わが逃走[62]壱岐島観光案内の巻/齋藤 浩

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先日、バイクで人と接触したような気がしたが、周りにそれらしきものが見当たらなかったので気のせいかと思っていた。

5日後にその場所で美女3人にナンパされたものの「ついて行ったらやっぱ危険だよなあ」と思い視線をそらしたら、側溝にぴったりと収まる形で男がはまっていて、そいつが5日前にバイクではねた男なんじゃないかと心配になる。という夢をみた。

翌日、散歩していたら出前用のおかもちを下げたスーパーカブが背後からオレを追い越し、そのとき何故かピザのボックスに入れた大量の餃子を落としていったので、追いかけてその旨伝えると、彼はバイクを降りてダッシュで餃子を拾いに行こうとしたので、私は「急ぐ気持ちはわかるが、礼のひとことくらいは言ってほしいものだな」と池田秀一の声で言った。という夢をみた。

みなさん、ご機嫌いかがですか? 齋藤浩です。春になるとおかしな夢をたくさん見ます。常日頃から理不尽な悪夢にうなされることが多いのですが、この季節になるととくにそういった傾向が強くなる。困ったものです。

さて、これからの語りは悪夢とは何の関係もありません。先週の土日にちょいと訳あって、長崎は壱岐島まで行ってまいりましたので、そのときの模様をご報告したいと思います(文章の一部はtong-poo graphicsのブログからの引用もありますが、まあ誰も読んでないでしょうからよしとしてください)。

さて、その"訳あって"の部分ですが、実はこのたび壱岐にオープンした長崎県埋蔵文化財センターと壱岐市立一支国博物館のロゴ及びサインを我がtong-poo graphicsが手がけ、そのご縁で開館記念式典に招待されたのでした。というか、無理矢理招待してもらったんだけど。



式典出席を大義名分に掲げ、旨い魚と焼酎の旅に旅立ったのは3月13日。

7:55羽田発の飛行機に乗って博多着が9:50。空港からタクシーで博多港へ移動、10:45発のジェットフォイルに乗ってしまえば、11:50には壱岐の芦辺港に着いてしまう。ここで予約しておいたレンタカーを受け取り、島巡りを始めたのだった。それにしても日本の道路行政というヤツはとんでもなくて、誰も通らないような農道でさえも完璧に舗装されている。

とりあえず昼飯だ! ということになり、一路郷ノ浦港へ。途中農業用ダムを発見、つい見学してしまうが空腹には勝てずすぐに出発、郷ノ浦の旨そうな魚料理の店に入る。

刺身と天ぷらの盛り合わせのセット・煮物と茶碗蒸し付き! を食べたのだが、これがまた旨い。とくにイカが旨い。

イカといえば、私が幼い頃食べたイカリングフライを思い出す。とにかく噛んでも噛んでもなくならない、ひどいシロモノだった。そんなこともあって私はイカはゴムでできていると思っていたし、成人するまで旨いイカに巡り会うことはなかった。ああ、このイカを子供の頃の私に食べさせてやりたい!

昼食後、そのへんを散歩する。ここ郷ノ浦は何もない芦辺港とは違って、渋い昭和な感じの商店が立ち並ぶ、由緒正しい港町だ。ちょっとした路地や坂道に風情を感じる。しばらくすると我々の前にこつ然とご神体が姿を現した!

いわゆるひとつの巨大な男根ですね。ここは塞神社といって夫婦和合や性病にご利益があるそうで、賽銭箱の奥にある部屋をのぞいてみると、ありがたいモノがずらりと並んでいた。私はこういった神社をいままで訪れたことがなかったのでそりゃもう感激し、念を入れて拝んできた。

その後は、いわゆる観光名所っぽいところに向かった。まずひとつ目は『ゴリラ岩』と『鬼の足跡』。郷ノ浦町の西、牧崎というところにある。

ゴリラ岩は見てのとおり、海をバックに遠くを眺めている、いいヤツそうな岩だ。鬼の足跡は、そのすぐ近くの草原にこつ然と現れる巨大な穴。玄武岩質の断崖絶壁を波が浸食し、陥没してできたものらしい。周囲は約110mあり、穴のまわりをぐるっと一周できる。しかし柵もなく、とくに海側の崖と鬼の足跡との距離はいちばん狭いところで3m〜5mくらい? 風が強かったので、ここを渡るときは腰が抜けるかと思った。

ここ壱岐島というところは実に良い島である! とにかく全ての景色が絵になるのだ。海と山とくねった道。この3大構成要素の絶妙なバランスにより、1m進む度に景色が変わる。あまりに絵になる風景が多いので、その度にいちいち車を停める訳にはいかない。とてもクヤシイ。

くねくねと楽しく車を走らせ、猿岩がどーんとそびえ立つ黒崎半島の先端に到着した。俗にいう『ナントカ岩』の類は「ああ、言われてみれば...」的なものがほとんどだが、この猿岩は実に見事に猿なのである。

かなりの距離まで近づいても猿、多少角度が変わっても猿だ。頭の毛の生え具合といい目元の感じといい、素晴らしい。
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思わずSONYウォークマンのCMを思い出してしまうオレだが、いまどきの若いモンにはわからんだろう。この猿岩のすぐ脇には、黒崎砲台の遺構が残っている。いわゆる軍事遺産という奴で、戦艦土佐の41センチ主砲を砲台として据え付けたもの。その要塞部分と砲塔の回転軸にあたる巨大な穴が、今でも見学できるようになっている。

さて、そんなこんなで陽も傾いてきたので、郷ノ浦港のすぐ脇にあるホテルに向かう。到着するといい感じな夕陽が漁船やフェリーにあたり、実に絵になる。
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夜、クライアントのK氏、M氏らと合流。いい感じの居酒屋に招待される。もう、何を食べても旨い。旨すぎる。魚も鶏も馬も野菜も全てだ。もちろん焼酎も旨い。ちなみに、私の知人で今までに壱岐に行ったことのある者、数人に聞いてみたところ、全員が「何を食べても旨い」と言っている。もちろん料理人の腕もいいのだろうけど、素材が良すぎるのだろう。

翌朝、旨い朝飯(湯豆腐に干物!)を食べてから博物館へ向かう。

入口にはサインがちゃんと建っている。壱岐の『壱』と長崎の『長』を組み合わせた土台に、ステンレスのプレートで『壱岐市立一支国博物館 長崎県埋蔵文化財センター』とあるのだが、やはり図面で見るのと実際のモノを見るのとは違う。しかも今日からこれはきちんと機能するのだ。
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あいにく曇り空のため立体感がイマイチに思われる。晴れた夏の日にまた来よう。敷地内に進むと、緑に覆われた曲面で構成される不思議な建築が現れる。これこそ故・黒川紀章氏の国内における遺作である一支国博物館だ。

この日は式典開催のため仮設テントが張られていて、全体像がいまいちはっきりしなかったので、夏に再度訪れて美しい姿を撮影したい。で、ここから式典やらいろいろあって、内覧会に参加したのですが、そのあたりについては後日書きます。

午後は見事に晴れた。M氏の案内で素晴らしい酒蔵と素晴らしい海と素晴らしい漁村を見学。
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手作りにこだわる酒の造り手の心意気を感じつつ、日本離れしたエメラルドグリーンのビーチと、正統な日本の漁師町とをひとつの島で味わえるとは感激モノ。贅沢すぎる。身も心もおなかいっぱいで5時の船で帰途についた。

壱岐といえば、九州在住の人々の中では沖縄と人気を二分する観光地とのことだが、それ以外の地域の人からしてみればわりとマイナーな存在だろう。海も山も食も酒も全てがハイクオリティで、おまけに物価も安い。変にリゾートぶったところもなく、地元の方々の生活そのものが面白く、そして美しいのだ。

こんなすばらしいところを『2泊3日でなんと19,800円!』的パッケージツアーの餌食にはされたくないので、当分黙っていようと思う。あ、夏はウニが旨いらしいよ。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。