アンビエントメディアの夜明け[09]「名刺管理」と「予定管理」におけるアプリケーションの立ち振る舞い
── 川井拓也 ──

投稿:  著者:


操作していないのに動作している。しかもインテリジェントに。

「アンビエントメディア」をこう定義していますが、重要なのはアプリケーションの立ち振る舞いです。現在主流のアプリケーションは、起動してから何か指示を出すと動作するというもの。アプリケーションが立ち上がっていなくても、なんらかの外的情報を取り込んでインテリジェントに動作するという立ち振る舞いが「アンビエントメディア」には求められます。

「名刺管理」と「スケジュール管理」は、ビジネスマンの2大ルーチンワークと言えますが、このジャンルで「アンビエントメディア」的な立ち振る舞いをするユニークなアプリがあるのでご紹介したいと思います。

まずは「名刺管理」ですが、紙で管理したり名刺をiPhoneで撮影して文字認識して電話帳に追加したり、キングジムのピットレックのように名刺撮影とデータベース化に特化したハードウェアも登場しています。しかし、どれもユーザーがなにか整理を意識して習慣化していかないと、宝の持ち腐れになってしまうものです。
< http://www.kingjim.co.jp/sp/pitrec/
>
ピットレック



今回紹介する「Lister」というiPhoneアプリは、ユニークな発想でアンビエントに名刺情報を収集していきます。「名刺管理」には2つの側面があります。ひとつは、いただいた名刺をデータベースにしていくという考え方。もうひとつは、すでに交流が発生している人の名刺を整理していくという考え方です。
< http://itunes.apple.com/jp/app/lister/id392259903
>
Lister

交流会やパーティなど一日でたくさんの人に出会っても、実際毎日のビジネスで交流する人はごく僅かです。仕事用の電話帳がケータイの限界である1000件じゃ足りない! という話はあまり聞きません。

「Lister」は名刺をスキャンするという考え方を捨て、メールの署名からデータベースを作るという発想をしています。アプリを起動してGmailやYahooメールなどを指定すると、直近でやりとりをした相手のメールに含まれる署名からデータベースを作るのです。「Lister」は電話帳のような体裁で、開くたびに人が追加されています。いつもやりとりしているビジネスメールが、そのまま電話帳になるので、請求書を送るのに住所を調べるなども簡単にできます。

「スケジュール管理」で未開拓なジャンルは、近未来の確定していない情報の扱いという分野です。仕事の打合せなどは、調整と決定を繰り返すので紙でもデジタルでも、それを書き留めない人はいないのでそれほど問題ありません。

しかし、この展覧会に行きたいとか、この映画に行きたいとか、2週間後の友達が主催するパーティに都合があえば行きたいというような情報は、スケジュールに転記しなかったりするので、過ぎてから気がつくということがよくあります。

そこでおすすめなのが、GoogleカレンダーとEvernoteと連携するスケジュールアプリ「SnapCal」です。Googleカレンダーのスケジュールを同期するのはもちろんのこと、Evernoteに蓄積したノートに含まれる日時場所を感知してスケジュールに追加してくれるのです。
< http://itunes.apple.com/jp/app/snapcal/id343514684
>
SnapCal

つまり、日常Evernoteできになるイベントの情報をクリップするだけで、自分の近未来の予定表に候補として入力してくれるわけです。これは、これまで誰もが無意識に習慣化できていなかった「決定していないけど状況しだいでは出席したい」というイベントを、初めて扱えるようにしたアプリと言えます。

このように、アンビエントな立ち振る舞いをする、アプリはアンビエントメディアの発想に不可欠です。

【川井拓也 / Takuya Kawai】
< http://www.3331.jp/
>
mail:kawai@himanainu.jp twitter @himanainu_kawai