電網悠語:日々の想い[167]大人の喧嘩:不毛地帯
── 三井英樹 ──

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実はテレビが大好きだ。小さい頃、我家のTVはオンボロで、連続して見られる時間がかなり短かった。なのでそれ以来、延々とTVを眺めていられる状況は、私にとっては、かなり贅沢な時間になっている。問題は見ている時間がないこと。ここ一週間も殆どTVをつける間がなかった。

少し前までは、全く見ない(見れない)時期もあったのだが、敢えて見ようと努力するようにしている。それは、余りに世間と話が合わないと辛いから、話題の共通性がなくなると困るから。で、ドラマを見ようと決める(そもそもバラエティは挫折した。面白みが分からず、息子に解説を求めるレベル)。1シーズンに1本くらいは決めて、録画で良いから見る。

当然、シーズン当初は複数本を見る。そして数回で判断する、この後も時間を投資するかどうか。決め手は、基本的にリアル感と役者の粋さ。多少先が読めて退屈でも、役者が頑張っていると付き合ってしまう。またドラマのリアル感でいうと、大根は余り入り込む余地がないので安心して感動できる。




感動の仕方で、自分でも驚いたのが、「不毛地帯」。最初に引っかかったのは「言葉」。私の身の回りの言葉ではなかった。もっと上級というか、役職が上がるとこのような会話をするのかという驚き。品格という品質。ストーリー以前にそこで捕らわれた。

  ▼不毛地帯 - フジテレビ
  < http://www.fujitv.co.jp/fumouchitai/index.html
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  ▼mitmix@Amazon - 不毛地帯
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更に、引き込まれたのは、その評価の分かれ方。職業柄SNS的なところでは、幾つかのキーワードで時折探してみる。大きなところでは、そこそこ引っかかる。その中で刺さったのは、ある女性の評価「言葉が笑っちゃう」というものだった。怒りで真っ赤な顔になっても、敬語なんだよ、と。もちろんドラマとしての骨太さは評価している。それでも、やはり言葉が異星人語に聞こえたのだろう。

おぉここまでやるかという策略や、まぁやるだろうなと思える謀略を前にして、肩を震わせながら、敬語で応酬する。それは滑稽に見えつつ、カッコいい姿だった。闘い方を示してくれているという意味で。

考えてみれば、男一匹ガキ大将的というか、怒鳴ったり殴ったりすれば問題が解決するシンプルな世界の出自である。冷静に、青白い炎のように怒るという方法を見るのが稀である。直情型の分かり易いリアクションしか浮かばないのが常である。だから、骨太で、しかも実在の人間のお話、というだけで、異世界モノの匂いがしてくる。


同じ人物との確執、新しい人との出会い。舞台は、商社が扱うモノだったり、時代だったり。多くの様々な絡み合いが、壮大なスケールの舞台で展開される。もちろん、ご都合主義的な展開もあった。けれど、それが原作なのか、放送時間の関係なのか、すら調べる気にもならない。それだけ、ぐいぐいと引っ張り込まれた。

役者の動きを見ながら、自分の過去も見ていたのだと思う。扱う商品(といっても自動車メーカーとの提携だったり、石油プラントだったりと、私の生活圏とは無縁のものだったけれど)が、TV番組という枠内で、Webと重ね合わせやすかったのだろう。多くて二回でほぼそのプロジェクト(商品)は一段落する。短期間に凝縮されたドラマは、分かりやすく、また諸々を投影しやすい。

プロジェクト毎に用意されている、背景/課題/人間関係/展望などなどが、幾つかの思いあたる人物や事柄に当てはまっていく。あの人があー言っていたのは、そーいう事か。こー言えば状況は変わっていたのかも、そーいう考え方もあったか。ドラマの筋書き以外で、色々と気付かされた。

Webが単なるサイト構築ではなく、広報戦略に深く関わらざるを得ない状況になっているのも影響している。見栄えがどうとかの話以前に、何をしたいのかを上の方と詰めておかないと、効果測定もできないし、深い関係性もできないし、面白い仕掛けを作り上げることも困難だ。


カッコいいという定義自体が、自分の中で変化してきているのだろう。紅の豚のポルコや銀幕全体から醸し出される「かっこいいとは、こういうことさ」的な雰囲気。「意地も見栄もない男なんて最低よ!」。意地も見栄もある、闘い方。ただ闘えば良いという訳ではない。

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現場での闘い方、裏方としての闘い方、個人としての闘い方、チームとしての戦い方。それぞれに葛藤があり、意味のある勝ちがあり、淋しい勝ちがあり、意味のある負けがあり、意味もない負けもある。

負け側の潔さも気分が良いものが多い。敵側だって様々な事情や止むに止まれぬ何かがある。全戦全勝はあり得ない。負けたときに学びを多くしなければ先に行きつけない。勝ち負けに関わらず、言葉は大きな位置を占めている。

Webですら、コミュニケーションが主軸になる以上、言葉の持つ意味はより強くなる。完成形でも強まるだろうけれど、それ以上に開発現場で強くなっていっている。ここ数年の動きとしての率直な感想だ。プロジェクトの成り立ちや成長過程での品格は、必ずや完成形から漂い出る。

身を引き締めて見入ったドラマ。録画したものは、DVD保存もしているけれど、シーンごとに5分程度に切り刻んだものでも幾つか残した。感動しながら学んでいる。でもそもそも品もなく未熟なので、外に出るまでには未だ未だ時間がかかりそう。それでも、日々勉強、日々蓄積。

  明日、死ぬかのように生きろ。
  永遠に生きるかのようにして、学べ。
         マハトマ・ガンジー

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