[3003] そんなに鈍くなってどうする?

投稿:  著者:  読了時間:17分(本文:約8,200文字)


《ありふれた技術の活用の仕方にまだまだ可能性がある》

■音喰らう脳髄[102]
 そんなに鈍くなってどうする?
 モモヨ

■アナログステージ[50]
 売り手と買い手の見えない攻防
 べちおサマンサ

■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[03]
 自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」
 沢辺 均



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■音喰らう脳髄[102]
そんなに鈍くなってどうする?

モモヨ
< http://bn.dgcr.com/archives/20110208140300.html >
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エジプトのデモ、大相撲の八百長騒動、火山の噴火など、世の中、大変なことになっている。

考えてみれば、この一つだけとっても一昔前なら大騒動になっていたはずなのだが、繰り返される大災害のせいかどうか、私たちの思考構造も少しずつ、こうした大騒動に対して鈍感になっているような気がする。

少し前のオーストラリアの洪水も、十年前なら、もっと注目されたろうし、大騒ぎになっていたはずなのだが、インド洋の津波や中国内陸部の地震など、巨大災害の報道が続く中、天変地異に対する私たちの関心も減ってきている。そんな気もする。

一連の報道を見る限り、いろいろな騒動の中でも大相撲関連の問題にだけスポットライトが当たりがちだ。しかし、以前、普賢岳で火砕流や土石流が続き、被害が甚大になった折に現地で復興工事にたずさわった経験があるだけに、霧島の噴火は気になる。

近隣、宮崎県で発覚が相次いでいる鳥インフルエンザについても、私たちはもっと関心をもっていい。何も大声を上げるつもりはないものの、私はそんなことをポツリと感じたりしている。今すぐに対処しなければならない問題だから、だ。

相撲を卑下するつもりはない。しかし、地域経済、地域住民の生活そのものを直撃する事実が目の前にある場所が、国内にあるのであれば、そこにフォーカスを絞るべきだろう。

なのに、現実の報道は大相撲に偏りがちだ。あるいは、私たちの感性もまた、繰り返す天変地異・地球規模の変動に影響されてしまっているのかもしれない、などとつい妄想をたくましくしてしまう。

「そんなに鈍くなってどうする?」

心のすみで誰かがささやいているような気がする。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/ >

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■アナログステージ[50]
売り手と買い手の見えない攻防

べちおサマンサ
< http://bn.dgcr.com/archives/20110208140200.html >
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2011年、新年を迎えて早一か月が経過し、そろそろ正月気分も抜けてきた頃合を見計らって、忌々しいネタを振り返ってみる。デジクリ筆者のどなたかが「おいおい、そりゃないでしょ」とツッコミいれるかな...... と期待していたのだが、さすがにカスりもしなかったようで...。

ネット界では、まとめサイトも出来上がり、すでにネタとして風化し始めている様子もあるが、ご存知ないかたに簡単に説明すると、【お正月の団欒が笑顔に包まれるおせちをお届けいたします】【毎年同じような内容で飽きるおせち料理に新風を!】というキャッチコピーで、本当に新風を巻き起こしてしまった、横浜にあるバードカフェ。

利用者が急増している(のかは正確には分からないけど)共同購入タイプのクーポン提供会社でもあるグルーポンから、21,000円で販売しているおせち料理を、半額の10,500円で提供! というところから始まり、正月になっても注文した商品(おせち料理)が届かない、1月2日になっても届かない、連絡取れない、グルーポンにも連絡がとれない、1月3日になって届いて蓋を開けてびっくり! など、購入者にはなんとも切ない新年の幕開けとなった事件だ。

・グルーポンで買ったおせちが酷い!まとめwiki:
< http://www43.atwiki.jp/groupon2011/pages/1.html >

まとめサイトを読んでいいただけると分かるが、確かに酷い。購入者が撮った画像を見て、「まぁまぁまぁ、そんな新年から...」と擁護する次元ではない。いや、酷いというより、まずは呆気にとられ、ジワジワと怒りを蓄積し、一気に爆発するプリニー式噴火の構図のようだ。その怒りは成層圏まで届く勢いであったに違いない。ワタクシだったら、そのまま成層圏を飛び越えて、人体火星探査機になりそうな勢い。

おせち画像を見てもの凄く気になるのが、なんか、6Pチーズが1個、コロンとあるような......。なぜおせち料理に6Pチーズ? と不思議がって読んでいくと、どうやら6Pチーズではなく、8Pチーズらしい。バードカフェのおせちメニューにも「生ハムとカマンベールチーズ」と記載してあるから、たぶん、このカマンベールチーズの役割を8Pチーズが担ったと推測。

このテの問題が起きたとき、必ずといっていいほどツッコミどころが満載になるのが、お店側の対応だ。人はパニックになったときに、ヒトを苛立たせるフェロモンでも放つのか?! というくらいイライラする対応をし、状態をよけい悪化させている。船場吉兆のときもそうだ。

これだけ痛い目にあっても、喉元すぎれば熱さを忘れる寛容さを持つ日本人(日本人限定かはまったく分からないけど)は、その負のパワーをネタに変える力をもっている。以前、ワタクシがデジクリで紹介した「アンサイクロペディア」によって、忌々しいネタから崇高なブラックジョークに消化された観がある。

アンサイクロペディアをご存知ない読者様に簡単に説明すると、ここは「違いが分かる大人のジョーク置き場」というスタンスなので、冗談が通じないかたは読んだらダメなところです。

過去ログ:アナログステージ[42]違いが分かる大人のジョーク:
< http://bn.dgcr.com/archives/20100928140200.html >

「結局今回のコラムもネタオチはここかいな!」と怒られてしまいそうですが、そんなことはありません。インターネットって怖いということを示しているのです。そんなにカリカリしてばかりいてはダメです。栄養価の高いチーズでも食べながらリラックスです。ビタミンB2は豊富ですし、チーズ100gで牛乳6本分の栄養があるんですよ!

・バードカフェ - アンサイクロペディア:
< http://bit.ly/g5QSoZ > ←日本語URLのため短縮URLにしてあります

ここでも「8Pチーズ」が格好のネタにされているが、ワタクシも間違いなくこのおせち料理ネタで弄るのなら、間違いなく8Pチーズ。正直、ここまで「物語」が出来あがると妙な満足感がある。

・8Pチーズ - アンサイクロペディア:
< http://bit.ly/ebjzw0 > ←日本語URLのため短縮URLにしてあります

バードカフェ本家WEBサイトで、お詫び文とともに「メニューの表記に相違があったので訂正します」と、わざわざ画像へ変換したテキストが貼られているが、いったい、どれだけ相違していたんだYO! メニュー殆どじゃないNO!とツッコミいれたくなってしまうが、そこは大人なのであえて突っ込まず。

しかし。訂正の中で、「生ハムとカマンベールチーズ」は「生ハムとクリームチーズ」になっているだけで、どうせならば「生ハムと8Pクリームチーズ・ワンカット」と訂正すれば潔いのだが。8Pチーズのことは一切触れていない。8Pチーズであることを認めたくないのだろうか。

・外食文化研究所:
< http://www.gaishokubunka.com/ >

・グルーポン(GROUPON)-バードカフェ(横浜)「謹製おせち」ご購入のお客様へのお詫びについて:
< http://info.groupon.jp/topics/20110101-384.html >

ワタクシはインターネット経由で「食べ物」を購入するということは、今まで一度もしたことがない。やはり、自分の目で直接素材見たり、手にとれるものは手にとって確かめてから購入したいので、今後も購入することはまずないが、普段、なかなか手に届かない食品や、インターネット限定などの商品もあったりで、購買意欲はそそられる。

ただ、一度でも、こういった「事件」に遭遇してしまうと、次に繋がり難くなってしまい、購入意欲も失せてしまうことなど、負のスパイラルに陥ってしまい、なかなかそこから抜け出すのが難しい状態にもなってしまう。食べ物ならなおさらのことだ。

手にとって見れない、実際の状態も確認できないインターネットの物品販売で、販売者サイドが消費者サイドにできることは、「確かな間違いのない品物」を提供するという、実に簡単なこと。購買の基本信用問題。

食品に限らず、インターネットやカタログショッピングなど、通信販売という媒体でモノを売る側は、いま一度、「消費者側は欲しいと思う実際の商品を、リアルに見ることができない」という、基本的な部分を見直してほしい。

販売者側のそういった細かい気配りが集結していって、「市場」の活性化に繋がっていくはずだしね。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋
< http://bachio.posterous.com/ > ←小康気味
< http://twitter.com/bachiosamansa > ←フォローしても役に立ちません

○新ネタやろうとしていたのですが、あまりにもコアすぎるのと、意外にまとめが難しくて暫く持ち越し/今年に入って仕事が既にピーク。まだ2月だよ? どうなるんだ、いったい......。

○記憶に残っている2週間の出来事→記憶喪失。というより、本当に忙しくてトラベラーズノートにも瞬間日記にも書いてない→またもやSWAMPの山根さんと泥酔→その日は結局、15時から朝の5時まで呑んでる→当然のように腹が痛くなる→ヒトとしてこれでいいのかと思い直すも、これでいいのかと考える→でもダメだ、どこかで起動修正しないと、あっははー。

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■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[03]
自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」

沢辺 均
< http://bn.dgcr.com/archives/20110208140100.html >
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国立国会図書館と有志で参加した出版社が、「全文テキスト化実証実験」をしている。

・国立国会図書館における全文テキスト化実証実験の出版社等との共同実施について
< http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization_fulltext.html >

紙の本と、デジタルデータ(PDF TXT XMDF .book)の290タイトル・384冊から、構造化したテキストデータをつくって検索して、ページを表示する。検索・表時の実験は、2月28日(月)〜3月4日(金)のあいだ、国立国会図書館のなかでおこなう。

一言で言えば、さんざん話題になったあの「Googleブックス」を日本で実現しようという取組みだ。書協(日本書籍出版協会)などの業界団体でとりくむのではなく、意思のある出版社が手を挙げて参加しているのが特徴。
試しにGoogleブックスで、本の全文検索を試してほしい。
< http://books.google.co.jp/books?source=gbs_hp_logo >

ところで、最近話題になっている「自炊」である。ちょうど一年前くらいに、自炊っていいよねみたいなことを言われても、「そんなことやるのは好きモンだろう」くらいに思っていた。

ぼくもscansnap(富士通のスキャナね)を机においていたのだけど、会議のレジュメなんかをときどきスキャンするくらいで、とても活用してるとは言えなかった。その気分が劇的に変わったのは、キヤノンの複合機を去年の秋に買い替えたときだ。

以前の複合機でも、自動紙送り装置で両面の原稿からコピーも、ファックスも、スキャンもできた。だけど、スキャンはそのネットワークにぶら下がってるPCから、専用のアプリを立ち上げてコントロールしなくちゃならない。

原稿をセットしたら席にもどって「GO」。また原稿をとりに複合機までもどる。だけど買い替えた複合機では、自分のメールアドレスに添付で送ったり、サーバにそのまま保存させたり。たったそれだけで使い心地がまったく違うのだ。そんでもって、自炊に挑戦したくなった。あああ、機械が進化するっていいもんだ。

さて自炊。なぜ、自炊が興味を引くのか? 理由は二つあると思う。

一つは、PDFで保存できるなら捨ててしまいたい本があるからだ。本の保存は場所をとる。壁をすべて本棚にした家をつくる人がいるみたいだけど、それは少数派だと思う。なくしたいけど捨てられない、というのが、多数派のような気がする。ぼくもこっちだな。

もし、PDFで保存できて、その手間もたいしたことがないなら、自炊して本は捨ててしまいたい。実際は、PDFをもう二度と開かないかもしれない。でも、紙の本だってほとんど開いてない。要は、「ある」という安心感のような感情なんだと思う。

二つ目は、移動の途中で読むため。ぼくもたった一泊の出張に本を2〜3冊持っていってしまう。1冊だと、読み終わったり、つまらなかったりしたら、なんて心配してしまうのだ。これをiPadにいれておければいいなと思う。

ならば、こうした自炊欲望に出版社はどう応えるのがいいのか。まず、その前提は「いまはまだ紙の本をつくって売るのが商売の中心」であるということ。

これを前提にすれば、・これから出版する紙の本は、PDFファイルをつくっておいて、紙の本の購入者には無料で提供する。もちろんPDFファイルだけを売ってもいいし、そもそも電子書籍にするのでもいいわけだ。・これまでに出した紙の本を、1冊裁断してスキャンしてPDFにする。OCRはかけておくけど、その精度は悪くてもいい。

デジタルクリエイター的に言えば、いま制作している紙の本の印刷用のデータであれば、それをPDFにするのは比較的簡単だということがおわかりだろう。しかし、以前つくった紙の本を、データからPDFにするのはちょっとコシがひけちゃう。

当時のOS、アプリのバージョンで開かないと、字送りとかもう一度チェックしなくちゃ不安でしょ。ならば、もう裁断してスキャンしてしまったほうが手早い。OCRはどんどん精度を増すだろうから、時々OCRをかけ直してやればいい。

もちろん、これらは本格的な電子書籍をつくるまでの過渡的なものだ。さらに問題もイッパイある。紙の本を買ってくれた人=無料でPDFを提供するにしても、買ってくれたことをどう確認するのか? これまで出版した本のPDFにどうアクセスしてもらうのか?

で、国立国会図書館と有志出版社の「日本版Googleブックス」である。これまでに出版した本のPDFが、国立国会図書館のサイトで検索できて、一部が表示できるのであれば、自炊した本のデータ保存箱と同じことになるはずだ。

国立国会図書館にデータがある本なら、心配しないで捨てていいですよ、一部を読み返したいなら全体の20%まではネットワークから読めます、紙の本そのものを見たいなら、国立国会図書館にあるし他の図書館にもありますよ、となればいい。

AppleのiPadは、ありふれた部品や技術でつくられている、って話があるのだけど、電子書籍もありふれた技術の活用の仕方に、まだまだ可能性があるのではないだろうか?

◇2011.03.01 阿佐ヶ谷ロフトイベント
< http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/lofta.cgi?year=2011&month=3 >
続・2011年代の出版を考える 〜電子書籍ブームの先へ
日時:2011年3月1日(火)OPEN18:30/START19:30
会場:阿佐ヶ谷ロフト(東京都杉並区阿佐谷南1-36-16-B1)
前売り、当日共に1,500円(飲食代別)
【出演】
橋本大也(ブロガー・「情報考学」)
仲俣暁生(フリー編集者・「マガジン航」編集人)
高島利行(語研・出版営業/版元ドットコム)
沢辺均(ポット出版/版元ドットコム)
+ゲスト

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。
版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

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■編集後記(2/8)

・大相撲業界がとんでもない大騒動の渦中にあるが、閉鎖社会の古い体質の組織が外部からの空気を嫌い、さまざまな問題を先送りしてきたのだから、早晩こうなることは予想できた。危ないことは上手に封じ込めるべきだった。ITや危機管理が分かる理事や職員がいないんだろうな。石原慎太郎知事は八百長疑惑について「今さら大騒ぎするのは片腹痛い。私の知っているかぎり相撲はそういうもの。昔から当たり前のこととしてあった」「日本の文化の神髄である国技というのはちゃんちゃらおかしい」と言っていたが、そのとおりだろう。八百長があるのは公然の秘密で、ファンはそれをおおらかに包みこんだ上で大相撲を楽しんでいたのである。ところが、放駒理事長は「過去には一切なかった」と大見得を切り、逆に反発を招いている。これでは引くに引けないではないか。戦略ゼロ。落としどころはどこにあるんだ。「国民への背信行為だ」とか「激しく国民の信頼を失墜させている」とか、菅や蓮舫が笑止なことを。それはまさしく民主党の「マニフェスト詐欺」のことではないか。(柴田)

・Gmailを経由させているので、スパムを目にすることはほとんどない。スパムフィルタが優秀すぎて、知人からの携帯メールまではじくことがある。アドレスブックに登録すればちゃんと届くようになるんだけど、初回はね。スパムが多すぎて、スパムフォルダを覗くことはめったにない。送ったんですけど、というような話になった時に探すだけ。所持するドメインの期限が切れます、更新してください、というメールが届いた。英文。海外の複数のレジストラで登録したことはあったが、このメールの送付元で登録した覚えはないし、期間ももう少しあったはずだ。第一、更新を促すのに二週間前ってことはない。記載されていたのは、ドメイン名に私の登録住所。もっともらしい番号やら期限やらはあるが、会社名はない。1年で75ドルってのもイマドキの金額にしては高い。英文ももっともらしい感じ。クリック先はセキュアだから安心よ、当然支払うわよね? な雰囲気なのだが、いま登録しているはずのレジストラに行って調べてみたら、あと1年半残っていた。メールを送りつけるだけで75ドルが手に入るのかぁ。/以前使っていた海外レジストラから、戻ってきて、いまなら年6.99ドルでいいわ、というメールも届いた。/携帯会社もカムバックキャンペーンやったらいいのにね。10年以上使っている人と、新規が同等優遇されているのってどうかなぁと。iPhone利用者なので移動するつもりはないけど。/お詫びが画像ってやだなぁ。黒バックというのも。(hammer.mule)