[2849] 衝撃波(Shockwave)

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《「速く」ではなく「早く」》

■わが逃走[65]
 信州巨大構造物の巻
 齋藤 浩

■電網悠語:日々の想い[152]
 衝撃波(Shockwave)
 三井英樹

■?×?×CrossOver Talk[9]
 自分のスピード感覚って、考えたことがありますか?
 杏珠


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■わが逃走[65]
信州巨大構造物の巻

齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20100520140100.html
>
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ご無沙汰してます。齋藤です。なにやら前々回の『わが逃走』にコメントを寄せてくださった方がいたにも関わらず、全く気づかずに1ヶ月以上放置してしまいました。月夜の流しさん、失礼しました。コメントありがとうございます。こんなくだらない文章を読んでくださる方がいると思うだけで感無量。

えー、さて今日(5/20)発売になった(であろう)雑誌『カメラ日和』に、なんと趣味の写真家・齋藤浩(とはオレのことさ)が紹介されてしまいました。以前書いた『わが逃走[51]顔に見えるコレクションの巻』系の写真がどどっと掲載されていますので、皆さん是非立ち読みしてください。気が向いたら買ってください。
< https://bn.dgcr.com/archives/20090924140400.html
>

なお、私の写真にまつわるウンチクはこの『わが逃走』にもたびたび登場していますので、よろしければバックナンバーを読んでいただけるとウレシイ今日この頃。
・わが逃走[23]尾道とカメラの巻
< https://bn.dgcr.com/archives/20080612140300.html
>
・わが逃走[24]人はなぜ写真を撮るのか。の巻
< https://bn.dgcr.com/archives/20080626140200.html
>
・わが逃走[38]ツァイスがスゴいの巻
< https://bn.dgcr.com/archives/20090212140300.html
>
まだまだあります。みなさんよろしくね。

という訳で、以上が前置きです。今回は前置きとは無関係に、この連休に信州は佐久市臼田にある臼田宇宙空間観測所なる施設を見学してきたので、そのときのレポートのようなものを書こうと思います。ここは昨年秋にも行ってきまして今回は二度目なのですが、グッとくる人にはグッとくるのですが、そうでない方にはまったくどうでもいいという場所です。

宇宙空間観測所はその名のとおり、宇宙空間を観測するJAXAの施設です。現在、数々の苦難を乗り越え地球に帰還する小惑星探査機『はやぶさ』や、5月21日(金)6時58分22秒に打ち上げられる『あかつき』らとの通信を担う直径64mの巨大パラボラアンテナを持つ施設で、"うすださん"の愛称でそのスジの方には有名。ちなみにこのパラボラは野辺山の電波望遠鏡よりもはるかにデカく、東洋一の大きさを誇る。

どーでもいいけど、日本の観光地では"東洋一"をよく見かけます。ってことは、西洋なるところはさぞかし凄いところなんだろうなあ。

さて、ここを訪れる人は主に『宇宙好き』と思われますが、私は宇宙に関してはあまり知識がありません。今回はどちらかといえば『ただの巨大構造物好き』として見学してきましたので、ご了承くださいませ。

5月3日、山道に向かない車で山の中のさびしい一本道をひたすら走って行くと、突如前方に巨大なパラボラアンテナが出現した。
< https://bn.dgcr.com/archives/2010/05/20/images/01 >

デカい。ものすごくデカい。しかも唐突。パラボラといえばウルトラマンな印象がオレにはあるのだが、円谷プロ的というよりも、スターウォーズepisode6に登場する森の惑星エンドアの、帝国軍レーダー基地にロケーション的にもそっくり。形状自体がとてもSFチックなのだが、決してフィクションではなく、純然たるサイエンスの施設だ。

さらに車を走らせ、いくつかのカーブを曲がると施設の入口に到着する。ちなみに入場は無料だが、簡単な手続きが必要。一旦停車し、受付にて住所と氏名、そして車のナンバーを記入すると見学者ワッペンをもらえる。これを付けて見学が許可されるのだ。

ちなみに客商売という訳ではないので、受付の対応もこちらを客とは思っていない。そのへんを理解しておいた方が気持ち的にも安心だ。参考までに私が目撃した受付と主婦との会話をここに記してみよう。( )の中は私の感想。

家族連れの車が『一時停止』の表示を無視して施設内の駐車場に車を入れ、車を降りる(この表示自体もイマイチ緊張感に欠けるので、ついそうしてしまう気持ちはわからなくはない)
受付:「おい、そこの人! 受付!」
(いくらなんでも「おい、そこの人」はないだろう。また「受付!」のように体言止めで怒鳴る人を久々に目撃しました。)
主婦:「あー?」 家族に向かって「なんかここで書くんだってさー」主婦、
見学者ノートに記入する
主婦:「あのー、ここって何があるんですか?」
(そんなことも知らずによくこんな山の中の一本道をここまで来たもんだ)
受付:「何って...」アゴをしゃくり上げ、見りゃわかるだろという感じで
「パラボラー。」
主婦:「ふーん」主婦、それきり何も言わずに去ってゆく 以上。

まあ、片や最先端科学技術を扱う施設の番人であり、一方はなんだかわからないけど来ちゃった家族連れである。今まさに、小惑星探査機『はやぶさ』へTMC-1(探査機を地球へ誘導するための姿勢制御プログラムの指令のようなもの?)実行のための通信が行われている、その巨大最先端設備の下では、こんな会話がなされていたのだ。

ちなみに近くでパラボラを見ると、こんな感じ。やはり巨大構造物好きとしてはシビレます。空のヌケといい、周囲の環境といい、パラボラとの対比がたまらん。色的にも質感的にも、絶妙なコントラスト。
< https://bn.dgcr.com/archives/2010/05/20/images/02 >

また、シンプルなトラス構造の集合体であるパラボラと周囲の森林は一見無関係そうに見えるものの、両者にはフラクタル的な美を感じます。
< https://bn.dgcr.com/archives/2010/05/20/images/03 >

さて、ここ臼田宇宙空間観測所には、もうひとつ素晴らしい物件がある。縮尺1/5500000000スケールの太陽系の模型。何が凄いかというと、惑星の模型ではなく、太陽系の模型という点。すなわち、星の大きさだけでなく惑星間の距離までもが正確な縮尺で再現されているのだ。

ここでは太陽がバスケットボールくらいの大きさで、そこから30mくらい離れた場所に米粒より小さい地球がある。ちなみに写真は地球から金星、水星、太陽を見ています。遠くの赤い玉が太陽。
< https://bn.dgcr.com/archives/2010/05/20/images/04 >

この施設の総敷地面積がどれだけかは知る由もないが、とにかく広い。が、この広大な土地をもってしても太陽系全ては入りきらず、土星から先は心の目で見ることとなる。太陽系ですらこんなにデカいってことは、宇宙ってけっこうスッカスかじゃん! ということが体感できる。これってかなり凄いです。

ここ信州では夜、空を見上げると普通に星空が見えたりするのですが、この模型を見る前と後では見え方というか感じ方が全く変わってきます。そんな訳で、タダで宇宙を体感できる素晴らしい施設、臼田宇宙空間観測所の紹介でした。といったところで、今回はこのへんまでにいたします。

もうすぐ『はやぶさ』が帰ってきます。こんどアオシマから発売されるはやぶさのプラモデルでも組み立てつつ6月13日を待ちたいと思います。ああ、なんか21世紀だなあ。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
>

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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■電網悠語:日々の想い[152]
衝撃波(Shockwave)

三井英樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20100520140200.html
>
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星野之宣の作品に「超新星メギド」というのがある。超新星の爆発を発見した博士と地球との半生記だ。超新星の爆発は、光の第一波、X線などの目に見えぬ第二波、そして爆発の衝撃波とも言うべき第三波が地球を襲う。人類は、ただ座して死を待つのではなく、備え抗う道を選ぶ。そこに悲劇があり、友情があり、過酷な現実があり、未来がある。

 ▼星野之宣SF作品集成III STAR FIELD / 星野之宣:光文社コミック叢書
 < http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/4334901530
>
 < http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334901530
>
 ▼大いなる回帰 / 星野 之宣:MF文庫
 < http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/4840112495
>

大きい画面で見たくて全体構成も大事という方は前者、とりあえず安くという方は後者、かな(あぁ早くデジタルで流通して欲しい......)。

最近はWebを想いつつ、この波状攻撃を思い出している。まばゆい光を感じた黎明期、今は余り語られなくなったけれどネット依存症などの暗部を多く語られた2000年前後、そして今。光も影もかすんでいない、厳然とここにある。そして、更なる波が見えている。

その波を衝撃波に関連つけるのは、「今」が決して平穏無事な状態じゃないからだ。光よりも闇よりも大きな衝撃がやって来ようとしているように感じている。ネットがあたりまえになり、情報が流れてあたりまえになりつつある今、何かが壊され、何かが再構築され始めている気がしてならない。


巨大なIT企業の社長が一般人とおしゃべりをして、その場で経営の方向性を決める。もちろん、常に諸々考えているからこそのアクションなのだろうけれど、数日後には進捗報告がなされ、新しい決まりや戦術が施行される。しかも、それが衆目の中で平然と行われる。躊躇することは悪なのだと言わんばかりだ。想っていることを全てさらけ出さなければ、このステージでは生き残れないのかと思わされる。アイデアと意見の通りのよさとともに、何か違和感を感じる。それは時代に乗り切れない者のヒガミなのかもしれないし、何かの警告かもしれない。いずれにしても、今までとはまったく違う道ができつつある。

そして、何より驚かされるのは、その息を呑むスピード。年単位の開発が、数ヶ月に縮まったのは序章にしかすぎなかったのか。Twitterでやりますと社長が言って、一週間で新サイトが立ち上がり、巨大電光掲示板上で新しいコミュニケーションがスタートする。社内外の壁はない。やろうと思い立ったときに、傍にいたものがそれを建て上げる。綿密なIA(情報設計)と無縁とは言わないが、緻密さよりも優先される何かがある。スピード、ライブ感、そんな言葉が浮かんでくる。あるいは、何かを建て上げる意思や覚悟があると言った方が適切かもしれない。リクルート社が賃貸系のサイトを、cgiも含めて数日で創り上げた逸話を越えるうねりを感じる。

意思決定者が猛進する以上、追従する者達も同じようなスピード感で進む。進まざるを得ない。その渦に巻き込まれるように、周囲の者達も同じ速度で回る。回らざるを得ない。パートナーとして選ばれた者たちには過酷な道が待っていることになる。でも、今までとは少し毛色の異なるデスマーチ。その進軍の後には、何かしらの歴史が残りそうな予感がある。


Webが「Webサイト」を意味するようになって久しい。でも、それが単なる部分しか示していないのは、学術的な部分でもよく言われていた。様々な技術が構成要素として存在し、「net」の厚みを織り成している。

でも、そんな次元でなく、Webは違う意味合いを強めている。今までとはまったく異なるエンジンに変わろうとしているかのように見える。情報流通エンジンから、ビジネスエンジンへ。もちろん、そんな傾向は前からあった。誰も慈善事業をしていた訳ではない。儲けがない畑に種を蒔く会社はない。でも、発注する部署からして異なり始めている。広報部でも情報システム部でもなくなっている。

ドラッカーは言っている、「イノベーションとは技術よりも経済に関わることである」。そう、技術的な革新に見えたものは、始まりにしか過ぎなかったのだろう。舞台は経済的効果の方向に変わりつつある。単サイトでの収益にこだわらず全体の効果を考えたり、通年での動向で判断がなされたり。短期決戦ではない「経営」という息遣いが、ネットに流れ込んできている。

既存メディアの衰退は明白だ。当事者達がどう強がっても、今のままでは、絶滅はないだろうが、衰退しかない。ROIの下がりようはここが一番なのだから。企業はメディア再興のために手を貸しはしない。利用と活用のみだ。自力再建しかない。そして、だからこそ、企業はWebに生き残りをかけた主戦場を求めざるを得ないのだ。既に実験は終わり、志ある企業は収穫の季節を迎えている。


さて、作り手にとって、この波はどうなのか。多分サイトを作ることがメインだった部分は、もっと部品的に考えられるんだろう。もっと大きな流れの中の一部。ネジ一本なのかもしれない。しかも、正しく作れてあたり前。正確に作れることに付加価値はない。間違ったらどやされるだけ。スピードも更なる改善が求められる。「無理ですよ」などという甘えは許されない。

見方によっては、ようやくプロフェッショナルという領域ができたとも言える。もはや誰も優しくしてはくれない。そして隙を見せたら、ここぞと根こそぎ奪われそうな戦場での日々に突入して行っている。

今が苦しいのは、リーマンショックが理由ではない。その辺りを境に、Webそのものの変化があらわになり、クライアント企業の姿勢が変わり始めたのだ。だから嵐が収まるまで身を隠していれば安全という訳ではない。心して豹変していかなければ、生き残れるはずがない場所で生きていかなければならなくなったのだ。

Web業界も土俵際に追い込まれている。これからも生き残れるのか、発言力を持って生き残れるのか、座して衰退を享受するのか、関わる全員が決断を迫られている。今までやってきたことを全て疑う時期とも言える。何を守って、何を捨てるのか、そういったレベルで生き残りを賭けるステージに突入した。

印刷業界に対して、視点を変えればもっとやりようがあるよねと笑ってられたのはもう過去の話だ。いまや電子書籍を抱えた出版業界がWebに対して、もっと視点を変えれば良いのにねと囁いているようにも思う。

Web屋は、html生産工場ではない。コミュニケーションの道を整備してきた者だ。いかに企業とユーザを結びつけるか、それをいかなる技術で達成するか、未だ見ぬ次世代の交流の原型や種を生み出す仕事をしてきたつもりだ。そして勝機もここにある、今までになかったことに十数年前に誰よりも早く自発的に取り組んでここまで来たのが我々だ。もう一回やればいいのだ、同じことを。

黎明期がビッグバンに例えられたが、今度の波はあれよりでかい。遥かにでかい。なぜなら、影響を受ける層が厚いからだ。技術革新の波ではない、企業やビジネスを軸とした文化革新の波だからだ。

意味深にも、衝撃波を英語では「Shock wave」と書く。若い人にはピンとこないだろうけれど、FlashもかつてはShockwave(macromediaからadobeに引き継がれた技術の総称)の一部として語られた時代がある。そして今、そのFlashを巡って争いが起きている。長年の同胞だった、AppleとAdobeの亀裂。ユーザを置き去りにした不毛な痴話喧嘩にも見えるこの戦いも、ある意味、崩れ始めたものの一部なのだろう。

何かが壊れ始めている。その動きは、最初の光の波よりも、見えない闇の波よりも、深く広く何かを変えようとしている。衝撃波が通り過ぎた後には何が残るのだろう。お楽しみはこれから、だ。心して、生き残ろう。

【みつい・ひでき】 感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
・何の話か分からない方へ:SoftBank孫社長の話です。
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■?×?×CrossOver Talk[9]
自分のスピード感覚って、考えたことがありますか?
──自分と相手とのスピード感の違いを理解してコミュニケーションを築く

杏珠
< https://bn.dgcr.com/archives/20100520140300.html
>
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デジクリ読者の皆さん、こんにちは。studio H.M代表のディレクター/デザイナーの杏珠(あんじゅ)です。

今回のお話は、自分の持っているスピード感覚を理解して、周りにいる方とのコミュニケーションを円滑にしようというのがテーマです。相手とコミュニケーションを取るときに、距離を感じることってありませんか? そんな距離をすこしでも縮める方法を一緒に考えていこうと思います。

●「速く」ではなく「早く」物事を進める

新聞、雑誌、メディア...どこをみても、いろいろな意味で「スピード」が求められている記事がとても多いと感じています。特に仕事に関わることは顕著ですよね。一言で「効率化」ということで片付けてしまえばそれまでですが、何のために効率化するのか? スピードを上げることにフォーカスして、なにか大事なことを忘れてはいないか...そう思ったことはありませんか?

仕事の速さを追求して、目の前の仕事をささっと片付けるのって、なんだかデキるビジネスマンみたいで、なんだかかっこいいような感じがしますよね?でも、その人その人によって、訓練して仕事のスピードを結果的に上げることができても、目標がないままで無理をしてやっているのであれば、いつかはカラダを壊したりすることに繋がります。自分もそういった時期がありました。

仕事の効率化やスピードの速さは、ある意味麻薬的なモノで、それが体感できると、次から次にその方法を導入したり、実験してみたくなると思います。それはそれで大事な時期もあるかと思いますが、その先をどうしたいか? というビジョンがなければ、終わりのない競走をすることになります。

では、どうしたらいいのか? それは「早く」始めるということが一番だと分かりました。行動を「速く」するのではなく、やり始めるのを「早く」するということです。この「早さ」が、人とのコミュニケーションにも大変役に立つことが分かったんです。

●感覚のスピードや歩幅は人それぞれ違う

私は「感情より理解から入る」ということに気をつけています。「相手とフィーリングが合わない」といって、感情のみで人と接すると、自分の考えをきちんと伝えるチャンスを見逃すことが多くありました。そして、コミュニケーションを取るときに、感情から入りやすくなってしまう一番の理由が自分の「スピード感」だと気づいたのです。

行動する時に「心地いい」スピードや歩幅は、人それぞれ違います。そのスピードや歩幅があったからこそ、今の自分が形成されているのであって、それを「こうした方が効率的だよ」とか「この方が絶対速く終わるよ」と、相手が望んでいないのに、自分の速度に引っ張り込んだりするようなコミュニケーションを取っていると、自然に相手が遠のいていきます。相手のスピードの遅さに我慢できなくなって、感情に走ってしまうケースです。

スピードよりも別なことで解決できることがあるんじゃないか? その人が望んでいるものを、まっさらな気持ちで考えることが、本当のコミュニケーションではないか? と思うんです。

●販売員時代のときに得た考え方

私は高校を卒業してからすぐに、家電量販店の販売員として接客に従事したことがあります。今では本当にその経験に感謝しています。「お客さんの生活をより豊かにするには、なにが一番ふさわしいことなのか?」という思考方法が身に付いたからです。「お客さんが望んでいることをサポートできるのであれば、商品を無理に売る必要はない」ということです。これを言うと販売員さんとかに怒られるかもしれませんが(笑)。でも、この考えで接客すると、不思議にリピーターが増えるんですね。商品をただ売るのではなく、お客さんの立場で接客する。ここでも「早さ」が大事になってきます。

接客を「速く」すると、以下のようになります。
・売り上げを目標の金額に「速く」上げることに気持ちが動き、目の前の商品を「売ること」だけにフォーカスしてしまう。
・接客時間の回転率を「速く」するために、接客時間を効率的に短くしようとする。
・次のお客さんの接客をしたいために、クロージングやフォローも「速く」こなしてしまう。

そこで、接客を「早く」すると、こうなります。
・売り上げは最終的に到達するように、「早く」計画を立てて「早め」に準備する。
・顧客満足度を上げるために、お客さんがどんな生活を望んでいるのかを「早い」段階で引き出してやり、その人自身が望んでいたことを分かってもらえれば、リピートに繋がる。
・お客さんは最後のやりとりが一番記憶に残りやすい。なので、最後にしっかりとフォローすることで、お客さんに喜んでもらえることが多い。

こういった「早さ」と「速さ」の違いを理解すれば、人とのコミュニケーションもより円滑になっていくと思います。

●理解するスピードの「速さ」を意識したコミュニケーション

ここまで「速さ」に対して否定的な感じでお話をしてきましたが、「速さ」自体は決して悪いことではなく、むしろ自分の興味に対するバロメーターとも考えることができます。仕事術などで、効率化することが「楽しい」と思えば作業を「速く」することに対して、面白さを見いだすことにもなります。今回のコミュニケーションというテーマに限っていえば、相手に対して「速さ」という観点でコミュニケーションを取ることはやめた方がいいということです。

自分が意識的に技術やノウハウ、環境改善などを勉強し、いいところは取り入れて、自分で磨いていくことはとても大事なことだと思います。しかし、自分の行動や思考スピードが、他人と同じではないということは常に理解しておくことが必要だと思います。

下記のような場合は、逆に自分がどこまでいけるのか? という可能性を見いだすためにも、できるところは「速さ/早さ」にチャレンジした方がいいでしょう。

・自分ひとりでプロジェクトを進行するような環境。
・パートナーやグループでのプロジェクトにおいて、自分のリミッターを外して、お互いがスピードを出し合い、相乗効果を生み出せるような状況。

しかし、すべてのコミュニケーションにおいて、こういった状況でないことも考えられます。そこで、以下のようなことを念頭にコミュニケーションすると効果的だと思います。

・自分のスピード(話し方・思考・プレゼン方法)が相手にとって速くないか?
・「なにか速いかも...」と感じたら、国語の辞書のページを隅々まで見るような感じでゆっくり話を進める。言葉をひとつひとつ確認をしていきながら進めていき、相手の理解スピードを確認していく。
・ある条件が整っているという「○○ありき」の進め方をしていないか? 相手におざなりな対応をしていないか? 相手が分からなくなってきたときのために、極力分かりやすい話を準備しておく。

●自分が知っていることは、相手が知っているとは限らない

iPad、私も早速予約をしました。自分としては、色々な可能性を秘めたワクワクする商品として楽しみにしています。ですが、「iPadって何?」と、まったく知らないか、興味を持っていない人もいます。「電子書籍ビュアー」としてのデバイスって何? と思う人もいます。

「電子書籍」自体、何なのか知らない人も少なくありません。業界の方もまだ未確定な部分が多く、情報収集やビュアーの開発など試行錯誤している状況です。雑誌やWeb上で「iPadは電子書籍ビューアーとしては使えるのか?」という記事を見ても、「なんのことやら?」と思う人もいるでしょう。

そして、今ではTV番組やラジオ番組でも聞くことも多くなってきたマイクロブログの「Twitter」や、その場でパソコンやiPhoneなどでインターネットを使っての生放送ができる「Ustream」、インターネット上でのコミュニティネットワークなどの「ソーシャルネットワークサービス」は、私にとってはとても大事なWebサービスになっています。ですが、別にTwitterやmixiを知らなくても、生活になんら問題はない方が多数いると思います。

相手が知らないことを知っていたり、持っていないモノを持っていることに対して、「こんなことも知らないの?」と考える自分がいたら「自分はスピード感覚がマヒしていないか?」と振り返ってみて下さい。

自分が普通と思っていることは、人によってはまったく異次元の世界ということも多いのです。時代の波に乗り、波に乗って駆け抜ける瞬発力も大事ですが、自分の普段のスピードがどれくらいかを知っておくことも、人とのコミュニケーションを取るときにはとても大事なことだと思います。そばにいる人ほど、そのスピード感に距離を感じているかもしれませんから。一度、自分の「スピード感」を確認してみてはいかがでしょうか?

【あんじゅ】ask@happy-montblanc.com

東京都出身。デザイン事務所「studio H.M」代表。エディトリアルを中心にデザイン業を営んでます。愛車のSKYWAVE250にPSPのマップラスナビをつけていろんな所に出没しています。大手コンビニエンスストアと某家電量販店でオーディオビジュアル機器(カーナビ、衛星放送機器、テレコ)の販売経験を持つ、妙な経歴の持ち主のディレクター/デザイナー。
『みんなが幸せになれることはないか?』をモットーに、日々自分が気になることを追求し、業種、仕事にとどまらず多方面で物事を追求し、答えを求めている天国思考な人物です。
人と機械の架け橋になることを常に考え、機械がいいパートナーになってもらえるような活動をしています。
機械モノ(パソコンとかガジェットとか。iPhoneは2台持ち)が大好きで、小学校低学年からの生粋ゲーマー、料理(食べ物)が大好物です。業種、仕事の内容、もちろん仕事でなくとも『ピンっ!』と何かを感じてくれましたら、いつでもコンタクトいただければ嬉しい限りです。

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■編集後記(5/20)

・何か起きると因果関係も考えずに「温暖化が原因だ」と言う人を「なんでも温暖化おじさん」という。しかし、本当に地球はCO2により温暖化しているのか、温暖化が本当に困ったことなのか、いまだに理解できないわたしはなんと呼ばれるのか。毀誉褒貶が激しいお方だけど、武田邦彦中部大学教授の唱える「地球温暖化はエセ科学である」説は興味深い。特におもしろかったのは、もし本当に温暖化して被害が出るとしたら、それは海洋性気候の日本にとって天佑だという話。温暖化で熱中症になったり、マラリアに感染したり、超巨大台風が来襲したとする。もちろん日本に被害は出るが、大陸性気候の中国内陸部ではそれに数倍する激甚な被害が起きているはずだという。アメリカも同様だ。戦えない軍備をもつ日本が、自ら手を下すことなく、併呑しようと狙っている相手を壊滅させることができる。温暖化説が正しければ、そんな冗談も成立するわけだ。本当にCO2が天変地異をもたらす脅威だとしたら、巨大なCO2産出国であるアメリカと中国が動くはずだが、全然その気がないのは、CO2温暖化説を肯定していないからだろう。それなのに、バカ正直に(いや、ただのバカ)25%ものCO2削減をいちはやく約束したのは、世界中で日本だけである。CO2削減はパワーゲームであって、科学の問題ではない。あるとしたらの温暖化、必ずそうなる少子高齢化、いいじゃないか。対策なんかいらない。「従容受け入れおじさん」と呼ばれたい。でも、外国人移民は受け入れないけど。(柴田)

・劇団☆新感線の「薔薇とサムライ」を観た。公演公式ブログのオスカルな天海祐希コスプレ画像と、男勝りな役柄、元娘役トップ森奈みはるとの共演と聞いて、こりゃ何が何でも行かねばなるまいと思った。元々、新感線はほとんど行っているのだが、オスカルな天海なんて二度と観られないかもしれないのだもの。女優で活躍している人って、まず男役やってくれないし。ありがとう、新感線! 古田新太が天海のファンだったというのも結構有名な話だよね。先に声が聞こえて登場、なのだが、声が聞こえた途端、私を含め客席が、ばばばばっとオペラグラスを構えたのに笑ってしまう。期待通りというかサービス良すぎるぞ、新感線、という役柄にシーンに衣装に踊り。「天海ファン感謝デー」ってな内容。宝塚では綺麗な人や素敵な人がいっぱいいて(天海二番手の時は涼風真世がトップだった)、いくら天海が綺麗とはいっても目移りするんだが、この舞台では天海を目立たせるためもあって、出番含め、他の人たちはおさえた感じ。なので「私っていつから天海のファンになったの?」と思うぐらい、天海ばっかり観てしまったよ。ほんと「きれ〜! かっこい〜!」なの。特に手の表情が雄弁! 手の平が指が語る。目での演技とか、足先とか、もちろん宝塚ばりな踊りでの表情とか動きとかも。古田好きなのに、他の人たちも好きなのにほとんど観ていない気がする......。脇にはできない、目立ちすぎる人だと思う。「阿修羅城の瞳」の時にも思ったよ。主役の染五郎が食われていたように思ったから。もう終わっちゃったけどもう一回観たい〜。DVD欲しい〜。あ、内容について書いてないよ......。(hammer.mule)
< http://www.bara-samu.com/
>  30周年記念
< http://barasamu.exblog.jp/9494285/
>
「ブロマイドを買いに行かせたことがあるくらい」
< http://barasamu.exblog.jp/9576861/
>
スチール撮影レポート 天海祐希編【1着目】
< http://barasamu.exblog.jp/9657277/
>
スチール撮影レポート 天海祐希編【4着目】
< http://www.e-oshibai.com/items/023.html
>
「阿修羅城の瞳」予告編