにきたということです。

車でいろいろ回って教えてくれた、穴吹デザイン専門学校の清水さんありがとうございました。撮影に付き合ってくれた、広島でフォトグラファーとして頑張ってる木村ヨーシローくんありがとう! もうひとり、暗室とフィルムの伝道師、高田トシアキさんも広島市内を付き合って歩いてくれてありがとう! おかげで迷子にもならずに撮影がスムーズに進行しました。

といったように、みんなの好意で無事に撮影が進み、いつも誰かの力を借りて僕の作品はできていくんだなとあらためて実感。人同士のつながりって本当に大事だ思う[ところ]であった。


東京に帰った次の日には「ヨコハマフォトフェスティバル」に向かいました。入ってすぐのポートフォリオレビューがとても盛況だった。友人の水谷充氏のページに写真も説明も載っているので、参照してみてください。
< http://mmps-inc.jugem.jp/?eid=239
>

その奥に、外国の写真家達のスライドショーのブースがある。さらにその奥に、スライドショーとライブトークイベントのブース。ここに[ところ]があと2時間後にはしゃべるブースがあって、現場に立ってみると結構ドキドキした。次々と交代でトークするのだから、[ところ]の時に人が入らないとなんか恥ずかしいし、わざわざ対談を頼んだ大田菜穂子さん(ギャラリスト)にも申し訳ない。

ちょっと緊張しながらも、さっきのポートフォリオレヴューのところに行ってみると、[ところ]の次の番にライブトークをされる予定の細江英公さん(大御所!)も、ポートフォリオをじっくり見ながら話している。気さくな人なんだな〜とか思ってぼーっとあるいてると呼び止められたりして、何人かの写真を見て意見言ったりしてみる。

熱気があるなあ。なんかいい感じですね。みんな真剣で、写真に本気の人だけでこんなに人が集まるなんて、日本じゃなかなかないような気がするな。永田陽一さん、後藤繁雄さん(主催した人たちみなさん)がんばってこれからもっともっと盛り上げてください!

大田菜穂子さんとは、話す内容をまったく打ち合わせもしていなかったので、自分で作ってきたスライドショーを見てもらいながら話していたら、もうお客さんが入って来てちょっと焦りました。はじめは30人ほどだったけれど、声が流れ始めるとどんどん増え始めて、一番前の列の正面に細江英公氏がどっかとすわったころはもう着席定員の50人近くにはなっていたでほっとしました。その後立ち見も多数出てよかった。

太田さんがギャラリストと写真家の関係や、[ところ]の写真について語ると細江英公さんがうないずいたり、絶妙のあいの手をいれたり、早くスライドショーが見たいと言ったり、盛り上げてくれたので助かりました。

次の回の細江さんと竹内万里子さんのライブトークショーは、世界のフォトフェスティバル事情がテーマで、僕も少しは知っていたつもりだったけど、とっても勉強になりました。写真で盛り上がるイベントっていいですねー。マスコミはもっとこういうイベントを取り上げてくれよーって思ったりもした[ところ]でした。


「ヨコハマフォトフェスティバル」から戻って、さて明日からはガンガンいくぞー! 「HIROSHIMA 1 second」を仕上げて、テキストも書かなきゃーってことだったのですが、寝て起きたらまったく声が出なくなってびっくり! 風邪の菌が声帯にだけ入って腫れてる症状だそうだが、薬をのんで少し良くなると、体は元気だからつい動いちゃってまたひどくなる。体はしんどくないものだから、つい何かしたくなる。充分安静にしていなさいと言われ、無理やり2日ほどおとなしくしていたら随分ましになった。

しかし! このあとすぐに北京と上海に行くので、「HIROSHIMA 1 second」を仕上げにかかる。のはいいんだけど、なかなか一枚にしぼりきれない。パリみたいに二枚にするか? といっても組み合わせがなかなか難しいし、仕上げる時間は一枚分ぐらいしかない。

なんとか、基町高層アパート群を撮ったものに決めた。ここはかつて原爆スラムと言われたところに、高度経済成長の時代に再開発事業として建てられたものだ。そう決めたら丸二日で一枚仕上げて、原稿を編集部に渡した。「キャパ」の3月号(2月20日発売)で見てください。自信作です!

■■
そして、今は北京での用事も終えて、上海にいます。
30日(土)上海から、「所幸則 1sec(ONE SECOND)変則放送土曜日22時」を放送します。是非みてください!
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744
>

今回は質問に答えようスペシャルってことで──

1)日本でいま他に撮ってみたい場所はありますか? 築地市場とかどうでしょう?
2)1secシリーズを海外でも撮るようになったことで、所さん自身にどんな影響がありましたか?
3)『世界の女性シリーズ*中国の女性の印象はいかがですか。』
4)海外の方が1sec作品を見た時の反応って、国や地域で差がありますか?
5)絵画と写真の魅力の違いについて
6)コマーシャルとファンアートでの環境の違いについて(第一期も第二期も所さんとしては、作家としてお仕事されてると思いますが、業界の環境は大きく違うと思います)
7)日本と海外での写真界の違いについて
8)中国金持ち層のプリント購入意欲や市場環境について
9)α900とDPシリーズの、プリント仕上げにいたる工程の違いや苦労について
10)プリントするペーパーに対するコダワリや評価について
11)一脚・三脚を使わないのは機動性を保つためでしょうか? 必要ないから?

──というような質問に答えます。興味のある方はぜひ見てください。上海のホテルからのニコニコ動画生配信は初めてなので、うまくいくかどうか、ちょっと予想はつかないのですが......。[ところ]からのお知らせでした。

【ところ・ゆきのり】写真家

CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■デジクリトーク
DTPデータ解体新書──DTPでよく使用されるソフトのバージョンは何?

笹川純一
< https://bn.dgcr.com/archives/20100129140100.html
>
───────────────────────────────────
吉田印刷所では2009年11月から12月にかけて、メールマガジンやブログにて「DTPでよく使用されるソフトのバージョンは何?(2009年末版)」という使用ソフトウェアのバージョンの投票をお願いしました。非常に多くのご投票を頂きありがとうございました。

早速ですが、投票の結果をお知らせしたいと思います。
まず、投票の数ですが順位は以下の通りになりました。

 [1位]622票...Illustrator
 [2位]528票...Photoshop
 [3位]427票...Acrobat
 [4位]396票...InDesign
 [5位]268票...QuarkXPress

前回(2008年)同様、Illustratorが一番多い回答となりました。ほとんど順位は変わっていませんが、Acrobatの回答数がかなり多くなったかなという印象があります。それでは投票数順に内容を見てみましょう。(5位以下は省略)

●Illustrator...622票

 [1位]38.6%...Illustrator CS3(+17.0ポイント)
 [2位]20.3%...Illustrator CS4
 [3位]15.3%...Illustrator CS2(− 7.0ポイント)
 [4位] 9.6%...Illustrator 10 (− 2.6ポイント)
 [5位] 9.2%...Illustrator 8 (−19.3ポイント)

Illustrator CS3が第1位になりましたが、Mac版ではIntelMacに対応し、パフォーマンスも良く、時期的にも落ち着いてきたためメインで使用し始めた方が多いということでしょうか。新しいバージョンは最初は不安定な部分も多いですから、様子見する方も多かったのではないかと思います。

最新バージョンのIllustrator CS4は堂々の2位。これは年末に行われたキャッシュバックキャンペーンなどの成果でしょうか。メインとしての使用がおよそ20%も増加するというのはかなりの増加なのではないでしょうか。

前回28.5%もあり、堂々の1位だったIllustrator 8は今回大きくポイントを下げて(−19.3ポイント)5位になってしまいました。これは大きな変化ですね。同じ母集団ではないにしても、実際に1年でそんなに大きく変わることはないだろう、と事前には思っていたので半分以下にまで下がったのは衝撃的でした。Macユーザーばかりではないですが、MacではいわゆるClassic環境のOSで動作するソフトウェアをメインで使用することは減ってきたようです。

●Photoshop...528票

 [1位]41.7%...Photoshop CS3(+19.6ポイント)
 [2位]19.9%...Photoshop CS4
 [3位]15.3%...Photoshop CS2(− 7.4ポイント)
 [4位] 8.3%...Photoshop 7 (−10.2ポイント)
 [5位] 7.0%...Photoshop CS (− 5.3ポイント)

1位のPhotoshop CS3がほぼ40%という大きなシェアを占めたという結果になりました。ここでも1位はCS3(Photoshop CS3)となっております。Illustrator CS3同様、前回から大きくポイントを伸ばしました。2位のCS4(Photoshop CS4)もほぼ20%というシェアを占めており、多くの方が新しいバージョンへ移行されたのが伺えます。4位のPhotoshop 7は10ポイント近くシェアを落としましたが、これもMacユーザーの方でClassic環境からかなりの数の方が移行したと考えられます。

●Acrobat...427票

 [1位]39.6%...Acrobat 8(+ 4.1ポイント)
 [2位]38.2%...Acrobat 9(+27.4ポイント)
 [3位]11.9%...Acrobat 7(−12.8ポイント)
 [4位] 5.2%...Acrobat 6(− 5.1ポイント)
 [5位] 3.0%...Acrobat 5(−12.6ポイント)

最新版のAcrobat 9とその前のバージョンのAcrobat 8でほぼ80%を占めるという結果になりました。Acrobat 9は2008年12月に発売開始されたIllustrator CS4やPhotoshop CS4などのソフトウェアと違って、先行して2008年7月に販売が開始されているためか、メインとしての使用する割合も非常に多くなっています。ここでもClassic環境で動作するAcrobat 5の割合が大きく減少しているのがわかります。Acrobatはどちらかというと、新しいバージョンを利用しても問題が起きる割合が少ないように思いますので、新しいバージョンに移行しやすいのではないかと推測されます。

●InDesign...396票

 [1位]50.0%...InDesign CS3(+17.8ポイント)
 [2位]19.7%...InDesign CS2(−17.6ポイント)
 [3位]18.4%...InDesign CS4
 [4位] 7.3%...InDesign CS (− 4.3ポイント)
 [5位] 2.8%...InDesign 2 (− 6.6ポイント)

ひとつ前のバージョンのInDesign CS3が半数のシェアを占める結果となりました。CS2とCS4がほぼ20%となっており、CS2がわずかながらCS4を上回っているのはInDesignがページものの文字組版を主体として行うソフトウェアのため、バージョンの違いによる影響が非常に大きく、新しいバージョンに移行しづらいということもあるのかもしれません。
私も100ページや200ページのInDesignファイルを新しいInDesignのバージョンで開いて「文字のズレがないか」「組版はおかしくなっていないか」などを確認する作業があったら滅入ってしまうかもしれません。

●QuarkXPress

 [1位]34.7%...QuarkXPress 4.1(− 0.2ポイント)
 [2位]34.3%...QuarkXPress 3.3(− 1.5ポイント)
 [3位]12.7%...QuarkXPress 6.5(− 1.7ポイント)
 [4位]12.3%...QuarkXPress 8 (+10.5ポイント)
 [5位] 4.5%...QuarkXPress 3.1(− 1.7ポイント)

前回のアンケートとは上位3つのバージョンの順位が全く変わらず、シェアもほとんど変わっていないという結果になりました。今回のアンケートでもClassic環境で動作するバージョンがほぼ70%ということで、QuarkXPressを利用している方々は、新しいバージョンに移行していない傾向が明らかになりました。


いわゆるCreative Suite 4に入っているソフトウェアは以下の様な順位になりました。

 Illustrator CS4...2位
 Photoshop CS4 ...2位
 InDesign CS4  ...3位
 Acrobat 9   ...2位

この結果からもかなり多くの方がメインのソフトウェアとしてCreative Suite 4を選択し始めていることが伺えます。


吉田印刷所ではPDF入稿を非常に積極的に推進しています。PDFに対応したバージョンの傾向を見てみます。

PDF/X-1aに対応したIllustratorのバージョンはCS2〜CS4となります。このバージョンが占める割合は74.2%になります。PDF/X-4に対応したIllustratorのバージョンはCS3〜CS4となります。このバージョンが占める割合は58.9%になり、半数以上はPDF/X-4に対応したバージョンをメインのソフトウェアとして使用していることが伺えます。

PDF/X-1aに対応したInDesignのバージョンはCS〜CS4となります。このバージョンが占める割合は95.4%になります。PDF/X-4に対応したInDesignのバージョンはCS3〜CS4となります。このバージョンが占める割合は68.4%になり、こちらも非常に高い割合で、PDF/X-4準拠のPDF作成ができないという状況は次第に解消されていることが伺えます。


●総括
回答していただいたMac環境でDTPを行っているユーザーの割合はかなり多いとは思いますが、QuarkXPressを使用しているユーザー以外はClassic環境からの脱却がかなり進んできたといえるアンケート結果だったのではないでしょうか。また、データ入稿はPDF入稿が推進されていますが、印刷向けのPDFとして用意されているPDF/X-1a・PDF/X-4に対応しているバージョンをメインのソフトウェアとして使用する方も非常に多くなってきたということで、PDF入稿への下準備はかなり整った感じがしています。

今回のアンケートにもDTP駆け込み寺の和尚様・読者様、デジタルクリエイターズの発行者様・読者様にご協力を頂きました。ありがとうございます。また、吉田印刷所のページをご覧頂き、アンケートにお答え頂いた方々にも御礼申し上げます。ありがとうございました。

【アンケート概要】
アンケート期間:2009年11月3日〜2009年12月31日
アンケート対象:主として「DTPサポート情報ブログ」閲覧者
アンケート方法:以下のページのウェブサービスによる回答(無記名回答)
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20091103/160000.html
>

【関連ページ】
DTP駆け込み寺
< http://www.dtptemple.org/
>

また、吉田印刷所では今月もDTPアンケートを行っております。今月は「DTPでよく使用しているOSのバージョンは何?」と題して、DTPやデザインを行う上で使用しているOSを回答頂いております。ちょうど1年前にも同じようなアンケートを行っておりますが、今回はMac OSXのバージョンを細かく分けてみました。ご回答は以下のページよりお願いいたします。なお、現在の投票状況などもリアルタイムに見ることができます。

◎DTPでよく使用しているOSのバージョンは何?(2010年1月版)
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20100107/165031.html
>
アンケート締切:2010年01月31日
アンケート方法:ウェブサービスによる回答(無記名回答)
皆様からのご回答をお待ちしております。


【笹川純一】sasagawa@ddc.co.jp < http://www.ddc.co.jp/
>

インターネットで印刷の注文を受け付ける印刷通販「特売プレス」でDTPデータ入稿を手がけている、新潟の印刷会社の人。今はPAGE 2010で行うPDFセミナー(2月4日)の準備真っ最中。実は翌日も品川のH社さんでPDFセミナーだっていう...。PAGE 2010は無料のセミナーなので是非ご来場下さい〜。たぶん一番眠い時間です(苦笑)。

◎ここだけは押さえておきたい『出力できる』PDFのポイント
日時:2010年2月4日(木)12:45〜13:45
< http://www.jagat.jp/content/view/1742/376/
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(1/29)

・Apple iPadが出た。電子ブック機能もついており、これが日本の電子出版にとって"黒船"になるのだろうか。と思っていたら、アップルのサイトではiBooksと電子ブックストアについての記述がない。日本では未対応である。やっぱりそうきたか。そんなタイミングで、日本印刷技術協会の月刊誌「プリバリ印」1月号の座談会「こんな紙メディアをつくりたい」を楽しく読んだ。ブックデザイナー・祖父江慎、作家・京極夏彦、印刷ディレクター・紺野慎一、編集者・太田克史という、紙メディアを語らせたら最強の4人。紙メディアならではの魅力、さいきん面白かった紙メディア、今つくりたい紙メディア、という新春らしい"平和な"企画だ。京極「つくり手の最終的な意志の結晶としてのモノ、集め並べられるモノ、そうしたモノの特性がクリアできないかぎり、電子メディアが紙媒体に取って代わることはないですよ。電子出版がこの10年、ビジネスとして苦戦を強いられて来た背景には、その辺の勘違いがあるのでしょう」太田「デジタルメディアがブレークスルーしきれないのは、紙の方法論でつくり続けてきたからではないでしょうか」などと聞くと(読むと)、なんとなくわかったような気がしないでもないが、電子メディアの方法論が語られるわけではないからやっぱりわからない。紙メディアの座談会だから、電子メディアにたいする突っ込みが足りないのは仕方がないが。京極「熨斗をつけた荒巻鮭とグルメチョイスカタログの差は大きいですよ」とはおもしろいたとえ。前者は紙メディア、後者は電子メディアである。確かに電子メディアはめんどうくさい。キカイがないと読めないし。それにしてもiPad、安いな。(柴田)
< http://www.jagat.jp/content/view/781/318/
> 「プリバリ印」
< http://www.apple.com/jp/ipad/features/
> Apple iPad 特長

・昨日64メガと書いた。64ギガの間違い。/キカイがないと読めない、には同意。充電が切れたら終わりだし、お風呂で読めないし(読むことはほとんどないが)。手触りや香りがない。仕掛けのある本の楽しさも知っている。本として保存しておきたいものだってある。どういう形式になるのか知らないが、独自フォーマットだとキカイ販売中止で困ることになる(これはVHSからDVD、OS9やら何やらで経験済)。でも、文字の大きさが変えられたり、省スペース、在庫切れなし(ほか昨日書いたこと)っていうのは魅力。半額ぐらいで出してくれるなら、中古に流れていた分を著者や出版社に支払える。ビジネス書や新書、漫画などは電子書籍の方が合うと思っている。/オーディオブックも増えそう。聞くのにはiPhoneやiPodを使うとしても。ああ、音声読み上げ機能があればいいのか。/Twitterで読んだこと「リアル書店で電子書籍を売る(おすすめをうまくディスプレイする)のも意外とありかもしれない。dentomo」。書店はプロモーションの場に。「新しい本のにおいのスプレー『Smell of Books』百式」。でも日本の本と海外の本とでは香りが違うんだよね。雑誌あたりは海外のは臭い。/家族に印刷会社勤めがいる......。印刷物はゼロにはならない。販促ツールも必要。しかし。/いまから「電子書籍整理法」「ライブラリ構築法」を模索しておくか。(hammer.mule)
< http://www.100shiki.com/archives/2009/06/smell_of_books.html
>
新しい本のにおいスプレー。