ローマでMANGA[37]「みどりが熱を出して寝ている」
── midori ──

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なるべくその時々の状況を書きたいという思いもあって、前もって書きためておくのではなく、掲載予定日の一週間前にこのコラムを書くようにしている。ところが、今回、その予定した日に何年かぶりの高熱に倒れてしまった。

何も取り柄がないが、健康だけは人に自慢できる。熱が出たのも何年ぶり。眠れば治ると、震えながら毛布を頭まで引っ張り上げて寝たけど翌朝もまだ39度。39度と38度を行ったり来たりしながら、気力と体力を奪われて、結局4日間死に体でベッドにいた。そんなわけで、まだ熱明けで頭がちょっと回ってない状態なので、軽いおしゃべりで失礼します。

「みどりが熱を出して寝ている」というニュースは、ダンナを中心としたネットワークによって知れ渡る。ダンナは出掛けに、オレンジを絞ったコップと体温計とコードレス電話を枕元においていった。

電話をかけてくるのは、姑、その連れ合い、ダンナ、義理の妹、舅。誰も知る人がいない土地にやって来たのに、熱が出るとそれっとお見舞い電話をくれる人ができたというのはすごいな、と思う。

ただ、実際には、本当はそっと寝かせておいてほしい。でも、咳をゴホゴホしながらも力を振り絞って応えるから、いろいろ入ってくる助言の差がすごくはっきりした。



医学部中退の義理の妹が一番ほんとに役立った。食欲がないのはわかるけど、ミネラルが減るからバナナとかポテトとか食べたほうがいいよ。それと、水分はどんどん補給して。母として嫁として看病の経験もモノを言ってる。何よりも病人の立場に立っての助言で、耳にやさしく入ってきた。

結構厄介なのが、姑の連れ合い。製薬会社に長年いて、保健省にも長年勤務。医学の知識は医者並。だから診断は医者並なのだけれど、うらに「そうだろう、俺には分かるんだよ。俺の判断に間違いはない」の押し付けがあって受け答えが重くなる。

可愛いというか、体調がいい時にしてほしい、と思ってしまうのが姑。病人の立場にはなりきれず、でも心配してくれて、その心配していることを示すだけの「なにか食べなくちゃ」「肉を食べなさい」「そんなに熱があってどうするの」に、ゴホゴホ咳をしながら、遠い耳に届かすために声のボリュームを上げて、ますます咳をゴホゴホ出させて話にならなくなってしまう。舅はたんたんとこちらの状態だけを聞き、たんたんと切り上げてくれるのに。

それぞれの性格をベースにしたお見舞い電話は、今後、私からお見舞い電話を掛けるときの参考に覚えておこうと思った。

熱の頭というのは、変な理屈を催させる。小さいときはよく熱を出した。熱が出るたびに夢うつつの中で、ふとんのような柔らかく、でも中に妙な芯がある巨大な物といつも格闘していた。ある時突然、その妙なものは無意識に触っている私自身の腕の感覚だと知った。柔らかいのは少女の腕だから、そしてその中心部には骨がある。熱頭の中で、指が触れる僅かな面積の腕が異様に拡大されて脳みそに届いていたらしい。正体に気がついてからその異様なものと格闘はなくなった。

今回は、理屈にならないのに理路整然とした解説をつけたがった。体重が増えた昨今、長時間寝ていると体重を支える骨盤やら腰やらが痛くなってきて、しょっちゅう寝返りをうつ。横向きに寝ていて、支点になってる骨盤が悲鳴をあげてくると、屁理屈隊がやって来る。

暗い画面の中に不規則な隆起があり、その稜線に沿って白いラインがピーーピーーーと描かれていく。3Dのレンダリングみたいなやつだ。いくつかの数字が書き込まれる。私はそのデータを元に寝返りを打たねばならないのだけれど、いったい何の基準の稜線で、数字が何で、どの力でどう動けば良いのか示すものはないので、そのデータと格闘する。

というか、そのデータが強迫観念となって迫ってきて安眠をさまたがるのだ。仕方がないから咳と共に起きて、ふらふらとトイレへ行って、水を少し飲んで別の姿勢でベッドに潜り込む。すでになんども寝返りを打っているのでシーツがぐしゃぐしゃで寝にくい。

というわけで、インフルエンザにかかると、熱が出て苦しい、体調不良、骨の節々が痛い、他に、熱頭の強迫観念とも闘うことになって疲れ果てたのだった。

【みどり】midorigo@mac.com

ほんとに久々の高熱でした。今朝、体力気力充実して目が覚め、トイレと床掃除をしたら、両方共たちまち底を付き、しばらくソファでじっと横にならないと震えが来る、という始末でありました。何日かぶりでおかゆを自家製の梅干でいただきまして、白米が美味しかった。母からメールで「温かい素うどんを作りに行ってあげたい!」ああ、母のおうどん! 文章だけでも味が蘇って嬉しかった。

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