アナログステージ[30]システムの新陳代謝・後編/べちおサマンサ

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技術提携しているベンダーさんの会社への出向も、早一か月が過ぎました。前回はロケーション管理について書きましたが、今回は見積りです。会社の未来を左右するといっても過言ではない見積り。適正な単価構成を見極められないと、首を絞めていくのは自分のとこです。

いま出向中の会社さんとは、十数年のお付き合いになりますが、たまーに、試作の見積りをとると、「???」という金額がありました。ワタクシは資材の人間ではないので、通常発注(リリース品)をするわけでもなく、また仕入れコストを気にするような立場ではありませんが、設計が終わった段階で、制御コントロールの試作を依頼することがたまにありました。

金額を気にする立場ではない......と書きましたが、仮にも会社としての発注になるので、当然、与えられている予算ってものがあります。まぁ、あまり文字を大にして書けないのですが、この予算というのも、実はあってないようなもので、100万とか200万オーバーで飛び出なければ、通ってしまうという現実もあったり......もにょもにょ。

「???」と気になっていたのは、いつも安いのです。こちらとしても、なんだかんだと言いながらも、予算確保をしなければいけないので、構成される部品などをネットなどで調べて、大よその金額を算出します。試作段階では、シルクスクリーンなどの印刷や、表示ラベルなど、製品としてリリースするところまでは考えませんが、設計段階でほぼ仕様として固まっているときは、これらのイニシャルコストも配慮して計算に入れます。

製品の板金図面(といっても、制御系は19インチラックが殆どですけど)と、制御回路図を提出して、見積りを依頼します。で。ここからが「???」の本質になるのですが、こちらでおおよその金額を計算した数字から、いつも大幅に安いのです。部品などの仕入れ単価が違うということもあるでしょうか、どう考えても、その値段で大丈夫なの? と、こちらが心配するくらい安い。

安いからといって、手抜きした製品を作ってくるということはなく、ほぼ完璧に近い状態で納品されてきます。数年前に、「あのぉ、いつも不思議なんですけど、あの値段で(会社)やっていけるんですか?」とマジマジと訊いたことがあった。笑い飛ばすかのように「大丈夫、大丈夫!」といっていたが、実は、信用していなかった。



●いくらなんでも5%というのは「ナシ」です

その信用できないでいた部分が、今回の出向で明らかになったのです。今までの見積り内容を何点か見させていただいたとき、会社としての見積りではなく、その場の「どんぶり勘定」だったのです。確かに、部品ひとつひとつの単価計算はされていたのですが、まず、パーツマージンが5%しか乗せていないところに着目。

通常なら最低でも10%はマージンとして乗せないと、おかしい。作業工数として、時間単価も計上されてはいたが、その工数も適正とはとても言い難い。5%のパーツマージンと、あってないような時間工数を足しただけの金額を、見積りとしてこちらに提示していたのだ。

これが正式リリース品として、一回の発注でロット100台や150台を注文するなら、パーツマージンの5%という数字は「アリ」かもしれないが、1台の試作で5%という数字は、間違いなしに「ナシ」。しかも。会社経費(いわゆる諸経費)がどこにも記載されていない。粗利益が一切ない。

「結構、苦しいんですよ...」と言っていたが、そりゃ苦しいわ! 工場の家賃、や光熱費、時間工数を含んでいるとはいえ、人件費も出ていない。うちの会社と出向中の会社は、月に1,500万から2,000万の取引きをしているが、うちの会社は支払い額が300万を超えると、120日の手形になる。と、その辺の話は置いといて、会社を運営(利益を上げる)していく上でのお金が、まったくないのである。

前回も書いたとおり、ワタクシは経営のコンサルで来ているわけではなく、技術指導できている。経営のセンスはまったくなく、知識もゼロなうえに、金にはとことん無頓着だ。ワタクシと一緒に酒を飲んだことがあるかたはご存知だと思うが、本当に金にだらしない。持っていれば持っているだけ遣うのは当たり前で、酔っ払ってお金落とすなんで毎回のこと。そんなワタクシが偉そうに言うのもなんだが、これはどう考えてもマズい。

とりあえず、ロケーション管理の話とは別に、「これは絶対にマズい。安いのはウチとしては大変ありがたい話だし、助かるけども、商売として、それとこれとはまったく別」と社長さんに問いかけた。

いろいろ話をしていくと、アイミツ(相見積り)とられて、他業者に流れてしまうのが怖い......とそればかりを気にしていたのだ。確かに、ひとつの品物にたいして、3社見積りを取らなければいけないという、ウチの会社のルールはあるが、価格ではなく、技術的にここの会社へ出さないと「製品が出来上がらない」という暗黙の承諾がある。これはウチの会社全体が分かっていることだ。

ほかの業者さんへ発注かけるにも、内容があまりにも特殊すぎて、やってもらえる会社が少ないということもあるが、技術的な内容を把握してもらっている、ここの会社へ出すのが、こちらとしても、いちばんの安心なのだ。

資材からの見積り(リリース品としてのロット発注)は別として、そのことを社長さんへ伝えると「では、少し儲けさせてもらっても大丈夫なんですかね?」と、とても不安げでありながらも、内心は喜んでいる様子。「もちろんです。それは会社にはきちんと伝えますし、社長のところも、会社を運営していくうえでは、当然のことなので遠慮はいらないです。っても、いきなり10万が50万とかになると困りますけど、アハハ」と談笑。

●北京オリンピックもそうだけど、RoHSも打撃

技術畑の人間だから......ということもないだろうが、細かいお金の計算が面倒のようで、ここ数年の、材料費の高騰も気にはしていたが、製品価格としては、そのまま据置きでやってきたらしい。5年前は1,000円だった部品は、3年前に1,300円になり、2年前に1,500円になっている勢いで、跳ね上がっている。

北京オリンピックが開催される1年前になると、毎日のように材料の価格が変動し、高級寿司屋で部品を購入しているような感じになる。正直、あの頃は、線材1巻購入するにしても、「いま幾ら?」と値段訊きながら買っていました。そのくらい毎日値段が変動していたのです。

材料の高騰もそうだが、RoHSという指令が出回ってから、主要メーカは対応に追われ、いままで汎用で使えた材料(物質など)が使用できなくなり、代わりの材料を導入するも、コストは倍増になる......という「革命」に近い騒動がおこった。いまではRoHS対応も標準化され、落ち着いた観はあるが、思うに、ここの会社、5〜6年前の単価構成で、いままでよく持ち堪えていたと感心。

・RoHS(wikipedia)
< http://ja.wikipedia.org/wiki/RoHS >

・日経エレクトロニクス:RoHS指令
< http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060303/114036/ >

●一番初めにできることは「安心」を提示すること

話を少し戻しまして、売上げがあるということは、それに伴って支払いもあるわけで、その支払い全部が、ウチと同じように120日の手形で払っているかというと、そうではありません。なかには「現金(小切手)での取引きしかやっていません」という会社も当然あるわけで、そこへの支払いは当たり前ですが、現金支払いになります。

会社にもよりますが、だいたいは締め後、40日から45日での支払いをされているケースが多いですが、ここで先払いをするかたちになります。会社の体力が微妙ですと、120日も現金になるのを待っていられない事情とかもあります。となると、銀行で割って(割引き)もらったりして現金に換えますが、その割引きの枠などもありますし、当然のことながら、割引料が取られます。

120日寝かせておくのが一番いいことは確かですが、収支のバランスが崩れてしまった月などは、やはり頼ってしまうことがある。そんなケースに備えて、諸経費の算出は、正確で明確な基準をつくっておかないと、本当に困ったりする。この辺りはいろいろなご意見があるはずですが、ワタクシは、きちんと見積りの中に含んで問題ないものだと思っております。

「仕事はあるけど、資金がない」というのも困りますし、黒字倒産されても、こちらとしてもばバツが悪い。なので、しっかりと、きれいな見積りを提示することが、会社にも、働いている人たちもに、そしてお客さんにも安心感を与えられる、いちばん初めの仕事なのです。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋(出向中)
< http://www.ne.jp/asahi/calamel/jaco/ >
< http://twitter.com/bachiosamansa > ←まともなこと書いてません

新製品の開発が一件終了。で、製品評価と測定のために、ひっさびさにラボ(オイラの会社の居場所)へ来ました/もう、やっぱり落ち着く。オイラが居たままの空気を保存してくれてました、ありがとう/ということで、あまりにも単価が安すぎるので、ウチの会社には内緒で、いま流れている製品をオイラが「適正価格」へ再見積りしてみた。資材は文句いってくるかな......と思いきや、なーんにも反応なし。すんなりOK出て、社長さん、大喜び!/この調子で、良いモノをたくさん作って、いっぱい儲けましょうね/って、オイラが儲かるわけじゃないんですけどね、アハハ/文中に、「よくお金を落とす」と書きましたが、本当。数年前に、カード全部・保険証・免許証・現金(よく憶えてないけど、5万か6万くらい入っていたはず)が入った財布を落としてから、財布を持つのをやめた/その前にも出張先に忘れてきたり、大阪で飲みつぶれて財布をなくしたり(出てきたけど)、財布というものと縁がないのだ/それ以来、お金はそのままポケットイン/そうだ、大阪でなくしたときは、帰りの新幹線チケットも一緒に落としてしまって、朝起きて、ホテルで途方に暮れたっけ、アハハハハハ。