日々これ徒然なり[03]PowerPCにワクワク?/えむ

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僕の主な仕事のひとつに、社内のコンピューターネットワークの維持・管理があります。社内のインフラを支える、まさに縁の下の力持ち的役割です。昨今は電気や水道と同様、インターネットにつながるネット環境は「普通に使えて当たり前」と思われるようになっていますが、やはり「コンピューターネットは電気や水道ほど信頼度は高くない」というのが僕の実感です。有線、無線ともにネットワークの技術は進化の途中にありますし、多少の不安定要素があるドラフトの段階でも先取りして使い始めたりしますからね。

最近では無線通信がいい例でしょう。枯れたと思う間もないまま次の新技術がリリースされ、古い技術は陳腐化するばかり。こんな「過渡期」は永遠に続くのではないでしょうか。より優れたものを追い求める人間の探求心って、つくづくすごいと感じます。

そう言えば今を去ること20年ほど前、僕が就職活動をしている最中に「ネオダマ」という言葉が使われているのをよく見かけました。ネットワーク、オープンシステム、ダウンサイジング、マルチメディアの頭文字をつなげたものでしたっけ。いずれも今やごく普通のことで、わざわざキーワードとして言及するのは恥ずかしすぎるほどです。それだけ技術が進歩したんですね〜。

技術が進歩することで私たちの生活全般が便利になるのは、一面では確かです。けれどもまた別の面から見た場合、必ず幸福につながるかというと、そうとは言い切れないんですよね。何ごとにも表と裏の両面があるわけです。



別にテクノロジーの進歩を否定するわけじゃありません。新しい技術や製品の登場にはもちろんワクワクしながら注目しますし、これからもずっとワクワクさせ続けてほしいと願ってます。

その一方で、ネットさえあればどこでも仕事ができる状況が幸せなのかどうか、外に出ずともiPadひとつで日常の用が足りてしまう生活が理想的なのかどうか、そんなことにふと思いを馳せる時、技術の進歩に追い回される、私たち人間の悲哀を感じずにはいられなくなります。

さて、ネオダマのひとつ、マルチメディアという言葉を聞くと、インターネット黎明期にあったネット上のとあるショッピングモールを思い起こします。コンビニや書店で買ったCD-ROMを使って、アクセスするタイプのサービスだったかと思います。確か、丸紅か伊藤忠あたりの大手商社が関わっていたはずです。まだモデムやTAでの通信が一般的だった頃で、テレホーダイの全盛時です。

僕自身はろくに使わなかったこともあって、サービス名称はすっかり忘れましたが、あのモールはその後どうなったんだろうと時々思い出します。名前も分からないのでそれ以上調べようもなく、いつも思い出すだけで終わってしまいます。

わざわざ人に聞くほどのことでもないけど気になる、こんなことってけっこうありますよね。適当に質問をつぶやいたらiPadが答えてくれる、なんていうのはちょっと幸せかもしれません。これがiPadでなく、マイクロソフトのOSが載ったデバイスだと「サーチエラー。パラメーターを指定してください」などと、無機質なコンピューターボイスが答えを返したりするかもしれませんねぇ。こんなのはちょっと御免こうむりたいです。さすがのマイクロソフトも、最近はここまでビジネスライクじゃないはずですけど。

マルチメディアということで、もうひとつ。Pippin @(ピピンアットマーク)は忘れちゃいけない存在だと思うんですが、業界関係者の皆さんにとってはどうなんでしょう? 林信行さんとか本田雅一さんだとどう言及されるのか、とても興味があります(どこかで書かれているのをご存知でしたら、是非ご一報をお願いします)。

パッとしないまま市場から消えていったピピン。このゲーム機には PowerPC603 66MHzが載ってたんですね。「PowerPC」って文字を改めて見せられると、なんだか感慨深く、懐かしささえ感じます。懐かしいと言っても、実は僕にとっては毎日身近な存在であり続けてるんですが、誰が何と言おうが時代はもはや「A4入ってる」なんです。ここでは「えーよん」と読まないでくださいね(ご存知ない方のために。A4はiPadに搭載されているCPUです)。

ついでのお願いで恐縮ですが、自宅のMacがPowerPC G5/2.5GHz×2の Power Mac G5だなんてことは、この際僕に思い出させないでください。Classic環境が動くPower Macの最終モデル一歩手前の機種ですし、自宅で使う分には十分パワフルで困ってないなんてことも思い出させないでください。Intel Macが登場して早3年半。PowerPC はもう十分すぎるほど懐かしい存在のはずなんですから。PowerPCを知らないMacユーザーも絶賛増殖中なんですから......。

そんなPowerPC系のCPUが3大ゲーム機のWii、プレステ3、Xbox 360にそろって塔載されているのは、きっと偶然じゃないんでしょう。技術面に明るくないので、どういう理由で3社ともPowerPCを採用したのか、正直なところよく分かりませんけど。ついでに言えば、なぜアップルがPowerPCからIntelに移行したのかも、ずっと気になっているくせに分からないままです。文系人間がこのあたりを追究するのには無理があるんだろうと勝手に解釈して、自分を納得させてます。

今思えばPowerPC搭載末期のMacにはどこか閉塞感が漂っていたようにも思えます。スペックアップした新機種が出ても、なぜかあまり前進したようには感じられませんでした。どこかしらワクワク感に欠けていた気がします。PowerPC への訣別は、ひょっとしたらジョブズ復帰以後のアップルにおける、最大の転換点だったのかもしれません。

■今週の一枚 オフコース「Still a long way to go」(1988年:32FD-7007)
オフコース最後のオリジナル・アルバム。同名タイトルのコンサートツアーのスタートと同じ1988年6月9日発売。オリコンチャート最高2位。

アマゾンのカスタマーレビューにはけっこう辛辣なことも書いてあるんですが、僕は大好きなアルバムです。オフコースのアルバムで一番好きかもしれません。「オフコースはこれからだ」という前向きな熱い思いを感じます。前作の「asclose as possible」(1987年3月発売)では「複数のバンドが集まったようなサウンド」だったのが、ここでは全11曲を通して一本スジの通った統一感のあるものになっています。

22年も前のCDなのに廃盤にもならず、また、一度も再発売されることなく、いまに至るまで現行商品としてカタログに残り続けている珍しいアルバムでもあります。音質面では拡がり感が不十分な「初期のCD」っぽい音をしていますが、聴くに堪えないといったことは全くありません。

「Still〜」の先行シングルとなった1曲目の「君住む街へ」(アルバムとは別バージョン)を初めて聴いた時には、それまでにないエキサイティングな構成に鳥肌が立ったことを今も覚えています。3人のメンバーが代わる代わるボーカルを取るのを聴いて、オフコースとして「新たな未来へ向けて突き進もうとしている」、そんなメッセージを感じ取っていました。

しかしそんな期待をよそに、メンバー間、特に小田和正の中では「オフコースとしてできることはやり切った」という思いが強まっていたようです。「Still〜」の発売から5か月ほど後、ファンクラブ会員に向けて解散が伝えられました。結果として「Still〜」はオフコースの第3期を締めくくることになりました。バンドのラストアルバムということでは、YMOの「サーヴィス」(1983年)の重要度と同じくらいの重みを持っているように感じます。

さて「Still〜」を聴いて、返す返すも惜しいと感じるのが、ビル・シュニーがミックスダウンを担当していないこと(ビル・シュニーは、1980年発売のアルバム「We are」以降、オフコースや小田和正の大半の楽曲でミックスやマスタリングを担当した腕利きエンジニアです)。打ち込みのシンセの音が至る所で聞こえる点は、この時代らしさを十二分に感じさせてくれますが、少々耳障りにも感じてしまいます。

同じ1988年の3月に、小田和正のソロアルバム「BETWEEN THE WORD & THE HEA-RT」が出ています。このアルバムは自前のスタジオを持ったばかりのビル・シュニーがミックスしています。全体的に落ち着いた雰囲気の漂うレコードです。「Still〜」の発売は、これのわずか数か月後です。おそらくはビルのスケジュールの都合によるものだったのでしょうが、「Still〜」のミックスをなぜ彼に任せられなかったのか(あるいはあえて依頼しなかったのか)大変気になります。

彼がミックスを担当していれば、「Still〜」はより普遍的で時代を越えて聴き続けられるようなサウンドになったのではないか、そうなれば、より多くの人に愛される秀逸な一枚になったのではないか、そんな考えをどうしても拭えません。

なお「君住む街へ」と、シングルカットされた「she's so wonderful」「夏の別れ」、そしてアルバムのラストに収められている「昨日 見た夢」の4曲は、後に小田和正がセルフカバーしています。

Amazon.co.jp : Still a long way to go : オフコース
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