気になるデザイン[56]思わず手に取った黒が基調の二冊『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』『誰も知らない太宰治』/津田淳子

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,300文字)


東京は昨晩からにわかに大雪(東京にしては)。久しぶりに積もった雪に、ちょっとビクビクしながら出勤しました。雪が降ってくると、なぜか昔からワクワクソワソワするのは、なんでなんでしょうかね。

さて今週の気になるブックデザインの本。まず一冊目は『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール著/工藤妙子翻訳/阪急コミュニケーションズ/2800円+税)。ブックデザインは松田行正さんと日向麻梨子さん(共にマツダオフィス)。
< http://books.hankyu-com.co.jp/_ISBNfolder/ISBN_10100/10113_kami/kami.html >

500ページ近い厚みを持った上製本。黒が基調となったカバーには、消滅しそうな朽ちた本の写真が入り、その上に「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」という、引っかかるタイトルが、マットな銀箔で箔押しされている。



そのタイトルと姿が気になって手にとると、おっ、小口がブルーに塗装されている。私はどうにも、この「小口塗装」が好きで好きで(前回のこのコラムでもご紹介した、ハヤワカ・ポケット・ミステリーも小口が黄色に塗装されている)、小口に色がついていると、ついつい財布のひもがゆるくなってしまう。このブルーの小口塗装、読んでいても、邪魔にはならないが、常に目の端に無意識に入って、読んでいる気分に影響を与える。

そしてそんな小口に目を奪われつつ、手に取って驚くことがもうひとつ。この本、軽い! 四六判の上製本で、かつ500ページ近いのにこの重量。これは本文用紙が嵩高のものを使っているからですね。ちなみに詳しくは後述しますが、銘柄はOKアドニスラフ80の76g/㎡だそう。

そうそう書き忘れましたが、カバーを裏返すと、ぼろぼろになった紙の表面のような壁のような、そんな写真が墨一色で刷られ、原著書名が入っている。こうしたところまでデザインの手が行き届いている本はいいですね。といっても、別に全ての本にカバー裏に何かを刷った方がいいというわけではなく(私も刷らないこと多いですし)、刷った方がより効果的な場合は、こうしてあるといいな、ということなんですが。

そして、先程ちょっと触れた本文用紙。バルキーな感じで、目に優しいナチュラルな白。しなやかでいい感じだ。銘柄に当たりを付けて見本帳をめくってみるも、うーむ、ドンピシャな紙が見当たらない。どうしても気になって、ブックデザインをされた松田行正さんにお尋ねしてみたところ「OKアドニスラフ80の76g/㎡」とのこと。えー! かなり親しんでいる紙なのにわからなかった!!(結構ショック)

見本帳と見比べてみたら、ホントだ、アドニスラフ80だ。でも、いつもよりより紙が白く見える。小口がブルーに塗装されてるからかしら。いやぁ、これは驚きました。

内容も、紙の本に固執した懐古主義的なものではなく、大変読みやすくおもしろい。ブックデザインや造本とともに楽しめますので、ぜひご一読をお勧めします(ちなみに昨年末に発売されたものですが、現在既に3刷とのこと!)。

今回のもう一冊は、『誰も知らない太宰治』(飛島蓉子著/朝日新聞出版/1300円+税)装丁は関宙明さん(ミスターユニバース)。
< http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=12305 >

書店店頭で目にしたとき、まず思ったのが「なんだか怖そう......」ということだった。カバーは墨印刷の上にべっとりと銀が刷られ、白抜きされたタイトル文字の上から白の顔料箔がギュッと箔押しされている。「太宰治」という名称が持つ(というか、私の頭の中に印象づけられている)ある種の暗さ、重さというものと相俟って、そんな印象を持ったのかもしれない。

しかしどうにも引力の強いカバーで、気になって手に取ってみる。すると、薄表紙の上製本で、本文がOKアドニスラフPinkのお陰もあり(ちなみにこの本は、上述の本と違って、書店店頭で一発で本文用紙、わかりました・笑)、非常に軽やかな感触。ターコイズブルーの見返しと赤と黄色の派手な花切れも効いていて、なんだか読みたくなってしまい、ついついお買い上げ。

今回は二冊とも、黒が基調になった本を選んでいますが、何となく自分が、そんなカバーに惹かれる心持ちなんでしょうか。こんなことを考えるのもまたおもしろい。

そうそう、ブックデザインと言えば......本の形がおかしなことになっている(?)、『デザインのひきだし12』も全国書店で発売中です。ぜひ書店店頭で実物を見て触ってくださいませ!

『デザインのひきだし12』
< http://dhikidashi.exblog.jp/15867083/ >
< http://www.graphicsha.co.jp/book_data.php?snumber3=1038 >

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp twitter: @tsudajunko

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デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/ >