[3005] 人生の節目を体験するの巻

投稿:  著者:  読了時間:31分(本文:約15,000文字)


《早くツイッターを始めないと旧世代と呼ばれるという恐怖》

■わが逃走[80]
 人生の節目を体験するの巻
 齋藤 浩

■私症説[24]
 「ツイッータ」はどう発音するのか
 永吉克之

■買物王子の家づくり[03]
 新築VS中古:一長一短に迷う
 石原 強


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■わが逃走[80]
人生の節目を体験するの巻

齋藤 浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20110210140300.html >
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いつかはライカ! そう思い続けて何年になるだろうか。
いわゆる20世紀末におけるライカブームを素通りした私がこのカメラにあこがれるようになったのは、ライカと同じレンジファインダー式のベッサなるカメラを使いはじめたことに起因する。

電子的部品を一切使わないいわゆる機械式カメラで、ピントも絞りもシャッターも手動。わかりやすく言っちゃえば、電池がなくても動くカメラ。歯車とバネだけで撮影できるんだぜ。すげえだろ。

で、ものの本によると、このカメラはそのスジでは入門用と位置づけられており、最終的にはライカに行き着くことになるという。そういうものなのか?とはいえベッサも必要にして充分な性能だしな。

しかもライカの値段たるや尋常じゃねえ。こんなカメラを買う奴は金持ちのボンボンか、穀潰しの道楽者に違いない。オレはいらん。

そう思ってはみたものの、やはり気になる。こうなってくるとオタクの血が騒ぎ出して、いろいろ調べちゃうんだよなー。ライカに関する文献を3冊、5冊と読んでいくと、どうやらライカには歴史があり伝統があり設計者の魂があり、それらがいろいろ混ざり合って伝説になっているらしい。

その伝説にやられちゃったおっさん連中が「ライカには不思議な力があって、持ってるだけでシアワセが訪れる」とか布教してる訳だ。その手には乗らん!と思いつつも、そこまで語られるからには一度くらい使ってみたいものだと思ったのも事実。で、改めてカメラ屋で値段を見たところ、やっぱり超現実離れした価格だったため思わず笑ってしまったのだった。

その頃、私はベッサを使うのが楽しくて楽しくてしょうがなかったし、ライカを買う金があればベッサに使うレンズが欲しかった。幸いマウントは共通なので、そのうちライカが手に入ってもレンズはそのまま使えるし。

ちなみにベッサのレンズ性能は本当に素晴らしく、値段もリーズナブルだ。そうなると余計にライカの値段が「ブランド代」に思えてくる。そんな訳で、この頃から「いつかはライカ」と思い続けてはいたものの、買うために動いたことはなかったのだ。

買うために動かずに、いかにして入手するのか。うーん、そうだなあ。世の中面白いもので、憧れの人に会いたいと思い続ければ巡り巡って会えたりするので、モノに関しても同様であろう。いつかはライカ! と念じ続けると手に入るような気がする。

という訳で、数年前から私は日々念じ続けていたのだ。そうこうしていると友人・知人の中にもライカ使いが何人かいることが判明、彼らのライカを触らせてもらったり、使い方のレクチャーを受けたりするようになった。

初めて持ったライカは意外に重く、冷たい。この金属の箱の中にメカがぎっしり詰まってる訳だ。シンプルな形状にもかかわらず手にしっくり馴染む。巻き上げレバーを廻すと重すぎず軽すぎず、引っかかりのないトルク感。確かにこれは快感だ。いままで巻き上げレバーとはギリギリとフィルムを引っ張るイメージがあったので、この意外な程スムーズな巻き上げ感覚には少し戸惑った。

シャッターボタンを押してみる。ストロークは意外と長い。そして、ことん。という静かなシャッター音。え? 今のでシャッター切れたわけ?? カシャッという音をイメージしていた私は、この意外な程地味な主張にかなり戸惑った。うーむ。

『意外』ということばをずいぶん使ったが、確かにライカは他のどのカメラにも似ていない。他のカメラがライカに追いつきたくても追いつけなかったということが、この一連の操作でわかったような気がする。

しかし、伝説となっているファインダーのクリアさに関しては、我が愛機・ベッサとそれほど変わらない印象だった。ということは、ベッサはものすごい優等生ということになる。

なるほどなー。理性モードで考えると、モノとしての魅力はものすごい感じるが、機能という意味では現在のシステムで充分満足だ。

ところが、我が脳が劣情モードになるとその考えは一転し、ライカ欲しい病はますます酷くなってゆくのだった。とはいえ買えないものは買えん。となればどうするか? そう、もらうのである! 道で倒れている老人を介抱し、「おお、親切な青年。助けてくれてありがとう。お礼に私のライカをあげよう」ということになったらいいなあ!!

てなことをウチのデザイナーのM井君に話したところ、彼の父親がまさにそんな体験をしたことがあるのだそうだ。すげえ! ほんとにそんなすごい話があるのか! よーし、倒れてる老人を探すぞー!! と思ってみたものの、そう簡単にいくはずがないことを私は知っている。なぜならオレはこうみえても大人だからだ。えっへん。

●●
1月8日の夜、近所の超ハイクオリティ居酒屋にて、たまたま隣り合わせた馴染みの客・S氏と語っていたのだった。元新聞記者の初老の男性S氏はジジイのくせにモテモテで、こんど20も年下の人と何度目かのケツコンをするそうだ。くそー、いいなあ。おめでとうございます。

てな感じで日本酒をちびちびやってたときに、なんかのはずみでライカの話になった。するとS氏は、
「あ、オレ持ってるけどもう使わないからあげるよ」
「...?................................................................................................
.............................................................................................
.............................................................................................
.............................................................................................
....................................えーーーーーーーっ???」

詳しく聞いてみると、なにやらそのライカは道楽者だった(本人談)亡くなったおじいさんのものだそうで、S氏がずっと保管していたというもの。なんだかすごいことになってしまった。酔いがいっぺんに吹っ飛んだと言えましょう。

しかしここは居酒屋であり、お互い飲んでいるのである。話半分程度に聞いておいてほんとに頂けるのであれば、それはそれはシアワセだろうなあと夢見るに留めておくことにした。明日になってS氏が忘れていたとしても恨みっこなしだ。楽しい居酒屋トークというのは、そういうものである。

1月17日の夜S氏から連絡があり、これから串揚げ屋Dで落ち合おうという。あの話が現実に? 足が震えてくる。Dに到着するとちょうどS氏も来たところだった。生ビールを注文したところで本題に入る。

S氏はおもむろに紙袋を開け、「はい、ライカ。僕が持ってても宝の持ち腐れなんでね、使ってくれた方がこれも喜ぶでしょう」
「うぐがごくく...ありがとうございます」
ライカM3後期型+ズマリット50mm f1.5レンズが、使い込んだ革ケースとともに私のもとにやってきた瞬間だった。

傷だらけカビだらけ、革は剥がれ、全体的にかなり使い込んでいるようだが、正真正銘のライカである。その後S氏といろいろと語ったはずなのだが、脳内真っ白状態だったらしく記憶がない。

●●●
つぎの日、机の上に乗ったライカを見る。確かに本物だ。うーむ、念じ続けていたら現実になってしまった。さて、これからどうするか。とりあえずポジフィルムを装填し、テスト撮影してみることにした。

ファインダーはかなり曇っており、距離計部分のコントラストも低い。確かにあまり状態は良くないようだ。御茶ノ水近辺を撮影した後、新宿のヨドバシにて現像に出す。翌日ポジを引き取り、さっそくライトテーブルの上に広げてみると、見事に露出オーバー。

最新の露出計を使って撮っているので、これはやはりシャッターの精度が低下してるってことかな。また、ゴーストだのフレアだのといわれる光のタマリのようなものがそこかしこに見られる。このへんはレンズの問題だろう。表面のカビや傷だけでなく、鏡筒部内側の黒塗装がかなり剥がれており、地金部分に光が反射していることも原因らしい。

そんな訳で、修理に出さねば! ということとなった。最初は雑誌などでも度々登場する某有名修理工場に出そうと思ったのだが、まずはプロの意見をと思い、同じ学校で講師をしていた写真家K川氏に相談する。

すると「馴染みの中古カメラ屋があれば、そこにお願いした方がいいよ」とのこと。なにやらそういった店は商品の価格を抑えるため、腕が良くて工賃が安い職人の独自ネットワークを必ず持っているのだそうだ。なるほどねー。また、「レンズ研磨に関しては達人級の人がいるから、こんど一緒に行こう」と言ってくれた。これで鬼に金棒である。

そんなこんなでボディは赤坂にある馴染みの中古カメラ屋に預け、いよいよレンズをY崎光学写真レンズ研究所に持っていく日が来た!

K川氏とともに北新宿の渋い街並を歩いていく。地図を見ながら「たしかこのあたりなんだけどなあ」と、うろうろすると...あった! 小さなプラスチックのプレートに『Y崎光学写真レンズ研究所(ウラにお廻りください)』とマジックで書かれている。

いいのか? 渋すぎないか? ウラってどこだ? コインパーキングを越えて反対側に来てみると、最近建て替えたばかりな感じの住宅兼作業場的な建物があった。呼び鈴を押すと「開いてるからどうぞー」的なことを言われる。開いてるってどこが? ここかな? と大きなドアを引いてみたが開かない。どうやらここは住宅の玄関だったらしい。

では入口はどこに? さらに反対側に廻ると引き戸があり、二代目Y崎さんが迎えてくれた。室内にはさまざまなレンズ研磨用の道具が整然と並んでおり、ただ者じゃない感じが漂ってくる。

「すぐに来ますんで、おかけになってお待ちください」。奥に通されるとまるで町のお医者さんの診察室のような空間があり、すすめられた丸椅子に座って待つことしばし。

「こんにちは、今日はどうされましたか?」おお、町医者的おじいちゃんが現れた。以前オリンパスペンを修理してもらったTカメラサービスの"先生"といいY崎さんといい、どうも光学系に携わる職人さんは、小児科の先生のようなタイプが多いとみた。

「あのー、ズマリット50mmなんですが、カビと傷と塵混入と鏡筒内部の塗装のハガレが...」「ほほう、ズマリットね。いいレンズですねー、どれどれ、見せてごらんなさい。ほほう、これはまぎれもなくカビと傷と塵混入と鏡筒内部の塗装のハガレ...」「治りますか?」「大丈夫。きちんと研磨してコーティングしますからね。ただし時間はかかります。早くて4週間というところでしょうか」「待ちます、待ちますとも!」

といった具合にレンズを預けてきた。メモ用紙に住所と連絡先を書いて渡してきたものの、とくに控えのようなものはもらえなかったのでやや不安ではあるが、まあそういうものなのだろう。

K川氏はその後Y崎さんと研磨とコーティングに関する専門的な熱い談義をくりひろげ、ライカレンズの奥の深さを語り合っていた。Y崎さんいわく、「バラすとわかるが最近のレンズはメーカーに都合のいい設計になっている」のだそうだ。不具合が見つかっても直そうとはせず、その部分を新品にとりかえることで"修理"とする。その作業がしやすい設計になってるらしい。

それに対して、昔のレンズは設計者の知恵と工夫であふれている。妥協のない設計なので、50年前のレンズでもきちんとメンテナンスさえ行えば、ずっと使い続けることができる。なので、長い目で見れば安い買い物と言えましょう。とのこと。なるほどねえ。

今回はやたら「なるほどねえ」が多かったかも。以上、先日経験した人生の節目の話でした。カメラもレンズも修理に時間がかかるため、まだ手元には戻ってきていません。暖かくなった頃、こんどはこのライカを持ってまた尾道の写真を撮りにいきたいと思っています。

前回の続きの尾道写真は次回に持ち越しです。それではみなさん、またお会いいたしましょう。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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■私症説[24]
「ツイッータ」はどう発音するのか

永吉克之
< http://bn.dgcr.com/archives/20110210140200.html >
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ぼくがツイッターを始めたのは昨年の1月25日だった。で、更新は一年後の同日から一週間以内に行なわないと脱退したものと見なされて、再開するには新規に手続きをする必要があるから、改めて手数料23万円を払わなければならないという規約を期限切れ直前に思い出して、あわてて更新に出かけた。ぼくの場合、大阪府堺市に住居があるので、ツイッターの開始や更新の手続きはNPO法人《ついったるで★SAKAI》で行なう。

                 ●

一年前ぼくは、イトーヨーカドー堺店で買った折りたたみの座椅子を抱えて帰る途中、《ツイッータ入会手続きいたします》と、極太マーカーで書かれた段ボールの看板が電柱に針金でくくりつけてあるのを見つけたのだった。

ぜんぜん興味がなかったのだけれど、旧世代という烙印を押されるかもしれないという恐怖心からツイッターを始めなきゃと思っていたので、ぼくは一も二もなく、その看板に鈴なりに貼り付いてハタハタとはためいていた地図の一枚を剥がし、それを頼りに、座椅子を抱えてその場所を探した。

地図が示すあたりに来ても《ついったるで★SAKAI》の看板どころかオフィスらしいものもなく、見るからに貧乏人が住んでいそうな住居が並んでいるばかりだった。路上には薄汚い子供たちが4人、陰気な顔つきで座り込んでいた。なにやら気持ちの悪そうなものを分けあってクチャクチャ食べている。

抱えていた座椅子がだんだん重くなってきて、腕が痛くてイライラしていたせいか、ぼくはその子供たちのなかでも、とくに憎らしそうな坊主頭の男児に話しかけた。

「ふっ。子供はみんな天使だなんて誰が言ったんだ。お前らはただのエゴイストじゃないか。お前らの行動の動機はいつも我欲を満たすことなのだ。おい、ついったるで★SAKAIはどこだ」
坊主頭は、こっちも見もせずに親指で背後にある、木造モルタルのアパートを指した。
「どこを指しているのだ? あれはただの貧乏人アパートじゃないか。小僧、好い加減なことを言うと撲(う)つぞ」

ぼくは嚇してやろうと思って拳を振り上げたのだが、坊主頭は怯むこともなく、ぼそりと言った。「ついったるで★SAKAIはおらの家だで。2階の1号室だで」
そして立ち上がり、ほかの子供たちに、おい地獄さ行(え)ぐんだで! と声をかけると、みんなを連れて走り去った。

                 ●

子供が指したアパートの、塗料が剥げてサビがあちこちに浮いた階段を上がると、突き当たりの住戸のドアに直接、極太マーカーで黒ぐろと《ついったるで★SAKAI えんりょなくハイッテネ!》と書いてあるのが見えた。

書いてある通り遠慮なくノックもせずにドアを開けたら、入ったところにある台所の板の間で、婦人がアオネギの束を握りしめたまま泡を吹い倒れていたのでぼくが、わっ、と声をあげると婦人はむくっと起き上がった。

「すんませんねぇ。夕飯の支度に包丁でネギ刻んでたら、トントントンゆうあの短調な音でなんや眠うなってきてしもて、ひと眠りしてたとこですわ。ああ、こんなヨダレ垂らしてみっともない。えっと、御用は? あ、ツイッータでっか? ほな上がってください」さっきの坊主頭の母親らしい婦人に、ぼくは奥の畳の間に案内された。その部屋は陽が入らないせいか、畳が豊かな湿気を含んでいて、部屋に踏み込んだとたんに足が畳にめり込んで靴下が水分を吸い上げるのがわかった。

部屋のあちこちに、錆びた鉄パイプや、金魚が腹を見せて浮いている金魚鉢や、うどんや蒲公英(タンポポ)などが散乱していたが、婦人はそれらをどけてコタツの前に座布団を敷き、ぼくにすすめた。そして向かい側に座り、コタツのなかからノートパソコンを取り出して起動させ、手続きをします、と言って両手の人差し指でキーを打ち始めた。

ぼくの名前もメルアドも訊かずにどんな手続きをしているのか、ぼくの側からはモニターが見えないのでわからなかったけれど、30分ほどして婦人はキーボードから指を離し、ふう、とため息とつくと目をつむり、眉間のあたりを指先でつまんだまましばらくじっとしてから、おもむろに口を開いた。

「いやあ、今回の手続きはえろう難儀しましたけど、どないかこないか済ませました。後は、お客さんがお家のパソコンからツイッータのサイトにアクセスして、アカウントを作ってもらうだけですわ」
「アカウントって、どうやって作るんですか?」
「簡単ですがな。ツイッータにアクセスして《登録する》ゆうボタンをクリックしたら、アカウントを作成する画面が現れまっさかい、その指示通りにユーザー名とかパスワードとかメルアドとか入れるだけですわ。そんなん、うちの子でもできまっせ。はい、手数料23万円」

ぼくはその金額を聞いて唖然とした。たしかに、早くツイッターを始めないと旧世代と呼ばれてしまうという恐怖は恐ろしく、また怖くもあったが、それにもまして23万円という途方もない金額に圧倒されて、ぼくは思いつくままに、その場しのぎのことを口走った。

「お金は明日持ってきます。この座椅子、抵当に置いていきますから」
「それ、なんぼしますのん?」
「23万円です」
「わかりました。ほな、それはお預かりしますんで、必ず明日じゅうに払うてくださいよ」

このおばはんはアホかと思った。どこの世界に23万円もする座椅子があるというのだ。もちろん後で払いにくるつもりなどなかった。座椅子代の3,990円でツイッターが始められるのなら安いものだ。精神的優位に立ったぼくは、おばはんに仮借のない質問を浴びせた。

「手続き一回につき23万円もふんだくってれば、いい稼ぎになると思うんですけど、なぜこんなボロボロのむちゃくちゃなアパートに住んでるんですか?」

するとおばはんは突然、仰向けに倒れて畳の上をごろごろ転げ回り、ビール瓶やら植木鉢やら仏壇やらをなぎ倒しながら涙声で訴えた。

「なにがええ稼ぎや。なんぼ稼いでも、ついったるで★OSAKA(※)に持っていかれるんや。23万稼いでも22万9千520円は吸い上げられるんや。おとうちゃんが失踪してお金に困ってるときに、ええ仕事があるからて誘われて、うちがその気になってしもたんが悪いんや。あーもう殺してえな!」

(※)ついったるで★SAKAIが属する上部組織。事務所は大阪市旭区にある。ふとぼくは、坊主頭の子供が言った《おい地獄さ行(え)ぐんだで!》が、『蟹工船』の冒頭の言葉だということを思い出した。いつの時代も搾取されるのは、このような社会的弱者たちなのだ。あんな年端も行かない子供にまで蟹工船をさせる社会構造をぼくは憎んだ。

                 ●

そんなわけで、おばはんをだまくらかしてツイッターを始めてから一年ぶりに、ついったるで★SAKAIに更新手続きをしに行った。一年前と同じように、2階の1号室をノックもせずに開けたら、おばはんが息子と並んで倒れていた。腐乱していたので今度は昼寝しているのではないということはわかった。

たまたま隣の住戸から出てきた人がいたので事の次第を尋ねると、おばはんは大きな借金をこしらえて首が回らなくなり、親子心中したらしいとのことだった。それならば預けておく意味のない座椅子を、ぼくは家捜しをして見つけた。それには極太マーカーで大きく《怨》と書いてあったが、座るのに不具合はなさそうなので持って帰った。結局、更新手続きはしなかったのに何故かツイッターはまだ使えるので、この件はもうどうでもいい。

【ながよしかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
このテキストは、以下のブログにも、ほぼ同時掲載しています。
無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz >

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■買物王子の家づくり[03]
新築VS中古:一長一短に迷う

石原 強
< http://bn.dgcr.com/archives/20110210140100.html >
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家探しをはじめてから、いくつかの不動産屋さんに声をかけましたが、紹介される物件が少ない。どの不動産屋さんの営業マンにも、このエリアは物件がなかなか出ないんですよ〜なんて言われて、薄々感じてきたことだけど、自宅の周辺では条件に合う物件が少ないみたい。さすがに条件が厳しすぎなのかもしれない。

●希望エリアの外側にあった気になる物件

そんな行き詰まりを感じていた時に、ふと目に留まったのが、エリアの外にある物件。最初に見た幡ヶ谷の家で、営業マンに参考でもらった資料にありました。以前に案内された時、渋谷区の物件だけ見て、中野区の物件は見に行かなかったのです。Googleマップで住所を検索してみると、ちょうど渋谷区と中野区の境界にあたる場所。幡ヶ谷駅からも歩ける距離だったので、期待しないで見てみることにしました。

物件の住所は中野区南台1丁目。道一本隔てると渋谷区という、ちょうど境界線上に位置しています。幡ヶ谷駅からは15分ほどですが、途中は賑やかな商店街を抜けていくので行き来は退屈しないで済みそう。住宅地に入って太い道から狭い路地に入ったところ。土地は19坪で南向き。前面道路は3mでちょっと狭いけど、クルマもぎりぎり入れるみたいです。裏手には大きな学校があって緑も豊富。

これまで見てきた周辺の物件と比較すると、金額もちょっと割安です。理由を聞くと、ここは防火地区に指定されていて、3階建ての建築の場合に限って、耐火建築の仕様で建てるために、通常よりも費用がかさむのだそうです。

でも、この不動産屋さんの紹介する工務店は、2階建て+ロフトというプランを準備していました。2階建てであれば、通常の仕様でよいので建築費を安くあげることも可能だそうです。そこで、このモデルプランを作った工務店さんに話を聞いてみることにしました。

ロフトって要するに屋根裏の収納ですよね? とずばり聞いてみると、ロフトにあがる階段を、梯子ではなく普通の階段を設けることで、収納ではなく部屋として使えるという提案。リビングはロフトがある分、天井が高く吹き抜けのようになって開放感もある。南向きで日当りも良く、気持ち良い家になりそうです。

●近所で見つかった古屋は旅館風

そんな時に、自宅のすぐそば、西新宿4丁目にも中古で物件が出るとの情報が入りました。販売用の図面を見ると3階建てで、5K+ルーフバルコニーという部屋の多い家です。しかも4部屋が和室なのです。立面図では5角形の不思議な形をしています。中に入ってみないと空間が想像できません。懸念は、築30年の古屋であることです。

家の前まで行ってみると、外壁は黒っぽいパネルで、ちょっと引き締まった感じがします。築30年というには、外見はまあまあきれいです。後から補修しているように見えます。家が古くても一定の手入れがされていれば、内装のリフォームだけで住めるかもしれない。

入り口の庇が瓦で、玄関は引き戸という純和風テイストはなんだか気になります。玄関から中に入ると、立派な柱と造り付けの下駄箱。1階は小さいキッチンと、奥には居間、さらに窓側は後から延長しているようです。北向きの家で1階は少し暗い感じがしたけど、階段で2階に上がると、とても明るい部屋に出ました。

立派な床の間がある和室。襖で仕切ると2部屋になります。3階は、和室と洋室が同居。天井には埋め込みの照明、窓の内側には障子がはまっていたり、造り付けの家具も丁寧と、かなりインテリアに凝っています。どことなく箱根あたりの由緒ある旅館を思わせる雰囲気があります。同行したリフォーム業者の方も立派な天井の一枚板を見て、もう今はこんな立派なものは手に入らないだろうと感心していました。

3階からは階段がのびていて、ルーフバルコニーにあがれる。新宿のビル街が眺められて気持ちいい。夏にアウトドアのテーブルセットを置いて、夜景を見ながらビールを飲んだら思いっきりビアホール気分になれそうです。

キッチンを2階に移し、仕切りをとって一部屋にしてしまえば、広くて明るいリビングになりそうです。ちょっと変わった感じがしたけど、家全体をリフォームして、自分の好みのインテリアにすれば、個性的な家になりそうです。

●ここで決めてしまって良いのか迷う

候補になる物件が見つかって良かったと思う反面、今度はここに決めてしまっていいのか迷います。

南台1丁目の土地は、自由にプランできる新築。場所も良いし価格も手ごろ、しかも南向き。前面道路も今は狭いけど将来周囲が建て替えれば、道が広がるから土地の評価が上がる。おすすめなので、早めに買い付けを入れないと、他の人に買われてしまうだろう、と不動産屋さんは言う。

西新宿4丁目の中古住宅は、家の近所で、引っ越しも楽で駅から近い、転校もしなくて済む。古い家でも、人気エリアなので他にも住みたい人がいる。同じ日に内見をした人も、買い付けを入れると聞いているけど、すぐに申し込めば優先してくれるとのことです。

普通だと、比較すべき物件ではないのだろうけど、自分たちの条件に当てはめると、それぞれ一長一短。

物件 :南台1丁目    |西新宿4丁目
家  :新築      |中古(リフォーム)
方角 :南向き     |北向き
道路 :狭い(3m)   |やや狭い(3.5m)
土地 :やや広い(19坪)|やや狭い(17坪:駐車場取れない)
駅徒歩:やや遠い(15分)|近い(5分)
住所 :中野区     |新宿区(息子の転校がない)

立地を優先していたこともあり、この時点で、そのままにしていると他の人の手に渡ってしまう西新宿4丁目の物件に、買い付けを入れました。2週間後の本契約までに、買う買わないを決めなければなりません。

築30年の物件なのでリフォームするとはいえ、表からわからない家の基礎や柱といった構造部分に問題があれば、今後長く住むことを考えると心配です。もし建物がダメで建て替えを余儀なくされた場合、この家は鉄骨造のため木造よりも解体費が高いから、恐らく予算オーバーしてしまいます。

●この家は大丈夫なのか? 診断をしてもらう。

そこで、契約前にこの住宅の状態を調べてもらうことにした。ネットで調べていくつかピックアップして問い合わせた後、条件が合った「さくら事務所< http://www.sakurajimusyo.com/ > という会社に依頼することにしました。独自の100項目を超えるチェックで、家の内外をくまなく調べるということです。

日程が限られていたので、日曜日に申し込んで水曜日に実施。当日は物件の前で待ち合わせ、2人組の調査員がやってきた。作業着で頭にはライトをつけて探検隊のような出で立ち。建物の調査は2時間ほど、専門の道具で事細かにチェックしていく。終了後に見つかった問題点を丁寧に説明していただきました。

(レーザーポインターで天井を指して)このシミはおそらく雨漏りです。ほかにも複数の雨漏りの痕が見受けられます。特に増築したサンルーム部分の雨漏りがひどい。

(屋根で、隅の方に指をさし)外壁の継ぎ目が割れているし、屋上にもヒビがある。雨水が入って浸食している可能性がある。屋内の雨漏りの痕が、外壁を修理する前か後なのかは分からないが、外壁は再度補修をして屋上も防水処理をしたほうがいい。

(窓から外をのぞいて)ほら隣家の屋根の雨どいが、こちらの土地に越境している。あと南東側に土地境界の標識が見当たらないので、トラブルにならないよう、引き渡し前にきちんと確認したほうがいい。

(トイレで)この窓には鍵がかけられない。塀の横に入れば道路から見えないから泥棒が入りやすい。この家は窓が多いが、ほとんど防犯対策ができていない。サッシも古くなっているので、すべてペアガラスのものに入れ替えたほうがいい。

(デジカメの写真を見ながら)床下は潜れなかったのですが、見える範囲では構造には錆が出ていました。でも削って再塗装すれば大丈夫でしょう。天井裏から見ると壁には部分的にしか断熱材が入っていないので、夏暑くて冬寒い家だろう。

素人目にはほとんどわからない、小さな痕跡から建物の状態を読み解いていくのは名探偵の推理を拝聴しているみたいで関心しきりです。心配した建家の構造については物の傾きはセンサーで計測してもミリ単位でないことがわかった。雨漏りの可能性があるので、解体してみなければ傷みの進行具合はわからないものの、おそらくきちんと補修すればまだ住めそう。

けれど外壁にも手を入れるというのは想定外。「快適ビフォアーアフター」レベルの大きな改修になる。内装だけのリフォームで考えていたより、ずっとお金も時間もかかりそうです。

後日、50ページもある詳細な「診断報告書」が届いた。当日の説明をさらに詳細にまとめたものですが、やはり絶対に大丈夫という確信は得られません。場所がら物件が少なくて価格も手頃なだけに、惜しい気もするけど、心配しながら購入することはできない。さんざん悩んで後ろ髪を引かれながらも、お断りを入れました。

●新築でも中古でもない第3の選択。

そうこうしているうちに、南台1丁目の土地も売れてしまったと不動産屋さんから連絡があった。先を超されてしまったことに、がっかりしたけど、決めなくて済んで、正直ほっとした気持ちもありました。

結果として、振り出しに戻ってしまったが、こんなやり取りの中で、より一層家作りにこだわりたいと思うようになってきた。一生に一度の買い物だから妥協したくはない。ローンは35年も背負うのだ。この家のために、この後の人生が決まってしまうと言っても過言ではない。だから、自分と家族の住む新しい家を一から設計して建てる夢を実現したいと思うようになってきた。でも家を建てるには、土地が無いことにははじまらない。改めて土地から探すことに決めた。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
twitter < http://twitter.com/244ishi >

リニューアルして使い勝手を比べてみると、WordPressはいいですね。いまさらながら周囲の評価が高い理由がやっとわかった。たまには、アプリケーションもいろいろ試してみないと取り残されるな。
Webmanagement < http://webmanegement.jp/ >
Shopping Prince blog < http://www.muddler.jp/ >

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■編集後記(2/10)

・地デジ完全移行まで半年を切った。テレビをデジタル対応に切り替えた世帯数は全国5000万世帯の90%以上に達したという。わが家は残る5000万世帯に含まれるのか。カウンターの上には19Vハイビジョン液晶テレビをセットしているが、居間のメインテレビは従来通りなので、気分としてわが家はやはり未対応だ。そろそろなんとかしなくてはならんと、ようやく重い腰を上げる。アナログテレビを生かして地デジを視聴する、これは簡単な話で、安い簡易チューナを買えばいい。BS/CSは19Vのほうで見ればいい。問題は現在使用中のVHSデッキも生かしたい、ということ。妻がクイズマニアでその手の番組を録画しておき、空いた時間にゆっくり見るタイムシフトの使い方をしており、それができなくなると困るという。簡易チューナとVHSレコーダの組み合わせは、かなりめんどうな話になる。同じ問題に悩む人のQに答えるページはネット上にいくつもある。どれを読んでもいまひとつわからないが、どうやら簡易チューナは2台必要らしい。高性能チューナやハイビジョンレコーダーをチェックして、アナログテレビとVHSデッキを生かす方法も研究しよう。まだ使えるものは使えなくなるまでまで使いたいという美徳のために、予想外の出費が。でも、新しいキカイを買うのは楽しい。男だもの。(柴田)

・水道料金の引き落としができませんでした、というハガキが届いた。二千円足らずのお金が落ちていないなんて......。引き落とし口座の残高確認を怠っていた。いつも月末までには入金しに行くのだが、仕事てんてこまいで後回しにしていた。水道料金ぐらいは残っていると思っていたよ......。そして今日が10日ということに気づいた。今日、入金しておかないと他のも落ちない。スーパーにも行かないと。奥さん欲しい。兼業主婦をこなしている人たちって凄すぎ。電子辞書が欲しいとか、MacBook Airが欲しいとか思っているんだけど、先にルンバの購入を検討した方がいいんじゃないかと思う今日この頃。掃除機をめいっぱいかけても30分ほどだし、体操にもなるし、継続的に家事パス(手抜きじゃなくてパス)するほど忙しいのって数年ぶりで今後も続くとは思えないし、と悩むところ。買うならスケジュール設定のできる最上位機種の577っ。価格.comでも61,000円か......。個人輸入できないかな。予想外の出費は困るが。新しいキカイを買うのは楽しい。女だもの。(hammer.mule)
< http://store.irobot.com/family/index.jsp?view=compare&categoryId=2501652 >
国内にはない610ってのがあるわ。ペットいないけど、ペット用572も良さげ。
< http://cgi.ebay.com/iRobot-Roomba-610-Professional-Robotic-Vacuum-Cleaner-/220693399363 >
610はebayでも本体540ドル、送料50ドルか......。トータル約5万。
< http://shop.ebay.com/p.html?_nkw=roomba >
他のラインナップ
< http://www.irobot-jp.com/import/index.html >
法規制とアフターサービス。買うなら国内だな。
保証期間1年。海外上位機種は2年。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002PA7U9C/dgcrcom-22/ >
61,000円。
< http://www.yodobashi.com/ec/promotion/feature/detail/50003J051728P_50003J051717C/ >
買うなら今月中! しかし1年でバッテリー交換って。1日30円+フィルタ代
< http://www.biccamera.com/bicbic/jsp/w/catalog/detail.jsp?JAN_CODE=2094010002015 >
こっちはフィルターとクリーニングブラシつき。新製品発売前?
< http://joshinweb.jp/kaden/355/0885155000415.html >
ジョーシンもつけて