[2994] 仕切り直す!

投稿:  著者:  読了時間:26分(本文:約12,500文字)


《「写真家」と「怪しいお菓子研究家」の肩書きを加えました》

■ネタを訪ねて三万歩[73]
 デジタル書籍(電子書籍)論争にはウンザリですね
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[247]
 iPhone/iPod touchがスキャナになるって?
 吉井 宏

■Webディレクター養成ギブス[09]
 仕切り直す!
 蓮井慎也



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■ネタを訪ねて三万歩[73]
デジタル書籍(電子書籍)論争にはウンザリですね

海津ヨシノリ
< http://bn.dgcr.com/archives/20110126140300.html >
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「マイコミジャーナル」側の事情(?)などで、公開が半年〜一年もずれていた「海津式レンジファインダー術」の第5回で、人物写真を撮影しました。実は、本来の5回目〜8回目を飛ばして9回目となる原稿を5回目としました。これは撮影に協力してくれた学生の半数が卒業を控えていたからです。

さて、ちょっとした仕事でバストアップ撮影をしていたこともあり、いつか人物のバストアップ撮影についてテキストにしたいと考えていたのですが、肖像権やら色々と問題が多くて先送りにしていました。

そんな矢先、たまたまいつものように造形学科の顔見知りの学生のアトリエで雑談をしている最中に、大きなキャンバスの撮影方法の話になり、そこからバストアップ撮影をしてもいいということになりました。あとはトントン拍子に許可をしてくれる学生が現れ、なんなく8名の顔写真を撮影することが出来ました。実はおおよそめぼしい学生を絞っていたのですが、やはり顔見知りで気さくに話せる仲でも、メディアに実名で顔のアップが掲載されることには抵抗があるのは当然です。

とにかく絞り込んだ学生全員の一番いい表情は、事前に分かっていたので撮影は本当に楽でした。レンジファインダーカメラでバストアップのポートレートはちょっと筋違いかもしれませんが、写真に「〜でなければいけない」なんてものはないですからね。

デザインもそうですが、厳しい顔で難しく抽象的な言葉を並べる作者(ここではあえてクリエイターとは言いたくない)に説得力はなく、逆にうさんくさくなってしまうのではないでしょうか。でも、世の中は厳しい顔で難しく抽象的な言葉を並べる作者が好きですね。素直が一番だと思います。

どちらにしても第二弾を計画中です。もしかすると、第二弾は方向性を変えるかも知れません。誰にも知らせずにこっそり個展というのも面白いかもしれませんね。

< http://journal.mycom.co.jp/column/rd1/010/index.html >
海津式レンジファインダ術-5 「R-D1で学生のポートレート撮影に挑戦!」

こんな具合に面白いことに対しては、いつものめり込んでしまいます。

ところで、タブレットディバイスの登場でIT世界の流れが大きく変わり始めた2010年(だったらしい)で、もっとも注目された言葉は「書籍の自炊」ではないでしょうか。のめり込んでいる人は相当多いようですね。

私は食事ならどちらかと言えば自炊派ですが、書籍類に関しては自炊派ではありません。もっとも書籍のアナログ派とデジタル派なんていう愚問は、論じることすら馬鹿らしいと思っています。ただ現在の私の立ち位置を整理すると紙の本が好きですが、仕事はデジタル書籍(?)に関わっています。しかし、この「デジタル書籍(電子書籍)」みたいな表現しかないのが何ともキモチワルイです。

昨年、そんな現状を複数のクリエイター達と酒の肴に盛り上がった、デジタルデータ考を思い出しました。少なくともその場に居合わせたクリエイター10余名全員の総意のような形でお開きとなったのですが、その総意とは「音楽はCDである必要はまったくなくデジタル配信でいいんじゃないの」「映画はやっぱり所有したいから最低でもDVD、出来ればブルーレイかな」「本はケースバイケースかもね」というものでした。つまり、物理的に所有したいか否かという二択です。もちろんこれはおじさんクリエイター達の戯れ言であって、若い世代の感覚はもっと違ってくるでしょう。

とにかく今は混沌とし過ぎているわけです。自炊で本をデジタル化することに嫌悪感を示す人、そしてデジタル化を絶賛する人、私にとってはどちらも興味はないです。大切なのはメンタルな部分。特にモノをつくることを生業としている者にとって、アイデアのスイッチは人それぞれであるはず。であるならば、世間の流れは流れとして認識しつつ、自分の世界観は頑固に守り続けてもいいと思いますよ。

だから私は、この手の究極の二択論争には全く興味が湧きません。過去にDTPデザイン、デジタルカメラ、iPhoneやiPadと、それらデジタル処理を最初は逆上否定していたはずなのに、どさくさに紛れて手のひら返し、いつの間にかオピニオンリーダーみたいな顔をしている人を沢山知っています。まっ、そのくらいずる賢くないとこの世界じゃ生きていけないのかもしれないですね。

もちろん、火付け役となったiPhoneやiPadだって万能じゃないわけです。何でもそうですけど、青筋立てて絶賛すればするほど滑稽に感じてしまったりします。要するにうさんくさくなるというわけです。

そんな私も、実は年末にiPhoneを新規契約しました。ナンバーポータビリティーを利用しなかったのは、20年近く利用していたDoCoMoをそのまま継続利用したかったからです。通話はDoCoMoでメールはiPhoneという訳です。iPhoneの通話機能とキャリアも中途半端。都心に居なければ使い物になりません(ちょっと誇張しすぎ?)。

もちろん、各社からリーズナブルに出始めたポータブル系WiFiも検討しましたが、思わぬところに購入に走らせる要因(プライベートな理由)が潜んでいました。これでiPhone、iPodTouch、iPad、iPod Classicがそれぞれ1台ずつとなりました。恐らく様子を見てAndroid系にも手を出してしまうかもしれません。私はApple一辺倒ではありませんので。実はiPhoneとほぼ同時に、DELLのNoteマシンを購入しました。

さて、話を本に戻すと、印刷された本は完全にはなくならないかもしれないけれど、数年後には「印刷って何?」かもしれないと本気で感じています。「美術書、あるいはチラシやカタログ類はやっぱり紙でしょ」という声が聞こえてきそうですが、例えば店頭にiPadのようなビューワーを設置し、データが欲しければ自宅のPCまたは手持ちのスマートフォンに転送してしまうような仕組みが確立されたら、チラシやカタログ類は一気にデジタル化されるのは必至。

要は、今あるいは過去の感覚で未来を語ることに問題が在るわけです。それでも紙の印刷物が欲しかったら、Amazonのマーケットプレイスかもしれないですね。これ近未来SFのネタに使えそうですね。

しかし、百歩譲ってもデジタルデータにはコピーや著作権の問題が今まで以上に怖いのではないでしょうか。困った問題ですが、国を挙げてパクリまくっている某国が好き勝手(もう無茶苦茶の域すら通り越していますね)に振る舞っていることを止めさせることが出来ない世界の現状が、暗黒の未来を予感させますね。正直気分悪いですね。

出来るだけ「メードイン某国」は買わないようにしていますが、それを完全に実行したら生きていけない現実は最高のホラーですね。とにかく「話せば分かる」と説く方がいますが、同じ国民であっても、それはほとんど絶望的かもしれないですね。話せば分かる人だったら、もめることなんてないですから。ですから「話せば分かる」という考え方を私はまるっきり信じていません。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Tron: Legacy(soundtrack)]by Daft Punk in 2008〜2010(France)

半端なインパクトではない、Daft Punkのサウンドトラックは大正解ですね。"Daft"の意味が気に入って付けたというセンスが好きです。なお、ロボコップのような仮面(フルフェイスマスク)を被って素顔を公開していないのは、1999年9月9日にコンピュータのバグで起こった機材爆発の事故により、サイボーグになってしまったからだとか。ちなみに彼らはフランス人ですが、フランス語でもスペルは変わりません。

[トロン:レガシー]by ジョセフ・コシンスキー in 2010(USA)

28年前の1982年に、同じディズニー映画として公開されたアメリカ・台湾合作映画「トロン」の続編。当然、ジェフ・ブリッジスやアラン・ブラッドリーも登場しています。しかも、同じ時間が経過しているわけで、当時の「トロン」に興奮した私にとっては絶対に見なくてはいけない映画。

ということで、年末に劇場に出かけました。劇場は実に数年ぶりです。見たのは字幕スーパーの3D版。とにかく凄いのは30代のケヴィン・フリンとクルー2.0は、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」で開発されたコンツアーシステムにより作られたCGの顔を、現在のブリッジスに合成している点。圧巻です。

とにかく映像は怖いくらいの美しさです。また、エンド・オブ・ライン・クラブのDJとして、ダフト・パンクがカメオ出演しているのもナイスです。ところで、昨年あたりに公開されていた予告編でライト・サイクルの一騎打ちのようなシーンがあったのですが完全にカットされていました。理由は不明。どちらにしてもDVDが出れば何か分かるかも......。

しかし、鑑賞条件の凄く良い劇場でしたが、いいシーンで「くしゃみ」をしてくれたおじさんや「五月蠅いカップル」がいて雰囲気はぶち壊し。せめて飲食禁止にして欲しいですね。飲食OKなんて喫煙OKと同じぐらいの暴挙ですね。こんな状態では次に映画館に行くのは何年後になることやら......。

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■アップルストア銀座でのセッション
2011年2月21日(月)19:00〜20:00
Made on a Macとしての画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol.54』
Adobe Photoshop CS5によるフォトレタッチ技法後編【合成編】として、画像合成用に元画像を料理する時のマスキングのコツと背景画像との調整テクニックについて、短時間処理を想定して整理いたします。偶数月のセッションは予約不要・参加無料・退席自由ですので、お気軽に参加して下さい。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com >
< http://kaizu-blog.blogspot.com >
< http://web.me.com/kaizu >

昨年の秋口あたりから要望が出ていた海津ゼミが、多摩美術大学造形表現学部にて昨年末に本格スタートしました。海津ゼミの始まりは駿河台大学文化情報学部でしたので、今回は第二期ということになります。どちらも公式な授業ではありませんが、志は熱いです。また勢いで突っ走ってしまった駿河台大学の時はどちらかというとサークル的な色が強かったのですが、今回は本気モード全開です。実はその駿河台大学の一期生たちからの要望で、多摩美術大学の二期生との合コンが開催されることになりました。こんな不思議な巡り合わせがとても好きです。そして、もしかすると私自身がそれを一番楽しんでいるのかもしれません。

なお、本年度より従来名刺などに記載しておりました肩書きに加え、新たに写真家(こっそり仕事はしています)と怪しいお菓子研究家の肩書きを加えることになりました。多くの方からの後押し(もちろん洒落も含まれています)故です。

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■グラフィック薄氷大魔王[247]
iPhone/iPod touchがスキャナになるって?

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20110126140200.html >
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メモの話の続きです。

iPadで雑誌など見ながらメモを取るとき、やっぱりノートはかさばるし書きにくい。小さいペラ紙は手で押さえないと書けない。特に、iPadの右側に置いたメモ紙を左手で押さえるのはしんどい。

で、自炊本の残骸の表紙厚紙にRHODIAの縦長メモ用紙を弱粘着両面テープで貼ってみた。これはなかなか具合がイイ。紙の取り替えワンタッチ。裏に滑り止めを貼ったので、メモ書くときに滑らないし。紙の固定にはドラフティングテープなども使うけど、低粘着両面テープは重宝します。3Mの「Scotchはってはがせるスティックのり」もいいです。

で、思い出したのが、昔WACOMのSDというペンタブの描画面は紙を固定する「静電吸着板」だった。ずいぶん前、下絵用紙を固定して描いてみたことあるけど、紙を固定するためだけにコンセントを使うのはバカバカしかった。ポータブルの静電吸着板、ないかな。

メモ関連で最近の僕的ヒットはiPod touchのカメラ。iPhone4と同じカメラなんだけど、起動も早いし使い方もカンタン。画像サイズは大きくないけど、ちょっとしたスナップやメモ用途には最適。外出時にポケットにiPod touchを忍ばせてます。

で、最近知ったのが、「iPhoneをスキャナにする」アプリ。いくつも同様のアプリがリリースされてますが、購入したのは「JotNot Scanner」というもの。iPhoneの画面がスキャナになるわけじゃないです。カメラで名刺やレシートなどを記録するのに、iPhoneのカメラをスキャナ代わりに使うものです。

キモは、撮った写真のゆがみを簡単に調整する機能。適当にスナップすると台形に映ってしまいますが、補正機能を使って長方形にできます。そこが「スキャナ」って名乗ってる理由でしょう。あと、書類向きに白を飛ばしてクッキリさせるなど、用途に応じた画質にする機能も便利。

でも考えてみると、ちょっとメモ代わりに撮るのなら台形補正や画質調整など面倒なだけで、スキャナアプリを使わずに普通に写真撮ればいいんだけどね。出先で紙に書いたスケッチやラフを簡単に送信するならいい感じかも。DropboxやEvernoteに送信できるのも良いです!
< http://itunes.apple.com/jp/app/jotnot-scanner/id307868751?mt=8 >

iPhoneのカメラをスキャナとして使うといえば、Twitterで教えてもらったキングジムの「ショットノート」。紙のメモとiPhoneアプリが連動する仕組み。四隅にマーカーが印刷された用紙にメモしてiPhoneカメラで撮影すると、マーカーの位置に応じて台形補正される仕組みらしい。
< http://www.kingjim.co.jp/news/release/detail/_id_16124 >

アノトペンと同じく用紙に束縛されちゃうのが微妙。そのへんに落ちてる紙じゃなく、専用紙を買わなくちゃならない。その点、どんな紙でも使えるエアペンのほうがいいかも。そうだ、画面四隅のマークを押すハンコを売ったらいいんじゃない? クリクリって書くテンプレートでもいいし、白いプラ版にマーカー印刷してあるやつをホワイトボードとして使ってもいいし。

っていうか、やはり平行にきちんとメモを撮影する、ってこと自体、よく考えたら「簡単なメモ」の範疇をはずれてると思う。歪んでてもいいじゃんね。あるいは、棒状の新型ScanSnap、または昔よくあったペンみたいなサイズのハンドスキャナ。ああいうのがiPhoneやiPadに繋がると便利かも。

そもそも、iPhoneやiPadにシャープペンで書くレベルのメモが書けりゃ苦労しないのに! 次の次のリニューアルくらいで、iPadもAsusのタブレットみたいにWACOMのタッチ&ペンのユニットを採用してくれないと、メイン作業はAsusでやり、iPadは閲覧用に成り下がることになるぞ。

●先週の余談の続き:「iPadで読書中にメモを取る画期的な方法。大きめの付箋を画面に貼り付けてボールペンで」と書いたけど、なんだあ、iPadの裏にデカい付箋を貼っておいて、裏返して書けばいいんでした。iPadケースの裏がクリップボードになってるのがあったら面白い。

●おまけ:iPadの画面キーボードでブラインドタッチ入力?

Bluetoothキーボードのほうが効率がいいのは確かですけど、やりようによってはけっこうイケる。僕の方法。iPadは机に平らに置くか、膝の上に置く。横位置でキーボードを表示。左手の小指の付け根をiPadの左下の角にグッと当てて固定して支点にします。入力中もそこから動かさないようにします。右手も同様に固定しますが、比較的自由にしておいても支障ないです。

こういうセッティングでキーボードを打つと、半ばブラインドタッチしてるくらいの打ちやすさになりますよ。ものすごい長文を書く予定がないのなら、Bluetoothキーボードを持ち歩かなくてぜんぜん大丈夫。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

まだまだMacBook Air、いいな〜ほしいな〜継続中。で、ふと思った。64GBのSSDではDropbox用の50GBを確保できないから128GBしか選べない、と思い込んでた。あれ? DropboxってWebに置いてあるんだから、必要なファイルはいつでも手に入るのだった〜。ネット越しを徹底すりゃ64GBで十分なんだ! 以前書いたように「テキスト作業専用の高級ポメラとしてAir11インチを使う」ってアレがくすぶっててさ。いや、まだ買わないと思うけど。17インチMBPをフル装備で持ち運ぶ機会が多くて、いろいろグラグラしてる最中。これについてはまた書きます。

・「リトルローラ・カスタムアートショー」渋谷ロフトで開催中(1/31まで)
< http://martyito.blogspot.com/2010/12/blog-post_26.html >

・iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」販売中
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV >

・「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb >

・「ヤンス!ガンス!」オンエア情報 MUSIC ON! TV、TVK(テレビ神奈川)、Gyao、music.jp、Wiiシアターの間でも配信中。同じくMUSIC ON! TVの番組「George's Garage(GGTV)」のオープニングをヤンス!ガンス!のコラボで制作。
< http://www.m-on.jp/blog/ggtv/2010/10/101002-4.html >

・「毎月1日は映画サービスデー」CMに「ヤンス!ガンス!」登場中

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■Webディレクター養成ギブス[09]
仕切り直す!

蓮井慎也
< http://bn.dgcr.com/archives/20110126140100.html >
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年度末に向け、毎年恒例のWEBサイトリニューアルなど、大規模案件が発生する時期だと思います。案件規模に見合う予算や時間、リソースを確保できればいいのですが、実際は限られた予算と時間の中で、リソースをバランスよくやりくりする必要があります。その上、最初に線を引いたスケジュールでも遅れがちになることも日常茶飯事なのに、度重なる仕様変更や追加要求で、胃が痛くなったり、逃げたくなることもしばしばだと思います。

話の分かるクライアントであれば、そこまで苦しまないのでしょうが、WEBに対して無知なために無理な要求をされてしまったり、クライアント社内で上長の言いなりで、一度はOKが出ていたデザイン案はおろか、最初の要件定義からひっくり返ってしまうこともよくある話です。

だからこそ、日々のクライアントとのコミュニケーションで良好な関係を築いたり、クライアント教育によってWEBの知識をつけることはもちろん、理解のあるクライアントに育てることが理想です。それでも、この時期の取引が初めての案件だったり、これまでこうしたクライアントとの関係をなんらかの理由で怠っていた、あるいは軽視していた、といったような理由から、良好とはいえない関係性の中で迎えるこの難局を乗り越える対処法を考えてみたいと思います。

思い切って"仕切り直し"を要求してみましょう。これは、ただ単純にスケジュールを後ろに倒すということではありませんが、無理で無茶な要求に悪意を感じる場合は、今後の取引はしない覚悟で、杓子定規かつ義務的な対応でもよいのかもしれません。

クライアントにはいい顔をしたい! と、誰もが思うため「仕切り直しですね」とは、なかなか言いづらいセリフです。クライアントも人が悪く、言ってみて受けてくれたらラッキー♪ くらいのつもりで要求してきている場合もあります。しっかり理由を説明し、「そりゃそうだよね」と思わせることが大事です。なにもかも真に受けてしまうと、いくら徹夜に強いWEBディレクターといっても生身の人間ですから、カラダがいくつあっても足りなくなります。

思い切って「仕切り直しですね」と、毅然とした態度で発言した後は、なぜ仕切り直す必要があるのか、クライアントに理解を求めることが必要です。

要件定義やデザイン案レベルでひっくり返ってしまうような、クライアント都合であればなおさら、ブレた状態で強引に案件を回してしまっては、苦労してなんとか納期に間に合わせたとしても、残念なことにクライアントからの評価は低く、せっかくリニューアルしたWEBサイトも数か月の寿命となる可能性があります。そして再リニューアルとなってしまい、クライアントに無駄なコストを負わせることになりますし、またそれだけならまだしも、他社にリニューアルを含め、それ以降の運用まで獲られてしまう危険があります。

思い切ってスタート地点に戻るか、どこかのポイントに戻り、クライアントが求めるゴールやその背景を再認識したほうがいいのかもしれません。急がば回れとはよく言ったもので、それでも強引な回し方をして評価を下げるより、一呼吸置いた進め方は、WEBディレクターの手腕とも言うべき、形勢逆転ポイントなのです。

仕切り直しを呑んでもらえない場合は、泣きながら納期に間に合わせなければなりませんが、呑んでもらえた場合には、追加要求があった場合は...と、なんらかの条件付けをしておくことも肝要でしょう。

仕切り直す以上、WEB制作側の都合で仕切り直し後のスケジュールを遅らせるわけには行きません。それでもタチの悪いクライアントは、そこからでもドサクサ紛れに追加要求をしてくる可能性がありますので、言った言わないの水かけ論に持ち込ませないためにも、ミーティングなどの議事録に加え、電話や打ち合わせの席での口頭でのやり取りも、なるべく「意識違いがないか念のため確認をお願いします。」などの言葉を添えたメール等で記録を共有しておくことが重要です。

クライアントの求めるゴールを再定義し、残された期間内で優先順位を設定し、どうやればゴールを実現するために優先順位の高い必要なものを消化"できるか?"考えていけば、自ずとやるべきことは絞られてきます。

「ゴール到達(目的達成)のために、今は優先度SとAに注力し、BとCは4月以降で運用とともに対応していきましょう」

こんな感じで、例えば、間に合わせることを優先し、若干のデザインクオリティを落として、運用しながらアップさせていく、といったようでも構いません。

ここで特にWEBディレクターは「できません」という言葉を絶対に吐いてはいけません。"どうやればできるのか?"を、手段ではなく目的で考えてください。クライアントがWEBディレクターに求めている回答は「できません」ではなく「どうやればできるか?」であるくらいに思ってください。

そうすると回答の質も変わってきて、クライアントがなにか新しいことを始めようとしたときにくる「○○ってできますか?」と聞かれたとき、「○○だからできません。」ではなく「○○してくれればできる!」と答えられれば、前者はネガティブで後者をポジティブに捉えることもでき、この○○は、クライアントへの要求事項として次のように置き換えられるはずです。

つまり、「もう少し予算があればできる」です。削られる予算に指をくわえて眺めるのではなく、追加予算要求をこうしてやっていけば、先程の例では、前向きな回答に変わってきます。

「ゴール到達(目的達成)のために、今回は間に合わせることを優先し、デザインクオリティのアップは4月以降で運用とともに対応していきましょう。もしも、追加予算さえいただければ、デザイナーを1名増員し、運用とともに対応することなく、デザインクオリティを3月末までにアップしていくことができます!」

ポジティブな回答はネガティブな回答に比べてクライアントも受け入れやすく、お金に限った話ではなく、常にポジティブな回答を心がけたいものです。

クライアントの無茶ブリに対して使える、このクライアントに尻を拭かせる対処法は、年度末案件に限らず、通年の運用や新規案件など、いろいろな交渉タイミングで応用していけると思います。

最後の注意をひとつ。仕切り直しを要求すれば、当初予定していた納期に完全な納品ができないために、請求入金にも影響してまります。社内の営業マンは目標数字を達成できませんし、経営側は金策に走る必要があります。クライアントに仕切り直しのカードを切る前に、先に社内の利害関係者に相談なりなんなりし、クライアントよりも先に仕切り直しへの理解を求めるようにしてください。

社内で成功すれば、社外でもきっと仕切り直し交渉は成功するはずです。

【蓮井慎也 / Shinya Hasui】WEBディレクター
地元WEB制作プロダクションに所属。大手通販企業に常駐し、WEB制作をしています。
オンライン名刺 < http://card.ly/hasui/ >

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■編集後記(1/26)

・樋口晴彦「本能寺の変─光秀の野望と勝算」を読む(学研新書、2008)。明智光秀が謀反を起こした動機として、信長怨恨説がよく語られる。筆者は5つの主な怨恨説をあげ検証する。結果、いずれも根拠が乏しく謀反を決意させるほど重大な怨恨は存在しなかったと断じる。将軍義昭や朝廷などが黒幕になって、光秀に謀反を使嗾したとする謀略説も知られている。筆者はこの浮説5パターンを挙げて一蹴する。筆者の所論は「天下人の座を手に入れる成算が充分にあったので決行した」というもので、偶然がいくつも重なった結果、天正10年6月2日に光秀にとって3つの条件を奇跡的にクリアした、千載一遇のチャンスが訪れたと説く。惜しかった。あと一歩で光秀の企ては成功するところまで進展していた。なんというリアルでわかりやすい説明だ。しかもスリリングでドラマチック。歴史ビギナー向きの楽しめる啓蒙書としておすすめだ。光秀の没年齢は67歳とする説が最も有力だという。当時としては非常な高齢の武将がハイリスク・ハイリターンの賭けに踏み切ったという史実を知ると、役立たずののんきな日々を送っている我が身が情けない。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054038573/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー1件)

・怪しいお菓子研究家は何を研究するのだろう。気になる〜!/「iPhoneをスキャナにする」アプリはJotNotとDocScannerを持っているけど、今はまったく使っていない。アップデートするたびに機能が追加されて、便利だなぁ、ちゃんと設定しなきゃと思いつつ。とりあえずメモのために撮影する場合、あとで補正や整理しようと思うと他のことで手一杯になり、さほど見返すことがないからカメラで撮ってそのまま。なので、その場で補正というのも、どうせほとんど見返すことはないんだから〜と放置気味。代表してホワイトボードや資料を撮影し、皆に後で配るという時ぐらい。この時は威力を発揮する。名刺もマメにやろうと思っていたけど放置。メールアドレスがあって連絡がとれるもんだから、つい。で、電話番号やら住所やらがなくて、打ち合わせ直前に慌てて、メール署名欄からコピペしていたり。でもって、もっといざという時は、Gmailを検索して済ませてしまったり。MacやiPhoneのアドレスブックに入力しておくのは、よほど頻繁に電話や携帯メールするような人ぐらい。/iPad。かな入力するにはそもそもキーが足りない。iOSでは対応を期待できない。こうなったら親指シフトを勉強して、iPad用親指シフトアプリを待つしかないか(本気度微妙)。ニフティのパティオ(15年ぐらい前?)で、チャットの入力スピードで負ける相手は、皆、親指シフト利用者であった。ほんと早かった。暇だったあの頃に練習しておけば今頃......。(hammer.mule)
< http://togetter.com/li/19458 >
iPad用親指シフトについてTwitterでのやり取りがあった
< http://nicola.sunicom.co.jp/ >
親指シフトについて