ところのほんとのところ[51]写真機材に対する愛着──三脚、カメラ
── 所幸則 Tokoro Yukinori ──

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●その1:三脚

最近、昔からの写真機材の整理をした。相変わらずすごいなと思ったのがジッツオの三脚だ。購入後25年近くたっているというのに、いまだにビクともしないこの無駄なぐらいの頑丈さ。この余裕のある頑強さが世界中の写真家に愛される所以だろう。

[ところ]のものも、購入当時一番巨大な足(据え置きタイプ以外で)と一番大きな雲台で、8×10用にとにかく大きな物を付けても、人間がのっても壊れないほどタフだ。試しに3人乗ってみたけど壊れなかった。その代わり、ぶつけて軽自動車を壊したことがある。

[ところ]のジッツオはカーボン製とかじゃない。鋼鉄製だ、たぶん(苦笑)。それにしてもこのジッツオは重い。これと8×10のカメラと、カットホルダーを一人で持って歩ける人はそうはいないだろう。格闘家の魔裟斗でも、元野球選手の清原でも、2〜3日持って歩けばいやになるだろう。

しかし、最近ではこんなに重い三脚はいらないというのが時流のようだ。昔のハスキーでさえ重いと思われそうだ。三脚は重くて丈夫だからこそブレないのだ。今は高級品だとカーボン製のジッツオとかあるらしいけれど、軽い三脚は風が吹いたらブレるんだよ。それに重い三脚は、[ところ]が体重を三脚とカメラに預けてもびくともしない。撮るときはすごく楽なのだ。撮るまでが重いんだけど。

だけど、カメラ側に自動手ブレ補正があるからいいということなのかな。実際、コンパクトデジタルカメラで写真ライフを満喫してる人にとっては、高感度化やブレ防止の仕組みのおかげで三脚は極限まで軽くていい。ただ、みんながみんな同じ方を向く傾向が多いこの国のこと、メーカーやマスコミによる流行のコントロールに、みんながみんな同調しないでいてほしいとも思う。



ともあれ、[ところ]の数少ない愛着ある写真機材のひとつが三脚である。ハスキー31年、ジッツオは25年愛用している。残念なことに、三脚はハスキーもジッツオも日本製ではない。日本のメーカーのものも実は二度買ったことがあるが、2年ほどで壊れたので愛着がわくまではいかなかった。本当は残念に思っている。日本の三脚メーカーさんにも頑張ってほしいんです。

●その2:カメラ(前編)

[ところ]は写真歴40年のなかで、じつはカメラにはそれほど思い入れがなく、あまり愛着を感じないのが不思議だ。子ども時代に出会った、いくつかのカメラの思い出に影響されているのかもしれない。

最初のカメラは、カメラの形はしているがレンズもガラスのものではなく、もしかしたらただの穴だった可能性もある。シャッター速度も125分の1秒しかなく、絞りもF11相当のところでしか撮れないようなおもちゃだった。最近流行っているトイカメラは、それから比べれば立派なカメラにしかみえない。

フィルムも6×6のフィルム(ブローニーもしくは中判)を暗室でカットし、暗室で装填するのだ。だから一枚しか切れない。そんな面倒な思いをして一枚。[ところ]の家の近くに顔見知りの写真館があって、優しいおじさんだったのでやらせてもらえたようなものだ。幼なじみのみゆきちゃんを、晴れた日差しの中で何度か撮ったピンぼけの写真がうっすらと記憶にあるが、それが小学4〜5年だったと思う。

そういう[ところ]少年を見かねて、父がカメラを買ってくれることになった。全メーカーのその年のカメラが全部のっている本が近くのカメラ屋にあって、そこから選んだのはリコーのオートハーフというカメラだった。理由は24枚撮りフィルムで48枚撮れるということ。36枚のフィルムなら72枚だ。しかもフィルムを巻き上げる必要がなかった。ゼンマイ式のモータードライブのような感じ、というと言い過ぎか。小学生にはフィルムは高価だったから、とにかくハーフサイズで沢山撮りたかったのだ。

男の子は普通機械モノが好きだ。カメラ、オーディオ、バイク、車......、そしてその機能美と性能の両方に魅了されて手に入れることが多い。時計なども大人の男にはたまらなかったりする。[ところ]のカメラは1台目も2台目もそうではなかった。1台目はいちおう写真が撮れて安い(250円)から、という理由だった。2台目も高価なものではなく(12,800円)、お小遣いを考えて沢山撮れるカメラ、という理由でハーフサイズだった。

中学入学祝いで初めての一眼レフカメラを買ってもらった。ブラックボディで一眼レフならなんでもよかったのだが、YASHICAを選んだ。ニコンやキヤノンのブラックボディは高かったからという理由もある。

こういうラフなカメラ選びに、[ところ]がそれほどカメラに愛着を感じて生きてこなかったルーツがあるように思う。父親が愛機にライカとか持っていれば、僕の人生も方向性も変わってしまったかもしれない。いい方に変わったのかどうなのかは、見当もつかない[ところ]です。

つづく

【ところ・ゆきのり】写真家
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いよいよiphone4用のケース、ところの1セコンドバージョンができたらしく、来週早々には僕の手元に来るらしい。
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