子だくさんIT社長のFileMaker日記[22]サンディエゴで思った成田・羽田のこと
── 茂田カツノリ ──

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デジクリの夏休みも明けました。みなさんいかがお過ごしでしょうか?

僕は例によって毎年夏のFileMaker Developer Conferenceに参加し、いまは帰りの飛行機の中。ということで、この旅の手配についてと、それにからんで思ったことが今回の題材。



●アメリカの旅は飛行機ルートが勝負だ

とっても広いアメリカでは、飛行機のルートを効率化させるために「ハブ&スポーク」という手法を採用している。乗り換えポイントを決めてそこに便を集中させ、あらゆるパターンでの移動に対応しようというわけだ。

日本からはまず利用する航空会社のハブに飛び、そこで乗り換えるのが基本。今回の目的地であるサンディエゴや、さまざまなイベントが開催されるラスベガス、過去にFileMaker DevConが開催されたアリゾナ州フェニックスやフロリダ州オーランドといった町は、すべてこの方法でたどり着くことになる。

たとえば、オーランドに行く場合、コンチネンタル航空ならヒューストン、ユナイテッド航空ならシカゴに飛ぶのが基本。ここは巨大なハブなので、乗り換えた先のオーランド行きも便数が多いから、日本からの便が遅れて乗り継ぎし損ねても次があるのだ。

うっかりメインのハブじゃないとこで乗り継ぐルートを組んでしまうと、遅延が出たとき苦労する。「有名な旅行会社に頼んだから大丈夫」などと言う人もいるが、ルートぐらい自分で考えたほうがいいし、そのほうが快適かなと思う。

目的地まで直行で行ける場合も、乗り継ぎがある場合も、おおむね同じゾーンなら値段は一緒。ハブに飛ばして乗り換えさせるのは航空会社の都合だというのもあるけど、地方都市が不利な立場におかれないような何らかの配慮があるのかもしれない。

●サンディエゴへのルート

今回の目的地であるサンディエゴは、中途半端な面がある。ロサンゼルスに近すぎるのだ。クルマで2時間ちょい、飛行機だと実フライト時間30分以下なので航空便需要は少ない。

アメリカのほかの都市からはそこそこの便があるが、日本、オーストラリア、ニュージーランドなどからくる場合は、ロサンゼルスに入るのが妥当。となるとロサンゼルスから鉄道やバス、レンタカーを使うより、たとえ短距離でも飛行機で行けたほうが便利だ。

そんな接続目的のために、70人乗りくらいの小型機を比較的高頻度で飛ばしてる。スカイウエスト航空という会社が運行しているのだが、「デルタコネクション」「ユナイテッドコネクション」という名を付け、完全に特定会社の接続用として、塗装も便名も依頼元会社のものと揃えている。

カンファレンスは8月15日(日)の夜からスタート。時差調整もあるので僕は14日(土)の夕方発のデルタ航空を利用、同じ土曜日の朝にロサンゼルスに到着し、2時間程の待ち時間でサンディエゴ行きに乗り継ぐ。

こうした乗り継ぎの場合、アメリカでは最初の到着地で必ず入国手続きをするというルールがある。このとき税関検査もあるので荷物を一旦拾って、検査を超えたところで再度預けるのだ。これがちょっとめんどくさい。

帰国便はそんなことはなく、搭乗地でチェックインするときに成田まで荷物はスルーできるのが常識。

●ハブ&スポーク VS 羽田・成田の内際分離

日本から直接飛ぶことができるアメリカの都市は、必ずしもその都市単独での需要が多いところだけではない。たとえば、デルタ航空の西海岸便ならロサンゼルス・サンフランシスコ・シアトルのほかに、ポートランドやソルトレイクにも飛んでいるのだ。これらは乗り継ぎを前提とした便だ。

ハブ&スポークにはもう一つメリットがあって、満席や欠航によって直行便に乗れなかった場合も、他の都市に入ってから乗り継ぐという形での到達が可能になる。

以前フェニックスに行くときに、サンフランシスコ経由で席を取っていたのだが、満席を超えて乗れない人が出てきたからと、成田でチェックイン時に「ロサンゼルス経由に変えてくれないか」と持ちかけられたことがある。こういうのは承諾すると絶対にメリットがあるのだが、そのときはビジネスクラスに乗せてもらえた。

航空会社にとっても、整備拠点の集約や機材繰りのしやすさなど、ハブ&スポークメリットは大きい。

ということで、なるほどよく考えられてるなあと思うハブ&スポークシステムだが、世界中に一つだけ、この常識に沿わないシステムを作っているおバカな国がある。それはもちろん、日本だ。

日本では「成田は国際・羽田は国内」という、まったくもって航空業界の常識がわからない人間が考えたとしか思えない「内際分離」という愚かな運用をしている。東京にいる人はかまわない。たまらないのは地方都市の人だ。

たとえば、青森や仙台の人がソルトレイクに行きたいとした場合、新幹線で東京に出て成田エクスプレスに乗り換えてという、大変な不便を強いられる。東京に行くだけなら新幹線でいいが、どこかに飛ぶなら仙台空港でチェックインして日本国内のハブで乗り換えたほうが遥かに便利だというのに、である。

さらに、伊豆大島の人はどうだろう。羽田に飛んで京急と京成を乗り継ぐという、交通システムのデザインとしてはあまりにアホすぎる動きを強いられる。

つまり、「内際分離」というのは、地方都市をバカにした仕組みなのだ。そもそも地方から海外になんて用事はないでしょ、とでもいいたいのだろうか。まさに愚弄そのものであり、大変に腹立たしい。

極端な言い方をすると、地方経済が疲弊している現状は、内際分離という愚行を何10年も継続してしまったことにも要因がある。外国に行くだけが大事ではないが、観光客や産業の誘致や交流などに少しずつマイナスの影響を与え、それが何10年も積み重なり、人々の意識にまで影響を与えているのではないだろうか。

そんなことをしてる間に韓国がインチョンに立派な空港を作り、日本の地方都市からの顧客を吸い上げる流れを強めた。地方在住の人にはこれは大変に便利で、ありがたいことだ。そして航空業界としては、ごく常識的なことをしているだけだ。

世界でもトップクラスの経済規模を誇る日本が、隣国にハブを取られているというのは、まったくもって笑える話。みんなもっと、この異常さを大きく取り上げるべきだよ。こんなバカな話はないんだから。そんな無駄ばかりでは、日本航空も倒産するわけだ。

大都市においてローカル空港と大型空港とが併存するのは普通な話だが、単純に国内線と国際線とを分離するいまの姿が実情に合致してないのは明らか。さっさと解決して先に進もうよ。

ということで、FileMakerの話は次回します、はい。

【しげた・かつのり】FileMaker公認トレーナー/FileMaker11認定デベロッパー。システム開発およびコンサルティングが主な仕事だが、企画やIT系ライターもやってるので、最近は「ITジャーナリスト」の肩書きも加えることにしている。株式会社レクレアル代表取締役。Twitterが与える人生の変化があまりに大きすぎて驚いている45歳4児の父。全国どこでも(海外でも)FileMaker講座しますっ! お問い合わせください。

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