ローマでMANGA[26]東京アニメーター学院に体験留学2週間/midori

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●エマヌエラとバネッサ

今回で4年目になる奨学金学生の東京アニメーター学院体験留学、いつもは11月なんだけれど、諸事情により年を繰り上げて2月の最初の2週間に実施した。

私が講師を勤めるローマのマンガ学校は3年制。その3年間、進級試験(実際には個別に教授達にそれまでの課題を見せる)で満点の30点を取り続けた学生に対し、奨学金として2週間のキューバのアニメ学校か、東京の東京アニメーター学院での体験留学を贈る。
< http://www.scuolacomics.it/portale/index.php?Itemid=23 >

毎年、全イタリア8校から5〜6人の候補者が出る。東京行きの栄誉を担うのは、満点を取リ続けることの他に、日本の社会に順応できるように性格も吟味される。だって、イタリアの場合、10分くらいは時間ではない。日本では9時半授業開始だったら、みな10分から5分前には教室に入って待機している。9時40分頃にニコニコ顔で来てもらっても困るわけ(私は日本にいた時からイタリア時間だったから、こうして仕事で東京に行くのは、大いに緊張を強いられる)。

どうみても、そういう意味でルーズな人にはキューバ行きを贈る。キューバでは30分から1時間、時間ではないそうな。。。

01.jpg今年の留学生はローマ校のエマヌエラと北イタリア、アドリア海側のイェーシ校のバネッサだ。

ローマ校のエマヌエラはナチュラルブロンドで、すごくきちっとした性格。北イタリアのバネッサは濃い褐色の髪を赤く染め、大雑把で、ローマと北イタリアの住民のおおかたの性格とは正反対なのがおもしろかった。



●先生として鼻が高い

イタリアのマンガ学校の門をたたく子たちの多くは日本のアニメを見て育っていて、その後Mangaを読み始める。当然、Manga風の絵を描いて出発するわけだけど、それでは仕事にならないので学校ではManga風を封印させて、ヨーロッパ式の絵に変換させる。かつ、生徒の仕事先であるフランスやアメリカでは、風景のパースや人物の構造がきちんと描けないといけないから、パースと美術解剖(筋肉、骨格)の授業はびっちりやる。

結果、彼らの描く絵は正しく「絵」。各コマを取り出して拡大して額に入れておける。材料はインクに筆、アートペン。彩色は、水彩、アクリル、エコリン、コピック(日本製のコピックではなくてイギリスの似たような道具でPantoneと呼ばれる)。

Mangaで普通に使用するペンとスクリーントーンが欠けている。で、毎年、東京行きの学生たちはス、クリーントーンを習うことを楽しみにしているのだ。そして、毎年、留学生たちはすぐにカッターでシュッシュッと"正しい音"をさせながらトーンの上を動かして、見事に雲やら影やらを作り出す。

カッターの先で削る"裏削り"というのが多く使われる技なのだけど、角度や方向や圧力を間違えると、ガリガリいったり下の紙までやぶいたりする。正しい方向と圧力でカッターを動かすと、鰹節を削るような、シュッシュッと軽快な音がするのだ。

02.jpgそしてレッスンの終りの評価に、今までみんなBかAをもらった。Aだとプロのアシスタントになれる段階だそうだ。エマヌエラとバネッサもAをもらった。

03.jpg効果線のレッスンはペン先を使う。バネッサ、エマヌエラが使ったことのない道具その2だ。効果線は「入り(線の最初)」と「抜き(線の終、力を抜いて針の先のようにする)」で線の太さを変えるから、ペンが最適なのだ。始めはペン先で紙を引っ掻いていた二人だが、10分もするときれいに入りと抜きを表現できた。

「初めてなんです」と教師に告げる私の口調が微笑んでしまう。一芸に通じるものは万芸に通じるというけれど、本当らしい。毎年、留学生のトーンとペンのテクニック取得を見て納得する。

●留学もうひとつの効用

04.jpg留学で一緒のクラスになる日本側の学生は、毎年メンバーが変わるわけだけど、空気の中になにか残るかのように、回を重ねるごとに日本側の学生の受け入れが柔軟になっていくように思える。個人の経験は社会の経験になるものなのか。絵を描こうと言う人はシャイな人が多く、日本人はもともとシャイだから、モジモジしてなかなかイタリア留学生と話そうとしない。ただそのモジモジの層が年々薄くなっていくように思える。話しかけ始めるまでの時間が、年を追って短くなっているのだ。

どちらも片言の英語とジェスチャーと、お得意の絵でコミュニケーションを図る。同じタイトルが好きだったりして、その意外さが互いに気持ちよいようで、日本側にも「イタリアジンモニンゲンナノダ」という親しみが湧いてくる。

先生方も年々打ち解けてくる。授業外に話し込んだりする。違う部分や共通点を見出して、互いに親しみを深めて、刺激しあう。今年で4回目だけど、10回、20回と重ねて行くとどうなっていくんだろう? 個人の体験は社会の体験というのを立証できるか??

向こうからは留学生を送ってこないのに、こちらの学生に授業をしてくれ、教材はすべて提供してくれ、「ウチが存続する限り続けましょうね」と言ってくれる東京アニメーター学院には足を向けて寝られません。

【みどり】midorigo@mac.com

05.jpg今年の東京行きには17歳になる息子も連れて行った。

デ・アゴスティーニの仕事が忙しくて、コミックスエージェンシーの活動ができなくて、出版社まわりがないのでそこそこ案内ができると踏んだから。経済的時間的余裕ができるのを待っているといつになるか分からないし、母として、もうひとつの故郷を体験させる義務があると思うし。学校は先生方と話し、大方の承諾をもらった。この前に行ったのは4年前、13歳の時。

17歳になると見方が違ってくる。その1:女の子をちょくちょく見ているので、「日本人は若く見えるからね。同年代と思うのは大体20歳以上だよ。12、3歳に見えるのがあんたと同年代」と注意を促した。その2:JRを使い、街を歩いて、「日本のキチンとしたところが好き! 将来は日本に住む」とまで言った。本当にそうなるかどうかはあまり問題じゃない。自分でそういうことを感じるようになった成長の証が嬉しい母であった。

06.pngちょうど誕生日が間にあったので、初めて日本の家族と祝う。リクエストはギョウザ。弟も大好物で、義妹がなんと240個作ってくれた! Skypeでローマとつながり、ダンナと姑夫婦も交えて、ローマ・東京で「ハッピバースデー」を歌った。遠く離れるとネットの恩恵をガバガバ受けますね。

イタリア語の単語を覚えられます!というメルマガだしてます。
< http://midoroma.hp.infoseek.co.jp/mm/menu.htm >