装飾山イバラ道[67]「LOST」ファイナル
── 武田瑛夢 ──

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「LOST」が終わってしまった。心にポッカリ穴が開いたようで、なんだか喪失感。最終回の録画だけはなんだか消せない。6年もの間続いてきたドラマだけに、同じような人も多いと思う。

この喪失感はなぜなんだろうと自分なりに分析すると、「LOST」ってその世界がどんなに好きでも時間的にドラマを最初から見直すのが容易じゃないし(約120回)、結末を知ってしまえばもう初めて見た頃の自分に戻ってワクワクしながら見ることもできないドラマだからかもしれない。

・「装飾山イバラ道[61]時間をジャンプする映画たち」
< https://bn.dgcr.com/archives/20100824140200.html
>

「LOST」については上記の「装飾山イバラ道[61]時間をジャンプする映画たち」で紹介したけれど、今回はラストシーズンのあらすじを追うことはせずに、全体の私的感想にとどめようと思う。以下はネタバレを含みます。最終回を見終わってから読んでください。



シーズン6回めのラストシーズンは今までの謎が解けるはずだから、どんどんスッキリしていくものだと思っていた。しかし見れば見るほど新たに謎が膨らんでいくような感じで、どうやって収拾をつけるんだろうと不思議で、心配すらした。かなりラストになるまで、オチを想像させないことには成功したと言えるのかもしれない。

事前のPRコメントなどで「感動のラスト」と聞いていたけれど、人によって全く異なる感じ方をするようなラストだったと思う。私は終盤の韓国人夫婦のジンとサンのエピソードで既に大泣きしていたので、最後に彼らがひとつの幸せのかたちを迎えたのを見てホッとしてしまった。

登場人物のいくつかの恋愛を振り返るような場面があったのに、なぜジンとサンのシーンに一番感動したのだろう。アジア人だからなのか、夫婦だったからなのかはわからない。でも、潜水艦の件の後で昔を振り返るようなあんなシーンが来るとは思わなかったから泣かされた。そのシーンの本当の意味は最終回の最後までわからないけれど、自分が想像していた枠を広げないと解釈できないらしいことなのは気づき始めた。

過去がフラッシュバックするシーンでは、みんなが若くて輝いていてそれぞれの瞬間に一所懸命だったのが思い出される。シーズンを重ねたドラマならではの素材を生かして、ファンにも思い出の場面をもう一度見せてくれた感じだ。うまいなぁ。

●主要人物を勝手に評価

このドラマは主要人物がとても魅力的で、美しい自然あふれる島の景色の中に、Tシャツにジーパンだけの姿がかっこよくて絵になる。ジャックもケイトも表情を映すためのものすごいアップでも瞳がキラキラしていて本当に綺麗なのだ。まぁ、この二人は若くて容姿端麗なんだから当然だけれど、スキンヘッドのおじさんのロックでさえ、アップに耐える表情と演技だったと思う。

ジャックよりもワイルドでハンサムな、ソーヤのファンという人も多いと思う。でも、私はデズモンドが一番かっこいいと思ってたけどね。島でヒゲだらけの頃からその美貌には気がついていたけれど、最後の方でスーツを着てる彼は本当にクールで素敵。その役回りもサマになっていたし、ラストシーズンでは最後までデズモンドの出番が多かったのが嬉しい。

キュートでワルい雰囲気のミュージシャン役のチャーリーは、前半のシーズンで大活躍だった。でも、個人的には今見ている別のドラマ「フラッシュフォワード」でも主要な役をやっている俳優なので、混乱してしまった。人気の俳優さんがドラマのあっちにもこっちにも出てるのは、日本のドラマでも同じだからしょうがないけれど。

●ドラマを締めくくるということ

うちのだんなさんは最終回を見終えて「今までずっとわからなかったけれど......結局、やっぱりわからない!」との感想。だんなさんにとっては、何年もかけて約120時間分のドラマを見た結論が、「謎」のままだったのはけっこう悔しいみたい。私は私なりに謎が解けた気がしているのに。この違いは、私が正しいかどうかは関係なく、自分の解釈でわかったことにできる性格だからなのかもしれない。

自分の生涯を見守っていた他者がいること、何かによって選ばれ、最後は自分で行動を選んでいく宗教的な意味を感じるラストは、宗教・思想をひとつに限定しなくても十分解釈できるボカシ加減だったのがちょうど良かったと私は思う。

そもそも海外ドラマって、何シーズン続くかわからないところから制作&公開していくので、散らかした謎の全部に決着をつけろを言うのも酷だと思うのだ。それでも、見続けてきた視聴者が納得できるようにうまくまとめたと思う。

当たり前のようだけれど、ドラマは最終回があってこそだ。各シーズンの最終話は話の区切りにもなっていなかった「LOST」だけれど、ラストシーズンでこの話はこう終わるという終わり方を出してくれただけで、責任を取ってるんじゃないだろうか。

ここ最近、途中でブチっと終わるらしい「フラッシュフォワード」を見ているとつくづくそう思う。打ち切るってわかってても見てしまう自分も悪いけれど、打ち切りって本当に悲しい。

以前やっていた「ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ」も、見ていたのに途中で打ち切りになってしまった。打ち切りに怒る製作陣の気持ちが出ているようなラスト間際の数回は、ある意味なかなか思い切ったものだった。あんなぶっち切り方見た事がない。例えば、準主役級が眉間に一発の弾丸を受けてあっさり死んでしまい、主役もそれをさほど悲しまずに立ち去ってしまうシーン。視聴者もあの準主役と同じように、見捨てられてしまった気持ちになって呆然とする。時間がないにしてもそりゃないよー。

「LOST」の次に何を見たらいいのかと、彷徨っている海外ドラマファンも多い。テレビ局は新しいドラマをどんどん作るだけじゃなく、きちんと最終回まで締めくくるのが宣伝した責任だと思う。「LOST」みたいにどんなに長くても、最終回までやるドラマを見始めたいものだ。

・LOST ファイナル・シーズン COMPLETE BOX[DVD]
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【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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家で初めてボジョレーヌーボーを買っていたので、何かチーズの料理を作ることに。ゴルゴンゾーラのチーズが売っていたので、チーズピッツァにしよう。なんとしても4種類のチーズを使って、有名な4種のチーズのピッツァ「クアトロフォルマッジョ」にしたかった。

家にとけるナチュラルチーズとスライスチーズはあったのに、粉チーズを切らしていた。チーズが3種類だと、なんていう名前のピッツァかわからない。ピンチだ。そこで母が買っていたクリームチーズをもらって、無理矢理なんとか4種のチーズピッツァとして完成。

食べてみてわかったことは、ゴルゴンゾーラは塩気や香りがきついので、マイルドなチーズを数種類使うことですごく食べやすくなる。母はただの「チーズのピザ」だと思って食べていただろうけれど、それは「クアトロフォルマッジョ」だ。おかわりしたので味は気に入ったみたいだ。