グラフィック薄氷大魔王[217]13年ぶりの、LIGHTWAVE 3D
── 吉井 宏 ──

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LightWave v9.6 Macintosh 日本語版/特別版 次期日本語バージョンアップ権付最近、アップグレード並の値段で買えるキャンペーンがあり、つい手を出しました。LIGHTWAVE 3D v9。実は1997年のver.5の頃にも購入しましたが、まったく覚えられずに挫折した過去があります。

LIGHTWAVE(以下LW)といえば、10年ほど前の3DCGブームでShadeと並ぶ人気ソフトでした。ハイエンドCGソフトはホビーユーザーが手を出せるような値段ではなかったので、LWは「ぼくらの3DCGアニメソフト」的な親しみやすさがあったんです。ライトウェーバーと呼ばれるトップユーザーたちの存在もカッコよかったです。もちろん、今も多くのユーザーがいて、ゲームや映像制作等の現場で使われてます。
LIGHTWAVE 3D v9 < http://www.dstorm.co.jp/products/lw9/
>

当時僕はPainterで2Dイラストを描いていましたが、ライトウェーバーにあこがれてました。なのに挫折したもんだから、屈折した思いを抱いたまま10数年をすごし、途中、ZBrushやCinema4Dや3ds Maxやmodoなど、LWとは別のソフトから3DCGをやるようになり、現在に至る......って感じです。ここでたまたまLWを手にし、10数年来の再挑戦! もう3DCG素人じゃない僕だぞ!



っていうか、なんで今、LWか? ってことですけど、「ヤンス!ガンス!」の秋元きつね氏が動画コンテなどで実に軽々とLWを使ってるのを見て、僕もああいう風に使いこなしたい! って思っちゃったこと。また、キャラクターデータをmodoから3ds Maxへ送ると、角丸め方式の違いでカラーテクスチャがズレるため、テクスチャを3ds Max用に作り直し、それでもズレることにガマンならなくなってきた。

LWに同じモデルを読み込むと、ズレはまったくなくそのままでイケるんです。modoはLWのネイティブファイルを書き出せるくらい親和性が高いのです(なにしろ、modoを作ってるのはスピンアウトしたLWのオリジナル開発者たち)。

で、10日ほど前から時間を見て、LWに本格的に触り始めました。とはいっても、モデリングはmodoでやるのでLWのモデラー部分はすっ飛ばし、レイアウト(アニメーション部分)だけ、それもキャラクター関連だけです。とにかく、簡単なキャラクターを動かせるようにしたい、ということだけ。他の機能については他のソフトでもだいたい同じなので何とかなるはず。

ボーンやリグ組みなどの本格的な設定については、3ds Maxではスルーしてるのです。アニメーションには次のバージョンから標準搭載になるCAT(Character Animation Toolkit)というプラグインを使ってました。ややこしい設定を済ませたレディメイドのボーンを選んで、動かしたいキャラクターのモデルに仕込むだけだったんです。歩きや走りも自動で、パラメーターをいじって調整可能。なので、3ds Maxではボーンはおろか、簡単といわれるキャラスタさえほとんどわからない!

LWでの初めてのボーンやリグは、とんでもなくむずかしいものでした。チュートリアルをやってもマニュアルを調べてもちっともわからない。一つ前のバージョンから、古くからのIKシステムとは別に「IKブースター」という新しい機能があり、簡単にキャラクターが動かせる、という触れ込みなのですが、「簡単にできる!」ってのに弱い僕は、そのIKブースターだけでなんとかしようとがんばってみました。ある程度まではイケるんですが、足を固定しておいて、腰を上下左右に動かすのがどうしてもできない。腰の動きはすべての動作の中心なので、中途半端にできないんです。

一週間たっても解決できずにあきらめかけてた時、Webの記事やYoutubeで役に立ちそうなヒントをいくつか発見し、IKブースターを使わない従来の方法でのリグ組みに成功! 下半身を自在に動かせるようになりました。ついで、上半身も成功。その他、高いハードルだったウェイト調整も「Weight Paint Tool」というプラグインの発見で、なんとかクリア! 実際の本番制作では調整にもっと手間取るだろうけど、とりあえず当初の目標の、シンプルな人間型(頭一つと、手足が二本ずつ)のキャラクターなら動かせるようになりました。

ううう、正攻法でやれば一日くらいで理解できたはずなのに、いつもこんなのばっかし。早道・抜け道ばかり探して、ラクしようとして逆に苦労するハメに。本道を行けば回り道に見えても確実にたどり着けるんだよな〜。

なんでこんなにムキになってやってたかというと、アニメを作りたいのではなく、3Dキャラを作ってるのに気軽に動かせる環境とスキルがなかったってことが大きいです。もちろん、3ds Maxでもできますが、データ移動や調整の手間はかかるし、なんかずっと、他人の庭に行って「ちょっと作らせてください」って感じがしてました。modoとLWなら、敷地内。

近いうちにmodoにもキャラアニメ機能が載るはずなんだけど、今すぐ動かしたい。あと、開発中の次世代LWの「CORE」がひょっとして大化けした場合の保険(?)みたいな意味もあります。

いつもは静止画としてキャラクターを作ってますが、いつでも動かせる環境やスキルをバックボーンとして持っていないのは弱点。っていうか、自分じゃ動かせないのに、いかにも動きそうな3Dキャラを作り散らかしてるんじゃ、詐欺みたいだ。いつでも動かせるスキル的裏付けがあってこその、3Dキャラ量産なのではないかと。

そのへんの、変な「スジを通す」感に先週からずっととらわれてました。あー、よかった。何とか動かせてひと安心。3Dキャラを作る気をなくすところでした。

【吉井 宏/イラストレーター】
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Windows上の3ds Maxで簡単プラグインを使ってやってたことを、Mac上のLWでできるようにするってだけの話ですので、念のため。大げさですね、すいません。っていうか、一度わかっちゃうと「キャラクターにボーンを入れて動かせるようにする」なんて決まり切った手順なのに、なんでそれをマニュアルに一本のチュートリアルとしてまとめてないんだろ。必要な箇所があっちこっちに散在してて大変でした。あと、僕の場合LWに強い執着があったのでLWでなければならなかったのですが、調べてみたところ、非常に安価か無料の3Dアニメーションソフトっていくつもありますね。またいじってみよう。

ところで、Adobe CS5発表。今度こそはアップグレードをパスできるかと思ったけど、PhotoshopもIllustratorも、お絵かき的に魅力的な新機能が多い。困るなあ。

・アニメ『ヤンス!ガンス!』Wiiシアターの間で配信中。アヌシー国際アニメーション映画祭2010 TVシリーズ部門にノミネートされました!
< http://www.annecy.org/annecy-2010/festival:en/official-selection:c8
>