武&山根の展覧会レビュー 特別編「テオ・ヤンセン展〜生命の創造〜」物理と芸術が生み出した新しい可能性──を観て/山根康弘

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武氏が「親父と飯を食うからチャットができない」と申しておりまして、しょうがないので初の山根単独原稿でお送り致します!

しかし、チャットで原稿を作るのになれ切ってしまっているもので、甚だ不安であります。こうなったら不安をかき消すために酒でも呑むしかないな。いや、理由なんてなんでもええやんか、どうせ呑むねんから。でもどうもしっくりこない、書いてるあいだに慣れてくるんかな、もっと呑むか。。。あ、グダグダ言っててもしょうがないので、早速進めて行きたいと思います!

●「テオ・ヤンセン展〜生命の創造〜」日本科学未来館

今回はお台場にあります日本科学未来館、「テオ・ヤンセン展〜生命の創造〜」に行ってきました!
< http://www.theojansen.jp/ >

〈テオ・ヤンセン〉1948年、オランダ・スヘーヴェニンゲン出身。デルフト工科大学で物理学を専攻。1975年に画家に転向し、1990年キネティックアート「ビーチアニマル」の制作を開始。アートと科学が融合したさまざまな作品を制作し、注目を集める。

ちょうど一年ほど前にも、「'おいしく、食べる'の科学展」を観にここに来ましたが、どうもこのあたりは寂しいというか落ち着かないというか、独特の空気が漂ってます。嫌いではないが、長居もできないような。酒の匂いをまるで感じないからでしょうか。

しかし、会場内に入ると前回同様、老若男女でずいぶんと賑わってました。ヤンセン氏のアーティスト・トークがちょうど行なわれるところだったのですが、トークのエリアはパーテーションで仕切られており、すでに満員で入ることは出来ませんでした。しょうがないので、他の作品を観ながらパーテーション越しになんとなく聞くことに。会場の雰囲気はこんな感じでした。
< http://japan.swamp-publication.com/?eid=857998 >
おお、なんなんやこれは。



●Strandbeest(砂浜の生命体)=ビーチアニマル

いつもだいたいそうですが、何の予備知識も持たずに行ったもんで、生命だ、進化だ、アニマリスなんたらで、ホーリーナンバーだ、などといろいろ書かれているんですけど、最初はほとんど意味がわかりません。ただ骨格標本のようないくつもの巨大な造形物が、妙な親近感を醸し出しています。さらに、パーテーションの奥に少しだけ見える最も巨大な作品が、わさわさ動き始めた!

アニマリス・シアメシス
< http://japan.swamp-publication.com/?eid=857999 >

これらの作品が、テオ・ヤンセン氏の「Strandbeest(=ビーチアニマル)」と呼ばれる浜辺に生息する生命体で、氏が1990年から改良(進化)を重ね、複雑化し続けているそうです。展示はこれらビーチアニマルの進化を追う形で構成されています。

オランダ製のプラスチック・チューブから作られた身体を持ち、巨大な羽を使って風を取り込み、ホースを伝ってペットボトルに圧縮空気を溜め込んでそれを動力とする、氏曰く「風食生物」。他にも、ぶら下がったホースから海水を関知して、海とは逆方向に歩き出す機能や、障害物を関知して逆に歩き出す機能などを持っていたりもする。

なるほど、面白い! でも逆に歩き出してその後どうなるんやろ、、まあ、どっかで止まってまうんやろうけど。検索するといろいろと動画が出てきますので、興味のある方は調べていただくとよりお分かりかと思います。
Theo Jansen's STRANDBEEST
< http://www.strandbeest.com/film_videos.php >

ヤンセン氏のトーク&デモンストレーションも終わり、動くところは観れないかなと思っていたのですが、もう一回デモンストレーションがあるということで、なんとか巨大なビーチアニマル「アニマリス・シアメシス」が実際に動くところを観ることができました。観客側に歩いてきたりするのですが、体長9mで何脚も足が着いてる奴がこちらに向かってくると、ちょっと興奮します。

●ビーチアニマルの印象

ヤンセン氏はビーチアニマルについて、「自分の子どものようなもの」と語っておられます。20年もの歳月をかけて、「この子たち」を進化させていく情熱は計り知れないものがあるのでしょう。

素材は工業製品でチープ、作りも雑と言えば雑、しかしなぜか温かさを感じさせます。動きもコミカルで、突然止まったり、前進と後退しかできなかったり、どこか抜けているんだけど、それがまた妙に親しみを覚えたりします。

それはヤンセン氏が20年間かけてきた、そしてこれからもかけ続けるであろう愛情と、ゆっくりと流れる時間がそのままビーチアニマルに表出し、生命として感じられる、そんな印象です。

とは言うものの、それとは全く逆の印象を持ったことも事実です。動かないビーチアニマルはやはり骨格標本、化石であり、素材そのものが全面に見えてしまうと、産業廃棄物の集積のような印象もなくもない。つまり死んでいる。死んでいるものが動き出すんだから、それは恐ろしい。脚がたくさんあるから、一体なのに群れが迫ってくるようにも感じられます。

しかも巨大やし! 規則正しく動く脚の群れが、何かに取り憑かれたような、得体のしれない力に突き動かされているような。。。いやいや、そもそも模型なんだから生きてない。

●線から立体へ

ビーチアニマルに対して両極端な印象を持ったんですが、いずれにせよ、動き、進化していくことがキモの作品な訳です。ヤンセン氏はこの進化の過程が重要であると考えているそうで、一番最初は「アニマリス・リニアメンタム(いくつかの線)」というコンピュータ上の生物で、「進化」を自身の眼で観察するために作り出したそうです。
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どうしてこの生物をコンピュータの外へ、浜辺へ連れ出そうと思ったのかはわかりませんが、愛しい子どもを自分の好きな場所へ連れて行きたい! といった感覚なんでしょうか。それとも、アーティストとしてのヤンセン氏が、コンピュータの中だけでは飽き足らず、モノに変換させたかったのでしょうか。あるいはただの模型なのか。

展示の最後でヤンセン氏のインタビューの映像が流れていて、その中で「人生は大きな遊びだ」というようなことを言っていたのですが、浜辺でゆったりとした風に吹かれながら、動いたり止まったりして遊んでいるヤンセン氏とビーチアニマルを、どことなく哀しく、また羨ましくも思ったのでした。


「テオ・ヤンセン展〜生命の創造〜」物理と芸術が生み出した新しい可能性
< http://www.miraikan.jst.go.jp/spevent/theojansen/ >
< http://www.theojansen.jp/ >
会期:2010年12月9日(木)〜2011年2月14日(月)
場所:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーンb(東京都江東区青海2-3-6)
時間:10:00〜17:00(入館は閉館時間の30分前まで)
入場料:大人1,200円、18歳以下500円 団体8名以上割引あり
※常設展示は別料金(大人600円、18歳以下200円)
※障害者手帳所持者は当人および付き添い者1名まで無料

【山根康弘(やまね やすひろ)/人生は大きな酒場】
yamane@swamp-publication.com
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