ところのほんとのところ[33]写真家人生最大の事件/所幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,200文字)


自分にとって作品とはなんだろう。

上海から帰ってきて以降、ほとんどの時間をストレスのために棒に振ってしまった。今までとは全く違うタイプの会社からの依頼で1secondを撮っていたのだけど、経理的な考え方が驚くほど違う。例えば、予算のなかでうまく収まれば作家個人としては問題ないと思う。決められたトータル予算の中で、良いものができればいい。だから、ドイツを撮るのにフランスでしばらく過ごしてから行った方が、ドイツらしさが実感できるし本質が捉えやすい。まじめに考えてそうしたのだけれど......。

フランスの滞在費は経理的に落ちないという。予算内でちゃんとやってるのに、だ。逆に、ドイツで予算オーバーしたとする。足りなければ経費は出るという。なんだかおかしいと思いませんか? このところ、官僚的な個人との付き合いもあって、2月の半分以上はストレスで倒れていました。

ストレスで人はガンになったり自殺したりする。人間にとってのストレスはまさに毒だ。だけど、全くないよりは少しあった方がいろんな才能が開花する。コンプレックスもその一つだ。しかし、ガンになるほどストレスをくらっちゃ元も子もないと思う[ところ]である。



さて、とある日に若手キュレーターがきた。その時に3月の個展の話をしていたんだけれど、そこで不意にでた質問が「ところさんにとって自分の作品ってなんですか?」だった。ん? ......あんまり考えたことがなかった。

自分が感じたこと、考えたこと、そういうものを人に見せるため、みんなに共感してほしいから作品を作ってる。それがなにか? といわれても......。「普通は自分の子供のようだとかいいますよね」と彼は言った。うーん、そういう部分もあるような気もするし、何か違うような気がする[ところ]であった。その日は、結局答えが出なかったんだけど。

その数日後、[ところ]の写真家人生最大の事件がおきた。なんと、この一年間の作品データが消えてしまったのだ。しかも、バックアップしていた全く同じハードディスク2TBも同時にだ。2TBが2台......。

説明すると長くなるし、つまらない話なので、割愛しますが。よりによって、その日4TBを買ってきて、ミラーリング設定をしようとしていた矢先のことだった。しばし呆然......しかし、ハードの故障ではない、初期化されてるわけだから。まず、最初にしたことは接続を切り、電源を落とす。

ほぼ(90%ぐらい)同じ内容のハードディスクが2台......。とにかく確実な作業をしないとハードディスクが上書きされていくので、まず専門家に見てもらうのが一番なんだけど、よりによってその時は金曜の夜だったのがまた最悪。土日はろくに連絡とれないじゃないか。

一番信頼性の高いといわれるデータレスキューの最新版3を使ってみる。学習機能もあるらしい。僕の使ってるRAWデータの形式も読み込ませて、失われたデータを探させた。20時間ぐらいかかった......。jpegやらテキストデータやら、フォトショップデータやらは出てくる。しかし、30MBとか60MBまではなんとか救出できたけれど、肝心のRAWデータはキヤノンの形式以外は出てこない。

あまりのショックに本気で自殺まで考えた。楽に死ぬにはどうすればよいんだろうとか......。あっ、[ところ]にとっての作品とは何かがわかった。命だ。命そのものだ。このことに気づいたことはものすごい収穫だった。

写真のデータ専門の復旧ソフトがあるとの情報が入った。それも買ってみるが、途中でソフトが落ちまくる。少しは助け出せたようだけど、他のソフトで何度か復旧をかけたせいかもしれない。できるだけ一発目に正しい対処をすることが大事なようだ。

そのあとも苦心しまくって......。結局はいっさい触っていない方の2TBのハードディスクをデータ復旧会社(知り合いの推薦した業者)に持って行った。相手の話を聞く限りでは、データは戻りそうです。もっともっとちゃんとデータを管理しなければと思う[ところ]でした。

【ところ・ゆきのり】写真家

CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >

◇所幸則写真展「PARADOX」3月30日〜5月30日/GALLERY 21(お台場)
< http://www.gallery21-tokyo.com/jp/exhibitions/2010/yukinoritokoro/ >

そして、「ニコニコミュニティ」で写真家としての話を毎週続けています。ぜひ見てください。

◇「写真家の異常な愛情」所幸則 1sec(ONE SECOND)放送:土曜日21時
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744 >
所幸則(写真家)&近江賢介(音楽プロデューサー)がレギュラー、毎回ゲストを呼んで、写真とカメラについてのトークを中心にお送りしています。

photo
CHIAROSCURO 天使に至る系譜
美術出版社 2006-02
おすすめ平均 star
star『CHIAROSCURO 天使に至る系譜』...私の宝物!
starクリエイター必携!
star天使の世界へと旅する扉
star所幸則という写真家の世界観に圧倒される一冊。
starフォトグラファー、所幸則氏のエッセンス集

by G-Tools , 2010/02/26