Webディレクター養成ギブス[09]仕切り直す!/蓮井慎也

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,800文字)


年度末に向け、毎年恒例のWEBサイトリニューアルなど、大規模案件が発生する時期だと思います。案件規模に見合う予算や時間、リソースを確保できればいいのですが、実際は限られた予算と時間の中で、リソースをバランスよくやりくりする必要があります。その上、最初に線を引いたスケジュールでも遅れがちになることも日常茶飯事なのに、度重なる仕様変更や追加要求で、胃が痛くなったり、逃げたくなることもしばしばだと思います。

話の分かるクライアントであれば、そこまで苦しまないのでしょうが、WEBに対して無知なために無理な要求をされてしまったり、クライアント社内で上長の言いなりで、一度はOKが出ていたデザイン案はおろか、最初の要件定義からひっくり返ってしまうこともよくある話です。

だからこそ、日々のクライアントとのコミュニケーションで良好な関係を築いたり、クライアント教育によってWEBの知識をつけることはもちろん、理解のあるクライアントに育てることが理想です。それでも、この時期の取引が初めての案件だったり、これまでこうしたクライアントとの関係をなんらかの理由で怠っていた、あるいは軽視していた、といったような理由から、良好とはいえない関係性の中で迎えるこの難局を乗り越える対処法を考えてみたいと思います。

思い切って"仕切り直し"を要求してみましょう。これは、ただ単純にスケジュールを後ろに倒すということではありませんが、無理で無茶な要求に悪意を感じる場合は、今後の取引はしない覚悟で、杓子定規かつ義務的な対応でもよいのかもしれません。



クライアントにはいい顔をしたい! と、誰もが思うため「仕切り直しですね」とは、なかなか言いづらいセリフです。クライアントも人が悪く、言ってみて受けてくれたらラッキー♪ くらいのつもりで要求してきている場合もあります。しっかり理由を説明し、「そりゃそうだよね」と思わせることが大事です。なにもかも真に受けてしまうと、いくら徹夜に強いWEBディレクターといっても生身の人間ですから、カラダがいくつあっても足りなくなります。

思い切って「仕切り直しですね」と、毅然とした態度で発言した後は、なぜ仕切り直す必要があるのか、クライアントに理解を求めることが必要です。

要件定義やデザイン案レベルでひっくり返ってしまうような、クライアント都合であればなおさら、ブレた状態で強引に案件を回してしまっては、苦労してなんとか納期に間に合わせたとしても、残念なことにクライアントからの評価は低く、せっかくリニューアルしたWEBサイトも数か月の寿命となる可能性があります。そして再リニューアルとなってしまい、クライアントに無駄なコストを負わせることになりますし、またそれだけならまだしも、他社にリニューアルを含め、それ以降の運用まで獲られてしまう危険があります。

思い切ってスタート地点に戻るか、どこかのポイントに戻り、クライアントが求めるゴールやその背景を再認識したほうがいいのかもしれません。急がば回れとはよく言ったもので、それでも強引な回し方をして評価を下げるより、一呼吸置いた進め方は、WEBディレクターの手腕とも言うべき、形勢逆転ポイントなのです。

仕切り直しを呑んでもらえない場合は、泣きながら納期に間に合わせなければなりませんが、呑んでもらえた場合には、追加要求があった場合は...と、なんらかの条件付けをしておくことも肝要でしょう。

仕切り直す以上、WEB制作側の都合で仕切り直し後のスケジュールを遅らせるわけには行きません。それでもタチの悪いクライアントは、そこからでもドサクサ紛れに追加要求をしてくる可能性がありますので、言った言わないの水かけ論に持ち込ませないためにも、ミーティングなどの議事録に加え、電話や打ち合わせの席での口頭でのやり取りも、なるべく「意識違いがないか念のため確認をお願いします。」などの言葉を添えたメール等で記録を共有しておくことが重要です。

クライアントの求めるゴールを再定義し、残された期間内で優先順位を設定し、どうやればゴールを実現するために優先順位の高い必要なものを消化"できるか?"考えていけば、自ずとやるべきことは絞られてきます。

「ゴール到達(目的達成)のために、今は優先度SとAに注力し、BとCは4月以降で運用とともに対応していきましょう」

こんな感じで、例えば、間に合わせることを優先し、若干のデザインクオリティを落として、運用しながらアップさせていく、といったようでも構いません。

ここで特にWEBディレクターは「できません」という言葉を絶対に吐いてはいけません。"どうやればできるのか?"を、手段ではなく目的で考えてください。クライアントがWEBディレクターに求めている回答は「できません」ではなく「どうやればできるか?」であるくらいに思ってください。

そうすると回答の質も変わってきて、クライアントがなにか新しいことを始めようとしたときにくる「○○ってできますか?」と聞かれたとき、「○○だからできません。」ではなく「○○してくれればできる!」と答えられれば、前者はネガティブで後者をポジティブに捉えることもでき、この○○は、クライアントへの要求事項として次のように置き換えられるはずです。

つまり、「もう少し予算があればできる」です。削られる予算に指をくわえて眺めるのではなく、追加予算要求をこうしてやっていけば、先程の例では、前向きな回答に変わってきます。

「ゴール到達(目的達成)のために、今回は間に合わせることを優先し、デザインクオリティのアップは4月以降で運用とともに対応していきましょう。もしも、追加予算さえいただければ、デザイナーを1名増員し、運用とともに対応することなく、デザインクオリティを3月末までにアップしていくことができます!」

ポジティブな回答はネガティブな回答に比べてクライアントも受け入れやすく、お金に限った話ではなく、常にポジティブな回答を心がけたいものです。

クライアントの無茶ブリに対して使える、このクライアントに尻を拭かせる対処法は、年度末案件に限らず、通年の運用や新規案件など、いろいろな交渉タイミングで応用していけると思います。

最後の注意をひとつ。仕切り直しを要求すれば、当初予定していた納期に完全な納品ができないために、請求入金にも影響してまります。社内の営業マンは目標数字を達成できませんし、経営側は金策に走る必要があります。クライアントに仕切り直しのカードを切る前に、先に社内の利害関係者に相談なりなんなりし、クライアントよりも先に仕切り直しへの理解を求めるようにしてください。

社内で成功すれば、社外でもきっと仕切り直し交渉は成功するはずです。

【蓮井慎也 / Shinya Hasui】WEBディレクター
地元WEB制作プロダクションに所属。大手通販企業に常駐し、WEB制作をしています。
オンライン名刺 < http://card.ly/hasui/ >