装飾山イバラ道[61]時間をジャンプする映画たち/武田瑛夢

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あまりの暑さに、出かける気にならない今年の夏。
このところ、海外の映画やドラマに日本人の俳優が出演していて、ミーハーな私は嬉しい。AXNのドラマ「LOST ファイナル・シーズン」には真田広之が、「フラッシュ・フォワード」には竹内結子が出る。

どちらも既に放送は開始していて、真田広之は謎な役柄で渋い感じ。竹内結子はまだ放送分には現れていないので楽しみだ。映画では渡辺謙が出ている「インセプション」を見た。今回のテキストやリンクの動画にはネタバレを含むものがあるので、これから見る人は注意してください。



●「LOST ファイナル・シーズン」

・AXN海外ドラマチャンネル LOST
< http://axn.co.jp/program/lost/ >

・LOST シーズン1 COMPLETE SLIM BOX [DVD]
< http://www.amazon.co.jp/LOST-シーズン1-COMPLETE-SLIM-BOX/dp/B001E5AJII >
・『LOST ファイナル・シーズン』 スペシャルトークセッション
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上のスペシャルトークセッションの動画の真田広之、ほんとに嬉しそう。実際の出演シーンではほとんど笑わないようなキャラなので、このトークは親しみが持てて良いですね。役柄名は「道厳(ドウゲン)」で、ゆっくりと堂々と歩いて来る感じの人物。あの道厳の人が、内心こんなにワクワクしていたなんて今知ってびっくり。日本ではドラマの放送がまだ終わっていないので、これからどうなるのか期待している。「LOST」は全部でシーズンが6つあって、今回の6が最終シーズンだ。

各シーズンのあらすじを本当にざっくりと語ると、無人島に飛行機が墜落して生き残った人々が、脱出するために力を合わせたりケンカするのが〈シーズン1〉、島の中にあったハッチの謎や、もともと島にいた人間との関わりが展開される〈シーズン2〉、敵と味方が囚われたり逃げたりを繰り返す〈シーズン3〉、どこに行っても安全で幸せなだけの場所なんてないと知る〈シーズン4〉、回想シーンや未来のシーンだけでなく、登場人物が時間を飛び越えるオカルトっぽい〈シーズン5〉。

ここまで来ると、すべての関連性を思い出そうとしても記憶がぐっちゃぐちゃになるので、「今必要なことだけ思い出せばいいや」という見方を身につけるようになります。平均20話前後×5シーズンも話が蓄積してきたので、視聴者の記憶だけに頼らないフォローをつけたシーン展開になっている。忘れたところがあっても大丈夫だ。

正直言えば、見始めた頃は私はそんなに「LOST」を好きじゃなくて、FOXの「24」みたいな時間軸のはっきりしたドラマの方が、スッキリと理解できて見やすかった。「24」は後出しが効かない分刻みの展開がウリだから、見る側に強いストレスを与えつつも、比較的早い時期にどうなるのか結果を見せてくれるのだ。そうでないと24時間で事件が終わらないから。

「LOST」は登場人物の過去を1回1回に振り分けてフラッシュ・バックのように見せていくので、いくらでも後から詰め込める仕組みに感じたのだ。悪く言えばこのズルい見せ方で、シーズンが何回進もうが決着そのものはつかずに延々と続いていく。

各シーズンの終わりに新しい謎をチラリと見せて、次のシーズンまで何ヶ月も待たすやり方の繰り返しだが、結局見るのをやめられない私。〈シーズン3〉を見ていた頃には、「『LOST』って、見ると自分の時間を失うって意味?」とか「もう次はギブアップしようか?」なんて旦那さんとグチをこぼしあっていたのに、〈シーズン3〉のラストから〈シーズン4〉へとつながる展開は素晴らしかった! 〈シーズン4〉のおもしろさは、ドラマとして秀逸だったのではないだろうか。

それまで見てきたシーズン3コ分の内容がしっかりと生かされていて、なおかつ新しい謎もふんだんに盛り込まれている。リーダーのベン役(マイケル・エマーソン)の迫真の演技のおかげで、ドラマが生き返ったような気もする。新しい登場人物がもたらす新しい関係性がすごく効いていた。こんなに長く一つの話を続けてきて(島から出るの出ないのという)、ここまでおもしろいなんて衝撃的だった。

その後の〈シーズン5〉も急展開が多い。超常現象やオカルトっぽくしてしまうと好みが分かれそうだけれど、謎の島だから何でもアリなのかも。今回のファイナル・シーズンでは、いよいよすべての謎が明らかになるらしい。今までの内容を受け止められるほどのラストなのかは今から楽しみだ。

それまでも過去を振り返るシーンはあったけれど、未来のシーンまで見せ始めた〈シーズン4〉からの展開は、次に紹介するドラマ「フラッシュ・フォワード」の見せ方へのつながりを感じる。

●「フラッシュ・フォワード」

・AXN海外ドラマチャンネル フラッシュ・フォワード
< http://axn.co.jp/program/flashforward/ >

「LOST」と平行して放送しているドラマ「フラッシュ・フォワード」は、AXNが「LOST」の次に大プッシュしているもの。フラッシュ・バックが過去を見るものなら、フラッシュ・フォワードは「未来視」「未来転位」というようなもので、全人類が数分間の未来を見てしまうという現象の謎を探るドラマだ。

始まり方はなんとしてもおもしろくしようとする意気込みが感じられたけれど、先ほどWEBで調べていたら、どうも次のシーズンへは続かないという悲しいお知らせを読んでしまった! 海外ドラマって押しも強いけど、引きも早い。厳しい世界だなー。

とはいえ、私は今のところ録画しておいたドラマの中で、まず一番最初にこれを見てしまう。「龍馬伝」や「LOST」よりもこっちが気になるのだ。しかし、ドラマの流れの中で謎を残しながらうまく未来を見せた「LOST」の手法と全く違って、こちらは現実的な未来なので変えようのない縛りを生んでしまったのかも。

未来を見た後の行動で未来が変えられるのかって、おもしろいテーマだったはずなのにもったいない。何が悪かったのかはこれから見るのでまだ何とも言えないけれど、ドラマが厳しいのは日本も海外も同じなのか。

●「インセプション」

・インセプション
< http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/ >

レオナルド・ディカプリオ主演で、クリストファー・ノーラン監督のこの作品は「夢」を題材にしていて、アーティスティックな部分とエンターテイメント性がとてもバランス良く完成されていたと思う。渡辺謙は主要キャストの一人なので、最初から最後まで本当にどっぷり出ていてびっくり。英語の発音もきれい。(この映画は特に以下のネタバレを読まないで見た方が新鮮だと思うので、見たい人はここまでで)

これはキャストも男性メインだし、内容も男性に受けるようで熱烈なファンもいるみたいだ。ちょっとマトリックス風味もある。「夢」に階層があるという設定が難解なようでいて、次々と変わる場面が何層目かが解り易いようにシーン割りされていたように思う。作品性を高めるために雰囲気でごまかそうとは一切していないのが良かった。

この作品は単純に時間をジャンプする訳ではなく、「時間の感じ方の違い」を使っている進行の仕方が新鮮だ。クライマックスシーンでは、見ている自分の感情が揺さぶられながら同時に画面もガンガンに動いていて、エンターテイメントの醍醐味そのものだなぁと思った。ハラハラしたり安堵したり感動したりと忙しいけれど、たまにはこういう映画に頭の中を振り回してもらうのも良い刺激になった。

夢を題材にした映画のイメージって、周囲がボケたように加工されていそうだけれど、この映画ではパッキパキにクリアに見えている夢だ。実は私も夢がクリアに見えているタイプで、最高にピントが合っていた時には壁紙の花柄の凹凸まで覚えている。一度だけだけれど夢の始まり方も覚えている。全面黒い画面の中央から画像が広がって夢が始まった事があったのだ。007のオープニングみたいに。

脳が画像を勝手に作っているとしても、夢って本当に何なんだろうといつも不思議。「明晰夢」という、今見ているのが夢だと気づいているタイプの夢もけっこう見る。それでも気づく瞬間までは現実だと思っているので、今回の映画の設定はなるほどと思うものが多かった。

●別の空間へ飛ぶシーンへの切り替え方にセンスが出る

今回は日本人俳優が出ているという共通点で、二つのドラマと一つの映画の話をしようと書き始めたけれど、どれも通常の時間軸を飛び越えたシーンを見せるという共通点もあった。ともすれば解りにくくなりそうな設定は、説明が多すぎるとダサく感じさせてしまうし、難解だと眠気を誘う難しい部分だ。

今回紹介した3つの作品の中で、唯一「フラッシュ・フォワード」だけが未来のシーンの周囲をボカした処理で差別化している。ここは残念ポイントのひとつだと思う。確かに色を変えたりボカせば、視聴者には確実にシーンが切り替わったのだとわかる。しかし、今はそんなに簡単にやっちゃったらダメな時代に入っていて、見せるべき状況そのものを無駄なく見せて、視聴者に気づかせた方が断然カッコいいと思うのだ。

「インセプション」は、後から思い出してつながってくるシーンもいくつかあって、また見てもいいなと思わせる。実際に何度も映画館へ通っている人もいるみたいだ。これは思ったほど予算がかけられていないらしいけれど、高度な手間のかかっている作品だ。必要な情報を伝えながらも、スピードを落とさずに美しく切り替わる画面が心地よい。

前半は言葉での説明が多いので少しの辛抱が必要かも。その分後半は目の離せない展開なので、あっという間に感じる。3D映画ではないけれど、潜在意識の層が深さを変えて重なって見えるところが、別の意味で3Dと言えるかもしれない(ちょっと無理があったか)。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト「デコラティブマウンテン」
< http://www.eimu.com/ >

犬猫メインのペットショップでも、2〜3羽のインコがいると愛らしくて胸がキュンとする。きっとインコ・オウムの専門店へ行ったらパラダイスだと思って行ってみた。そこでは大型や中型のインコやオウムがうるさく騒いでいて、好みの小さいインコは身を寄せ合っていていじらしかった。鳥類は声の大きさを確かめて飼わないと大変なことになりそう。集合住宅の現実をしっかり考えなければ。たぶん、鳥を飼うのは憧れだけに終わるかも。