[2911] トムソンの謎

投稿:  著者:  読了時間:16分(本文:約7,700文字)


《人はいつどこでゾンビになるかわからない》

■気になるデザイン[48]
 トムソンの謎
 津田淳子

■装飾山イバラ道[62]
 「ゾンビランド」を見る
 武田瑛夢

■おかだの光画部トーク[41]
 朝霧高原でフォトワークショップ
 おかだよういち



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■気になるデザイン[48]
トムソンの謎

津田淳子
< http://bn.dgcr.com/archives/20100907140300.html >
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あと数日で、『デザインのひきだし11』と、同時につくっている『印刷・加工DIYブック』が締切とあり、今年一番の忙しい週間を迎えています。というか、あと数日で終われるのか、正直なところかなり微妙です......。

とりあえず一瞬そのことは忘れることにして、実は先日、ずっと疑問に思ってた謎がすんなりわかった、ということがあったので、そのお話を。

2年ほど前に『デザインのひきだし4』で、紙の型抜きについて特集をした(「折り、抜き、紙の加工でこんなことできる!」現在完売)。それまでもなんとなく疑問に思っていたのだが、このとき強く「どうして、そんな名前なんだろ?」と思ったのが、「トムソン刃」とか「トムソンで抜く」とか、型抜き加工の現場で頻繁に使われる「トムソン」という言葉。

板に刃を埋めて作る抜き型をトムソン刃と言ったり、その抜き加工自体をトムソンとか、トムソン抜きとよんでいて、本のように分厚いものを型抜く場合をのぞいて、かなりの割合でこのトムソン抜きによって、紙の型抜きがなされている。

その取材の際には、何人もの紙工会社のひとに聞いたものの、なぜそんな呼び方なのかはわからず仕舞い。

赤瀬川原平さん方が提唱された「超芸術トマソン」に語感が似ているのも気になるが、もちろんそれとは全く関係なく......。
・トマソン
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=33322656 >

ちなみにもうひとつ「ビク抜き」という言葉もよく耳にした。しかしこちらは、「ビク」の由来を知ってる人が多く、理由はすぐに判明。「ビク抜き」というのは、トムソン刃をセットした打ち抜き機に手で一枚ずつ(場合によっては数枚ずつ)紙を手送りして打ち抜くのだが、その機械がビクトリア印刷機という活版印刷機を元にした機械だったので、その名がついたのだ。

閑話休題。トムソンの話に戻る。

8月下旬ごろ、大日本印刷が運営する「ドリームページ」というフォトブック作成サービスのページに、『秀英体今昔』という、活字からデジタルフォントまで使われている書体「秀英体」が生まれた印刷現場(秀英舎=現在の大日本印刷)の今昔をまとめた写真集がアップされたのをtwitterで知り、興味津々でさっそく見てみた。

・秀英体今昔
< http://dreampages.jp/gallery_search.html >

貴重な写真がたくさんで、ぜひ大判書籍として印刷してほしい! と思ったほどだったが、この中にひとつ気になる言葉を見つけた。「トムソン型自動活字鋳造機」というもの。ん? トムソン??

twitterでこのドリームページのことを知ったので、すかさず「11ページに出てくる「トムソン型自動活字鋳造機」の「トムソン」って会社名でしょうか?」と書いたところ、何人もの方からお返事が! そしてここ2年くらい謎に思ってきたことが、すんなり解決したのだ。

なんと、その名もズバリ「トムソン社」という会社があり、先程の活字鋳造機はもちろん、打ち抜き機も製造しており、現在も絶賛発売中の機械なのだった。
< http://www.thethomsongroup.com/ >

うーむ、やはりというか、当然か。社名か人名から来てるんじゃないかなぁと薄々は感じていたが、トムソン社に辿り着かなかった。

現在、日本ではこのトムソン社製ではない打ち抜き機を使っていることが多いが、打ち抜きの代名詞としてトムソンという言葉が残っているんですね。

そして、トムソン型の活字鋳造機を発明したジョン・S・トムソン氏についての記述があるページも、twitter上で教えてもらえたので、こちらにもURLを。
< http://www.apa-letterpress.com/T%20&%20P%20ARTICLES/Typecasting/Thompson%20casster.html >

いやぁ、なんか頭の中がすっきりした! よし、この調子で仕事に励むぞ(と、自分を鼓舞する)。無事に2冊の本の編集作業が終われてれば次号(2週間後の火曜日配信のデジクリ)でお目にかかりましょう!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp

祖父江慎さん、寄藤文平さん、葛西薫さんなど28人がブックデザインした『吾輩は猫である』を紹介している単行本『装丁道場』、全国書店で好評発売中。他にも、ふかふか紙に活版印刷した表紙が目印の『デザインのひきだし10』『見た目よし! 機能よし! のショッピングバッグコレクション』『グッズづくりのイエローページ』、『デザインのひきだし』バックナンバーも好評発売中です!

平日毎日、更新中!
デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/ >

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■装飾山イバラ道[62]
「ゾンビランド」を見る

武田瑛夢
< http://bn.dgcr.com/archives/20100907140200.html >
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8月の夏休み最後に見た映画は、ホラー・コメディの「ゾンビランド」だ。結論を先に言うととてもおもしろく、小規模公開な上に東京ではそろそろ上映が終わりそうなのが残念。ゾンビ物が嫌いなだんなさんも楽しめたようだ。以下ネタバレありです。

この映画はゾンビ感染が広がった終末世界のアメリカで、生き残った人間たちがゾンビがいないと言われている遊園地「パシフィックランド」を目指すストーリー。彼らは他の人々よりも長く生き残ってきたぶん、それぞれに生き残るためのルールを持っているのがおもしろい。キャストの個性を生かした、ユーモアのある生き残り術が明かされて行くのがみどころでもある。

・映画「ゾンビランド」オフィシャルサイト
< http://www.zombieland.jp/ >

コメディ要素があるなら怖くないかというとそうではなく、ゾンビたちは迫力があって喰うことしか考えていない正統派ゾンビだった。しっかりと怖い。映画を見終わってから深夜の渋谷の駅に向かう帰り道、歩く人たちがゾンビに見えて怖かったくらいだ。

全体にロードムービーっぽいほのぼのとした感じと、いつゾンビが出てきても不思議ではない恐怖感のメリハリが良かった。コメディなのにゾンビが決してふざけないところはとても気に入った。ふざけて見えるシーンもあるけれど、ふざけているのは「人間」で「ゾンビ」ではない。きちんと映画の中でのルールもある。

オープニングの、いろんなゾンビが襲って来るスローモーション映像の出来も素晴らしかった。花嫁や子供のゾンビには抵抗を感じる人もいるかもしれないが、「人はいつどこでゾンビになるかわからない」のだ。TPOを選べなかった悲しさが伝わる。

噛まれたら感染し、死んだらゾンビというゾンビ感染のルールも今までのゾンビ映画の基本から外れることはないし、過去のゾンビ映画のシーンにヒントを得ていると思われるエピソードも多いので、ゾンビ映画を多く見ている人ほど気がつけて楽しめるかもしれない。ビル・マーレイ出演のシーンもとても良くて大爆笑だった。小さい映画館だったけれど、見始めてしまえばスクリーンの大きさってさほど問題ではなかった。

●遊園地でのクライマックスシーン

映画のクライマックス、キラキラの電飾が華やかな夜中の遊園地で繰り広げられるゾンビたちとのバトルは、スピード感があって笑えて爽快だ。絵的にもおもしろいし、少ない人間対多数のゾンビを効果的なアングルから見せていたと思う。遊園地の遊具の人を喜ばすためのバカバカしい仕組みが、こんな使い方でバトルに生かされるとは想像外。ホラーでまとめようとするゾンビ映画ではとてもできなかったことだ。

劇中出て来る「トゥインキー」という、ジャンクな袋入りケーキ菓子が食べたくなってくる。アメリカに昔からあるお菓子だそうで、毎年5億個も製造されているという。Wikipediaの都市伝説によれば、「30年間腐らない」「8年経つと中のクリームがアルコールになる」「全面核戦争のあと唯一トゥインキーの工場だけ残った」とか。知れば知るほどお菓子界のゾンビみたいである。ぜひ1回だけ食べてみたい。

・トゥインキー
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=33357867 >

生きる術は数々あれど、ささやかな楽しみをみつけながら助け合って生きて行くのが一番というのは、ゾンビのいない世界でも同じかもしれない。ゾンビはゾンビらしくグロいので、それに抵抗さえなければ、重くもなく、青春っぽすぎもしない絶妙な線で楽しめる映画だと思う。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
「バイオハザード4」が3Dで公開されたらしい。そのうち見に行くつもり。CMではやたら剣とか尖ったものが飛んでくるイメージ。3D映画って監督が設計した仕掛け付きびっくり箱だから、蓋を開けるのが楽しみな人には楽しめて、蓋を開ければ飛び出すってわかってるのがつまらない人には楽しめないのかもしれない。今までのバイオハザードだと、犬のゾンビのシーンがかっこいいと思う。ヒーローがいる映画だと絶望感がなくて、見るのが楽というのもちょうどいいです。

装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/ >

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■おかだの光画部トーク[41]
朝霧高原でフォトワークショップ

おかだよういち
< http://bn.dgcr.com/archives/20100907140100.html >
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9月4日、朝霧高原で開催された「WCAN:P」というイベントで、フォトワークショップを行いました。今回はその内容についてご紹介します。

ワークショップの内容の説明の前に、まずは「WCAN:Pって何?」という疑問にお答えしましょう。WCAN「ダブキャン」(Web Creators Association Nagoya)は、名古屋でWeb制作に携わる人達の集まりで、年に4回、百数十人集まるセミナー・勉強会を開催しています。
< http://wcan.jp/ >

そのWCANのスピンアウトで、富士山のふもと朝霧高原でBBQしたり、自然と戯れたり、のんびりリフレッシュするイベントがWCAN:P(ダブキャンプ)です。今回は、東京からの参加者も増えて、50名近く集まりました。

牧場体験やパラグライダーなどのオプションの中に、わたしのフォトワークショップも企画されていたわけです。

ワークショップでは、絞りやシャッターなど露出に関する細かいことには触れず、主に構図について解説しました。そしてもうひとつ。ただ何気なくシャッターを切るのではなく、写真というものを一度しっかり考えてもらおうと思い、「PHOTO IS...」と言うテーマで、参加者それぞれの「写真とは?」を考えてもらいました。

「PHOTO IS...」はFUJIFILMが2005年〜2007年にかけて展開していた企業CMで、福山雅治さん・オノヨーコさん・樹木希林さん・堀北真希さんらが、「私にとって写真とは(PHOTO IS...)」を語るとても印象深いものでした。
< http://www.fujifilm.co.jp/corporate/aboutus/adgallery/ad005/ >

オノ・ヨーコさんは、「PHOTO IS LOVE・写真は愛。PHOTO IS YOU・写真はあなた。PHOTO IS MESSAGE・写真はメッセージ。PHOTO IS MEMORY・写真は思い出。PHOTO IS SMILE・写真は笑顔。PHOTO IS PEACE・写真は平和。」と語り、福山雅治さんは「PHOTO IS LIFE・写真は暮らし。PHOTO IS MEETING・写真は出会い。PHOTO IS A JOURNEY・写真は旅。PHOTO IS MYSELF・写真は自分。」と語っていました。

参加者のみなさんにもそれぞれの「PHOTO IS...」を考えてもらい、各自のそれをテーマに実際に夜のBBQの時間まで自由に撮影をしてもらいました。

プロが仕事で撮影する場合は必ず何かしらのテーマがあり、その内容に沿った写真を撮るのですが、そうじゃない場合は自分で何かテーマを決めない限り、ただ何気なく写真を撮っていることが多いかと思います。

何かひとつテーマを決めたり、自分自身に縛りを設定することで、今まで見えなかったものが見えてきたり、通り過ぎてきた風景をじっくり見ようとしたりして、何か新しい発見があるものです。

夜、真っ暗な屋外でスクリーンを設置し、参加者のみなさんがそれぞれのテーマで撮影した写真を投影し、みんなで鑑賞会をして盛り上がりました。近年はWeb上のフォトアルバムで写真を共有して、個々で鑑賞することはあっても、みんなで揃ってワイワイ言いながら写真を見る機会が少ないと思いますので、なかなか新鮮だったようです。

それでは、その中で印象に残った写真をご紹介します。
「PHOTO IS MOMENT・写真は瞬間 by小森さん」
< http://flic.kr/p/8yGXs6 >
< http://flic.kr/p/8yL3M3 >

「PHOTO IS MOMENT・写真は瞬間 by福田さん」
< http://flic.kr/p/8yL9vw >
< http://flic.kr/p/8yH5gg >

「PHOTO IS MEMORY・写真は記憶 by恵里さん」
< http://flic.kr/p/8yLnE7 >
< http://flic.kr/p/8yLoRj >

「PHOTO IS MUSIC・写真は音楽 by森田さん」
< http://flic.kr/p/8yHrjZ >
< http://flic.kr/p/8yLvQs >

【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
< http://s-style-arts.info/ > < mailto:okada@s-style-arts.com >
< twitter:http://twitter.com/okada41 >

富士山は雲に隠れて見れなかったのが残念ですが、帰りに東静岡駅の等身大ガンダムを見に行ってきました。
< http://flic.kr/p/8yLDmW >
< http://flic.kr/p/8yLDyE >

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■編集後記(9/7)

・林望「謹訳源氏物語」はおもしろい。笑っちゃうほどおもしろい。教養がなくては読めないと思っていた源氏物語だったが(いや、実際そうだろう)、ここまで平易に現代語訳されると、わたしでも楽々読める(当然だ。普通の日本語だもの)。光源氏は、抱いていたイメージとはだいぶ違った。彼は"不吉なほどに"美しい超絶の貴公子で、いろいろな女に次々とアプローチする。初めて会った女の閨にまで入り込んで抱いてしまったり、幼い姫を秘密裏に盗み出したり、その理解し難いほどの執心と、好色でみだりな振舞い、いかにもきまり悪く、また道理の立たぬことばかりしでかしながら「それにしても、私はなんだってまた、物好きにも憂いの種になるような色恋を持て余すようなことばかりしているのであろう」なんて本気で悩んでいる(らしい)愛すべきところもある。それにしても源氏の教養の深さはすごみがある。登場する女君たちのキャラクターは、たとえば夕顔、末摘花、六条御息所なんて、いままで断片的に知っていたこととは全然違っていた。源典侍という好色な老女にうんざりの源氏には笑える。有名な「雨夜の品定め」のフルバージョンもじっくり読めた。紫式部って男じゃないのかと思うくらい、男の身勝手さが描かれていた。源氏物語ってこんなおもしろい小説だったんだ! つづく(柴田)
< http://www.shodensha.co.jp/genji/ >
祥伝社「謹訳源氏物語」サイト 9月30日まで第1巻中の「桐壺」無料公開中
< http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/doyou/CK2010031302000202.html >
年輪重ね書ける機微 源氏物語の現代語訳に挑む 林望さん(作家)
(東京新聞 2010.3.13)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439661358X/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー3件)

・サイトデザインで。ついついコーディングのことを考えてしまい、なかなか進まないし、思い切ったことができない。なのに、グラフィックデザイナーさんから、スクリプトとコーディングのみを頼まれた場合、「(コーディングするにあたって)ありえない〜!」というようなデザインを提示され、そこで変更してもらえばいいのに、いやまてよ、マトリョーシカになるけどできないことないよな〜などと、パズルを解くみたいにコーディングしていたりする。あちらは、見た目優先のPRページなので、画像ばかりになってもいいですよ〜とも言ってくださるのだが、それはいくらなんでも、まずいだろうと思ってしまう。せっかくブラウザで文字サイズを変えることができるのだから......。プログラム絡みだと、触れない部分が出てきて妥協したりもするんだけどね。仕事じゃなければ、同じく......(汗)。プリントアウトしたサイトデザイン画像に、赤ペンで線や数字を書き込み、使うタグや画像名なんかも決めていく。のだが、皆はどうやって作っているんだろう。もっと良いやり方があるのだろうか。フリーで一人でやってると、無駄なやり方をやっていそうだ。あ、簡単なコーディングなら、ちょっとしたメモだけで、すぐに作りはじめたりするよ。/ガンダムの二枚目、かっこいー!(hammer.mule)