気になるデザイン[53]『KAGEROU』の罠にはまってる!?/津田淳子

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今年ももうほとんど終わりに近い時期になりました。年々、時が経つのが早くなってる気がするんですが、冬季オリンピックが今年だったなぁとか、ひとつひとつ思い出してみると、「えっ、あれからまだ一年経ってないの?」というがします。

今年も「気になる」デザインや印刷加工関連の話はたくさんありましたが、私が担当する今年最後のテキストなので、一番気になる分野「ブックデザイン」のお話などさせていただこうかと。年末になって今、一番の話題作といえば『KAGEROU』ですよね。発売前から重版40数万部、発売すぐにまた大量増刷で68万部とか、すごい数字が目に飛び込んできます。

ポプラ社大賞をとってから、話題沸騰だったこの小説が、どんなブックデザインになるのかずっと気になっていた私は、発売日の今月15日、お昼休みに近所の書店に行ってきました。

入口はいってすぐの平台にドーンと平積みされた『KAGEROU』。まずはペラペラっと見てみようと思ったら......シュリンクがかかってて見られませんでした。トホホ。話題作なので立ち読みされたら......ということなのか、はたまたこの本は通常の委託販売ではなく責任販売だから、売れないと儲けがでないだけじゃなく損するからなのか......(どうして責任販売だと...ということは検索すれば出ると思うので、興味があれば調べてみてくださいな)。まあ、確かなのは、同じく(?)シュリンク仲間である『デザインのひきだし』のように、たくさんの付録が落ちないように、汚れないように、ということではあるまい。



ブックデザインが気になってはいたものの、絶対買う! とまでは意気込んでいなかったので、なんとなーく買う気が失せて、そのときは買わずに出てきてしまったものの、でもどうしてああいう装丁なのか(白いカバーの真ん中に、十字がスカイブルーメタリックで箔押しされている)、どんな本文組みなのか、読んだときどんな印象を受けるのか......、うーむやっぱり気になるなと、後日買ってしまいました。

資材的な話をすると(あ、これはあくまで私の推測なので、間違ってる可能性もあります)、カバー、表紙、見返しはヴァンヌーボ、本文はb7トラネクストで、全体的に白い! カバーはPP貼りがなく、ニス引きのみなので、けっこう汚れやすそう(うーん、シュリンク必要なのはこのため? そんなわけないか)。

本文用紙は初見ではわからず。嵩高な微塗工紙? と思い、OKプラナスシリーズとかいろいろ見本帳と見比べてみて、うーん、b7トラネクストっぽい、という結論に。文芸の書籍にb7トラネクストが使われるって、結構珍しい気がします。そこにゆったり組まれた本文書体はイワタ明朝オールド、でしょうかね。

読む前にあたりを付けたのはこんなところ。本文組みがゆったりしているせいか、かなりスラーッと読めました。はい。でも、本文用紙としてはちょっと白過ぎるも。もう少し、本文の墨とのコントラストが低い感じの方が、個人的には読みやすいなぁ。そうだ、書いてしまうと未読の人に悪いので詳しくは書きませんが、読んでいると、途中でしかけがひとつありましたよ。

そして、発売日にネットニュースなどでも話題になっていましたが、ラストの本文に誤植訂正シールが。人物名を間違えたのでシールで訂正ということなのですが、訂正シールってどうしても剥がしたくなるのが人のサガ(笑)。当然、私は剥がしてみましたが、剥がしたとたんに、「これもある意味、『しかけ』なのでは?」と思ってしまいました。いや、ホントに。それにしても数十万部シール貼りとは、考えただけで身の毛がよだちます......。

とまあ、あまりにも話題になると、そこから敬遠してしまいがちなのですが、今回は流行に乗って買ってみて、造本については意外に楽しめました。読み返すこともない気がするので古書店に売ろうかとも思ったのですが、......最後の訂正シール剥がしちゃったから売れない。はっ! これももしかして、そういう「しかけ(罠)」なのかっ!?

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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