音喰らう脳髄[83]枯野とドクロ/モモヨ

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旅に病んで夢は枯野をかけめぐる、というのは芭蕉庵桃青、松尾芭蕉の病中吟だが、この1月19日、淺川マキさんが公演で訪れていた名古屋のホテルで亡くなった、その訃報を聞いてからというもの、この辞世の句が頭から去らない。

以来、つらつらと芭蕉翁の紀行文集などをおりにふれて眺めていたところ、先週になって寒暖の差が激しかった間のこと、私より十歳近く若い友人が病院に運ばれ、現在、彼は集中治療室で頑張ってくれている。私にはどうにもできないけれど、何とか今をしのいでもらいたいと願っている。



四十歳を過ぎた頃から無常の風を身近く感じ始めた私だが、ここ数年のそれはまるで嵐のように吹きすさんでいる、そんな気がする。年若い友人達が倒れるのを見てしまったせいかもしれない。また不安定な世相のせいもあるだろう。近年のそれはまるで暴風雨のようですらある。

そんな日々の中で、去年、活動を開始した私のバンド・リザードは関西ツアーを計画している。たかだか一週間程度のツアーではあるが、なにしろ東京ローカルバンドの話である。つい気分も大げさになってしまいがちだ。

芭蕉の紀行文集のページをあちらこちらと繰ってしまうのも、また、

野ざらしを心に風のしむみ(身)かな

そんな一句を口ずさんでしまうのも、ツアーを三月末に控えている今の状況と無関係ではなさそうだ。

芭蕉の時代と現在では旅をめぐる状況は一変している。交通の利便性には格段の差があり、スピードたるや比較するのも馬鹿馬鹿しいほどの違いがある。安全だってそこそこ保障されている。それでもこんな時代だ。時代に向かって吠えるロッカーとしては、野ざらしを心に抱く覚悟くらい持つべきだろう。野ざらしとはドクロである。ドクロをアイコンに時代に立ち向かうなんて、まさにロックそのものではないか。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
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