MKチャット対談 さらばFlashプレイヤー
── 笠居トシヒロ&まつむらまきお ──

投稿:  著者:


かさい: まいどー、笠居です。いやー、だんだん秋も深まってきましたねえ、ってもうすぐ11月、ホントなら初冬ですけどw

まきお: どもども、まつむらです〜。ひ〜、今年あと2ヶ月しかないんかいっ

かさい: ですよー。夏が長すぎて実感沸かないですけど

まきお: ないなぁ。気分的にはまだ9月末って感じやなぁ。ところで先週土曜日、濱村デスクの会社設立ぱーちいに行きまして

かさい: 盛況でしたねえ。かぷっとのパーティー


まきお: で、スーツ姿で濱村さんに花を贈るなんてことをしてきたのですが

かさい: そんな気障な事をやってたのか、似合わんw

まきお: なにをいう〜(笑)ぱーちぃは、なんのぱーちぃなのかの説明も、どんな会社なのかの説明も、設立のごあいさつもないという、先行きものすごく不安になるものでした(笑)

かさい: (笑)たしかに。オレらは昼間BBQしてから、その足で参加したんで煙で燻された香りを発散してる、変な集団になってましたがw

まきお: で、その集合場所が、Appleストアの心斎橋だったんよね〜


かさい: 集合場所だったの?w おかださんがちょっとよって、Air見ていこう、って言ったんで、立ち寄ったら、まつむらさんが偶然居たんだと思ってたけど

まきお: そうそう、先週発表の新Air、会場の近くなので見ていこう、と寄ったら、みんな居た(笑)

かさい: なるほどねw けっこういっぱい置いてあったから、すぐ触れたね>Air

まきお: すぐに濱村さんが会場に誘導、となったので、あんまり時間かけては見れなかったんだけど、とりあえず11インチはちょこっとさわってきた〜



かさい: で、どうでした? さわった感想は?

まきお: 特に感想、というのはないんだけど

かさい: ないんかい(^_^; まぁ、これに限らずだけど、いつも使ってるようなアプリが入ってないと、体感スピードなんか分からんもんなぁ

まきお: いやぁ、特にMacには困っていないんで、今のところ買う必要がないんだけど、でも、報道で気になってたことを確かめるためにさわったんですよ


かさい: 気になってた事、つーとやっぱアレですか

まきお: Flashプレイヤーがプリインストールされていない、というアレです

かさい: されてませんでしたねー

まきお: YouTubeを出してみたら、モノの見事に「Flashプレイヤーがありませんねん、再生できませんねん、ダウンロードしなはれ」のメッセージ

かさい: 理解できん仕様やなあ。なんでそげなことするんやろ


まきお: Appleのスポークスマン曰く「今後もMacでのFlashのサポートは喜んで続けていきたい。そして、ユーザーにとって最もアップデートされたバージョンを手にする一番いい方法は、Adobeから直でダウンロードすることだと考えています。」だそうだが...

かさい: うそつけーww

まきお: (笑)で、これがAirだけでなく、今後出荷されるすべてのMacからFlashのプリインストールがなくなるとのこと


かさい: 嫌がらせにもほどがあるわ

まきお: 嫌がらせ?

かさい: 嫌がらせやろー でなければ何の意味がある?

まきお: どこに対する嫌がらせ? ってこと

かさい: Adobe 他にどこがある?

まきお: いやー、当初はそうかと思ったんだけど、なんと今後、SUNのJAVAもサポートされなくなるんだよね。まだ、「示唆」だけど
< http://japan.zdnet.com/news/software/story/0,2000056195,20421824,00.htm
>


かさい: あー、

まきお: つまり、これは単なるAdobeに対する嫌がらせではないと思うんよ。嫌がらせなら、なにかしら有利な条件をひきだすことが目的なわけでしょう? 「いらん」というのは、嫌がらせではなく、決別ってことでは?

かさい: 最終目標は、そこなんだろね。でまあ、今回のは「こんなのいらんやろ、なぁ、みんな?」って呼びかけなわけよね

まきお: ああ、呼びかけか。開発者に対する呼びかけ、って側面は強そうだな


かさい: ま、このさき、どうなるかって感じだな。Macのアプリも、Appleがストア作るってんでしょ?

まきお: らしいねぇ。あれはLIONからの目玉になるのかな。旧OSでも対応するのかわからんが

かさい: Windowsと同じアプリはいらんという事かね

まきお: そこですなぁ。もともと、FlashにせよJavaにせよが出てきた背景には、マルチプラットフォームというのがあったわけだが、iPhone、iPadの成功で、そういった部分はなくてもいいじゃん、という気になってるわけよね


かさい: ワシの支配する世界にクロスプラットホームのミドルウェアなんぞ持ち込むんじゃねーよ、と思ってるんだろーなぁ

まきお: といわれているか、どうなんかなぁ。まぁ、もともとMacという製品そのものが、「独自のもの」であることがコンセプトだったし、他のOS等と同じことができる、というアピールはAppleが最も嫌うことではある。でもその後、Mac、Winの時代を経て、今はもう、Web&クラウドの時代になってるわけで、昔ながらの「独自性」と今の「独自性」はかなり意味が違う。

かさい: Appleが、じゃなくてJobsが、でしょ?

まきお: ん? その違いは?

かさい: Jobsが居なかったときは、互換機とかも出たしー まぁ細かいツッコミだから、軽く流してw


まきお: それは MacOSを提供してたということだから、独自路線であったことにはかわらんだろう。Unixも含めて、複数OSが統合されなかたからこそ、FlashなりJAVAなりが存在したんだし。

かさい: これからどうしたいんでしょうね?

まきお: どうしたいんかは、もうそのままでしょう。FlashもJAVAもいらん。という世界なのは明らかなわけで

かさい: そうすっと、これまでのコンテンツで、Macでは見れない物が出てくるわけでしょ?

まきお: そうそう、見れない。


かさい: ちょっと前なら、そんな思い切った事できなかったんだよね。ターニングポイントは、やっぱiPadだわな

まきお: もっとも見れないのは、過去、Director製CD-ROMの方がシンコクなんだけど(^_^; MacOS9時代の昔の自分の仕事、見れないんだよなぁ

かさい: Shockwaveと同じように消えていくんだろーか

まきお: いや、でね、そのDirector製CD-ROMとか、ハイパーカードスタックのことを考えてみるとですな、本当にユーザにとっていいのは、現状普及しているFlashを継続するという方法と、もうひとつはFlashもJAVAもやめて、HTML5なりなんなりのオープンな規格にシフトした方が、コンテンツとしては安心度が高い、という考え方の二通りがあるなと


かさい: 安心度ねえ? オープンだと安心なのか?

まきお: わからん。わからんが、HTMLのコンテンツは今でも問題なく見れるでしょう? JPEGファイルも見れる。movやaviから、flvに一時行ったけど、今はmp4でしょう? どう考えてもmp4の方が安心

かさい: HTML5は、いままでのHTMLと違うから、動いたりビデオ写したりできるわけでしょ? つまり、いまのHTMLが問題ないというのが、HTML5が安心という理由にはならんだろ?

まきお: いや、将来的に、ってことです。昔、DirectorでCD-ROMを作るのが流行った時代に、卒業アルバムをCD-ROMで作るというサービスがあったんですよね


かさい: あったね。それ、いまその卒業生は見れないって事よね

まきお: そうそう、見れない。HTMLで作っていたら、ISOで焼いたCD-ROMなら見れるでしょう

かさい: まぁね。ホントのところは、紙のアルバムだって見ないと思うけど

まきお: 見るか見ないか、の問題ではないよ〜。見れるか見れないかの問題。もちろん、Macに限らずカセットにせよ、LPにせよ、zipにせよ、βマックスにせよ、電子的なものは紙と違って、常にそのリスクはあるわけだけど、デジタルになった現在では、メディア、再生機というハード的な問題はもう、ほとんどなくなっている


かさい: 分かってるよw >見れる、見れない、オレが聞きたいのは、オープンオープン言うてるけど、そもそも何がオープンで何がクローズドなん? ちゅー事ですよ。HTMLはオープンなんか? 別のもっと便利なもんが出てきて、突然消えたりせんのか? オープンもクローズドも、単に程度の差なんとちゃうんか?

まきお: オープンかクローズドかの違いは、いくつか指標があると思うが、ひとつはISOなりで国際標準化されているかどうか。PDFは国際標準化されているけど、swfはされていない。

かさい: 誰が決めるん? ISO。みんな守るん? ISOで決まってることは50年後も守られるん?


まきお: それを守るかどうか、保護されていくのかは別の話だと思うよ

かさい: いやいや、別に難癖つけたいわけちゃうねん。Appleも、Adobeなんかの他の企業も、我こそはオープンやー、言うてるけど、結局、立場の差であったり、戦略だったりするわけでしょう

まきお: うんうん、国際標準でも政治的駆け引きもあるだろう。わからんけど

かさい: まぁ、ホンマのとこはね。でも、それに踊らされてるんやったら、アホらしいやんか

まきお: いや、そこなんですが、Adobeはクリエイティブツールが商売の中心でしょう

かさい: だね


まきお: クリエイティブツールの宿命として、そんなオープン化って無理じゃん。HTML以外で、オーサリングツールにファイルの互換性があるなんてことはないでしょう?

かさい: 基本的にはね。Officeの互換アプリは、いっぱいで回ってるけど、あれはできあがるファイルのフォーマットに、基本ベースがあるからだもんね

まきお: そそそ。で、Macを見ると、iPhotoにせよ、iTunesにせよ、そういったファイル互換に依存するところではないところに重きを置いてきてる。iMovieとかガレージバンドはちょっと違うけど、どうも「クリエイティブ」というものや、コンテンツというものが、従来とは考え方が変わってきているように思えるんだよね


かさい: どう変わっとるの? ワシの仕事のフローは相変わらずなんですがw

まきお: それはレガシーだから(笑)

かさい: 考え方が変わってきてる、というか、やりにくなってきてるなぁ、というのは感じるよ

まきお: Macにせよ、iPhoneにせよ、互換性のあるもの、ないものの仕分けが急激に変わってきているように思えるんよ。それはMacやFlashという末端ではなく、クラウドとかデジタル全般で。いや、漠然とした感覚、予感といった方がいいかな。ほら、Macの次期OSのLIONもプレビューされてたけど、あれを見ても、iPad的になっていく、っていうか、なんかあれで従来通り、PhotoshopやFlashやイラレで作業できるんか?! って思わなかった?


かさい: 思った思った。こりゃ、もうMacOSってプロシューマに使わせる気ないな、と思った

まきお: いきなり、ってことはないだろうけど。開発とか、デザインって作業そのものも、ひょっとしてかなり変質してきているんじゃないか、という予感。なんせわたしら、20年以上、MacやらWinやらで、ウィンドウGUIでモノ作るのが当たり前と思ってきたけど、なんかそういう所から変わってきてるんじゃないか、という予感、がしたんです。つまり、わしら、ではなく、若い人たちが要求する環境、って意味ね。わしらはもう、レガシー(笑)

かさい: れがじーw イヤ、オレがやりにくいな〜と思ったのも、そのあたり共通する部分があるかも。目に見えない物をコントロールしなきゃいけない、って感じなんだよね。感覚としてですが


まきお: ああ、そうそう>目に見えないモノ。クリエイティブ論的になるけど、プロもアマも含めて、クリエイティブということが全く違うものになってきているような気がする。これは大学で若い人と接していても感じることがあるな

かさい: ワシら、目に見える物しか信じてなかったんだけど、これから先そうじゃないのかもな、と

まきお: そういう意味で、Adobeはまだ、旧来の物作り、Appleはなんか、わたしらにとっては得体が知れないが、違う時代のモノに向かっているような


かさい: 逆に、コンシューマは、とにかく目に見える部分だけで、他はブラックボックスというか、お仕着せの物用意して、ってかんじするんだよな。Appleのアプリってほぼこの印象

まきお: 以前からその印象はあるんだけどね。ほら、デジクリではるか昔、話したことがあると思うんだけど、クリエイティブは昔の手作業的なことから、単に選ぶ、組み合わせるだけのものになっちゃいそうって

かさい: 手抜き弁当みたいだな。。。出来合いの物買ってきて、弁当箱に詰めるだけ。。あ、だからBentoなのかw


まきお: (笑)ほら、広告のクリエイティブの意味も、ずいぶん変質してきているでしょう? 昔のような、クリエイティブであっといわせて、っていう方法論はもう明らかに古くて通用しない。だったら新しい情報を手早くこぎれいでわかりやすく整形できればいいわけで、それは従来のクリエイティブってのと根本的に変わってきている

かさい: クリエイティブの本質って、形整えるだけじゃあないと思うんだけどねえ。なんか大切なもんが抜けてる希ガス。そう思うオレは古いのかレガシーなのか

まきお: そこでんがな、おそろしいのが

かさい: おそろしいですか


まきお: それこそ、「ヘモ」の時代が来たってことで

かさい: 昔書いたな「ヘモ」w オレもいまそれ思い出してた
※「ヘモ」とは我々の世代には理解できない、未来のテクノロジーの概念。ヘモをグロッタして、ウガラタするとテレポートできるらしい
< https://bn.dgcr.com/archives/20021211000000.html
>

まきお: 自分にとってMacがいい、Adobeがいいとかいうレベルでなくて、若い層を中心に、クリエイティブの意味とか世の中全部、変質してきているのだとしたら、こりゃもう、今までの常識は通用せんのだよ

かさい: ホントに「ヘモ」の時代がやってきたのなら、もうワシらにはどうしようもないわけだな。だって「ヘモ」だから


まきお: です(笑)あ、Adobeもアプリストアつくるんだー
< http://japanese.engadget.com/2010/10/25/adobe-air-2-5-inmarket/
>

かさい: どこもかしこもストア作るんだなあ、って、まぁ作るわな。いまやパッケージでアプリ買う時代じゃないもんな。こないだ、某アプリをネットで注文したら、パッケージ配達されてきてびっくりしたもん

まきお: すでにそういう感覚は普通になってきてるよね。そういうところにズレを感じることがある。今Appleにせよ、Adobeにせよ、重要なのは「個人の情報をどうハンドリングするか」であって、そのためのツールの優劣を競っている状態。世の中もここに一番の興味がある

かさい: ふむ


まきお: つまり、Adobe vs Appleの構図は、Adobeのツールをつかってアプリを開発させるさせない、ではなくて、AirというプラットフォームとMacというプラットフォームの闘いなわけだな。で、Macは自社やMacネイティブ開発者で闘うのに対し、Adobeは今までツールを使ってくれたお得意さんで闘うしかないと

かさい: なるほど

まきお: それを横で静観しているのがGoogleか。これは、Adobeは勝ち目ないぞ(^_^;

かさい: GoogleがAdobe買ってくれへんかな

まきお: ChromeとFlashプレイヤーは仲良しだから、ありえなくはないだろうけど、でもさあ、つくづく思うのは...こういう話してても最近、MS影薄いよな(^_^;

かさい: (笑)

【笠居 トシヒロ/WEBデザイナー、デジハリ大学院客員教授、京都嵯峨芸術大学講師】
< http://www.mad-c.com/
> < kasai@mad-c.com >
濱村デスクも参加している『合同会社カプット』の創立パーティに顔出しました。盛大なパーティだったけど、偶然大学時代の同級生と再会したのにはびっくりした。懐かしい話やらに花が咲いたけど、やっぱお互い老けたよなあ、と(笑)頭の中は大学時代からあんまり進化してないんですがw

【まつむら まきお/まんが家、イラストレーター・成安造形大学准教授】
< http://www.makion.net/
> < mailto:makio@makion.net >
クリエイティブが変質してきている、というのはCS5などのインターフェイスの変化を見てもそう。単に目新しさを狙ったうっとおしい変化かと思っていたけど、こういうのが普通、と思う世代が増えてくるわけでもっと根は深いのかも。まぁアナログでも気に入ってる画材が生産中止になって、技法や画材を変えざるを得ないってことはあるんだけど、今起きつつあるのはそのレベルじゃなくて、写真や映画が発明された時に起きた、美術のパラダイムシフトと同じレベルの変化が来ているような気がする。
で、全然関係ないけどドラマ「SPEC 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」はまってます。オススメ。