装飾山イバラ道[62]「ゾンビランド」を見る
── 武田瑛夢 ──

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8月の夏休み最後に見た映画は、ホラー・コメディの「ゾンビランド」だ。結論を先に言うととてもおもしろく、小規模公開な上に東京ではそろそろ上映が終わりそうなのが残念。ゾンビ物が嫌いなだんなさんも楽しめたようだ。以下ネタバレありです。

この映画はゾンビ感染が広がった終末世界のアメリカで、生き残った人間たちがゾンビがいないと言われている遊園地「パシフィックランド」を目指すストーリー。彼らは他の人々よりも長く生き残ってきたぶん、それぞれに生き残るためのルールを持っているのがおもしろい。キャストの個性を生かした、ユーモアのある生き残り術が明かされて行くのがみどころでもある。

・映画「ゾンビランド」オフィシャルサイト
< http://www.zombieland.jp/
>

コメディ要素があるなら怖くないかというとそうではなく、ゾンビたちは迫力があって喰うことしか考えていない正統派ゾンビだった。しっかりと怖い。映画を見終わってから深夜の渋谷の駅に向かう帰り道、歩く人たちがゾンビに見えて怖かったくらいだ。



全体にロードムービーっぽいほのぼのとした感じと、いつゾンビが出てきても不思議ではない恐怖感のメリハリが良かった。コメディなのにゾンビが決してふざけないところはとても気に入った。ふざけて見えるシーンもあるけれど、ふざけているのは「人間」で「ゾンビ」ではない。きちんと映画の中でのルールもある。

オープニングの、いろんなゾンビが襲って来るスローモーション映像の出来も素晴らしかった。花嫁や子供のゾンビには抵抗を感じる人もいるかもしれないが、「人はいつどこでゾンビになるかわからない」のだ。TPOを選べなかった悲しさが伝わる。

噛まれたら感染し、死んだらゾンビというゾンビ感染のルールも今までのゾンビ映画の基本から外れることはないし、過去のゾンビ映画のシーンにヒントを得ていると思われるエピソードも多いので、ゾンビ映画を多く見ている人ほど気がつけて楽しめるかもしれない。ビル・マーレイ出演のシーンもとても良くて大爆笑だった。小さい映画館だったけれど、見始めてしまえばスクリーンの大きさってさほど問題ではなかった。

●遊園地でのクライマックスシーン

映画のクライマックス、キラキラの電飾が華やかな夜中の遊園地で繰り広げられるゾンビたちとのバトルは、スピード感があって笑えて爽快だ。絵的にもおもしろいし、少ない人間対多数のゾンビを効果的なアングルから見せていたと思う。遊園地の遊具の人を喜ばすためのバカバカしい仕組みが、こんな使い方でバトルに生かされるとは想像外。ホラーでまとめようとするゾンビ映画ではとてもできなかったことだ。

劇中出て来る「トゥインキー」という、ジャンクな袋入りケーキ菓子が食べたくなってくる。アメリカに昔からあるお菓子だそうで、毎年5億個も製造されているという。Wikipediaの都市伝説によれば、「30年間腐らない」「8年経つと中のクリームがアルコールになる」「全面核戦争のあと唯一トゥインキーの工場だけ残った」とか。知れば知るほどお菓子界のゾンビみたいである。ぜひ1回だけ食べてみたい。

・トゥインキー
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=33357867
>

生きる術は数々あれど、ささやかな楽しみをみつけながら助け合って生きて行くのが一番というのは、ゾンビのいない世界でも同じかもしれない。ゾンビはゾンビらしくグロいので、それに抵抗さえなければ、重くもなく、青春っぽすぎもしない絶妙な線で楽しめる映画だと思う。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
「バイオハザード4」が3Dで公開されたらしい。そのうち見に行くつもり。CMではやたら剣とか尖ったものが飛んでくるイメージ。3D映画って監督が設計した仕掛け付きびっくり箱だから、蓋を開けるのが楽しみな人には楽しめて、蓋を開ければ飛び出すってわかってるのがつまらない人には楽しめないのかもしれない。今までのバイオハザードだと、犬のゾンビのシーンがかっこいいと思う。ヒーローがいる映画だと絶望感がなくて、見るのが楽というのもちょうどいいです。

装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>