[2968] 退化の改新

投稿:  著者:  読了時間:25分(本文:約12,400文字)


《普通ってところが重要》

■わが逃走[77]
 沖縄の「少しだけマイナー物件」の巻
 齋藤 浩

■私症説[22]
 退化の改新
 永吉克之

■デジクリトーク
 もしも包装がなくなったら?
 出渕亮一朗



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■わが逃走[77]
沖縄の「少しだけマイナー物件」の巻

齋藤 浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20101202140300.html >
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最近仕事が極端に減ってしまい、ちょっとブルーな齋藤です。毎回クダラナイ文章を発信しているせいで、発注者及びその予備軍の方々を心配させてしまったのだろうか。

オレが言うのもなんですが、だとしたら心配ゴム用じゃなくてご無用です。『わが逃走』を書いているときと、デザイナーやってるときの頭脳は全く別モードなので、あなたが発注しようかと迷ってるポスターが極端にカメラオタクっぽくなることもなく、あなたが発注しようかと迷ってるブランドロゴが中二男子の妄想風な仕上がりになることもないのです。

という訳で、グラフィックデザイン及びイラストレーションのことなら、トンプー・グラフィクスへお気軽にどうぞ。マジで。

さて、今回の『わが逃走』も相変わらずデザインとは無関係な居酒屋トーク風世間話です。えー、先日やっと夏休みがとれたので今年も沖縄に行ってきました。沖縄は今回でほぼ10回目だったかどうかは定かではないが、だいたいそのくらい。なぜなら、新婚旅行で初めてこの地に立ってから、今年で10年目だからだーっ。

という訳でケツコン10周年記念行事の一環として、この沖縄旅行に出発したのであった。だからといって、特別にゴージャスなイベントがあった訳でもなく、例年と変わらぬ数日間だったが。

で、今回の旅で印象に残ったのは「地味物件」。沖縄といえば(   )。の、カッコの中に入りそうなもの以外の魅力的なものたちとでも言いましょうか。そこならではの魅力をだらだら語らせていただきます。

地味物件1◇ネオパークオキナワ

動物園のような植物園のような、微妙な雰囲気が魅力。富山に例えれば『埋没林博物館』くらいなユルさだが『立山カルデラ砂防博物館』くらいの充実度(わかりにくい例)。飲食店に例えれば、職人の腕はそれなりだけど、ネタの質がすばらしい寿司屋みたい(わかりやすい例)。

広大な敷地の空をネットで被い、南国の鳥たちを放し飼いにしている。
< http://bn.dgcr.com/archives/2010/12/02/images/fig01.jpg >

動物も檻に入れられているのではなく、それなりに広い敷地で比較的のんびり暮らしている感じ。地面がコンクリートじゃなくて土ってところがいいんだろうな。暮らしてる動物たちの中には泥だらけの奴もいるが、わりと自然な感じで好感が持てる。

さて、このネオパークオキナワには、園内を一周する『沖縄軽便鉄道』が走っている。これは、戦前の沖縄に実在した沖縄県営鉄道を再現したもので、約20分かけて園内のスポットを解説つきで巡ってくれる。
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車両はいわゆるインチキ蒸気機関車で、SL風の音を出しながら走る電動列車だが、園内の徒歩コースでは見られないポイントから動植物を眺められるのでオススメします。さて、列車を降りるとこんな看板が!
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スゴいですね。当然ながら映像自体はオフィシャルのものだと思うんだけど、この鉄郎やメーテルに似てない人達は何者なのでしょう。ボイラーと動輪が腸捻転おこしたような蒸気機関車も素敵。手描き看板が少なくなってきた今、こういうものを見るとホントに旅情を感じます。ああ、沖縄に来て良かった。

その後園内を散策、フシギな鳥たちの住む熱帯な森を楽しく歩いた。ここのスゴいところは空調設備なんかなく、完全に沖縄の気候のまま放ったらかしってところ。

極彩色の鳥たちを見上げていると、目の前の空間を黒×黄色の物体がふわっと横切って木にとまった。なんだ、この傘そっくりの生き物は! と思ったらコウモリだった。小さいのはウチの周りでもよく飛んでるが、こんなにデカイのは初めて見た。どっから見ても哺乳類なのに羽がありますよ、羽が!! しかもチンチン丸出しで木にぶら下がっている。
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これはコウモリ的に言えば"立ってる"ようにも見え、そうでないようにも見える。このあたりもコウモリのコウモリたる所以と言えなくもない、と思わず納得するオレである。

そしてここのいちばんのウリこそ、ヤンバルクイナ。おお、生きて動いているところを初めて見ました。土産物屋で売ってるヤンバルクイナTシャツのイラストはディフォルメでなく、けっこう写実的だったのねー。やや小太りでカワイイ。なんでも、ここでは世界で初めてヤンバルクイナの人工ふ化に成功したとか。けっこういい仕事してますね。

すると突然巨大なケケケケッという声が。おお、鳴き声を初めて聞きました。夜、森の中でこんな声を聞いたらアフリカのジャングルにでもいる気分になりそうだな。ちなみに実物を見るのに夢中になり、ヤンバルクイナの写真はありません。

という訳でネオパークオキナワでした。純粋に動植物園として魅力的だと思うんだけど、おかしなオマケがマイナー感を演出しちゃってます。そこがまたイイのですが。

地味物件2◇本部の市場周辺

本部と書いて「もとぶ」と読みます。びっくりバスツアーなんかだと、美ら海水族館への通過ポイントでしかないのですが、非常に沖縄らしい、趣のある街並が残っています。
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ちょっと前まではシャッターが閉まりっぱなしだった市場も活気づいてきて、最近はカフェやイベントスペースなんかも充実してきました。このあたりでは沖縄そばのK食堂が有名ですが、今回はその近所にあるぜんざい屋さんの素晴らしさについて。

店内に入って食券を買うのですが、メニューは一種類「氷ぜんざい」のみ。しかし、ボタンが20個もあるのでよく見てみると、なんとそれらには以下のような文字が記されていたのだ。

『氷ぜんざい( 1名様) 250円』
『氷ぜんざい( 2名様) 500円』
『氷ぜんざい( 3名様) 750円』
『氷ぜんざい( 4名様)1000円』
『氷ぜんざい( 5名様)1250円』
『氷ぜんざい( 6名様)1500円』
『氷ぜんざい( 7名様)1750円』
『氷ぜんざい( 8名様)2000円』
『氷ぜんざい( 9名様)2250円』
『氷ぜんざい(10名様)2500円』
『氷ぜんざい(11名様)2750円』
『氷ぜんざい(12名様)3000円』
『氷ぜんざい(13名様)3250円』
『氷ぜんざい(14名様)3500円』
『氷ぜんざい(15名様)3750円』
『氷ぜんざい(16名様)4000円』
『氷ぜんざい(17名様)4250円』
『氷ぜんざい(18名様)4500円』
『氷ぜんざい(19名様)4750円』
『氷ぜんざい(20名様)5000円』
< http://bn.dgcr.com/archives/2010/12/02/images/fig06.jpg >

小さい店でおばちゃん一人できりもりしてるのに、いきなり20名様が来ても対応できるのでしょうか。ちょっと心配。で、その氷ぜんざいがこちら。
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ふわふわの真っ白な氷の下にぜんざい部(っていうのか?)が埋まっている。以前、浜比嘉島で食べた氷ぜんざいは金時豆の煮汁で作った氷をベースにしていたけど、それとは違う素朴な味わい。氷ぜんざいも沖縄そばと同様、その店ごとの特色ってのがあるのだねー。

と、食の話題に熱が入ってしまったが、この本部の雰囲気ってのが沖縄の昔からある小さな街って感じですこぶるよろしい。いわゆる観光地然としているところが全くなく、沖縄の、本部の、普通の生活がそこにある。この普通ってところが重要で、自分の普通と対比したときの文化の違いを楽しく感じることができる。

日本中どこもかしこも画一化してしまいつつある昨今ですが、こうしてその場所がその場所である本質が見える、しかも演出なしで見えるというのは、ひょっとしたらかなり貴重な存在になりつつあるのかもしれません。

地味物件3◇熱帯ドリームセンター

ここはスゴイです。ものすごくクオリティの高い植物園。そうなんです、植物園。動物園や水族館と比べるとただでさえ地味なところに加え、となりが日本一の美ら海水族館だったりするので非常に損をしている感じです。しかし、ここの空間設計というか造園計画たるや尋常でない。一歩動くだけで景色が変わる。そのどれもが絶妙な構図なのです。
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こういう表現はとてもクヤシイのだが、"ラピュタ"の空中庭園の実物を見るようです。非常に綿密に設計されていながら作為を全く感じさせない。古代遺跡のようでいて現代的。
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びっくりバスツアーの人達はみんな素通りしちゃうので、休日でも人は少ない。こんなスゴイ空間を、自分のペースでゆっくり見ることができちゃうのです。また、各温室には珍妙な熱帯植物がこれでもかと咲き乱れ、じっくりと観察できます。

私は過去にいろんなモノにハマった経験がありますが、幸い植物はまだでした。うっかり深みにハマると大変なことになりそうです。ここは特にランに力を入れているらしく、ラン温室だけでもふたつあり、さらには特別展示なんてのもやってました。

番外編◇瀬底島

初めてこの島の小さな宿に来てから6年になるかな。食事は旨いし部屋はシンプルだし、なによりも放っといてくれるから実に居心地がいい。窓からの景色はいつまで見ていても飽きないし、周囲に高い建物もないので屋上からも海岸線がきれいに見渡せる。
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また、本島とつながる橋ができたのが25年前なので、沖縄の離島らしい集落がきちんと残っている。
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いつも思うのだが、この島をもっと散歩したいのだ。こんな小さな島なのに、まだ行ったことのない場所がたくさんある。来年ももし来れたら一日は瀬底島散歩の日に設定したいのだが、あっちこっち巡らずにはいられない人と一緒なのでまあ、無理でしょう。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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■私症説[22]
退化の改新

永吉克之
< http://bn.dgcr.com/archives/20101202140200.html >
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今回のコラムが、2010年の私の地球最期のコラムになる。顧みるに、私はこの2年近く「私症説」という看板を掲げて、なんとか先駆的な文芸の地平を切り開けぬものかと、さまざまな人体実験を行なってきたが、何ひとつ成功せず、読者を失う一方だった。キンゼイ報告によると、私のコラムの読者の、人口比における数はASEAN加盟国のなかでは最低らしい。

先駆者の苦悩については、多くの先達がその実例を示してくれている。それでもリンゴは落ちると主張したアイザック・ニュートンは、異端審問で有罪とされて宮刑に処せられて宦官に身を落として憤死したために、長い間、エゲレスには引力がなく、国民はみなふわふわと浮遊していた。

国民がふわふわとしていなければ、産業革命は、あと1世紀早く始まっていただろうと言われているが、所詮、対岸の火事だ。現在わが国は、横暴な隣国の〈寸を許せば尺を望む〉外交への断々乎たる対抗措置として、平身低頭の揉み手外交に忙殺されているので、エゲレスの引力の心配なんぞをしている余裕はない。我が国の引力さえ動作確認できればそれでいい。

引力とは物質と物質とが引っぱり合う力だから、人間同士も実は引っぱり合っているのだ。人間は天体よりも質量が小さいから、政府が柳腰にひっぱり回されている事実を、万有引力を論拠にして批判するのは難しい。むしろ、現在の日本が、唐という赤色巨星国家の重力(重力と引力はちがうけど、とりあえずどっちでもええやん)によって変形し始めているということに、官民挙げて右往左往するべき時に来ているのである。老いも若きも、金持ちも貧乏人も、領主も農奴も、1億3千万の大衆力をもって右往左往すれば、瞬時にして解決する問題なのだが、民衆の相互不信から、誰も率先して右往左往しようとしない。無論、私もそのひとりである。

                 ●

今でこそ、月に一度の連載になっているが、かつて私のコラムは、毎週、掲載されていたのだ。毎週である。毎週。シューマイではない。毎週。シューマイ=551という公式が大阪人の意識下に刷り込まれているが、私は家の近くの満喜楼のシューマイが好きだ。その店は台湾人がやっているので、唐人よりはまだ尖閣問題について話がしやすいが、比較的親日的な台湾とはいえ、領土問題はデリケートなので、私は北方領土問題を話題にする。

台湾人がやっている中華料理の店なら、いくらメドベージェフの悪口を言っても、国家反逆罪でシベリアの強制収容所に送られて、飢えと寒さと病気と重労働で命を落とす可能性はあまりない。だから、無法にもわが国固有の領土に靴も脱がずに上がり込んだメドベージェフのことを、紹興酒で酔っぱらった勢いで、雌犬の息子! 母親とやる奴! とさんざん罵ってやったが、店の人が誰も聴いておらず、皿を洗ったり床に水を流してモップでこすったりしていたので、すぐにやめた。

台湾は関係ないとはいえ、満喜楼の店員にとって極東地域の領土問題は高度にデリケートな問題だったのだろう。そう判断して、インドとパキスタンが争っているカシミール地方の帰属問題について、私の主張をぶっ放してやろうと、まず紹興酒をコップいっぱいのどに流し込んで、ところでね、と指をいっぽん立てたのだが、その後が続かなかった。カシミール地方がどのへんにあるのか知らなかったからだ。

そこで、その日の売り上げを計算している店員(多分、店主の妻だろう)に、カシミール地方ってどこらへんでしたっけね、と訊いたら、スミマセン、オミセモウシメマスと追い出されてしまったので、カシミール地方は捨てた。なぜヒロシマ・ナガサキの悲劇を体験した日本人が、核保有国の印パの心配をしてやらなければならんのだ。馬鹿馬鹿しい。

                 ●

冒頭で述べた話に戻ろう。美人時計は、現在では、鹿児島から北海道、はてはホングコングにまでバージョンを広げている。時刻を書いたボードを持った美人がいつもデスクトップで微笑みかけてくれているおかげで、池上彰のSPを見逃すこともなくなった。その結果、「検察官」と「検事」はどういう場合に使い分けるかを知ることができて、この知識の受け売りをしようと、その機会を虎視眈々と狙っているのだが、検察庁を肴にして一杯飲もうという人材が不足しているのが現状である。

しかし、美人時計は1分ごとに画像が変るので、60分×24時間=1440枚全部を見ようとしたら24時間起きていなければならないのである。残り少ない命を削ってまで見続ける価値が美人時計にあるかどうか、そのあたりを見極めるのが私に残された最後のミッションかもしれない。

                 ●

平成生まれの読者は知らないかもしれないが、私は昔「笑わない酒場」だったか「洗わない魚」だったか忘れたが、とにかくそんなタイトルでコラムを寄稿していたような記憶がある。たしか、二百数十本書いたような気がする。

で、現在は、そのペンキがはげて下のトタンが露出していた看板の上から「私症説」というタイトルを塗り重ねたものを看板に掲げているが、塗り重ねたペンキの被覆力が足りなかったせいか、下の字がところどころ透けて見える。見たところ〈笑私わな症い説魚〉とも読める。これは間近で見ても判らない。最低、10間(約18メートル)ほど距離をおいて見ないと判らない。

しかし、私はこれを進化と考えている。進化はかならず進化以前の影を持っている。尻尾のいらないはずのヒトが尾てい骨という痕跡器官をいまだにもっている。このことと、看板の上塗りは、まったく同じコンセプトに基づくものだ。私は進化しているのだ。一見、退化に見えるかもしれないが、新しく生まれ変わっているのだ。この法則は〈退化の改新〉と呼ばれる。これは事実である。お疑いならgoogleで検索してごらんになるがよかろう。4,490件しかヒットしない。

魚類が陸(おか)に上がって両生類となり、爬虫類が生まれ、鳥類の祖先となり、哺乳類のなかから現在のヒトが登場したわけだが、進化して新しい形質を得ながら、なお退化しようなんて奇特な人はいるまい。せっかく霊長類の長となりながら、今になって既得権を棄て、海棲動物に戻ろうと、玄界灘の荒波に抗ってじゃぶじゃぶと海に還ってゆくヒトがいるだろうか。私は貝になりたい。

【ながよしかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
このテキストは、私のブログにも、ほぼ同時掲載しています。
・無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz >

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■デジクリトーク
もしも包装がなくなったら?

出渕亮一朗
< http://bn.dgcr.com/archives/20101202140100.html >
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毎週二度の「燃えるゴミの日」にゴミ袋を見ていつも思うのは、明らかに8割ぐらいは包装、パッケージゴミだということだ。特にスーパーマーケットの食材を包むスチーロールのパッケージやサランラップ、レジ袋等などだ。

今日、世界中にコンビニやスーパーが何万件あって、何億人くらいの人が毎夕どのくらい買い物しているのか知らないのだが、想像するにとてつもない使い捨て包装ゴミが毎日、毎年生み出されていることになる。

合成樹脂の原料となる石油の可採年数は諸説あるのだが、一番長い方の100年ぐらいだとしても、100年たって今日から石油がなくなりましたので、生活変わりますよというわけではないだろう。その半分ぐらいの年月で石油高騰して高級品になるだろうから、その半分ぐらいの年月までで、方向転換のライフスタイルを築いておくべきなのである。

ということは、今後20〜25年後ぐらいまでには、現在のような使い捨て包装に依存しないスーパーマーケットにするべく、今から考えておくのが賢い事業主であるといえよう。

もしも、すべての包装やパッケージが廃止されるとすると、解決策の方向性としては今ある方式の発展形として三つあると思う。

1)マイバッグ方式─例えば昔の日本のようにマイ鍋を持って豆腐屋に豆腐を買いに行くとかです。
2)リサイクル方式─コーラの瓶や酒瓶を商店に戻しに行くと買い取ってもらえるというあの方式です。段ボールや空き缶、ガラス瓶は資源ごみとして回収というのもこの方式に入ると思います。
3)ネットショッピング方式─私も今では家電と本の購入はネットが多いです。本は本屋で入手しにくい商品も購入できますし、家電は数多くのメーカーや品ぞろえの多い商品からじっくりカタログをにらんで、本当に自分のほしいものを検討できます。わずらわしい売り子さんもいません。商品の流通において、都会と地方の差はどんどんなくなってきていると言えます。

ここで特に資源問題を論じるつもりはないので、軽い近未来小話と考えて聞いてください。

「包装がなくなる日」

20XX年、「使い捨て包装禁止法」が成立した。ビニールやプラスチック製のみならず、紙やその他の梱包材も使用禁止となった。食品売り場のパックはもちろん、家電、文房具、雑貨、衣服...すべての商品の使い捨てパッケージ、包装、紙バッグは違法となってしまった。これは、その数年後の話である。

僕は今日の買い物のことを考えていた。まず、夕食の準備をしよう。スーパーはすべての食材が秤売りになっているので、スーパーまで直接行くには、惣菜用、野菜用、刺身用...のようにタッパーをたくさん持っていかねばならない。最近はうまく収まるタッパーセットもあるようだが。

主婦層はスーパー直接買い物組だが、多くの人は今はあまりスーパーには行かない。また、町で何か衝動買いしても、包装も紙バッグも付けてくれないので、最近はバッグを持って外出する人がほとんどである。

A4見開きのダブル液晶ボード端末で食品売り場をのぞくと、「大売り出し」のけばけばしい文字の下に群馬産のトマトやフィリピン産のバナナが並んでいる。指ではじくと商品がくるくる回るところは、そういえば、その昔iPadが出たころのヒットアプリ、「元素図鑑」を思い出させる。今は撮影技術と表示技術がさらに進んでいるので、今日の産地別の野菜のレベルでデータ化されアップされている。

それから、切らしていたシャンプーも購入することにした。包装禁止法ができた頃は、パッケージは何でもリサイクルにしようとした。雑貨やコスメなんかも。だが、パッケージを購入店舗に返却に来る奇特な人は少なかったし、パッケージの料金払い戻しにしても、まだ、ゴミとして出してしまう人が多かった。パッケージ集積場を作ってみたが、あまりにも量が多くなるのと、仕分けが難しいので結局廃止された。

今は、なんでもネットで購入配送が一般的である。配送業は極度にシステム化され、今では携帯で30分単位で配達時間を指定できる。配送業者は商品に合わせたリサイクルパッケージで運搬し、玄関で商品のみ取り出して渡して帰っていく。

シャンプーなんかは詰め替えだ。配達料はほとんど無料である。実は禁止法ができた時、包装コストが削減できるから、その分配送料を持ちなさいという、メーカーにとってはわかったような、だまされたような条例が政府から出されたからだ。

そろそろ寒くなってきたので、新しいジャケットと帽子が欲しかったところだ。ボード端末を立てて自分のアバターを呼び出す。アバターを作るにはどこの駅前でも見つかる「3Dボディスキャナー」を使えばいい。

円筒形の装置に入って、1分ほどじっと立っていれば1,000円で自分の体の3Dデータを作ってくれる。ただ、服を着ているので推定体型となっている。精密に取りたければ、街中のサイバーセンターに行って、水着になって取ればよい。自宅にある体重計のような装置にのれば、電位の変化がどうとかで、毎日の細かい脂肪や筋肉の付き方を反映してアバターを修正してくれる。

ちょっと最近おなかが出てきたな...ランニングでもしようかなと僕は考える。

おしゃれ人はアバターを作る手間を惜しんではいけない。ネットショップに並ぶ衣服をアバターにドラッグすると、サイズが合わないときは警告が出、また着せてみれば似合うかどうかがわかる。歩くとか座るとか、いくつかの動作もできるので、その時どう見えるかもわかる。こうして客観的に納得いくまで服を探すのがおしゃれ人なのである。

そういえば、その昔はブランドショップの近づきがたい店員のオーラをかいくぐって、2、3着の服を試着して購入とか野蛮なことをしていたものだ。

他に、カメラで撮影している自分の姿に商品をドラッグしてAR(拡張現実)表示する方式もある。頭を傾けたり回したりしてもARの帽子がちゃんと付いてくる。

最近のリアルタイムレンダリング技術の進化で、現実のライティング環境を設定できるので、見ためにも違和感はない。

女性はAR表示の方を好むという調査があるそうだ。150×50cmの縦長ミラー型ディスプレイ(もちろん鏡にもなる)は高価であるが女性に人気らしい。全身を映して自分自身の着せ替えができるのだが、ARコスプレにはまっている人も多いという。そういうblogサイトはググれば山ほど出てくる。

最後にちょっと高い買い物だが、そろそろ新しい机と椅子が欲しいのだ。大家さんから提供されたマンションの間取り3Dデータに、家具ショップサイトからよさそうな机と椅子をドラッグしてあれこれ配置してみるのだが、どうもピンとこない。それこそ、地球の裏側のメーカーのものまで山ほど商品が出てくるので、どうしても優柔不断になってしまう。

僕は陳列モードから、サイバーウォークモードに切り替える。現実のショーウィンドーを模した店舗が立ち並び、並んだ家具の側に女性のNPC(ゲーム用語:コンピューター制御のキャラクター)が立っている。僕の好みと予算を話しかけてみる。テキスト入力モードもあるが、タップするのがめんどくさいし、最近は音声認識の精度もよいので、初めは恥ずかしかったが今では音声でNPCに話しかけている。

NPCは一昔前のゲームキャラみたいだが、最近の女性は皆、CGキャラを逆にまねたファッションやメイクをしているので特に違和感はない。

「それならば、○○製のこの商品等いかがでしょうか? 素材は...」
NPCは表情豊かに合成音声で答えるのだが、これも今では結構自然である。

【出渕亮一朗】
コンピューターグラフィックス、インタラクティブアート分野のアーティスト
グラフィックス分野のプログラマー
< http://www.debuchi.com/ >
ryoichiro.debuchi(a)gmail.com

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■編集後記(12/2)

・喜多川泰「『福』に憑かれた男」を読む(総合法令出版、2008)を読む。「人知れずいいことをする」「他人の成功を心から祝福する」「どんな人に対しても愛をもって接する」これらの「条件」のうちどれかを満たしている人には福の神が憑くという。わたしには憑いていないな。この本は、新米福の神のひとりが、どうやって成長していったかをひとりの若者(本屋の松尾秀三)とともに経験したエピソードを通して書いた「素敵な成功者のつくり方」という福の神育成協会の研修記である、という設定だ。福の神は憑いた人に姿を見せたり、物を与えたり、教えたりはできない。提供できるのは「素敵な出会い」だけだ。営業不振で閉店を覚悟していた松尾が、行動する勇気を与えてくれる人との出会いがあり、試練を経て成功するまでのストーリーはなかなかおもしろい。松尾と一緒に一喜一憂してしまう。小さな本で白地が多く行間が広い。つまり文字数が少ないからアッという間に読める。しかも大事な個所は太字。なるほどなあと思ういいことが書かれている。「一冊の本との出会いで人生は変わる」、そういう経験ができるかもしれない。ただ、サブタイトルの「人生を豊かに変える3つの習慣」の「習慣」が見当たらない。「条件」ではないかと思う。やっぱりわたしには福の神が憑かないな、、、(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862800955/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー15件)

・パッケージゴミ、正直悩んでます。キッチンには大きなゴミ箱を置きたくない。夕食だけでScanSnap(大)ぐらいのプラゴミが出て、2日もすればゴミ箱がいっぱいになる。うちのマンションは24時間ゴミ出し可能なのだが、それは普通ゴミのみ。プラ、ペットボトル、瓶、缶、新聞類、段ボールなどの資源ゴミは、朝7時から夜8時まで。これが結構ハードル高くて、朝〜昼2時頃まではメルマガやってるし、仕事やってると8時なんてあっという間。今日は出さなきゃ、と思っていても出す機会を失うことしばしば。2Fに自転車置き場、1Fにゴミ置き場があるので、自転車で急いで出かける時は先送り。キッチンに行く度に、明日こそは出さないとなぁと反省することになる。生ゴミはシンクにディスポーザーがあり、プラゴミ類は洗うから臭いはないものの、この洗う作業も結構めんどくさい。めんどくさい、のついでに書くと、洗い物は食器洗い乾燥機があるので、プラゴミがなければほとんど洗い物がないのにな〜と思ったり。電気ポット(IHなので都度湧かしてもさほど時間はかからない、はず)や、炊飯器(圧力鍋がある。家人は欲しがっている)すら買っていないのだが、いるものはいる。疲れてて食べるのが精一杯という時でも、食器洗い乾燥機があれば、シンクに汚れた食器がたまらなくて本当に助かる。片付けってしんどいよ〜。子育て世代、共働き家庭におすすめ。で、スーパーの達人の中には、精算を済ませた後の梱包用テーブル(とでも言うんだろうか)で、中身だけを備え付けのロール状透明ビニールに入れ、トレイをリサイクルボックスに捨てていく人がいたりするらしい。陳列には便利だし衛生的でも、家では必要ないものだもんなぁ。(hammer.mule)
< http://osaka.cssnite.jp/ >  忘年会があります〜♪