私症説[18]時代の未来に日本はどうか/永吉克之

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未来の日本史の教科書がどうなっているのか、ぼくは知りたくて知りたくてしかたがないんですよ。いつも死にたいとか言ってますけど、未来の日本史の教科書が見られるのなら、あと百年くらいは生きてもいいんじゃないかって思ったりなんかしてるくらいなんです。

みなさんご存知の通り、鎌倉時代とか室町時代とか江戸時代とか、時代の名称は基本的に、幕府がおかれた都市の名称と一致します。でも明治維新以降は単に明治、大正、昭和、平成と、元号で呼ばれるだけで、これらを一括して「◯◯時代」とは呼ばれていません。

政府がおかれる都市が同じとはいえ「江戸」から「東京」という名に変ったのだから、将来の教科書では「東京時代」と呼ばれるかもしれませんね。でも、ぜんぜん芸のないネーミングですよね。ま、時代の名前で芸を見せてもしかたないんですけど。「この時代の名前、ごっついおもろいがな」って未来人を楽しませてもしょうがないんですけど。

明治維新からもう140年以上経ちましたよね。あの室町時代だって、だいたい100年間でしたから、そろそろ、時代が変ってもいいんじゃないかと思うんです。このところ、中国企業の日本買いが絶好調なのを考えると、近い将来、中国が日本を併合してくれるでしょうから、日本が中国の領土だと国連で承認してもらえるまでを区切りとして、維新以降の時代の呼称を決めればいいと思うんですけど、どうでしょうか。まあ最終的には中国が決めることですから、日本人が悩む必要はありませんけどね。



ところで、時代の呼称ってどこのどいつが考えてるんでしょうね。これも知りたくて知りたくてしかたがないんですよ。例えば「江戸時代」と命名した人、あるいはその呼称を公式なものとして承認した人が必ずいたはずなんです。名前が勝手に湧いてくるわけないんですから。

それは調べれば判ることなんでしょうけど、面倒くさいから調べたくないんですよ。かかりつけの占い師に占ってもらうと、命名した人の名前は「せ」で始まるということなので、「せ」でググってみたら、106,000,000件もヒットしちゃって、ぼくはもう完全にいやんなっちゃってるところなんです。ぼくは怠惰の権化のような人間なんですから、誰か教えてくださいよ。知っている人が知らない人に教えるのは、人としての義務なんですからね。

ちなみに、余計なお世話かもしれませんけど、たとえば1,000年後の学校の生徒たちは憶えなきゃならないことが多くて大変でしょうね。特に歴史の教科書なんか、厚さが30cmくらいになってるかもしれません。昭和に生まれてほんとによかったと、胸をなで下ろしているところです。

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ところで昔の人間は、自分たちの時代を何と呼んでいたのだろうか。私はもうそれが知りたくて知りたくてしかたがないのだ。例えば、奈良時代から平安時代にかけて生きた人間が「いやあ、あたしゃ奈良時代の人間だから、平安の人の考えにはついていけなくてね、はは」なんて笑っていたのだろうか。縄文時代の人間が「嗚呼、縄文の世に生まれて僕は幸せだ」なんて人生を賛美していたのだろうか。

Wikipediaの「日本の歴史」の項目では、飛鳥時代以前は、遡って、古墳時代、弥生時代、縄文時代、旧石器時代、以上四つの時代しかない。ということは、飛鳥時代の歴史学では、この四つの時代をカヴァーすればいいのだから、当時の学者はそりゃ楽だったろう。ましてや、いちばん古い旧石器時代の学者は、過去に学ぶものがないのだから、何を研究したらいいのか判らなくて右往左往したに違いない。

旧石器時代より前の日本。時代とは呼ばれない時代の日本。つまりまだ時間が始まらない世界。そのころの日本は、モヤがかかったように茫洋としていて、エネルギーだけが国土を満たしていたと考えられる。そして何かをきっかけとしてエネルギーが物質に変換された瞬間に旧石器時代が始まり、それと同時に、日本人がポンと発生したのだ。そう考えないと、何もないところにどうやって旧石器時代と日本人が出現したのか説明がつかないのである。

「おお、これはどうしたことだ。突然、私が現れたぞ!」
「私も現れた。なるほど、これが旧石器時代か。この時代に生きるのだな」
「今日は旧石器時代元年の1月1日だから、われわれが最初の日本人だな」
「......しかし、今日のコラムは何が言いたかったんだろうねぇ」
「まあ、いつだって何が言いたいのか解らんこと書いとるから」
「どうやら、時代をテーマに、ひねくったこと書こうとして失敗したようだな」
「どう見ても、そうとしか考えられんじゃないか」

「まあいい。ところで、"明治時代""大正時代"とは言うが、"昭和時代"というのは、あまり聞かんようだな」
「"時代"という尊称を得るためにはだね、君、それ相応の時間が必要なんだ。昭和はまだ評価も定まっておらんし、それに、近すぎて客観的に見ることができんのだ。軽々に"時代"と呼んではいかんのだよ」
「ほう。しかし君は、細君の話をするときに"新婚時代は"などとよく言うじゃないか。あれを軽々と言わずして何と言うんだい?」
「失敬な男だな、君も。妻を侮辱するのはやめたまえ」

発表によると、この後、ふたりの間で激しい口論となり、男はかばんの中に隠し持っていた刃渡り20cmの文化包丁で田村さんの腹部を刺したという。田村さんは意識不明の重体。警察では男の行方を追っている。

【ながよしかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
このテキストは、私のブログにも、ほぼ同時掲載しています。
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