ローマでMANGA[27]MANGAセミナーの精鋭は4人/midori

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4人とはMANGAセミナーの4人です。いつものように、MANGAセミナーが昨年スタートしたときは30人弱だった。いつものように、時を経て人数は減っていく。好奇心で来ていた学生や、「ホント」の授業の課題製作が間に合わない学生は来なくなる。

6月に進級試験なので、ますます焦ることになる。期待していた「MANGAの授業」と、私の授業内容が違うと感じた学生も来なくなる。たぶん。どんな授業を期待していたのか、この理由で来なくなった人に聞いてみたいけれど、誰がそうなのかわからない。

いつものように、2月になっても来ている学生は常連さんになり、彼らは来るのが楽しみのように見える。学生は片手で数えられる数になり、今年は4人だ。コミックス科在籍が一人、イラスト科在籍が一人、アニメ科在籍が一人、グラフィック科在籍が一人。ここまで在籍コースがバラバラになったケースは初めてだ。



話を聞いてみると、コミックス科以外に在籍する学生もMANGAが好きだと言う。グラフィック科に在籍するのはポーランド出身の女の子で、「絵が描けないから」グラフィックを選んだのだそう。今年のMANGAセミナーを始めた頃、彼女はいちいち「えー! 描けない!」「えー! 誰かに描いてもらう!」と騒いでばかりいたのが、年が明けてからはおとなしく描いている。確かに上手ではないけれど、ヘタウマのような温かい味がある。

上手ではない、と言えば、残る3人もヘタ。一年生だからでもあるけれど、このマンガ学校へ来てから描き始めているから。全員ではないけれど、マンガ好きと言いながら、過去、子供の頃や中高生時代にマンガを描かない。

イタリアの学生は、学校の連絡や宿題などを記入するのにブック型の「日記」を持つのが、小学生の頃からのお決まりになっている。この日記に好きなキャラを描いたり、好きな子の名前を装飾的に書いたりするのが、多くのマンガ好きの「創作活動」だ。日本の中高生のMANGA好きが、せっせとMANGAを描くのと状況がかなり違う。

これはマンガ出版をめぐる状況の違いも大きく影響している。日本のマンガ雑誌は新人賞を設けて、そこからプロを輩出している。そういうのを見ているからMANGA家志望者はせっせとMANGAを描く。あっ、その前に、小学生の頃から、はがきでキャラの顔を描いて投稿したりする。あっ、小学校、中学校を通じて、図画工作の時間にお絵かきもする(少なくともしてた。今はどうなんだろう?)

イタリアにはそういう機会はない。図画工作の授業はないし、マンガ雑誌はない。新人賞などというのもない。マンガ家志望者がマンガ原稿を描くのは、よっぽど行動力があって、自費出版をする子か、マンガ学校へ通う子(すなわち「マンガ学校へ通う」という選択をするのは行動力があるんだ)。

つまり、かなり大きくなってから、初めてマンガ原稿を制作する。中には、今年の4人の精鋭のように、マンガ学校へ来始めてから、絵を描き始めるケースも少なくない。だから、一年生では下手な学生が多い。ここで、MANGAセミナーの難しさが出てくる。

●絵が描けない人のためのネーム?

我がMANGAセミナーでは、理論を解説すると同時に、短編を作ってもらって実践も経験してもらう。ペン入れまでは要求しない。レイアウトが重要なので、鉛筆の「ネーム」(下書き)で十分だよ、と言ってある。

絵がヘタ、というか描き慣れてない、描いた回数が少ない、描いた経験が少ない。つまり、頭の中で欲しい絵のシミュレーションができない。キャラが全部正面向きで口だけ笑っているコマが続く。アルカイックスマイルのスマイルは嬉しいことを表現しているのではなくて、感情があるということの表現なのだ、と聞いたことがあるけど、それなのだ。時々横向きになる。エジプト壁画だ。これは動きを表現してるんだね。

古代芸術の歴史を経ているんだ、遺伝子のなせる技か、と感心してる場合じゃない。ネームを描いてもらって、ここから、さ、あなたが伝えたかったことをもっと的確に伝えるには、このコマを大きくして、このキャラをここへ持ってきて......というサジェスチョンをやりたいのだけど、そこまで行ってない。

つまり、コマの意味やら、空間の意味やらを解説しただけで、ネームを作ってもらうのに無理があるということ。でも、絵の描き方を教える暇はない。下手な絵でも、キャラの感情を作っていける方法を考える必要があるということ。

2月の東京アニメーター学院での授業で、一編5分くらいの短編アニメを立て続けに見せてキャラを理解させ、そのキャラと独自のキャラを入れた4ページの短編を描かせる、という授業があった。プロットは出来ていて、オチだけ各自のオリジナルにする。

シンプルなキャラの形態と、はっきりした性格付けと、シンプルなストーリー。これを提供してあげれば、私が生徒にやってもらいたいことに近づくかも。MANGAを描いたことのない子たちに、いきなりネームをというのが、無理な話なのかも......と、今になって気がつくのであった。

【みどり】midorigo@mac.com

昨今のトンデモ法案から、日本の政治とマスコミに対する「?」が大きくなり、Youtubeを駆使して、マスコミ以外の情報を入手してます。今までいろいろ無知だったことの他に、自虐的歴史観をそのまま鵜呑みにしてたことに気がついて、日本という国に対する敬愛の念、誇りを持つようになりました。そしたら、自分自身にも自信が出てきて、なんだか気持ちよい。誇りを持てる国に生まれ育った私なんだよ、ということで。ナショナリズムとかウヨクとかいうことではなくて、自分のアイデンティティの肯定ということです。両親を敬愛するのと同じこと。今回の政権交代とトンデモ法案は、そういうことに気がつく役に立ってくれました。

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