アナログステージ[34]ネット情報を鵜呑みにしてはいけない
── べちおサマンサ ──

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どこの馬の骨なのか鶏のガラなのか、よく分からないワタクシが、今さらながら、インターネットから得られる情報の信憑性について、雄弁には語れないので、ボソボソと語ってみます。「横浜の豚骨醤油野郎が書いていることなんて、信用できるかいな」と云わずに、今後の参考程度にどうぞ。

今回は、前回の当番時(4月20日)に途中まで書きかけていた超能力ネタを出そうとしていたのですが、インターネットが本当の意味で身近になったいま、クリックひとつで得られる情報が、果たしてどこまで正しいのかを考えさせられる「事件」があったのです。

その事件というのが、先週初めから「ありえないミス」が連続して起こっておりました。ワタクシは、その「ありえないミス」を、忙しいという逃げの口実で見ないふりをしていたのですが、ついに我が身に降りかかってしまったので、見ないふりをするわけにはいかなくなり、ミスの原因を追究することに。是正報告書を書かなくてはいけないってこともあったんですけどね...アハハ。

4月中旬からゴールデンウィーク前にかけて、ちょっとした人事異動というか、配置代えがありまして、「ほかの部署(仕事)にも携わってみよう!」という、通常業務をなにも考えていない(知らない)、短絡的なアホが提案した真剣に余計な話が、最悪なことに現実に......。という経緯があり、ワタクシの部署に、製造畑の人間が一人配属されてきました。



まぁ、来るのは構いませんし、こちらもこちらで慢性的な人手不足なので、一人といわず、どうせなら4〜5人くらい寄こしてくれてもいいのに......なんて思っていたのが間違っておりました。やはり、餅は餅屋。こっちは何もないところからスタートする開発設計、向こうは図面をもとに製品を作り上げる人間。同じ技術畑とはいえ、仕事に対するスタンスが根本的に違う。

当然、ウチ部署に来た当初は、何をしていいのか分からずに、数日立ち往生していたようですが、「製品として、こういう動作(作業)をさせるためには、どうすればいいのか」に気付いたようで、自分でインターネットなどを使って調べ始めた。

「そんなことは、分かっている人間が初めに教えればいいじゃん、なにケチケチしてんの? あんた、人間小さいね」と思われるかもしれないが、一番初めに自分で気がついてくれないと、絶対に覚えないし、自分の身(技術)にならないので、新入社員が入ってきても、そこのところは、絶対にこちらからは教えたりしない。

先ほど書いたように、同じ技術畑とはいえ、図面は読めるが自分で設計したことはないので、それに必要な知識はもっていない。入社してから製造にいたのだから、持ち合わせてなくて当たり前のことだし、知らなくて当然。彼は、自分なりにいまも頑張っているのだが、頑張る道を少々外していたのです。

簡単な制御回路から勉強を始め、会社に転がっているジャンク品を集めてユニバーサル基板で回路を組んで実験していたのですが、インターネットに掲載されている情報を教科書として勉強していたのです。インターネットに載っているものが悪い、間違っているわけではありませんが、専門書のように理論付けして記載してあるとこは稀です。

「こうすればこうなる」という経緯が抜け落ち、「こうすればいい」というような結果だけを追い、一番大切なところを飛ばして覚え初めてしまっていたのです。このときに、きちんと様子を伺っていなかったワタクシが悪いのですが、ほかの連中も自分の仕事で精一杯で、ほかに目を向けている余裕がなかったのと、ワタクシ自身、出向先の会社とを毎日行き来していたので、そこまで目が届かなかったという言い訳も...。

彼自身も、インターネットに載っているものを素直にそのまま試したり、作ってみたりしていただけのことなんですが、自分で考えたものを作り終われば、当然、動かしてみたくなる。動かすためには、動かすための環境が必要になってくるわけで、またまた当然のごとく、その環境を利用するのは筋。

で、「ありえないミス」の連続がここから勃発するわけでして......。

●そ、それ、1台150万えん......

制御回路などの電気・電子回路をチェックするものに、電圧や電流値を計測する、テスターというものがあり、波形や電気信号をグラフで表示するオシロスコープという器機があります。テスターは、安いものであれば3,000円くらいで買えますが、ウチらが使うものは、やはりそれなりに「いいお値段」するテスターを使っていたりします。

話がマニアックになってしまいますが、テスターで測定する場合、通常はテストリードと呼ばれる、電気が流れている部分に接触させる金属棒・絶縁棒を用いて測定するのですが、測定する種類によってテストリードを差し込む場所が違っていたりします。間違ってテストリードを差し込んでも壊れないように、保護回路(ヒューズなどで速断したり)が備わっているのですが、メーカも、「テスターを使う人はこんな間違いはしませんよね...?」という落とし穴があったりする。想定の範囲外の人のことだ。

途中経緯が抜けてしまっていた彼は、その想定の範囲外の人になってしまっており、メーカが想定する範囲外の使い方をして、見事、ぶっ壊してくれたのだ。まぁ、高いといっても、7万くらいのテスターだったので、「メーカ修理出して直らなくても、買い直せばいいか」くらいに思っていたのだが、基板が焼損しており、修理してもほぼ全交換という連絡。買い直せばいい...と思っていても、ガックリ。

その後、テストのやり方、テスターなどの器具の使い方をきちんとレクチャーしたのですが、またやってくれたのです。今度は、1台150万もする、オシロスコープを。テスターは壊れても、代わりが何個もあるからいいが、さすがにオシロスコープは何台も持っていない。使いまわし頻度が激しく、順番待ちしている状態なので、あと2台くらい買って欲しいところですが、会社が「うん、買ってもいいよ」なんて、簡単に言ってくれるわけがない。

汎用(低機能)のオシロスコープは転がってはいるが、使い物にならないから転がっているわけで、みんなが首を長くして順番待ちしているオシロスコープがウチの部署から姿を消した。メーカ修理には出したが、まだ回答が返ってこないので、いつ戻ってくるか分からないし、修理金額も分からない。

壊してしまったものは仕方ないし、怒っても、泣き喚いても仕方ないので、壊れてしまった経緯の話をきちんと聞いてみると... 先日教えた使い方だけでは覚えきれなかったので、インターネットで使い方を調べてみたとのこと。そこで、彼が探したページなどを見てみると、基本的な使い方をきちんと説明しているところは少なく、オシロスコープの機能説明や、波形の見方などが掲載されているところが殆どでした。

テスターのときと同じように、接続する場所を間違えた結果ではあるのですが、インターネットに掲載されている情報(試験結果)や、画像に載っている接続方法を試験してみたただけのことで、彼自身は、それが間違っているのか正しいのかの判断もできなかったが、インターネットに出ているくらいだから、その情報は正しいと、脊髄反射に近い様子だったようだ。

幸い、怪我や事故にならなかったのが救いだけど、下手すれば感電死したり、火傷を負ったりするので、そこはキツく注意。今回の件だけではなく、ほかのことでもインターネットをそのまま鵜呑みにするのは、やはり危険だなぁ......と切実に勉強させていただきました。

そういえば、引用の仕方が違う気もするけど、「うそはうそであると見抜ける人でないと難しい」って、2000年ころに『誰か』が言っていたなぁ。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋
< http://www.ne.jp/asahi/calamel/jaco/
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・前回(4月20日)、原稿を書いている途中で、システム異常の連絡が飛び込む。遠隔監視システムを組んで初めてのことで、最悪の場合、火災などの事態になってしまうかもしれないので、急いで会社へ向かう/ガス検地がエラーを起こしていただけのことだったので安心するも、原稿を落としてしまい、編集部には大変ご迷惑をおかけいたしました。

・記憶に残っている4週間の出来事→仕事にならないので、右手を勝手に解放した。それ以来、医者に行けないでいたり。→結局、今年のGWもなし。無残。→迷って悩んでD90をやっと購入。初心者には敷居が高いデジイチかな? とも思ったけど、とりあえず直感に従ってみた。→ナマハゲくん、本当にいろいろご迷惑おかけしました。